「これが…たこ焼きですか。」
両津、中川、時行は大阪に来ていた。東京、埼玉、千葉、神奈川で窃盗を繰り返している窃盗団が大阪に出没したと連絡を受けて捜査会議に出向したことのある両津と中川が選ばれたのだ。そのついでにと時行も連れてくる。時行にとっては久しぶりの大阪だがもちろん全てが変わっている。
「昔も商人の街でしたけどここまで繁盛はしていませんでした。」
「お前の昔は昔過ぎる。」
「ジェネレーションギャップなんてレベルじゃありませんね。」
両津達は通天閣署という場所に来た。両津は乗り気じゃない。時行は両津の態度が気になり聞いてみるも聞こえていない。両津が通天閣署に入る。その後ろを時行と中川が入る。静かだ。誰も居ないのかと言いたくなるぐらい静かだ。
「おい。誰もいねぇじゃねぇか。」
「変ですねぇ。」
「お休みでしょうか?」
「警察に休みはない。」
両津達が誰か居ないか捜していると時行が騒がしくなっていると指差した。両津達がそこに行くと凄い騒いでいる人達がいた。みんな、縞模様のユニフォームを着てお祭り騒ぎだ。
「阪神タイガースセントラル・リーグ2位やぁ!」
「去年は優勝!今年は2位!来年優勝行けるで!」
「ようやったで!」
「せや!お前らは大阪の至宝や!」
テレビを見て叫んでいる。両津は嫌な顔をしていた。
「そういえば今年は阪神タイガースが活躍した年でしたね。」
「面倒な時に来てしまった。」
両津がテレビの上で大きな旗を振り回している小柄な婦警を見る。彼女はこの通天閣署の交通課御堂春である。春が両津を見つける。その瞬間、もの凄いスピードで駆け寄り怒号を浴びせた。
「こらトーキョーモン!何しに来た!」
「その前にうるさいから六甲おろしを止めろ!」
「アホか!今大事な時期やで!そんなん…」
春が両津の後ろにいる中川を見つける。すると、両津を投げ飛ばし中川に迫った。両目が♡になっている。中川は手を振って挨拶する。
「中川さ〜ん!来てくれはったんですか〜!言ってくれればいつでもお迎えに行きましたのに〜♡!」
「ひ、久しぶり。」
「凄い変わりようですね。」
春が時行を見つける。その途端、ガーンが見えるぐらいショックを受け膝を着いた。
「ま、まさか中川さんに子供が…」
「は、春ちゃん?」
「誰や!あの麗子さんか!?いや、この京都感溢れる佇まいは早矢さんや。絶対中川さんと早矢さんの子供やん…うちじゃ勝てへんやん…」
涙目になっている。時行はどう声をかけていいか分からない。時行を見て他の通天閣署員達も驚いている。中川が春に話す。
「彼は僕の子供ではありませんよ。」
「ほ、ほんま!?」
「はい。」
「良かった〜!…じゃあ誰の子供や?」
「わしの子供だ。」
起き上がった両津が言う。それを聞いた春が信じられない顔をした後に両津に詰め寄った。
「アホか!そんな嘘誰でも分かるわ!あんな上品な子とあんたが親子なわけないやろ!血が1滴も入ってへんやろ!」
「だからわしの養子だ!」
言い合う両者。中川が両津の言うことが本当だと話すとあっさり信じた。
「なんでしょうか?小町さん達と同じ感じがします。」
「あいつらより分かりやすいだろ。」
両津が時行に春の説明をする。要約すれば喧嘩っぱやくて図々しい関西女だ。春が両津の説明に文句を言っている。そんなこと気にせず両津は時行な自己紹介させる。
「初めまして。両津勘吉さんの元で厄介となりました。北条時行と申します。」
「あかん…完全に京都オーラが炸裂しとる。うちらじゃ勝てへんやん。」
「あ、あの…私は鎌倉の生まれでございます。」
「鎌倉?」
春が首を傾げる。後ろにいる署長達も首を傾げる。
「時行、こいつらは京都より東のことは全く分からんから鎌倉と言っても理解出来ん。」
「ええ…」
春が理解出来んようなので両津は時行の自己紹介を切り上げた。春は話を変え両津が来た理由を聞く。
「そんで?なんでトーキョーモンがここにおるん?」
「今日は広域窃盗団の捜査会議の日だろうが。」
「え?そうなん?」
春が署長に聞く。署長も把握してないのか他の署員達と一緒に日程を確かめる。
「…ほんまや。今日やで。」
「ほんなら始めるか。」
「やっぱりお前らは会議より野球か。」
両津は呆れている。そんな両津に時行が質問する。
「両さん。野球とは何ですか?」
その質問に春達が反応する。
「なんや!…野球知らんのかいな!?」
「はい。」
「嘘や!?野球知らん子供が日本にいるなんて信じられへん!」
春が時行に野球を説明する。ほとんど阪神タイガースの自慢話になっている。もちろん、時行は理解出来ない。
「あんたの周りにも野球しとるやつおるやろ!?」
「いえ。私の友達もみんな野球というものをしたことはありません。」
「あんた、江戸時代から来たん?」
((いえ、南北朝時代から来ました。))
両津と中川が心の中でハモる。その時、警報が鳴った。
「なんや!?」
「日本橋通りでバスジャック発生や!犯人は金属バットを持って立て籠もってるで!」
