ある日、小学校の体育の授業でサッカーをすることになった。そこで時行がボールを見事なリフティングで捌いていた。弧太郎達を目を丸くして驚く。リフティングが終わるとみんな拍手した。時行は照れている。
「なんでも出来る奴のドヤ顔ってムカつくはずだけど時行のはいつまでも見れるな。」
「本当になんでも出来るよね。」
みんな、時行に驚く。そのままサッカーの試合が始まった。時行はボールを受け取るとあっさりと相手の間を抜けキーパーの前まで迫った。
「よっしゃあ!行け時行!」
時行がボールをシュートした。しかし、ネゥロョ〜ンという効果音と共に蹴られたボールはポンポンと転がりあっさりとキーパーに取られた。キーパーがボールを蹴り飛ばす。時行は慌ててボールを追いかけた。それを見た弧太郎達は目を点にする。
「時行…シュート全然ダメなんだな。」
その話を両津達にした。両津が笑っている。すると、思い出したと時行を見た。
「そうだ!うちのMFが事故で入院してたから代わりに入らねぇか?」
「え、いいですけど…」
「よし!決まり!」
翌日、両津は時行を連れてサッカーコートにやってきた。既にマリア達が集まっている。今回、以前勝ち取った優勝カップが欲しいと対戦を申し込んできた。
時行を見た仲間が気になって両津に聞く。
「どうしたんだい両さん、その子?」
「わしが育てている時行だ。今日は川北の代わりに入れる。」
「いくら数合わせでも小学生は…」
「わしに任せろ。」
両津が仲間に強引に納得させる。
「時行、これがわしらのサッカーチーム、亀有マッカチンズだ。」
「よろしくお願いします!」
「よ、よろしく。」
チームメンバーも両津が連れてきた子ならと納得し挨拶する。相手チームが来た。お互い並ぶ。相手チームは時行を見てニヤニヤしている。
「両さん。」
「大丈夫だ。なめてもらった方がやりやすい。」
試合が始まる。時行が仲間からボールをもらう。そこに2人がかりでボールを奪いに来た。時行はそれを華麗なボール捌きで避けた。そのままボールを確保しながら逃げる。
「時行!マリアにパスだ!」
「はい!」
時行は隣にいたマリアにボールを渡す。マリアはそのままボールをシュートした。ボールはキーパーを弾き飛ばしゴールネットを突き破り後ろの壁にめり込んだ。
「す、凄いですね。」
「やり過ぎましたわね。」
そのまま時行がボールを持って逃げマリアがシュートを繰り返してゴールを決める。両津もゴールキーパーとして相手のシュートを全て防ぐ。ホイッスルが鳴り試合が終わる。
「5-0で亀有マッカチンズの勝利!」
「よっしゃあ!ナイス時行!」
喜ぶ両津達。相手チームは誰1人時行からボールを奪うことが出来ず悔しがっていた。勝利した両津達は報酬として食べ放題バイキングを貸し切っていた。
「凄いなこの子!」
「さすが両さんの連れて来た子だ。」
「あんなに運動神経いい小学生なんてなかなか居ないだろ。」
チームメイトが時行を褒める。時行も嬉しいのかニヘラと笑っている。両津が時行を褒めながら食べていると隣にいた仲間のスマホに対戦依頼のメールがきた。
「両さん、次の対戦相手決まったよ。」
「どこだ?」
「高校生チームだ。」
「高校生?なんだ楽勝じゃねぇか。」
対戦当日、両津は計算違いをしていた。目の前にいる高校生達を見た両津は驚いている。
「あいつら…U19の日本代表じゃねぇか!」
「みんな、いろんな大会で見た奴だぞ。」
両津達は慄いているがそんなこと全く知らない時行は両津たちの反応で相手が強いということだけは分かった。両津はゴールキーパーを別の人に任せて前に出る。
試合が始まった。日本代表に選ばれるだけあって相当強い。時行も相手からボールが取れない。両津も追いかけるが歯が立たず先制ゴールを決められてしまった。
「くそ〜!やっぱり強い!」
「どうする両さん!」
「ここからだ。」
両津達のボールから始まる。両津は時行にパスした。時行が受け取る。そこに相手がボールを奪いにやってきた。それを時行は華麗に避ける。そこから時行の快進撃が始まる。向かってくる相手を次々と避けながらゴールに走る。小さいうえにすばしっこい時行を相手にしたことのない高校生チームは苦戦していた。時行はマリアにパスしようとするもガードされている。そこに両津が走り出した。
