「運動会ですか…」
「そう!時行君は何に出る!?」
ある日、時行は亜矢から運動会のことを聞かされた。今、運動会が迫りどの競技に参加するか決めるクラス会が開かれている。初めての運動会に時行は悩んでいた。すると、騎馬戦が目に止まった。こな中では一番馴染み深い単語だ。
「私は騎馬戦にしましょうか。」
「凄いね!時行君は騎馬戦に出るの!」
亜矢がはしゃいでいる。雪長が前で黒板に名前を書く。ほとんど決まったが騎馬戦だけは時行以外いなかった。
「騎馬戦というのはどんなものでしょうか?」
「騎馬戦は3人が馬となり1人を支えます。その1人が自分のハチマキを守りながら相手のハチマキを奪う競技です。最終的に残った騎馬の数で勝敗が決まります。」
雪長が説明してくれた。なかなか騎馬戦が決まらない。時行は不思議に思っていた。そこに静が話しかけてきた。
「騎馬戦は毎年全学年全クラスから1騎ずつ出場するのですが上級生と戦うのがみんな怖いのです。」
「そうなんだ。」
時行は今まで大人と何度も命を懸けて戦ってきた。そのため年上との勝負には慣れていたが平和な時代の子供達にはそれが怖い。時行は改めて自分と他の子供達との違いを知る。
「そうですね。一度上級生を見てみませんか?」
「いいんじゃないか?」
「それならば丁度6年生にこれを渡さないといけないので行きましょう。」
雪長は担任に話を通して時行達と一緒に6年生の教室に行く。
「私達偶数組は赤組なので…ありましたね6年2組。」
時行達が向かっていると教室から栗色の長い髪をした少女が出てきた。優しそうな美少女だ。彼女はこちらに気付くとニコッと笑って近付いてきた。
「何かな?」
「私達、6年2組にこちらをお渡ししたいと思いまして。」
「そうなんだ!ありがとう!私、結城っていうの!よろしくね!」
結城は元気に自己紹介をしてくれた。時行達も軽く自己紹介する。結城は時行達を教室に案内した。そこにはメラメラと燃えドス黒いオーラを放ち顔が濃くなっている小学生達がいた。それを見た時行は目を丸くした。
「なんだお前!」
「わ、私達は2年2組です。」
「そうか!赤組か!同志だな!」
「あの…プリントを渡しに…」
「いいかお前ら!今年こそ!今年こそ白組の血で我らの旗を赤く染めるぞ!」
「「「おぉ!」」」
時行は震えている。後ろでは雪長達が圧に負け帰ろうたしていた。
「デジャヴ!」
「てか結城先輩の優しそうな顔はなんだったんすか?」
「殺るぞー!白組の臓物で“赤組優勝”とグランドに刻むぞー!」
「顔だけだったぁ!」
圧に負けた雪長がプリントを時行に渡す。
「すみません時行君。これを私の代わりに渡してください。」
「頼んだ時行!」
「無理無理無理無理無理!無理です!あんな殺気だった空間なんて行けません!」
雪長と弧太郎に押された時行が泣きながら抵抗する。
「さぁて…どうやって血に染めてやろうか…」
「俺は大玉転がしで轢き殺す!」
「僕は奴らの首で玉入れしてやる!」
「ほら!もはや殺しが宴会芸の感覚だよ!」
時行が全力で抵抗し雪長の後ろに隠れる。
「そういえば、赤組は5年連続で白組に負けてましたね。それが彼らのプライドを傷付けたのでしょう。」
「私は夢に出た白組の首に囲まれて裸踊りを実現するわ!」
「結城先輩なんか誇りというかもう只のヤバイ人だよ…」
結城にドン引きしてしまう時行達。そこに男子生徒がやって来た。
「お前ら、何やってる。」
「え、ええっとあなたは…」
「4組の二宮だ。…プリントか。少し貸せ。」
時行がプリントを二宮に渡す。二宮は教壇で叫んでいるクラス委員長の男子に声を掛けた。
「星名。」
「なんだ!?」
「これに必要事項を書け。」
「おう。」
カキカキカキカキ…
「ほらっ。」
「…良し。」
「いいか!容赦など不要!白組全員の死体で学校を飾るぞぉ!」
「委員長!」
「どうした吉井!」
「木刀持ってきていいですか!」
「持ってこい!騎馬戦で必要になる!」
荒れる6年2組。そんなの気にせず二宮がプリントを時行に渡した。
「俺の分も書いた。これで先生に提出出来る。」
(まともな人いたぁ〜!)