「この近くやん!行くで!」
事件が発生し両津達は急いで現場に向かう。現場に着くとバス内で酔っ払っているおじさんが金属バットを振り回しながら暴れていた。
「こっち来んなや!人質おるんやで!」
「かなり泥酔してるな。」
両津がすぐに捕まるだろと緊張感ゼロであくびをする。すると、強面の刑事がメガホンを持って前に出た。
「おい!お前の目的はなんや!?」
「もう一度セントラル・リーグとセ・パ交流戦をやり直して阪神タイガースを優勝させろ!」
犯人の要求に両津達がずっこける。興奮している犯人は後ろのガラスを金属バットで割って叫ぶ。
「なんだあのくだらない要求は?」
「そこまで野球って凄いものなのですか?」
「これはあいつがおかしいだけだ。」
「わいもそう思う!」
強面の刑事が賛同したのでまたずっこける。そこから犯人と刑事の阪神タイガース話が盛り上がる。その隙に乗客と運転手がバスから逃げた。
「せやろ!…あ!人質おらへん!」
「バカだろあいつ。」
機動隊がバスに突入しようとする。その時、犯人がビリケンを持ち出した。
「近付くなぁ!このビリケンはんがどうなってもええんかぁ!?」
「しまった!ビリケンはんが!」
「なんという卑劣!」
ビリケンを人質にした犯人を前に機動隊は下がる。理解出来ない時行は中川に聞く。
「あれは…神様みたいなものでしょうか?」
「そう考えていいと思う。」
「なんでバス内にビリケンがあるんだよ。」
ビリケンを人質にした犯人に手も足も出ない春達。両津はさっさと捕まえろと春に言う。
「アホか!ビリケンはんに傷1つ着けてみぃ!どう責任取んねん!」
「あんな物のために要求飲むつもりか?」
「当たり前や!うちらも阪神タイガースに優勝してほしいに決まっとるとやないか!」
「ダメだ。こいつらもあのバカと同じだ。」
両津がさっさと捕まえようと前に出る。しかし、ビリケンを人質にした犯人が激昂すると春達が止めた。
「アホか!さっき何聞いとったん!?」
「お前らがバカってことだけ聞いた。」
「とにかく!近付くな!」
「な、近付かずに突入すればいいんだな?」
「は?そんなこと出来るんかいな?」
春が聞くと両津は時行を持ち上げて投球フォームをとった。時行は汗を掻きながら両津に聞く。
「あの両さん…これは?」
「野球だ。」
「さすがの私でもこれは違うと思いますよ。」
「ピッチャー両津!ストレート投げました!」
「両さ〜ん!?」
両津が剛速球で時行を投げる。時行が叫びながらもバスの中に入る。犯人はビビって金属バットを向ける。
「時行!とにかくそいつからビリケン奪え!」
「やっぱり無茶苦茶ですね。分かりました!」
時行が前に出る。犯人が金属バットを振り回すも時行は華麗に避ける。そこに両津がジャンプしてバスに突入した。バスの中で両津と犯人が暴れている。その隙に時行がビリケンを犯人から奪い返した。
「マジや…マジでやりおったで。」
春がビリケンを取り返した時行に驚く。それを好機と拳銃を取り出して撃ちまくり始めた。それに驚いた両津達は屈みながら前に移動する。
「行くで!」
「行くな!」
「あの人も爆竜さんと同じなんですか?」
「どっちもどっちだな。」
両津達は運転席のところまで避難する。そこに機動隊がやってくる。犯人は金属バットを振り回して抵抗する。それを避けようと両津が下がった瞬間、バスが動き始めた。
「あっ。」
急に動いたバスを止めようと両津が運転席に座るも犯人が金属バットで運転席を滅茶苦茶にしてしまった。ブレーキが効かずスピードを上げて走り出した。
「バカヤロー!」
「バカヤロー言うな!」
「これ、どうするのですか!?」
「はよ止めんかいトーキョーモン!」
そこにワイヤーでバスに掴まり追いかける春が叫んだ。しかし、何をしてもバスは止まらない。どんどんスピードを上げていく。両津はなんとかハンドルを回してぶつからないようにするもそのハンドルも外れてしまった。
「やべぇ!」
「何やっとんねんドアホ!」
「元々はお前がバスジャックなんてするからだろうが!」
「今は止めることに集中しましょう!」
両津が犯人をボコボコにする。その間もバスは暴走している。時行が両津に変わって運転席に座るも全然分からない。時行は勘で下にあるものを踏むがそれはアクセルだった。さらにスピードが上がる。そのまま通天閣署に突っ込んでしまう。そのままバスが爆発し煙が上がる。
「アホ!何通天閣署滅茶苦茶にしてんねん!」
「文句はこいつに言え!」
「これ、どうすればいいのでしょうか?」
「ここに来る度に大変なことになってしまいますね。」
時行と中川が通天閣署を見て唖然たしている。入口の上にあった蟹が落ち瓦礫が散乱しボロボロになった通天閣署の前で言い争う両津と春であった。
派出所
「大阪大変なことになってるわよ。」
「おかげで東京は平和だ。」
そこには新聞を読んでいる麗子と空を見上げながらお茶を飲む大原部長がいた。