逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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深海観光へようこそ!

「ふ〜ん…深海観光ねぇ…」

 

 ある日、派出所で両津は中川から依頼されていた。どうやら、本来やる予定だった添乗員が怪我で行けなくなったので両津に代わりを務めてほしいという。

 

「先輩なら詳しいですし体力もありますから4泊5日で深度500mなら大丈夫と思いまして。」

「相手は誰だ?」

「運良く抽選に当たった老人達50人としか。うちは場所や船の提供で観光自体は別の会社なんです。」

「なんか嫌な予感が…」

「ちなみに、バイト料は500万円です。」

「乗った!中川君、わしに任せなさい!」

 

 それから数日後、両津は時行を連れて港にやってきた。そこから船に乗り太平洋を渡ると海の上に大きな施設があった。そこに上がると時行は感動していた。

 

「なんですかこれは!?」

「本来は石油や海底調査のための施設だ。今回は深海旅行のための施設だな。」

 

 両津が時行を案内していると観光会社の人が慌ててやってきた。両津が何があったのか聞くと深海観光に使う潜水艦に異常が見られ観光を中止したいと言い始めた。

 

「なんで添乗員も潜水艦も問題だらけなんだよ!?」

「すみません!こちらも初めての試みでして…」

「まずいぞ。折角の500万がパァだ。…確か年寄り達だったな。」

 

 両津はニヤリと笑う。

 

「やるぞ!他の潜水艦は!?」

「い、一応ありますがあれは深海までは行けませんよ。」

「見せろ!」

 

 観光会社の人が連れて行く。確かにパンフレットに乗っている潜水艦は500mだがこの潜水艦は100mしか行けないようだ。それに加えてパンフレットの潜水艦と見た目が違う。それでも両津は笑っている。

 

「これなら騙し通せるぞ。相手は深海なんて知らん年寄り達だ。暗い海を見せてそれっぽい魚を出せば簡単に騙せる。」

「両さん、騙すのはまずいのでは?」

「問題ない。実際に自分の目で深海を見た奴などほとんどいない。知識なんてテレビぐらいだ。これなら騙せる。こういうのはわしの十八番だ。」

「ダメな気がします。」

 

 両津はすぐに施設の人に頼んで何か作業をさせていた。両津は粗方作業を済ませると老人達を待っていた。船が近付く。施設に上がった老人達を見て両津は驚いた。

 

「まさか、深海旅行なんて当たるとは。」

「宇宙の次は深海か!それもいいな!」

「勘兵衛じゃねぇか!」

「誰ですか?」

「わしのじいさんだ!」

「ええ!?」

 

 両津は急いで変装する。

 

「嫌な予感が的中した!なんでこう毎回こんなところで会うんだ!?」

「凄い人達なのですか?」

「最新ハイテクプロ集団だ!簡単には騙せんぞ!」

 

 変装している両津が時行を見る。時行はビクッとして下がる。両津は時行の両肩に手を置く。

 

「時行、わしの代わりに添乗員やれ。」

「無理ですよ!私は深海なんて全く知りません!」

「安心しろ。わしも潜水艦に乗り込む。インカムを通してお前に指示するからその通りにすればいい。」

「無茶苦茶な…」

 

 時行は心配してあるが両津が無理矢理進める。勘兵衛達が上がってきた。そこには観光会社な人と時行が緊張しながら待っていた。サングラスに黒いスーツにネクタイで変装する。

 

「ん?君は?」

「わ、私は!今回の深海観光の添乗員を務めさせていただく…ほ、北条時行と申します!よろしくお願いします!」

「添乗員?随分と若いな。」

「え、え〜と…潜水艦の中は狭いのでなるべく小柄な私が担当することになったのです!」

「ふ〜ん。まぁ、いいか。孫みたいで可愛いし。」

(よし!騙せた!)