「時行!こっちだ!」
「はい!」
時行がパスする。しかし、読まれていたのかボールがとられそうになる。そこに両津が無理矢理ボールをシュートした。相手は吹き飛びボールはポールに跳ね返りゴールネットを揺らした。
「よし!同点!」
相手ボールから始める。すると、今度は時行がボールを持った高校生の周りをグルグル回り始めた。高校生はパスが出来ないと焦っている。ボールを高く蹴り上げ仲間にパスした。そこにマリアがジャンプしてコートの半分以上の距離からシュートした。
「な!?」
マリアのシュートは真っ直ぐゴールに飛びゴールキーパーの頬を掠めゴールネットを突き破った。ゴールキーパーは震えが止まらなくなっている。これが決め手となり両津達は2-1で勝利した。
「いえーい!日本代表に勝った〜!」
相手チームは倒れたり泣いたりしている。時行は相手チームを心配していた。相手チームの監督とコーチは時行を見て頷いている。両津達は勝った賞品として人数分の自転車をもらった。
「また来たぞ!」
次の対戦相手が決まる。試合場所に行くと山の中だった。両津達が嫌な顔をする。対戦相手はこの山を所有しているらしい。
「こんなとこでやれと?」
「とてもサッカーが出来る場所じゃないぞ。」
「低いうちが圧倒的に不利だ。」
「諏訪にいた頃を思い出します。」
仲間が愚痴愚痴言う中、時行がボソッと呟いた。その一言を聞いた両津はニヤリと笑った。試合が始まる。急斜面や生い茂る木々が邪魔で上手く進めない。対する相手チームはこのコートでかなり練習していたのか慣れていた。
「動きにくい!」
「やっぱりこっちの動きを封じるためのコートか!」
「卑怯だろ!」
「大丈夫だ。」
相手チームは余裕と思っていた。しかし、そこに木の上から時行が降りてきた。時行は驚いた相手からボールを奪う。そのまま木々の間を縦横無尽に駆け回る。
「凄いな!」
「時行は小さい頃から森の中を駆け巡って遊んでいたからな!時行にとっては庭みたいなもんだ!」
「とんだ伏兵がいたもんだ。」
相手チームのリーダーが時行に驚く。しかし、まだ余裕の表情を見せていた。時行がゴールに近付く。そこには数本の木がゴールを守っていた。
「ふはははは!どうだ!これじゃあゴール出来ねぇ!」
「あれこそ卑怯だろ!」
「だからこっちも手段は選ばねぇ。」
時行はマリアを見つけた。マリアがこっちにとジェスチャーしたのでパスした。マリアが思いっきり蹴る。ボールは木を薙ぎ倒しゴールキーパーごとゴールを吹き飛ばした。それを見たリーダーは唖然とした。そのまま両津達の勝利で終わった。
「よし!この山いただき!」
「山なんかもらってどうすんだろう。」
勝利条件で手に入れた山に両津は喜ぶが仲間はそうでもなかった。両津は仲間を誘って手に入れた山でキャンプする。鍋やバーベキューでキャンプを楽しむ。両津の隣に時行が来た。
「サッカー、楽しいですね!」
「だろ!これからももっと楽しいことをいっぱい教えてやる!」
「はい!」
両津と時行が楽しそうに会話する。そこにまた対戦依頼がきた。
「次はどこだ?」
「警察の精鋭チームと書かれてるぞ。」
「マジか!」
「勝利したら50万だって。」
「よし!やるぞ!うちの軍資金になる!」
両津は意気込む。そして、試合当日。相手は新葛飾署のメンバーだった。両津は唖然とする。中川や麗子、ボルボに小町、さらに大原部長と屯田署長もいる。
「なんで部長と署長もいるんですか?」
「これは親善試合だ。いいか両津。今回は新葛飾署だけじゃなく他の署のお偉いさん方も参加している。くれぐれも勝つようなことはするなよ。」
「そ、それってやおちょ…」
「これはいわば接待サッカーだ。我が署に恥をかかけるなよ。い•い•な!」
「は、はい…」
大原部長が去って行く。あれのどこが精鋭だと愚痴る両津。そこに仲間が来て両津に相談した。
「どうすんだ?」
「勝ったらクビもありえるかもな。」
「部長め〜!八百長で勝っても嬉しくないだろ。」
両津は憤っている。負けて50万が貰えないのもそうだが折角時行がサッカーを楽しいと思っているのに八百長で態と負けるなんてやりたくないのだ。
