ある日、プラスは自室で1人パソコンに向かって何かしていた。
「よし。…これで後は檸檬さんを…」
プラスがボソボソ呟いている。それを部屋の外からスパークが聞いていた。
数日後、ある遊園地の前でプラスが1人待っていた。それをスパークが見守っている。その隣にはスパークの妻でプラスの母親である電極冷がいた。
「大丈夫だ。お前ならやれる。」
「絶対普通のデートじゃないわよ。」
冷が冷ややかな目線を送る。プラスの前に檸檬が来た。プラスは喜ぶ。しかし、檸檬の隣には時行がいた。プラスが愕然とする。
「あら、あの子可愛いわね。」
「何故、北条時行君が…」
スパークも驚く。そこに両津が来た。
「やっぱりいた。」
「あっ!お久しぶりです両津さん。」
「両津君!あれはどういうことだ!?」
「あれは…」
両津が話す。超神田寿司で檸檬がプラスから遊園地デートの誘いを受けた。檸檬がどうしようか悩んでいると時行が来た。檸檬は時行に遊園地デートのことを話す。
「遊園地ですか?」
「そうじゃ。プラスから遊園地で遊んで行かぬかと誘いを受けての。」
「遊園地…私は行ったことありませんね。」
「そうなのか?なら、一緒に行かぬか?」
「いいのですか!?」
「もちろんじゃ。遊園地は人が多いほど楽しいものじゃ。」
「ありがとうございます!」
「…ということだ。」
「そうなのね!檸檬ちゃん優しいじゃない!」
「しかし、これではデートに…」
冷は喜ぶがスパークは心配している。プラスも檸檬から事の経緯を聞くと悩んでいた。
(まさか、北条君がくるのは想定外でした。)
「あの…もしかして私はお邪魔でしたでしょうか?」
「い、いえいえ!そんなことはないですよ!」
「良かったです。お誘いいただきありがとうございます。」
時行がお辞儀する。それを見た冷は嬉しそうだ。
「いい子じゃない!」
「そういえば何故両津君はここに?」
「檸檬と時行の保護者だからだ。」
「両津さん、時行君とはどのような子なんですか?」
「あ〜…一言で言えばプラスの真逆のタイプだ。」
両津が時行のことを話す。そうしていると3人が遊園地に入って行った。両津達も後を追う。
(こうなったらこのデートで檸檬さんの気を私に向かせる!)
「北条君。」
「はい。」
「私とデート勝負です!」
「はい?」
檸檬の後ろで突如始まる時行とプラスの遊園地デートバトル。その気配を両津達も察していた。
「面倒な事になったな。」
「頑張れ、プラス。」
「不安しかないわ。」
3人はまず、絶叫系のアトラクションが多くあるエリアへと向かった。身長制限で行けるところが少ないがなんとか3人とも体験出来るアトラクションを見つけた。
吊るされた椅子に座って支柱が回りながら上がるアトラクションだ。檸檬を真ん中にして座る。両津達も冷を真ん中にして後ろの席に座る。
「端から見たら凄い絵面だぞ。」
アトラクションが動き出す。時行は初めての体験に興奮している。対するプラスは冷静だ。燥ぐ時行に大人の余裕というものを見せつけてやろうとしている。
「凄いですね!」
「北条君はまだまだ子供ですね。私は全然怖くありません。」
「はい!私は子供です!なのでいっぱい楽しみたいのです!」
「•••」
「まずは時行の1勝だな。」
「まだだ。まだ分からんよ。」
無邪気な時行にプラスはジャブを食らったような感覚に陥る。檸檬も楽しんでくれたようで一先ずはよしとした。降りたスパークがアトラクションを見て何か考え事をしていた。
「この回転を利用すれば…」
「あなた!」
「な、なんでもないぞ!」
「職業病が出たか。」
時行達は次にメリーゴーランドに乗る。時行がカボチャの馬車の馬に乗り檸檬とプラスはその後ろに乗っている。両津達は遠くから双眼鏡で見ている。
「どうですか檸檬さん。私達まるでシンデレラと王子様ではありませんか?」
「そうじゃのぉ。」
プラスが決まったと思っている。すると、メリーゴーランドの周りにいた人達がスマホでこちらを撮影していた。プラスもカッコつける。しかし、良く見ると撮影していたのは時行だった。
「まるで白馬に乗った王子様みたい!」
「確かに時行も王子様みたいじゃのぉ。」
「••••」
「時行の2勝。」
「私から見ても本当に王子様よ。」
(実際、鎌倉幕府の王子様だからな。)
プラスがフックを食らったかのように項垂れる。両津達が陰からプラスを見る。プラスはトボトボしながら歩く。お次は檸檬が乗りたいと言ったコーヒーカップに乗る。時行と檸檬が楽しく遊んでいる。プラスも笑顔にはなっているがどこか引き攣っている。
「あの顔は計画が狂い始めている顔だな。」
「大丈夫だプラス。パパが見ているぞ。」
3人はレストランへと入る。プラスはカッコつけて少し高めのステーキを食べる。それに対して時行は鮭と味噌汁の定食をいただく。檸檬は刺身定食だ。
「ここのレストランは遊園地の中でも一流なんですよ。こちらのステーキも松阪牛のA5クラスの希少な部位を使用し…」
「説明が長い。」
プラスの知識自慢に両津と冷が飽き飽きしている。
「どうですか檸檬さん?」
「本当に美味しいのぉ。」
「北条君もどうです?美味しいですよね?」
「はい。ふっくらと炊き上がったご飯が卵と上手く絡み合っていて絶品ですね。鮭も身がしっかりとしまった天然のものなので美味しいです。」
時行の食レポを聞いた周りの人達が鮭定食を頼む。それを見たプラスは唖然としていた。スパークも唖然としている。
「•••••」
「3勝目。」
両津がハンバーグを食べながらジャッジする。食事も済ませて再びアトラクションを楽しむ。子供用のジェットコースターがあったので一緒に乗る。
「どうでした?」
「気持ち良かったぞ!」
「私も新鮮な気持ちでした!」
時行と檸檬がニコニコしている。プラスも心の中で良しとガッツポーズした。そのまま3人は売店でソフトクリームを頼んだ。ベンチに腰掛けソフトクリームをいただく。
「これがソフトクリームと言うのですね。甘くて蕩けて美味しいです。」
(北条君の家はソフトクリームすら食べれないぐらい厳しいのか?)
