時行達はモモを連れてドックファームという場所に来ていた。こかは簡単に言えば飼い主と犬が自由に遊べる場所だ。広い公園に充実した設備、犬専門の病院や美容院まである。
弧太郎が投げたボールをモモが取りに行く。その様子を両津達が遠くから眺めていた。今回も両津は時行達の保護者として同伴している。
「こんなところがあったのですね。」
「最近はペットブームでどこにでもペット専門の施設があるからな。」
両津が水を飲んでいる。両津は仕事で忙しい桃井先生の代わりに時行達の保護者として来ていた。
「特に犬は何度もペットブームが来ているからな。最初はチワワとかの可愛い系からドーベルマンのような番犬、ラブラドールレトリーバーのように盲導犬としても犬は人間の生活に馴染んでいる。」
「そういえば江戸時代に犬の法律出来ましたよね?」
「あったな…確か…生類憐れみの令だった!部長が歴史勉強しろとしつこく言ってたから嫌に覚えてる。」
両津が頭を掻いている。余程嫌なことがあったのだろう。
「内容とかはほとんど覚えてない!覚えなくても生きていけるしな!」
「両さんの生き方勉強になります!」
「その生き方は学んだらいけない気が…」
亜矢が両津に憧れている。それに不安を感じる雪長。そこにボールが転がってきた。両津が拾う。弧太郎が手を振っていた。
「コーチ!次はコーチが投げてください!」
「よっしゃ!行くぞ!」
両津が投げる。凄く遠くまでボールが飛んでいく。モモが走って追いかける。弧太郎も一緒に走って行く。両津が遠くまで見ていると時行と渚が戻って来た。2人とも疲れたのかその場に座った。
「いい汗かきました!」
「時行君ってスタミナ凄いよね。」
「時行は鬼ごっこが好きでいつも走り回っているからな。」
両津がスポーツドリンクを2人に渡す。今度は亜矢がモモと一緒に遊びに行った。周りにも犬を連れた飼い主達が走ったりボールで遊んだりしている。
両津がちょっとトイレとその場を離れる。トイレを済ませて出る。すると、壁に張ってあるポスターに目が行った。『飼い犬自慢大会』と書いてある。両津はそれを見てニヤリと笑った。
「モモちゃんえら〜い!」
モモと遊んでいるところに両津が来た。例のポスターを持っている。
「お前ら、これやってみないか?」
「何だ?…飼い犬自慢大会?」
「そうだ。簡単に言えば一発芸大会みたいなもんだ。当日受付もしているからやってみろ。」
「おもしろそー!」
早速エントリーする。飼い犬自慢大会が始まる。飼い主と飼い主で何か芸を披露して観客達に審判してもらうという催しだ。ちなみに優勝するとドッグフードと1万円が貰える。
両津達は最後にエントリーしたらしく出番が1番最後になっていた。参加チームは20組以上ある。両津達が参加チームを見ていると誰か声をかけてきた。
「やぁ、両さん。」
「お前、犬飼か!」
「誰っすかコーチ?」
「わしの知り合いの愛犬家だ。」
「その通り。」
どうやら彼はこの大会の常連らしい。犬飼は自慢の愛犬を両津達に見せる。毛並みが整ったマルチーズだ。亜矢達がマルチーズを可愛がる。マルチーズも人懐っこく尻尾を振って相手している。
「今回の大会もうちのパンナコッタちゃんが1位だ。」
「モモが1位だよ!凄いよモモ!」
亜矢がモモを連れて行く。犬飼がモモのいろんなところを見て確認している。モモも犬飼を警戒していないのか舌を出して懐いている。
「大事に育てられてるね。雑種とは思えないほど綺麗だ。でも、パンナコッタちゃんが1位なのは変わらんぞ。」
犬飼がパンナコッタを延々と自慢している。そこに大会開始のアナウンスが鳴った。犬飼が1番最初らしく両津達にバイバイ言ってステージへと上がった。
「え〜!エントリーNo.1番!犬飼さんとパンナコッタちゃんです!」
「よろしく〜!」
犬飼が手を振る。パンナコッタも二足で立ち挨拶していた。最初から大盛りあがりしている。犬飼がフリスビーを出す。パンナコッタと距離をとってフリスビーを投げるとパンナコッタがフリスビーをキャッチした。それだけならよく見る光景だ。しかし、パンナコッタはそこから器用にフリスビーを投げた。それを犬飼が受け取る。
「おお!」
「凄い!」
「キャッチボールならぬキャッチフリスビーか。相変わらず犬飼の奴、器用なことしやがって。」
何度もパンナコッタとキャッチフリスビーする犬飼。最後にフリスビーを受け取るとお辞儀した。それに合わせてパンナコッタもお辞儀する。観客達は拍手している。
「やっぱり強敵になったな。」
「なぁ、モモになんか凄い特技とかあるのか?」
「大丈夫。私が仕込んでる。」
弧太郎が聞くと静がクスッと笑って答えた。次の犬はお手とおかわりを高速で交互にした。その次は二足歩行でその場をクルクル回る。両津が芸を見ていると犬飼が隣に来た。
「どうだい両さん?」
「相変わらず凄いよ。」
「今回も俺の優勝だな。」
犬飼が自信満々にパンナコッタを撫でる。そうしているとモモの1つ前の出番の飼い主と愛犬の芸が終わった。次はモモの出番だ。
「じゃあ、行ってくるね!」
「おう!行ってこい!」
亜矢がみんなとモモを連れてステージに上がる。
「では、自己紹介を!」
「はーい!私、亜矢!今日は学校のみんなと学校の愛犬モモで芸をしたいと思いまーす!」
亜矢は元気に言っているが時行達はモモに教えた芸なんてボールを取ってくるやお手などの基本的なものだ。大丈夫なのかなと思っていた。亜矢がボールを投げてモモが取る。やっぱり普通だ。そう思っていたら次は静に変わった。
「今からモモの凄い特技を教えます。」
「おっ。何かあるのか?」
「それは見てのお楽しみってやつだ。」
犬飼の質問に両津がはぐらかす。実際、両津も今から何をするのか知らない。静がモモにボールを渡す。すると、モモがボールを投げた。何をするのだろうとみんな思っている。モモはボールを投げると時行を見た。
「ワン!」
「は、はい〜!」
モモが吠えると時行が慌ててボールを取りに行った。それを見た両津達は目を点にする。時行がボールをモモに渡す。モモはボールを受け取るとさっきのようにボールを投げ今度は渚を見た。
「ワン!」
「はい!」
今度は渚がボールを取りに行く。渚がボールをモモに渡すとモモが手を出した。それを見た時行と渚がしゃがんだ。それを見て弧太郎達はどう反応していいのか分からなくなっている。
「ワン!」
「はい!」
「ワン!」
「はい!」
モモは鳴き時行と渚にお手とおかわりをさせる。2人はモモの言う通りに交互にお手とおかわりを繰り返す。観客達は黙って見ている。さらに、モモは時行と渚をクルクル回転させお腹を見せ四つん這いにさせた。モモは2人の背中に乗って大きくワンと鳴く。
「以上、モモの調教術でした。」
「す、凄いな…」
「凄いけど…あの2人が心配だよ。」
モモの下で顔を真っ赤にさせて恥ずかしがっている渚と顔を真っ赤にはさせているが興奮している時行を見て心配する両津達であった。