逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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時行君のはじめてのおつかい

 両津の部屋。そこに両津と時行の他に2人の男がいた。逆三角形の筋骨隆々の凄まじいマッチョな体格をしているのが左近寺竜之介。新葛飾署の警察官で柔道が得意な両津の悪友の1人。そして、もう1人の左近寺ほどではないが筋骨隆々なのがボルボ西郷。彼も新葛飾署の警察官で元傭兵で銃器使いのエキスパートであり両津の悪友でもある。 

 2人は筋トレしながらゴミの分別している時行を見る。2人とも信じられない顔をしている。

 

「まさか両津が養子なんてとるとはな。」

「考えたことなかったな。」

「しかも、ドキメモに出てもおかしくないレベルの美少女だぞ。」

「あれで男か。」

 

 2人は綺麗になった部屋を見回す。

 

「前より綺麗になってるよな。」

「時行がこまめに掃除してくれるからな。」

「…両津、お前より時行の方が生活力あるだろ。」

「もう養われる立場になってないか?」

「うるさい!」

 

 両津が叫ぶ。両津は戦車のプラモデルを作っている。

 

「これが終わったらティーガーIIのプラモを買ってT-34と二次大戦再現するぞ。」

 

 両津がニコニコで作っていると電話が鳴った。両津が出るといきなり立ち上がった。

 

「ぶ、部長!…は、はい!…はい!……分かりました!」

「どうした両津?」

「部長に呼ばれた。今から派出所に行ってくる。くそっ!もう少しだったのに…」

 

 両津は制服を着ながら時行を見る。すると、ニヤリと笑った。両津はすぐに近くにあった紙にメモすると時行に渡した。

 

「時行、商店街に行ってこれらを買ってきてくれ!お金はこの中に入っている!頼んだぞ!」

「は、はい!」

 

 そう言って両津は部屋を出て行ってしまった。時行は両津から預かったバッグと財布を持って買い物に行く。それを見た左近寺とボルボは互いに顔を見合わせる。

 

「おい。」

「分かってる。追うぞ。」

「おう!」

 

 時行が気になった2人は時行の後を追った。時行は商店街の前に着くと改めてメモ用紙を見た。

 

尾崎模型店 ティーガーII

山田電気店 単三乾電池8本入

スーパーカメアリ 2リットルコーラ

         ポテトチップスかるび味

         ジャンプ5月号

         カップ麺日清醤油味 4つ

佐藤青果店 林檎 2つ

金が足りない時はツケといてと言ってくれ 両津

 

「ん〜…ま、まずは尾崎模型店ってところに行ってみよう。」

 

 時行は商店街に入ると尾崎模型店を探した。その後ろでは左近寺とボルボが時行を見守っている。看板を見ながら歩いていると尾崎模型店を見つけた。恐る恐る入ってみる。

 

「いらっしゃい!」

 

 尾崎模型店の店長尾崎が元気良く挨拶する。時行はティーガーIIを探すもそもそもプラモデル自体分からないため何がティーガーIIか分からない。時行は尾崎のところに行く。

 

「あ、あの…てぃーがー…」

 

 IIが読めない。時行がティーガーIIとにらめっこしていると尾崎が覗いてきた。下に両津と書かれているのを見て渋る。

 

「君、両さんに頼まれたのかい?」

「は、はい!それで、これ…」

「ティーガーIIね。待っていてくれ。」

 

 尾崎は棚の方に行きティーガーIIのプラモデルを持ってきた。

 

「これだな。8500円だ。」

 

 時行は財布を尾崎に出す。尾崎は受け取り財布から8500円を受け取る。

 

「そうだ。両さんに言っといてくれ。先月のツケ12万きっちり払ってくれってな。」

「わ、分かりました!」

 

 時行はお礼を言ってペコッとお辞儀する。尾崎は手を振り出て行くのを見届ける。その近くで左近寺とボルボが棚の陰から時行を見ていた。尾崎は怪しい奴を見る目で2人を見ていた。

 次に時行は佐藤青果店を見つける。店長にメモ用紙を見せて林檎を買う。ここの店長からも両津にツケを払ってくれと言われた。

 

「大丈夫みたいだな。」

「東京に来るのは初めてって両津が言ってたから心配してたが取り越し苦労か。」

 

 2人は時行を見てホッとする。そこで気付く。周りが2人を怪しい奴を見る目をしていることに。端から見れば幼い子供をストーカーする男性2人だ。凄い怪しい。そこに警官が来る。

 

「君達…あれ?左近寺さんと西郷さん?」

「「人違いです!」」

「えぇ!?」

 

 2人は急いで警官から逃走した。一方の時行は山田電気店に到着し店長にメモ用紙を見せた。店長ははいはい言って目当ての乾電池を持ってきてくれた。

 

「ありがとうね。あ、それと、両さんに言ってくれ。ちゃんとツケを払えって。」

「は、はい…」

(両さん、どれだけツケって言われてるのかな?)

 

 時行は最後の目的地スーパーカメアリを目指す。…のだが後ろを気にしていた。さっきから怪しい人がいる。チラッと後ろを見る。サングラスで変装(?)した左近寺とボルボがいた。さっきよりも怪しい。時行はあまりの怪しさに警戒する。そして、走り出した。

 

「気付かれた!」

「このままだと変態と思われる!追って経緯を話すぞ!」

 

 2人はサングラスを取って時行を追った。

 

 令和鬼ごっこ 筋肉鬼《左近寺竜之介》

        傭兵鬼《ボルボ西郷》

 

 2人は時行を追う。時行は人混みの中をスラスラと抜けて行く。

 

「両津が言っていた通りすばしっこいな。」

「これぐらい。」

 

 左近寺は人混みに苦戦するがボルボは人混みの中を縫うように走り時行を追いかける。

 

(凄い…私に追いついてきてる。…楽しい!)

