「ここが…浅草…」
時行は今、両津と一緒に浅草に来ていた。事の発端は昨日、時行がニュースを見ていると浅草では外国人観光客が増加していると聞いたところから始まった。
「浅草ってそんなに凄いところなのですか?」
「おう!凄いぞ!円安の影響で外国人がこっちで買い物する機会が増えた。その結果、インバウンド消費が流行語になるんじゃないかってぐらい外国人が旅行に来て日本中に溢れ出した。中でも浅草は昔ながらの日本が味わえると大人気だ。」
「浅草…行ってみたいです。」
「よし!じゃあ行こう!」
こうして、時行は両津と一緒に浅草に来た。時行の目の前には雷門と書かれた大きな赤提灯がある。
「これが風雷神門、通称雷門。左右にいるのが風神雷神。ここの守り神だ。そして、ここの一番の見所がこの提灯だ。現パナソニックの創始者松下幸之助が寄贈したものだ。」
両津は赤提灯に松下電器と書かれていると時行に教えながらその場所を指差した。時行は見上げながら頷いている。2人はそのまま浅草寺に向かう。ほとんどが外国人観光客だ。もちろんここまでの外国人を見るのは初めての時行は興奮している。
「私がいた時代にもこんな人達が日本の外にいたのでしょうか?」
「さぁな。ここまで見た目が多様化したのも最近だ。昔は意外と時行と変わらなかったのかもな。」
両津が笑う。近くの店でソフトクリームを買って食べる。浅草寺を隅々まで堪能した時行は両津に吊れられ浅草観光を続ける。どこも時行にとっては新鮮で楽しいところだ。
「両さんって浅草詳しいのですね。」
「当たり前だぁ!浅草はわしの庭みたいなもんだ!ガキの頃はよくこの辺りで遊んでたもんよ!」
両津が浅草を案内する。時行が一通り楽しんでいるとある店が目に止まった。時行が両津の腕を引っ張りその店を指差す。
「あそこはなんですか?」
「…」
その店は“よろずや”と書かれている。両津はため息をしてしばらく考え、首を縦に振った。
「あそこは佃煮屋よろずや。わしの実家だ。」
「そうなのですか!?」
「ああ…久しぶりに顔を出してみるか。」
両津は頭を掻きながらよろずやに入る。
「親父ー!お袋ー!」
「うるせぇ!」
両津が呼ぶと奥から男性が現れた。彼が両津の父親両津銀次だった。銀次は両津を見ると近付き突然頭を殴った。
「連絡も寄越さねぇで今更来たのか勘吉!お前は…」
銀次が時行を見つける。すると、大急ぎで奥に向かった。
「母さん!勘吉が子供連れてきた!」
「なんですって!?」
ドタドタと音を立てながら出てくる銀次と両津の母親よね。2人は時行を見て信じられない顔をしている。時行は両津の両親にお辞儀して挨拶した。
「初めまして。この度、両津勘吉さんのお世話になる北条時行と申します。」
上品で丁寧な挨拶に2人は唖然としている。銀次が両津の肩を両手で強く掴む。
「勘吉、俺も一緒に行くから警察署に行こう…な?」
「弁護士は金次郎に頼めばいいのかしら?」
「わしを誘拐犯にするな!」
両津が銀次の手を跳ね除ける。よねが時行のところに来て優しく語りかける。
「本当のこと言っていいのよ?大丈夫。私がいるから。」
「あ、あの…本当に私は両さんの子供になりました。」
「勘吉。お前とうとう催眠術まで手を出したのか。」
「だから誘拐していないと言ってるだろうがぁ!」
両津が叫ぶ。時行の必死の説得で2人は渋々認めた。奥へと上がり両親を亡くしたことや孤児となったところを両津に引き取られたことを話す。2人はその話を聞いて涙した。
「しかし、勘吉には不釣り合いなぐらい上品な子だな。」
「本当ねぇ。時行君が子供ならどれだけ…」
「悪かったな。わしが子供で。」
両津が悪態をつく。時行は佃煮に興味があるようでよろずやの中を歩きながらいろいろと見ていた。それが嬉しいのか銀次がニコニコで時行に話しかける。
「興味あるか?」
「はい。食べたことなかったので。」
「そうか!それなら俺がとびっきりの美味しい佃煮をご馳走してやる!」
「本当ですか!」
時行がウキウキで待っている。そこに銀次が小魚や貝、豆などの佃煮をご馳走した。時行は美味しそうに食べる。2人はそんな時行を見て微笑んでいる。
「本当にいい子ねぇ。」
「ああ。昔を思い出す。」
銀次がウンウンと頷いている。すると、時行が変わった佃煮を見つけた。イナゴの佃煮だ。それを見たよねが銀次に物申す。
「ちょっと!さすがにイナゴは…」
「驚いたか?佃煮はイナゴのような昆虫も煮詰めれば美味しくなるぞ。」
「本当ですね。」
躊躇なくイナゴの佃煮を食べる時行に銀次達は驚きポカンとしている。
「イケるのか?」
「はい。昔はイナゴという物は生で食べていたので。」
「見た目に依らずワイルドだな。」
(凄いな南北朝育ち。)
佃煮を食べ終えた時行は満足していた。
「美味しかったです。」
「ありがとう。素直でいい子ね。」
「こんな寂れてしまった佃煮屋もまだまだイケるな。」
銀次の言葉に時行が反応する。確かに閑古鳥が鳴いている。銀次が冗談半分で笑っていると両津がそれに合わせて笑い始めた。
「親父、今すぐ繁盛させる裏技があると言ったらどうする?」
「そんな魔法みたいな方法があるのか!?」
「ある!」
両津と銀次がコソコソ話している。すると、両津は時行のところに来て肩に手を掛けた。
「時行、店の前で佃煮売ってますと大声で宣伝しろ。」
「え?あ、はい。」
時行は両津に言われた通りによろずやの前に出た。
「ここで佃煮売ってまーす!」
時行が叫んだ。すると、どんどん人が来てよろずやに入った。そのまま佃煮を買ってくる。銀次とよねは大慌てで接客をする。時行はその後ろでちょこんと正座して待っていた。佃煮はあっという間に完売する。
「売れちまったよ。」
「外国人にとって佃煮はまだ見ぬ食べ物だ。インバウンドの今ならいくらでも買ってくれるぞ。それに、時行の集客力は凄まじい。わしと同レベルだ。この2つが合えば商売繁盛間違い無しだ!」
「本当に凄いな。」
銀次は奥に行ってガタゴトと音を立てながら何かしている。すると、戻ってきて時行にタスキと旗を持たせた。
「よし!明日からこれでここを大々的に宣伝してくれ!」
「えぇ!?」
「看板娘ならぬ看板孫としてうちのために頑張ってくれ!」
(この人も両さんとそっくり…さすが親子ですね。)
時行は銀次の期待を裏切るわけにもいかず翌日タスキと旗でよろずやを宣伝した。また、あっという間に完売し大繁盛だった。それに味を占めた両津と銀次はさらに時行と握手出来る権利やツーショット写真も販売し始めた。
それから…
「両さん!銀次さん!これは少し過激ではありませんか!?」
「勘吉、これはどうだ?」
「う〜ん。まだ、裸エプロンは早いな。ここは太腿まで丈の短い着物にして少し開けさせた方がここと合うし人気が出る。」
「なるほど。」
「これじゃあ何を売っているのか分からないねぇ。」
肩出し着物で握手会をしている時行の後ろで次の商売の相談をしている両津と銀次であった。
逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜が50回を突入した記念としてアンケートしたいと思います。皆さんはどんな時行君が見たいですか?
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