逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

73 / 229
翻堕羅親父襲来!

 ある日、両津と時行が派出所にいるとマリアがやって来た。手には招待状を持っている。マリアが両津に招待状を渡す。両津が招待状を見た瞬間、嫌な顔をした。

 

「どうしたのですか?」

「実は両様にお父様から招待状が届きまして。」

「お父様…どんな人ですか?」

 

 マリアの父親が気になった時行が両津に聞く。後ろでは中川と麗子が説明に困っているようで悩んでいた。

 

「•••変態だな。」

「もしかして…特殊ですか?」

「特殊じゃなあが変態だ。…いや、ある意味特殊か。」

 

 両津も説明に悩む。そこにオート三輪が派出所の前に現れた。時行はオート三輪を見る。両津達は窓を見る。

 

「私が来た!」

 

 突然休憩室から男が現れる。この男こそマリアの父親であり翻堕羅拳総帥の麻里晩である。麻里晩の登場に両津達がずっこける。

 

「てめえ!今度はそこか!」

「同じ手は使わない。それが私だ。」

「確かそこの窓は鍵がかかってましたよね?」

「昨日からスタンバってた。」

「無駄な労力使うな!」

 

 麻里晩が両津のところへと歩み寄る。

 

「岩鉄もどきめ。そろそろ麻里勘吉になる気はないか。」

「しつこいぞ!こんな招待状まで寄越しやがって!こんなのやるわけないだろ!」

「岩鉄もどき?」

「私の憧れの方の名前が岩鉄岩男様で両様とよく似てますわ。」

 

 マリアが時行に説明する。中川が両津の投げた招待状を拾い読んでみる。

 

「“翻堕羅拳武術大会”…ですか?」

「そうだ!我が翻堕羅拳の優秀な使い手達による武術大会だ。この大会で優勝すれば翻堕羅拳師範の座が手に入る。私の右腕になれるのだ。」

「興味無し。」

 

 両津は競馬を聞く。そこに麻里晩がチョップでイヤホンコードを切った。

 

「おい!何する!?」

「私の話を最後まで聞かんかぁ!」

「あれで終わりだろうが!」

 

 両津は麻里晩と取っ組み合いになる。そこに翻堕羅拳法の門下生達が来る。

 

「そうだ!そこまでわしを誘いたいなら時行に勝ってからにしろ!」

「何故私を!?」

 

 麻里晩が時行を見る。時行はギョッとして下がるも麻里晩は時行の顔をマジマジと見詰める。

 

「若い頃の愛に似ている。」

「そ、そうなのですか?」

「確かに言われてみれば。」

 

 麻里晩は考えている。すると、時行の両肩に手を置いた。

 

「お主、翻堕羅拳法を継がないか?」

「お断りします。」

「私と共に翻堕羅拳法を世界に知らしめようではないか!」

「私に拒否権をください!」

 

 時行が麻里晩から離れる。麻里晩は時行が気に入ったようで翻堕羅拳の構えをとる。

 

「岩鉄もどきのこともあるが私は君が気に入った!この翻堕羅拳法でお主を虜にしてやろう!」

 

 突然始まる時行対麻里晩。麻里晩はジャンプして時行に向かって唾を吐きかけた。

 

「行くぞ!翻堕羅拳奥義《唾の舞》!!」

「うわぁ!」

 

 時行は唾を全て避けて派出所の隅に逃げる。それに驚く麻里晩。

 

「まさか私の唾の舞を全て避けるとは…ますます我が翻堕羅拳に入れたくなった!」

「あれで入りたいと思いますか!?」

「「「それはご尤も。」」」

 

 時行の発言に両津達は頷く。それでも、麻里晩は諦めない。素早く時行に近付き下から蹴り上げる。

 

「《金ちゃん蹴り》!!」

 

 時行は蹴りを避け外に出ようとする。しかし、どこも門下生達が居て出れない。麻里晩は時行を追いかけ下品な技を炸裂させる。両津達は休憩室へと避難して2人のバトルを見守る。

 

「《砂かけばあさん》!」

「うわぁ!」

「《すかしっぺじいさん》!」

「臭い!」

「酷い対決だ。」

「時行君が可哀想。」

 

 翻堕羅拳法の数々の技を回避していく時行。しかし、端から見れば小学生を追い回す危ないおっさんだ。両津達もさすがに時行を助けようかと麻里晩のところに行く。

 

「おい…そこまでに…」

「黙れ岩鉄もどき!翻堕羅拳《耳ひっぱり》!」

「いてててて!」

「両様!」

 

 そこにマリアが飛び出し麻里晩と激突する。ロッカーが変形するほどのマリアの蹴りを避けると麻里晩は突きで攻撃する。マリアが避けるも壁に穴が空く。2人の激しいバトルの渦中にいる時行は2人の攻撃を避け続けている。