 

 時行は目をキラキラさせている。もっとスピードをあげて走る。ボルボも時行を見逃さないように追う。時行は逃げている途中、最後の目的地スーパーカメアリを見つけた。そのままスーパーに入る。ボルボも後を追って入る。遅れて左近寺も来た。

 

「左近寺はここで待機。俺が時行を捜す。」

「分かった。」

 

 ボルボが店内を歩いて捜す。その後ろの棚から時行が覗いていた。

 

(あの人確か両さんの友達のボルボさん。両さんの話では軍人という武士みたいな感じで戦闘の達人だと…これは隠れ鬼!あの人から隠れながら買い物!楽しいかも!)

 

 時行は目を輝かせて隠れる。ボルボは両津が買い物を頼みそうなお菓子コーナーを見回りしている。時行はお菓子コーナーから離れカップ麺を買う。しばらくしてボルボが居なくなったのを確認してお菓子コーナーに向かった。ポテトチップスを見つけたと手を伸ばす。その時、ボルボがお菓子コーナーに来た。時行は慌てて隠れる。

 

(両津のことだ。ポテトチップスを買わせると踏んでいたがコーラの方か?)

 

 何度もお菓子コーナーを旋回して捜してくるボルボに時行はドキドキが止まらない。楽しそうに笑いながら逃げる。ポテトチップスは後だ。次はジャンプを買おうと置いてある場所を探す。そこを見つけたが左近寺の視界に入っていた。このままだと左近寺に見つかる。そのはずだが時行はワクワクしていた。この緊張感がたまらない。そう思っている。

 

「両津の奴、時行に初めての買い物で買わせすぎだろ。俺達にも頼めって。」

 

 左近寺が欠伸する。その一瞬を狙って時行はジャンプを取った。そのまま隠れる。左近寺は周りを見渡すが時行は見つからない。

 

「両津のことだからジャンプを頼んだと思ってたが…あれ?ジャンプが減ってる。」

 

 ジャンプが無いことに気付いた左近寺が本棚の周りを捜す。しかし、もう時行はそこにはおらず見つからなかった。時行は再びお菓子コーナーに向かう。ボルボは居ない。

 

(よし…このまま…)

「やっぱり両津の奴、ポテチを買わせたか。」

 

 時行が振り返る。そこにはボルボがいた。ボルボが話しかける前に時行は凄いスピードで逃げる。ボルボも慌てて追いかける。時行はコーラをカゴに入れると人混みを利用して隠れた。

 

「居ない!?」

(忍者か!)

 

 ボルボが人混みの中を捜す。その間に時行はレジへ向かい会計を済ませた。商品をバッグに入れて出口に向かう。しかし、そこにはまだ左近寺がいる。このままだと見つかって捕まる。そう考えた時行はもう1つの出口、裏口へと向かう。裏口には誰も居ない。時行はホッとして裏口から出た瞬間、ボルボと目があった。待伏せされていたのだ。

 

「やっぱりここに来たか。聞いてくれ時行。俺達は…」

「鬼ごっこしましょう!」

(あれぇ〜!?)

 

 時行の突然の提案に戸惑う。時行がキラキラした瞳で自分を見ている。その輝きに断れることが出来ない。

 

「お、おう…」

「では行きます!お〜にさ〜ん、こ〜ち〜ら〜!手〜の鳴〜るほ〜うへ〜!」

 

 時行が楽しそうに逃げて行く。ボルボは左近寺に連絡しながら追いかける。大通りで左近寺と合流し時行を追う。人混みの中に入る。ボルボは人の動きを観察し時行が通った後を見つけた。その通りに走る。

 

(見つけた!)

 

 ボルボが時行を視認する。時行もボルボに気付くと裏路地に入った。ボルボも追って入ると時行が店と店の間をパルクールのように登っていた。

 

「本当に忍者かよ。俺がガキの頃でもあんなにできんぞ。」

 

 ボルボは驚く。後から来た左近寺に時行が行った方向を教え壁を登った。登りきると既に屋根伝いに時行が逃げていた。ボルボも屋根伝いに走り追いかける。

 時間が過ぎていき夕方になる。用事を済ませた両津が寮に戻ると丁度時行が帰ってきた。その後ろではぜぇぜぇ言っている左近寺とボルボがいる。

 

「どうしたお前ら?」

「鬼ごっこしてました!」

「あぁ。」

 

 両津は納得する。2人のところに歩み寄り感想を聞く。

 

「どうだった?」

「す、すばしっこい…」

「あれはもう忍者とかのレベルを超えているぞ。傭兵の俺でも捕まえれない。」

(さすが戦国時代を生き抜いた男。)

 

 両津は改めて時行の凄さを知る。部屋に入り時行が買ってきた物を確認する。バッグを開けて取り出した瞬間、全員が黙った。時行が走りまくった結果、プラモデルの箱はへこみ林檎は割れコーラは今にも弾けそうだった。あれだけ走ったのだから当然である。

 

「お前ら…」

「「「す、すみません…」」」

 

 両津に言われて3人は正座で謝る。時行のはじめてのおつかいはなんとも言えない結果となった。

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