「おぉ〜!」
時行は目の前に広がる田んぼを見て興奮していた。今日は両津と一緒に超神田寿司に使うシャリのための米を仕入れるために新潟県に来ていた。
「凄い…広い…」
「さすがの時行もここまで広い田んぼは初めてか。ここは日本一米を作っている県だ。」
南北朝時代にいた頃でもここまで広い田んぼを見たことなかった時行は車から身を乗り出して見ていた。車が目的地に到着する。両津が降りると若い男性が出迎えてくれた。
「あれ?源さんは?」
「親父ならぎっくり腰で入院中。しばらくしたらまたここに戻るって。それまで俺がここを見ている。」
「そうか。早く治るといいな!」
両津は早速農家の男性の案内で蔵に行き収穫した米の鑑定を始める。いつもと違う両津に時行は興味津々だ。両津は米と睨み合うこと数分、ため息をして米を戻した。
「ダメだな。温暖化の影響をもろに受けてる。熱中症になってるぞ。」
「やっぱりか。最近、あまり雨も降らないからな。生育が悪い。」
「1合貰うぞ。」
「ああ、どうぞ。」
両津はもらった米を炊くと時行に試食させた。
「どうだ時行?」
「…少し固い気がします。超神田寿司のシャリに合わせるならいつもより2割ほど水の量を増やした方がいいでしょう。」
「なるほど。」
「その場合吸収率も高くなるので酢の量を1割ほど減らして…」
「なるほどなるほど…」
「凄い、あの両さんが従ってる。」
「超神田寿司には神の舌を持つ子供がいると聞いたが思っていたより若いな。」
農家達は時行のアドバイスをメモしている両津に驚いていた。
後日
「本当に時行は凄いぞ。」
派出所で両津が中川達に時行のことを自慢していた。
「時行君は本来南北朝時代の食事をしていましたからね。100%無農薬の物を食べていますから味覚が僕達よりも発達しているんですよ。」
「わしが農薬のことを教えたらすぐ無農薬かどうかを当てれるようになった。機械よりも正確だぞ。」
時行の新たな特技に中川と麗子が驚く。中川もヨーロッパでは一流レストランで味の鑑定をするほど味覚が優れている。その中川が驚くレベルだ。
「今じゃ料理の檸檬、素材の時行と言われてるレベルだ。」
「正に神の舌ですね。」
「まぁな。だが、時行には檸檬や中川にない特徴がある。ゲテモノもイケることだ。」
両津の発言に中川が頬をピクピク引き攣らせる。
「あいつ、意外となんでもイケるぞ。バッタやセミもイケるし蛇も躊躇なく食べたことがある。」
「それ、両ちゃんのせいじゃない?」
「…」
「先輩、何か喋りましょう。」
黙る両津に中川と麗子が時行を心配する。そこに時行が来た。手には超神田寿司で作った寿司がある。
「皆さんにお裾分けです!」
「おお!サンキュー!」
両津達が寿司をいただく。
「美味しいですね!」
「時行の言った通りに炊いたら凄く美味い。さすがは時行。」
両津が寿司を食べ終える。
「最近、無農薬使ってますと言って実際は使ってるところが多いが時行がいたらそんな偽装すぐバレるな。」
「本当に凄いな。」
「檸檬は料理に使った材料や細かい調理法が分かり時行は材料そのものの質が分かる。これで超神田寿司は無敵だぞ。」
時行の特技に大原部長達も唸っていた。その夜、両津は超神田寿司で時行と一緒に創作寿司に挑んでいた。そこに檸檬が来る。
「何をしておるのじゃ?」
「檸檬か。時行と創作寿司を思案中だ。」
「ほう…どれどれ…」
檸檬が覗く。そこにはシャリにイナゴが乗っていた。檸檬はびっくりして飛び退く。時行は躊躇なくイナゴ寿司をモリモリ食べている。