「二宮先輩、何故あんなことに…」
「星名は文武両道で人望もありリーダー気質なんだが今までの負け越しが変えてしまった。」
二宮が話してくれる。
1年の頃
「運動会楽しもう!」
2年の頃
「運動会楽しんで勝つぞー!」
3年の頃
「次こそ勝つぞー!」
4年の頃
「今年こそ絶対に勝つぞ!」
5年の頃
「去年は悔しかったけど今年はみんなで勝とう!」
今年
「殺るぞぉ!白組の首を獲るぞぉ!皆殺しだぁ!」
「…という感じだ。」
「5年と6年の間に何があった!?」
「変わりすぎだろ。」
星名達の豹変ぶりに時行達は驚愕する。
「いいか!特に白組のトップ、6年1組の高野信冬は俺が血祭りにあげる!」
「さすが委員長!」
「高野…」
高野信冬と聞いた時行は雪長を見た。雪長はスタスタと星名のところに歩く。
「今、なんと?」
「あぁ?」
時行は確信した。高野信冬は高野雪長の兄だ。その兄を殺す発言した星名が許せないのだろう。星名の前に立った雪長が教壇を叩いて叫んだ。
「あのバカ兄貴の頭蓋骨を割り彫刻刀で脳みそに直接バカと書くのは私の役目です!邪魔しないでいただこうか!」
「あれぇ!?なんか違った!」
「なんで君までそっちに!?」
雪長の豹変ぶりにずっこける時行達。星名も気に入ったのか雪長を交えて血腥いクラス会を続ける。
「いいか!1年は頭蓋骨をランタンにして教室に飾れ!2年は皮を剥がして理科室に吊り下げろ!3年は切り刻んでモモの餌にしてやれ!4年は粉々にして花壇の肥料にしろ!5年は分解して給食に出してやれ!6年は首を斬り落として校門に晒せ!」
「鎌倉にいた頃でもさすがにここまで野蛮なことなかったです。」
「どこでもこんな野蛮なことないよ!?」
時行の発言に渚がツッコむ。その日は星名達の説得など出来ないまま時行は超神田寿司に帰った。部屋に戻る途中で檸檬に会ったので相談してみた。
「檸檬さんは確か1年1組でしたね。」
「そうじゃ。時行とは敵同士になってしまうの。」
「そ、そうですか。」
「なんじゃ時行?もしや、わしと戦うのが嫌というわけではなかろうな?手を抜かれてはわしに失礼じゃぞ。」
「でも私は…檸檬さんの頭蓋骨でランタンを作りたくありません!」
「待ってほしいのじゃ。1から全て話してほしいのじゃ。」
時行は経緯を檸檬に話す。檸檬も引いていた。
「恐ろしいクラスもいたもんじゃな。」
「はい。今まで死にたがりを生きたがりに変えたことはありますが殺したがりを変えれたことがありませんので檸檬さんにどうすれば良いのか…」
「さすがのわしもそれは無理じゃぞ。」
「ですよね…」
その日は星名達のことが気になりよく眠れなかった。翌日、気になって星名のクラスに行ってみる。隣には渚もいる。そ~と扉を開ける。何故か体操服姿で刀や槍を手入れしている。
「「ただの戦国じゃん!」」
跪きながらツッコむ。2人に気付いた星名が話しかける。
「お前らか。何か用か?」
「あ、あの…もう少し穏便になんて…」
「無理だ。お前らには分からんだろうが信冬から受けた屈辱はこんなものでは済ませれん。」
(何があったんだろう?)
星名達の威圧に渚は圧倒されてしまう。それでも時行は怯まない。
「純粋に楽しむことは出来ないのですか?」
「もう楽しいなんて忘れたよ…。」
「ならば私があなた達に再び楽しいを与えましょう!」
時行が両手を広げて宣言する。
「ほう…面白い。ならば、この運動会、我らが負けたらどうなる?」
「私が責任を持って切腹します!」
「そこまでしなくていい!」
時行の負けられない運動会が始まる。