ある日の超神田寿司
いつもより髪の長い纏が歩いていると部屋から時行と両津の声が聞こえてきた。
「両さん…そこは…」
「どうだ時行。気持ちいいか?」
「は、はい…」
「何をしてるんだ!?」
纏は聞き耳を立てる。すると、ブォーンという機械音も聞こえてきた。それに反応して時行の甘美な声が漏れ出ている。纏を顔を赤くして障子を開けた。すると、電気マッサージ機で時行の肩をマッサージしている両津がいた。
「何やってんだカンキチ?」
「何ってマッサージだ。」
纏はさらに顔を真っ赤にする。変な勘違いをしていたことがバレないようになんとか誤魔化す。すると、時行が気になったことを聞いた。
「纏さん、髪型変わりました?」
「よ、よく気付いたな時行!そんなんだよ。カンキチはそこ鈍くてな。」
良し!と心の中でガッツポーズする。
「でも、前見た時よりも凄く長くなっていますよ。そんなに成長が早いのでしょうか?」
「時行、あれはウィッグと言う。纏、外せ。」
「う…折角時間かけて着けたのに…」
纏はウィッグを外して時行に見せる。時行は初めて見るウィッグに興味津々だ。
「こんなのが流行っているのですか?」
「まぁな。最近はウィッグで簡単に違う自分になれると人気になっているんだ。」
「それの何がいいのかねぇ。」
両津があくびする。
「ヘアドネーションとか髪の毛寄付とかいろいろ言われてるけどわしには良さが分からん。」
「カンキチはスキンヘッドでも気にしないもんな。」
「気にはするぞ!わしが言いたいのは髪の毛なんぞで価値観が変わるわけないと言いたいのだ!」
両津の発言に時行が頷いている。両津はその時行の髪を見る。南北朝の頃にシャンプーなんてないはず。それなのに時行の髪は凄く綺麗だった。
「そういえば、時行の髪は綺麗だよな。」
「本当だよね。これ、本当にシャンプーを使ってないのか?」
「はい。」
纏が時行なサラサラヘアーを触りながら絶望する。両津は暇つぶしにと検索していた。すると、髪の毛にかなりの需要があるのが分かった。しかも、そこそこのお金になる。
(な…髪の毛って高値で売れるのか!)
両津は時行を見て品定めする。時行の髪の毛ならかなりの高値で売れる。しかし、両津は時行の髪の毛を売る考えをすぐに止めた。纏ざ去った後時行に声をかける。
「時行、わしと一緒に大儲けするぞ。」
「嫌な予感しかしません。」
翌日、両津は早速行動に移した。知り合いの美容師のところに行って散髪した後の髪の毛を回収しカツラにする。時行は両津を見てたまに一緒に居ていいのだろうか悩む。
「これだけで2000円入るんだから楽勝だぜ。」
「たまに両さんを見損なってしまいます。」
両津は髪の毛の回収、カツラの製作、ネットオークションで販売を繰り返す。少しずつだが金は貯まる。しかし、それでは両津は満足出来なかった。
「もっと売るには…わしが散髪すればいいのか!」
「両さんの髪の毛を売るってことですか?」
「いや、わしの髪の毛など1文にもならん。だから…」
両津は時行に耳打ちする。時行はジト目で両津を見る。それでも両津に従ってしまう。両津は時行と一緒に新葛飾署で散髪を始めた。
「どうです!?散髪1回1000円!バリカンでスッキリヘッドならなんと500円!」
両津が大々的に宣伝する。しかし、署員達は疑っている。何か企んでいる。怪しい。そんな声が聞こえてくる。それを聞いた両津は時行を前に出して時行も散髪すると宣伝するとあっさりと集まってきた。
「最近、思うのですが皆さん、簡単に寝返ってませんか?」
「それほどお前のカリスマが凄いってことだ。」
「こんなので発揮したくなかったです。」
両津はすぐに時行に指示して散髪する。売れる髪の毛を仕分け整理し纏める。特に髪の長い婦警やしっかりした髪を持つ体育会系の署員は高値で売れる。時行に散髪させ裏で商売する。
「時行、次はあっちで髪剃ってくれ。バリカンで一気にして構わない。」
「分かりました!」
時行が向こうの部屋に行く。両津も散髪に参加する。順調だ。そう思っていると大原部長が来た。
「両津、お前何を企んでいる?」
「ぶ、部長!」
大原部長は両津を怪しんでいる。両津は必死に商売を隠しながら騙す。大原部長も両津への疑いは消えてないが散髪を頼むことにした。
「両津、わしも散髪してくれんか?」