美味しそうにソフトクリームを食べる。すると、檸檬の頬にソフトクリームが付いていた。時行とプラスがそれに気が付く。プラスがハンカチを取りだそうとした。
「檸檬さん、良かったら…」
「檸檬さん、頬にソフトクリームが付いてますよ。」
そう言って時行は頬のソフトクリームを指で取って食べた。プラスは絶句する。顔面にストレートが入ったような顔になる。
「ありがとうなのじゃ!」
「いえ。」
「なんだあの選ばれたイケメンしか出来ないモテムーブは。」
「あれをナチュラルにやるとはさすがだな時行。」
「凄いわねあの子。」
笑顔で向かい合う時行と檸檬。隣ではプラスが青ざめている。元気の無いプラスを気遣いながら次のアトラクションへ行く。すると、お化け屋敷を見つけた。プラスは名誉挽回と檸檬をお化け屋敷に誘った。もちろん時行もついてくる。
「わしらも入るぞ。」
「あのお化け屋敷は15時から16時の間に空く確率が1番高い。お化け屋敷の所要時間は…」
「計算しない!」
「はい!」
「完全に病気だなこりゃ。」
時行達の後をつける両津達。お化けが出ると時行は檸檬の前に出て守る体勢をとる一方のプラスは…
「あれはここを通った時にセンサーが反応すると出てくる人形ですね。」
「あなた…」
「い、いいじゃないか!現実的で…」
「何のためにお化け屋敷に入ったんだ。」
お化け屋敷から出る。全く怖がってないプラス。時行はやっと出れたと胸を撫で下ろしている。
「怖かったの。」
「大丈夫ですよ。あんなものはただの作り物。お化けなんて実際いるわけ…」
「大丈夫です!何があっても私が必ずお守りします!」
「うむ。ありがとうなのじゃ!」
「••••••」
黙ってしまうプラス。完全にノックアウト寸前だ。
「わしがセコンドなら既にタオルを投げてる。」
「私もよ。10枚ぐらい投げてるわ。」
「何故なんだ…」
「檸檬にとってはマジレスする奴より一緒に楽しんでくれる奴の方が心地よい。」
「それには同意ね。プラスはなんでも数字から入るから…」
両津と冷がプラスに同情する。さすがのスパークもこれは厳しいと思っている。最後に時行達は観覧車に乗った。ゆっくりと回って上がっていく景色を堪能する。夕日がちょうど綺麗に見えている。
「綺麗ですね。」
「ええ。今日は雲が1つもない快晴ですから。ちゃんと夕日が1番綺麗に見える時間帯を計算しました。」
「凄いですね!私は計算が苦手でして。」
「ま、まぁ、北条君も私を見習って頑張りたまえ。」
「はい!」
2人の会話に見ていた檸檬がクスリと笑う。
「お主ら、いい友達になれたの。」
「え?」
「プラスよ。時行と話しているお主はわしらと同じ子供じゃったぞ。」
プラスが顔を赤くする。楽しい時間も終わりが来る。観覧車が1周して1番下に着く。時行達が降りる。すると、プラスが隠れているスパークのところに歩いてきた。
「どうでした?」
「な、何がだね!?」
「私に着けている発信機の周波数を逆算して場所を特定したんですよ。」
プラスが見せたスマホにはスパークの位置が印されていた。ついでに着けていた発信機も見せる。冷がスパークを睨む。スパークは汗だくになっている。
「よ、良く分かったな!素晴らしいぞ!さすが我が息子だ!」
「私は褒めたくない。」
「それで、どうでした?」
プラスが聞くのでスパークの代わりに両津が答えた。
「プラス…お前の惨敗だ。」
「ゴホッ!」
両津の辛辣なストレート評価にプラスは気絶しそうになる。
「まだですよ!例え負けたとしても僅差で…」
「あれを見てそれが言えるか?」
両津が指差した先には楽しそうに会話している時行と檸檬が夕日に照らされていた。それを見たプラスは空を見上げ現実逃避した。
「オーマイガー!!」
そして、叫んだ。
「これに懲りたらもう数字だけで判断しないことね。」
冷はそう言うとプラスとスパークを連れて帰って行った。両津は時行と檸檬のところに行く。
「おっ!カンキチ!」
「楽しかったか檸檬!?」
「うむ!時行とプラスのおかげで凄く楽しめたぞ!」
(おっ。言うほど惨敗じゃなかったか。)
両津は微笑むと時行と檸檬を連れて帰宅した。
数日後
「檸檬さんを落とすためのシュミレーションゲームを作成しました。これで檸檬さんの好きな趣味嗜好を勉強します。もちろん、ライバルは北条君です。」
「お前、全然懲りてねぇな。」
派出所に自作ゲームを持って来るプラスであった。