モヤモヤした感じのまま試合が始まる。接待対象のお偉いさん達はサッカー経験はないようだ。しかし、問題なのは運動神経のある中川や麗子、ボルボだ。この3人は時行の動きを知っているため時行の逃げ道を塞ぐような動いていた。
「時行を知っているだけあって全く油断してない。」
両津はマリアに時行の援護に行くように促すがマリアの動きもおかしい。そのまま時行のボールをボルボが取った。そのままお偉いさんがゴールを決めた。ゴールキーパーも勝ったらまずいのではと思ってしまい動けてなかった。
「なんだ。原始人も大したことないじゃん。」
小町の言葉が両津を苛つかせる。それでも一息ついて時行の方に行く。時行はシュンとしていた。マリアもなんかソワソワしている。
「どうしたマリア?」
「その…麗子さんにお願いされまして。署長さんの顔を立ててほしいって。」
「ちっ。マリアも封じられたか。」
「すみません両さん。」
「時行のせいじゃない。…頭にきた。接待とか八百長とか知るか。わしはわしなりのやり方をしてやる。」
両津は時行とマリアにコソコソ作戦を話す。両津がボールを蹴って試合再開する。すぐにボルボがボールを取りに行く。そこにマリアが来て競り合う。その時、マリアの胸がボルボの腕に当たる。ボルボは鼻血を我慢する。両津はその隙を見逃さずボルボを競り合うふりしてタックルし麗子にぶつけた。
「ま、まずい…もうもたん。」
後頭部に麗子の胸が当たったボルボは鼻血を噴き出して倒れた。
「よし。これで1番厄介なボルボは封じた。」
両津はボールを時行に渡す。屯田署長が追うも時行からボールは奪えない。中川と小町が塞ぐも時行はボールを高く蹴り上げると2人が見上げた隙をつき中川の股下をくぐる。そのままボールをキープして2人を抜いた。
「嘘!?時行君、サッカーうますぎない!?」
「先輩より速い。」
時行はゴールの前まで行く。ゴールキーパーは纏だった。時行はシュートが下手だ。どうするか迷う。その迷いを両津が切った。
「こっちにパスだ!」
両津が叫ぶ。時行は両津を信じてパスを出した。両津は纏の前まで来てシュートの体勢に入る。纏も両津のシュートコースを読んで構える。すると、両津はシュートをせずに時行にパスした。
「行け!」
「はい!」
時行は両津からのパスを受け取るとヘディングシュートをした。両津に当たりを着けた纏は反応が遅れる。ボールはそのままバウンドしゴールネットを揺らした。
「よし!ナイスシュート!」
両津達が喜ぶ。そこに大原部長がカンカンでやってきた。
「両津!貴様分かってるのか!?これは接待サッカーだぞ。もしお前が勝てば減給だぞ。」
「御言葉ですが部長。あんなにサッカーを楽しんでいる時行に態と負けろと言うのですか?」
両津が指差す。そこには初めてのシュートで嬉しそうに走り回る時行がいた。それを見た大原部長は黙ってしまう。さすがにあの無邪気な笑顔をする時行にそんなこと言えない。
「一生懸命今を楽しんでいる時行に八百長なんてやらせていいんですか?」
「そ、それはだな…」
大原部長も気まずくなる。そこに両津が提案した。
「なら、こうしましょう。」
後半戦に入る。両津は時行に守りを固めるように指示する。そこからは一進一退の攻防が続いた結果、1-1の同点となった。
「これでどうです部長?わしらのチームと同点なんてどこも成し得なかったことですよ。」
「う、うむ。それなら…」
大原部長は仕方なく納得する。屯田署長がカンカンで来るも大原部長と同じ言葉を投げかけたら納得した。結局、お偉いさん達も満足してくれたようなので接待サッカーは一応成功となった。
翌日、サッカーが気に入ったのか時行は派出所でずっとリフティングをしていた。中川達が拍手していると誰かやってきた。この前、両津達が対戦したU19の監督とコーチだった。
「やっと見つけた!」
「?」
「君!是非サッカーU19日本代表に入ってくれないか!?」
「ええ!?」
2人の提案に時行が驚く。
「あの試合で見せた華麗なフットワーク!その若さであれはなかなか身に付かない!」
「君が入れば世界チャンピオンも夢じゃない!」
「あの!私は別に…」
「さすが時行。どの業界からも引っ張りだこだ。」
2人の猛烈な勧誘を断っている時行を見て感心していた両津達であった。