「中川の親父が来るのか!?」
「はい。あるプロジェクトのためにしばらく日本に滞在するみたいです。それで僕と先輩に何か言いたいことがあるらしく20分だけ直接会いたいと。」
「アニメ1本も見れんな。」
派出所で両津と中川が会話していた。時行は中川の父親に会ったことがなく気になっている。
「中川さんのお父様ってどんな方なのですか?」
「なんというか…中川グループの会長で72時間働けますかがモットーのとんでもない親父だ。」
「年中いろんなところに行ってるからなかなか会えないのよ。」
「この前会ったのっていつだ?」
「覚えてませんね。」
両津達が頭を抱える。
「まぁ、とにかく滅多に会えんレアモノ親父というわけだ。」
「そうなんですね。…でも、会えるだけ幸せだと思います!」
「時行、お前が言うと重すぎる。」
既に父親だけではなく家族、友達全員を亡くしている時行の発言に両津達は泣きそうになる。
「私も中川さんのお父様に会ってみたいです!」
「分かりました!明日の13時からの20分なので余裕を持って12時半に着くようにしましょう。明日の10時にハチ公前に集合ですね。」
「はい!」
「おう!」
翌日、10時半を過ぎても両津が来ない。時行がチラッと隣を見る。中川がいつもと違う。凄いイライラしていた。
「何してんだあの角刈り!!」
「落ち着いてください!」
「時間守れよ!!」
中川が近くに落ちてある空き缶を蹴り飛ばす。最早別人になっている中川を時行が抑える。それから時間が経過し11時過ぎになってやっと両津がきた。
「すまんすまん!夕べ飲み過ぎた!」
「ふざけるなぁ!こっちは秒刻みでやってんだぞ!」
「中川さんが壊れた!」
悪気のない両津に中川がキレる。急いでフェラーリに乗って向かうと信号と渋滞で足止めされてしまう。両津は寝ている。中川はイライラしている。時行は小さく縮こまっている。
「人の苦労も分からないで…」
「落ち着きましょう中川さん。だんだん保科殿に近付いています。」
なかなか進まない。それに苛ついた中川はチラッと横を見る。裏路地がある。時行は嫌な予感がした。中川はフェラーリを飛ばし裏路地に入った。片方を浮かして片輪走行する。時行は必死にシートベルトにしがみつく。両津は壁に頭を削られ少しハゲた。
「どうした中川!?」
「後1時間で13時なんですよ!これじゃあ間に合わない!」
「ヘリコプターで行った方が良かったんじゃないか?」
「余裕があれば必要なかったんですよ!」
荒っぽい中川の運転に時行の心臓がバクバクなっている。両津が頭を押さえている。爆走するフェラーリ。至るところに傷が付いている。
「大丈夫なのですか?大事な車に傷が付いてますよ。」
「安心しろ時行。中川はフェラーリを大量に持ってるから1台オシャカになったところでダメージはない。」
「今川殿みたいです…」
確実にスピード違反で捕まるスピードで走る。時行はだんだん気持ち悪くなる。遂に吐いた。そんなこと気にせず爆走させる中川。
一方、ビルの屋上にヘリが停まった。そこから1人の男性が降りてきた。この男性が中川の父親で中川グループな会長を務める中川龍一郎だ。龍一郎は歩きながら部下が出したタブレットからズームで外国の社長と会談をする。
『中川社長!会えて光栄です!あなたの…』
「そんなお世辞はいらん!契約にイエスかノーで答えろ!」
『イ、イエス!』
「よし。後は任せる。私は20分の間食事を取る。」
「分かりました。」
龍一郎がいるビルに2台の高級車が着く。そこから2人の女性が出てきた。中川の母親である中川小百合と妹である中川登志恵だ。2人が会食の場に着くと既に龍一郎がいた。
「相変わらず早いわね。」
「今日は大事な日だからな。」
3人で食事をしながら中川を待った。その中川は荒れていた。オービスに撮られてもお構いなし。高速道路を爆走している。すると、前方で事故が起きていた。慌てて止める。その勢いで時行と両津が前に吹き飛びそうになる。
「なんで今事故が起きるんだよ!」
「中川さん!いつもの中川さんに戻りましょう!」
バンとハンドルを叩く中川を時行が落ち着かせる。髪も荒れ目付きも悪くなる。今にも人を殺しそうな雰囲気すら漂っている。
「初期の中川になってるな。」
「両さん!一緒に止めましょう!」
「そうだな。落ち着け中川。」
「うるせぇ角刈り!!元を辿ればあんたが遅刻したせいだろうがぁ!」
「時行、わしは逆効果だ。頑張れ。」
「人でなしー!」
中川が暴れる。時行が止める。今の時刻は13時1分。既に中川龍一郎がビルに来ている頃だ。中川はどこかに電話する。すると、ヘリコプターが来た。そこから縄梯子が降りてくる。中川達は縄梯子に捕まり急いでビルに向かう。
「初めからこうしろよ。」
「待ち合わせ場所をハチ公前にするんじゃなかった。」
「だんだん中川さんが怖くなってきました。」
もうすぐでビルに着く。屋上のヘリポートに近付くと中川が着地する前に飛び降りた。それを追って両津も時行を抱えて降りる。急いで会食の場に着くと中川一家が食事を終えて帰ろうとそていた。
「父さん!」
「久しぶりだな。」
龍一郎は中川の肩を叩き再会を喜ぶ。時行はその光景を見て感動している。龍一郎は両津を見るとすぐに両津に近付いた。
「両津君、私が今しているプロジェクトのモニターとして参加してくれないか?」
「は、はい!分かりました!」
「よし。」
龍一郎は時行に気付く。
「彼は?」
「ほ、北条時行です!両津さんのところでお世辞になっております!」
「ほう。両津君の…君もモニターとして参加しないか?」
「モ、モニターですか?」
「そうだ。詳しいことは後日伝える。」
龍一郎が時行と会話を済ませる。中川が龍一郎に声をかけようとしている。
「と、父さん…」
「そうだ。忘れるところだった。圭三、誕生日おめでとう。」
「え?」
「今はこれぐらいしか言えんがまたちゃんとお祝いしよう。」
中川が何か言おうとする。しかし、龍一郎の背中にある装置が突然鳴り響いた。
「なんだ!……それぐらいそっちで処理しろ!」
今度はスマホが鳴る。
「何………分かった。今から行く。」
「父さん…」
「すまない。行かなくてはならない。また今度会おう!」
そう言って龍一郎は窓から身を乗り出すとヘリコプターから降ろされた縄梯子に掴まり去って行った。小百合と登志恵もかに一言言って去って行く。残った中川はイライラしていた。
「違うだろ!こう他に言うことあるだろうがぁ!」
「中川さーん!?」
「誕生日まだ先だし名前も違うし全然話せてないし…」
荒れながら倒れる中川。時行が中川を励ます。両津はいつもの光景だと慣れているのか中川を哀れに思っている。こうして中川の親子の再会が終わった。
後日、中川のところに違反金が請求されたのは言うまでもない。