 

「助けてくださ〜い!」

「ああ言いながらも全部避けてますね。」

「やっぱり時行君は凄いわね。」

 

 時行は逃げているが両津は巻き込まれている。2人の蹴りを受けてボールみたいに跳ねている。とうとう両津が怒り出した。

 

「毎度毎度派出所を壊してんじゃねぇ!」

 

 両津が椅子を振り回す。麻里晩はジャンプして避けると自分の靴を脱いで両津の顔に足裏を当てた。強烈な臭いが両津を襲う。

 

「翻堕羅拳新奥義!《足臭親父蹴り》!」

「臭い〜!」

「両さん!」

「からの…《鼻ひっぱり回し》!」

 

 麻里晩は足の指で両津の鼻を摘むとそのまま派出所内を引き摺り回す。倒れ痙攣する両津。時行とマリアが両津に駆け寄る。麻里晩は靴を履いている。

 

「これがお前用に開発した新技だ。」

「ふざけた技のくせに強烈だ。」

 

 麻里晩の前に倒れる両津。その姿を見た時行がゆっくりと立ち上がり麻里晩を見た。

 

「確か、両さんは私と戦って勝ってからと言ってましたね。」

「ほう…やる気になったか。」

 

 麻里晩は待ってましたと翻堕羅拳の構えをする。時行は折れた箒の柄を手に持つ。時行の目は静かに麻里晩を捉える。麻里晩も時行を格下と思わずに警戒する。

       

 令和鬼ごっこ 翻堕羅拳鬼  《麻里 晩》

 

 先に動いたのは麻里晩だ。鋭い突きで時行を攻撃する。それを紙一重で避けた。そこに蹴りで追撃する。時行は屈んで避けると麻里晩の股下をくぐり抜け背中をとった。すかさず麻里晩は後ろに蹴る。時行は両津の机に上がり麻里晩の上をジャンプした。麻里晩は仰け反りながら時行を狙ってデカい唾を吐く。

 

「翻堕羅拳《唾の槍》!!」

 

 時行は身体を捻り避ける。麻里晩は靴を脱いだ。それを見た時行はあれが来ると警戒する。麻里晩は時行に蹴りを入れる。時行が避けると麻里晩は椅子を足で掴み振り回した。

 

「さすがに臭くても拳法家。強い!」

 

 両津はマリアと一緒に休憩室まで退避する。麻里晩が椅子を投げる。時行は椅子を避ける。椅子は窓ガラスを割って飛んでいく。麻里晩が回し蹴りする。時行は紙一重で避けるま足裏の臭いが目に染みる。

 

「こんな戦い初めてです。」    

「だろうな。」

 

 時行は鼻を摘みながら逃げる。狭い派出所の中を縦横無尽に駆け回りバトルする両者。そうしているうちに時行はだんだん興奮してきた。

 

「変な人ですけど…あなたとの鬼ごっこは楽しいです!」

「そうか!私も昔を思い出す!」

 

 麻里晩も笑っている。さらに攻撃が激しくなる。唾の量も増える。時行は麻里晩の猛攻を躱しながらチャンスを狙う。麻里晩がジャンプして蹴りをした。その時を待っていた時行は素早く近付きすれ違いざまに箒の柄で麻里晩の股間に一撃を入れた。

 

《金ちゃん打ち》

「ぬおぉっ!」

「あれは痛い…」

「時行君も容赦無いですね。」

「両様へあんな仕打ちをしたのですから当然ですわ。」

 

 決着した。股間を抑えて悶える麻里晩。門下生達が急いで駆け寄る。両津達は時行のところに行き褒めちぎる。

 

「よくやった時行!」

「凄いですわ!」

 

 褒められて照れる時行。麻里晩が起き上がる。

 

「見事だった。まさか、私の金ちゃん蹴りを応用した技を使うとは…」

「あなたは…その…変な人ですけど…学べるところはありましたので…」

「あれから学べるところなんてあったか?」

「さぁ?」

 

 両津に言われ中川は首を傾げる。

 

「そうだ!時行が勝ったからわしは出場しないでいいな!」

「仕方ない…1つ言い忘れたことがある。その招待状には書いてないが優勝すれば200万円が賞金としてもらえるぞ。」

「なにぃ!?」

 

 両津は愕然とする。時行が両津を慰めていると麻里晩が時行の肩に手をかけた。

 

「見事だった!あの身の熟し、すぐに翻堕羅拳を真似る技能!君には翻堕羅拳を継承する資格がある!」

「断らせていただ…」

「これからは麻里時行として私と共に行こうではないか!」

「嫌です!最後まで言わせてください!助けて両さん!」

「200万…師範にはなりたくないが200万…」

 

 200万と聞いて悩む両津に時行は連れ去られそうになりながら助けを求めていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。