「も、もちろんですよ!」
「少し短くしてスッキリとした感じに仕上げてくれ。」
「分かりました!そこで寝てください。」
両津は大原部長を寝かせ散髪の準備をする。そこに婦警が散髪を依頼しに来た。両津はそっちの方が高く売れると婦警を優先した。時行が戻ってきた。両津はいない。いるのはタオルで顔を隠した大原部長だけ。
「もしかして、この人もかな?」
時行は大原部長の髪をバリカンで剃っていく。しばらくして両津が戻るとバリカンで剃り終わりツルッパゲの大原部長と一仕事終えたと汗を流している時行がいた。両津はムンクの叫びのような顔をした。
「あっ、両さん!こっちも終わりましたよ!」
「時行…そこにいるのは…部長だぞ。」
時行がタオルを捲る。ぐっすり寝ている大原部長だ。時行はさっきとは違う汗を流して両津を見る。
「どどど…どうしましょう?」
「落ち着け。こういう時こそカツラの出番だ。」
両津は剃り落とした大原部長の髪の毛を集めて即興でカツラを作る。カツラに接着剤を着け大原部長の頭に引っ付ける。そこから大原部長の言う通りに少し切ってスッキリさせた。
「部長…終わりましたよ部長。」
「ん…もう終わったのか?」
両津が鏡を見せる。大原部長は出来に満足しているようだ。自分の髪を触ろうとする。それを両津が全力で止めた。
「部長!折角いい感じにセットしましたので触ってしまうと崩れてしまいます。」
「そうか。確かにスッキリとした感じがするな。」
「はい!時行にも手伝ってもらいましたので!」
「そうなのか。ありがとう、時行君!」
「は、はい!」
両津と時行はバレないか心配している。大原部長は満足して去って行った。2人は一息つく。
「どうするのですか両さん?」
「これがバレたらまずい。…逃げるぞ。」
散髪が終わった大原部長は機嫌がいいようだ。そこに中川と麗子が報告に来た。大原部長も仕事を済ませる。すると、麗子が大原部長の髪に気付いた。
「部長さん、髪切りました?」
「気付いたか!さっき両津と時行君に切ってもらったのだよ!いやぁ、軽い!まるで何も生えてないようだ!」
大原部長が話していると扉が開き署員が入ってきた。その風で一瞬、カツラが捲れた。それを見て目を丸くする中川と麗子。
「ん?どうした?」
「いえ!なんでもありません!」
「私達はこれで!」
「うむ!」
2人が急いで去って行く。大原部長は書類を持って署長室に向かう。外れかけたカツラがパタパタ靡く。それを見た署員達は笑いを堪えていた。大原部長は自分を見て笑いを堪える署員達が気になっている。すると、いつの間にか両津の散髪屋がなくなっていることに気付いた。
「両津の奴、今日はもう閉店か。」
大原部長はそのまま向かう。すると、今度は早矢と纏に会った。2人は捲れかけているカツラを見た。纏が笑いかける。しかし、早矢は冷静に対応していた。
「早矢君と纏君か。」
「部長さんはどちらへ?」
「わしは署長に書類を渡しにだ。」
「素敵な髪ですね。」
「ありがとう。」
纏は両手を抑えて笑わないように我慢する。2人が会話している間も少しの風でカツラがパタパタ靡いている。今にも外れそうだ。2人の会話が終わり大原部長が去って行く。姿が見えなくなると纏は笑い転げた。
「大丈夫ですか?」
「凄いな早矢。」
大原部長が署長室の前に着く。署長室の扉を開けて入った瞬間、カツラが取れて落ちた。大原部長が屯田署長に声をかける。屯田署長が振り向いた瞬間、スキンヘッドの大原部長が目に映り頬を膨らませて笑いを我慢した。
「お、大原君…頭、どうしたのかね?」
「両津と時行君に切ってもらったのですよ。」
「そ、そうかね。」
切るというより剃るになっている頭を見て笑いを堪える。大原部長が屯田署長に書類を渡した時、窓ガラスに映っている自分を見た。ツルッパゲだ。それを見た大原部長は驚く。急いで自分の頭を触る。髪の毛がない。
「こ、これは…」
「すまない大原君。つい…」
遂に我慢の限界にきた屯田署長が笑ってしまう。大原部長は全身から赤いオーラを放ち目も赤くなった。
後日
「両津と時行君はどこだぁ!あのバカ2人はどこ行ったぁ!」
「先ほど自分の髪を捧げると行って美容院に行きました!」
火車鬼のような戦車に乗り派出所を潰しながら現れた大原部長に中川は逃げながら答えた。