 

 先に潜水艦に乗っていた両津がガッツポーズする。予め潜水艦の操縦方法を教えてもらっていた。時行は勘兵衛達を潜水艦に案内する。

 

「ん?パンフレットの潜水艦と違わないか?」

「きゅ、急に変更となりました!安心してください!日本の最先端技術にアメリカのクルーが操縦します!」

「まぁ、いいか。」

 

 時行はホッとする。両津もなんとか誤魔化せたと汗を拭う。そのまま勘兵衛達を潜水艦に乗せる。

 

「ほう、思ってたより狭いな。」

「見た目によらず中はキツキツだね。」

「潜水艦は深海の水圧に耐えるため外壁は硬く厚くなっているのです。その他にも減圧症を防ぐためや酸素確保のための装置が至るところにあります。」

「そりゃあそうか!」

(いいぞ!時行!そのまま騙し通せ!)

(両さん。良心に押し潰されそうです。)

 

 潜水艦が潜り始めた。勘兵衛達はだんだん沈んで行く潜水艦の窓から海中を眺め興奮している。老人の1人が時行に聞く。

 

「そういえば、本当にこれで深海まで行けるのか?」

「この潜水艦、調べてみたら100までしか潜行出来ないと載ってるぞ。」

「そ、それは!…見た目は似ていますが性能は段違いです!こちらは深度500mまでの潜行が可能となっております!」

「ホームページにはそんな潜水艦ないぞ。」

「まだ未発表の潜水艦ですので!皆様大変お幸せでございます!」

(やっぱり嫌な年寄り共だ。)

 

 時行が必死に誤魔化す。

 

「この辺りの深海じゃ何が見れるんだ?」

「え、えっと…シーラカンスです。」

「ジョーク上手いね坊や!シーラカンスはアフリカ大陸の東とインドネシア近海だよ!」

(めんどくさいなぁ。)

 

 両津がイライラしている。潜水艦が100mに到達した。そこでは両津が急いで壁を設置させて暗闇を作っていた。突然暗くなる景色に勘兵衛達は驚く。

 

「急に暗くなったぞ!」

「ここからが太陽の届かない深海か。」

「ロマンだねぇ!」

(ロマンの欠片もねぇだろお前ら!)

 

 両津が時行にこれ以上面倒な事にならないようにさっさと進めさせた。真っ暗で何も見えない。

 

「本当に見えないな。」

「添乗員君、深海魚どころか生き物1匹見当たらないけど。」

「え、え〜と…この辺りの海域は深海魚の生息数が少ないためなかなか見ることが出来ないのです!」

「それはおかしくないか?」

「そうだなぁ。調べてみたけどこの辺りにも結構いるはずだぞ。」

 

 時行はどうしたらいいのか分からない。そこに両津がアドバイスした。時行はアドバイス通りに実行する。

 

「【やかましい】でございます。【黙れ】でございます。いいでしょうか?」

 

 勘兵衛達がはぁいと返事する。

 

「時行、めんどくさくなったこれ使え。」

「わ、分かりました。」

「そうだ!添乗員君、深海遊泳は出来ないのか?」

「そ、そうでした!今から潜水服を用意しますので少々お待ちください!」

 

 時行は急いで操縦室に向かう。

 

「両さん!」

「安心しろ。潜水服はちゃんとある。まぁ、こいつは深海の圧に耐えれるやつじゃないがな。」

 

 時行は両津から潜水服を受け取り勘兵衛達に渡す。そこで気付く。時行用の潜水服がない。添乗員が一緒じゃないと海に出れない。それに両津も気付く。両津は自動運転に切り替え潜水服を着て勘兵衛達の前に出た。勘兵衛が両津を見る。付け髭などで変装している。

 

「あんたは?」

「あ、りょ…」

「初めまして!私が潜水艦操縦士のリョージ•マックスと言います!」

 

 両津は勘兵衛にバレないように時行が言い切る前に偽名を名乗った。リョーシじゃなくてリョージですと付け加えて勘兵衛達を案内する。

 