「と、時行よ。そんなもの食べて大丈夫なのか?」
「はい。昔から食べていますので大丈夫です。」
「そ、そうなのか…」
檸檬が時行の意外な一面を見て慄く。両津はそこからもタガメ寿司、カブトムシの幼虫寿司、蒲焼き風蛇寿司などゲテモノ寿司を時行に食べさせる。
「どうだ時行?」
「う〜ん…イナゴはもう少し甘く煮て蛇は醤油を足せば合うと思いますが他はシャリに合いませんね。」
「時行よ。合う合わない以前の問題があるのじゃ。」
結局、檸檬がゲテモノ創作寿司に反対したため中断した。
翌日、両津と時行が作った創作寿司を派出所のみんなに食べてもらう。
「先輩、これはなんですか?」
「ウツボだ。」
両津の発言に麗子が驚く。
「何ビビってる。高知じゃ普通に食べてるぞ。」
「た、確かに弾力が合って美味しいですね。」
「他にも鯨とかシイラとか猪とかもある。全部時行のお墨付きだ。」
普段は食べない素材を使った寿司に中川も麗子も戸惑う。
「お前達はフレンチとかで舌が肥えているだろうが時行は和食で生きてきたからどうすればシャリに合うかの調理が上手い。お前達は将来食べる物がなくなっても贅沢言って死んでいくタイプだ。」
「そこまで言わなくても。」
「時行ならこういうのもイケる。」
両津は中川に軍艦寿司を出した。中川はおそるおそる食べてみる。
「こ、これは?」
「イナゴだ。」
中川が吹き麗子はビビる。
「美味いだろ。時行の味付けでやってみた。」
「さ、さすがに僕はイナゴは…」
無理と言おうとするも時行がこちらを見ている。その期待している目に抗えなかった。
「お、美味しいですよ…」
「良かったです!」
「今でもイナゴの佃煮だってあるんだからイナゴ寿司が合ってもいいだろ。シャリはどんな物にでも合う。創作の意欲が湧いてくるのも魅力の1つだ。」
「それがこれですか?」
中川と麗子がイナゴ軍艦を見て頬を引き攣らせる。両津は美味しそうにイナゴ軍艦を食べる。
「これからはゲテモノ系創作寿司の時代が来る。」
「来てほしくないですね。」
「とりあえず秋刀魚の目玉軍艦と鶏冠軍艦がある。」
「なんでそんなのがあるんですか?」
「やっぱりお米は何にでも合いますね。」
中川が引いているが時行は美味しそうにゲテモノ寿司を食べている。中川は時行の舌を心配していた。両津は中川と麗子に様々なゲテモノ寿司を試食させる。
「本当はこれを超神田寿司に出すつもりだったが檸檬に止められた。」
「檸檬ちゃんの叡断に感謝するわ。」
ゲテモノ寿司を食べ過ぎて気分が悪くなる中川と麗子。それに対して時行は全く変わっていない。両津と一緒にゲテモノ寿司をモリモリ食べている。
「時行君も先輩と同じ悪食ですよね?」
「ん〜。私が鎌倉にいた頃はなかなかまともに食べれる機会が少なかったのでいろんな人から貰い受けたものを食べていた結果でしょうか?」
「逞しいわね。」
両津は時行からいろんなアドバイスを聞く。それを元にゲテモノ寿司を発売した。意外と物好きが多く売れていく。それに加えて時行のお墨付きと出すとさらに増えた。
「なぁ…時行、マジでこれ美味いのか?」
「はい!美味しいですよ!」
「たまに時行君が分からなくなる時があるんだけど。」
「確かに時行君の舌は凄いですけど特殊すぎます。」
「時行が心配になってくるのじゃ。」
両津がゲテモノ寿司を売っているところに時行が弧太郎達を呼ぶ。時行に呼ばれて来た弧太郎達がゲテモノ創作寿司に慄いている。それを見た中川や檸檬が時行を心配していた。