「え〜…本来深海へは訓練された者しか行くことが出来ません。なので、私の指示に従い決して離れないようにしてください。」

 

 勘兵衛達がは〜いと返事する。部屋に水が溜まり始める。部屋が完全に水で満たされると両津を先頭に勘兵衛達が潜水艦から出た。

 

『ほう。ここが深海か。』

『全く見えん。』

(よし。このまま騙せる。)

 

 両津がニヤリと笑う。すると、じいさんの1人が海中を泳ぐ鰯の群れを見つけた。深海じゃないから鰯がいてもおかしくはないが深海に居ると思っているじいさんは不思議に思っていた。

 

「なぁ、さっき鰯がいたぞ。」

「気の所為でしょう。似た深海魚を間違えたのですよ。」

 

 ギクッとした両津は慌てて誤魔化す。時行は潜水艦の中から両津達を眺めていた。初めて見る海中に時行はうっとりしている。

 

「私が生きていた時から…いえ、私が生まれる前よりもずっと昔からこんな世界が広がっていたのですね。」

 

 時行は海の神秘に惹かれ感動している。しかし、両津はそれどころではない。必死に勘兵衛達を誤魔化している。なんとか誤魔化しきり潜水艦へと戻る。

 

「水圧をほとんど感じなかったな!」

「最近の潜水服は凄い進化してるぞ!」

「戻って来ました!」

 

 時行は慌ててサングラスをかけて勘兵衛達の前に出る。

 

「い、いかがでしたか!?」

「良かったよ!深海魚が全く見れなかったけどな!」

「そ、そうでしたか…」

 

 両津が急いで操縦室に戻る。そこからも両津と時行はあの手この手で勘兵衛達を騙しながら深海旅行を続けなんとか最終日を迎えた。

 中川と観光会社の人が施設に着く。そこでは深海調査のための探査艇を下ろす作業をしていた。しかし、間違えて両津達を乗せた潜水艦を沈めてしまう。まだ、それに気付いている者はいない。

 

「ん〜…変な音がします。」

 

 時行が起きる。なんだろうと思いながら音がする方向に行くと壁がメキメキいいながら潰れていた。さらに、海水が噴き出す。この潜水艦は深海の圧力に耐えきれず徐々に潰れていった。

 

「大変です!」

「なんだ!?」

 

 勘兵衛達が起きて周りを見る。すると、あらゆる方向からメキメキ鳴り海水が噴き出してきた。時行は慌てて両津のところに行く。

 

「両さん!」

「くそ!沈められてるぞ!」

「両さんって…お前勘吉じゃねぇか!」

 

 両津が慌てて施設に連絡を取る。しかし、通信設備が壊れてしまう。施設にいた中川は観光会社の人に連れられ潜水艦のところへ向かう。

 

「あれ?もうそろそろ浮上する時間なんですが…」

「もしかして…」

 

 中川が指を差す。観光会社の人も見ると潜水艦がだんだん沈められていた。慌てて操作している人に声をかける。

 

「すみません!こちらは違います!」

「え?」

「おい!探査艇からまだかと連絡がきたぞ!」

「ええ!?」

 

 操作している人が慌て潜水艦を引き上げる。その間も水圧による破壊は続いている。

 

「どうするんだ!?」

「わしがしるか!」

「両さ〜ん!」

「それでこいつはなんなんだ!?」

「わしが育ててる子だ!」

「なんだと!?」

 

 勘兵衛が驚き手を止める。そこに海水が溢れ出し流される。

 

「助けて〜!」

 

 それからなんとか引き上げられた。潰れかけた潜水艦から両津の時行がクタクタで出てくる。その後ろから勘兵衛達が笑いながら出てきた。

 

「いろいろあったけど楽しかったからいいか!」

「また深海に行きたい!」

「なんですかこの人達。強すぎます…」

「タフさだけが取り柄のジジイ達だからな…」

 

 死にかけたはずなのに笑っていれ勘兵衛達を見て末恐ろしく思う時行であった。

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