ある日、両津達がいつものように仕事しているとガリガリの警察官がやってきた。時行がその警察官に驚く。
「だ、大丈夫ですか!?」
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう時行君。」
「え?もしかして…寺井さん!?」
時行がさらに驚く。しかし、両津達はもう知っているのか驚く感じはなかった。両津が寺井に聞く。
「また、通勤で痩せたか?」
「うん。それもあるけど…最近は運がなくなった気がするんだ。」
寺井が座る。元気がない。大原部長が寺井にお茶を出す。麗子も心配して饅頭を出す。
「運が無くなったって一体どうした?」
「最近、港区の電気代が高くなったり急に車がガス欠になったりパンツが破れたり運が尽きたとしか言いようがないぐらい不運なんだ。」
「運で片付けていいやつかそれ?」
「また、丸井ヤング館に改名しようかな?」
「丸井ヤング館?」
時行が首を傾げる。そこに両津が説明した。
「寺井はちょっと前、開運のためにわしが名前を変えたんだ。その名前が丸井ヤング館だ。」
「元服名みたいなものですか?」
「そんな大層なもんじゃない。」
両津が手を振った。そこに中川がスマホを出して何かやっていた。
「でしたら丁度いいアプリがありますよ。」
「アプリ?」
「はい。“顔面改名アプリ”と言いましてアプリ専用のカメラで自分の顔を撮影し名前と生年月日、性別、どんな運がいいかを選ぶだけで開運出来る名前を教えてくれるというアプリです。」
「胡散臭いな。」
「実際にいる占い師100人が決めてくれますよ。」
「さらに胡散臭くなったぞ。」
中川が試しにと自分でアプリを使用する。すると、『イケメン モテ男』と表示された。それを見た両津は嫌な顔をする。
「どうですか?」
「完全に嫌味だな。」
「私もやってみようかしら。」
麗子が試す。すると、『おっぱい ボイン子』と表示された。それを見た両津は爆笑する。麗子は頬を引き攣らせている。
「がははははは!そのまま!そのままの見た目!」
「圭ちゃん。これは酷いわよ。」
「ま、また別の運にすれば変わりますから。」
中川を信じて開運を変える。すると、今度は『ケツデカ プリ美』と表示された。両津はさらに笑う。
「全然…全然変わってねぇ!」
「圭ちゃん…」
「きっと何かの間違いですよ!」
中川は慌てて大原部長にお願いする。大原部長も仕方なく試している。結果は『ブチ ギレ男』だった。それを見た両津が笑い転げ回る。
「ブチギレ…ブチギレ男!部長にピッタリじゃないですか!」
「うるさい!」
大原部長が両津の頭を踏み付ける。両津は頭を抑え悶え苦しんでいる。
「頭が…かち割れた…」
「そんなに笑うならお前もやれ。」
大原部長に言われて両津がアプリを試す。すると、『ゴミクズ ウンコ丸』と表示された。それを見た中川達は笑いを堪えるが大原部長は爆笑した。
「わははははは!両津にピッタリじゃないか!」
「ただの悪口じゃねぇか!」
両津が中川に詰め寄る。時行も面白そうだとアプリを試す。両津達が気になって時行の周りに集まる。アプリには『北条 時行』と表示されていた。
「マジか…そのままじゃねぇか…」
「時行君は今の名前が1番運がいいということですね。」
両津が時行の名前で他の運にしても全て『北条 時行』と表示された。試しにと中川を恋愛運から金運に変えてみると『贅沢田 金男』と表示された。
「全部…北条時行…中川、これこいつらの好みや偏見でやってねぇか?」
「そんなはずは…」
両津が恋愛運で自分を試す。『ブサイク ゴリラ』だった。大原部長達が笑っている。ピリピリした両津はスマホを投げつけた。
「最早人の名前ですらねぇ!」
「先輩!?」
「もうそれはただのゴリラじゃねぇか!」
「僕のスマホですよ!踏みつけないでください!」
中川がなんとかスマホを死守する。アプリは正常に動くようだ。最後に寺井で試す。すると、『丸井 ヤング館』と表示された。
「おい…これ、前にわしが付けた名前と一緒だぞ。」
両津がプププと笑っている。中川も失礼と知りながらも笑ってしまっている。寺井はまたこれか…とアプリを見て棒立ちしていた。
「とりあえずこれで1週間改名してみるか?」
「仕事運上げるためブチギレ男になるのは…」
「僕は構いませんよ。」
「お前はまだマシだからだろ!」
両津が中川に面白い改名がないかいろんな運で試してみる。すると、両津が突然口を抑えて笑いを堪えた。それを見て気になった時行がアプリを見ると両津と同じように口に手を抑えて笑いを堪えた。中川が気になって見ると『ドケチ マゾ太郎』と表示されていた。両津は耐えきれずに笑い出す。
「ドケチ!マゾ!いいじゃないか中川君!仕事運を上げたいならドケチでマゾになった方がいいぞ!」
両津はついでにと仕事運で麗子の名前を使う。今度は『銭竹 金子』と表示された。
「麗子!他のやつに比べたらまだマシなのが余計面白い!」
「私の名前でふざけないで!」
麗子がスマホを奪って両津の改名を仕事運でする。『ゴミクズ ブス野郎』と表示された。それを見た大原部長が爆笑する。
「仕事運になってもゴミクズは変わらんか!」
「絶対嫌がらせだろ!」
「先輩、ゴミクズブス野郎で頑張ってください。」
「ふざけるな!わしだったら金運を選ぶ!」
両津はゴミクズウンコ丸を選択する。それでいいのかと大原部長が言うも両津はこれでいいと返す。そこからは両津はゴミクズウンコ丸、中川はドケチマゾ太郎、麗子は銭竹金子、大原部長はブチギレ男、寺井は丸井ヤング館として1週間過ごした。
その結果…
「一応、うちの株は上がりましたね。」
「私も新商品が凄く売れたわ。」
「わしも何故か評判が良くなった。」
「僕もまた宝くじが当たったよ。」
「何故わしだけ全然変わってないのだ!?」
両津が頭を抱える。時行が慰めてくれる。寺井もとい丸井がお茶を入れに行った。
「両津は改名程度では開運出来んということだな。」
「いや待て…中川や麗子は運必要か?」
両津が2人を見る。
「中川も麗子も実力でそこまで来たんだから今更運に頼る必要ないだろ?」
「確かにありませんね。」
「そういえばそうね。」
「運も実力のうちというが両津には運もなかったということだ。」
「そこまで言わなくてもいいじゃないですか!」
両津が嘆く。折角恥ずかしい名前にしてまで金運を求めたのに全然変わらない。両津は気を紛らわせようと時行を見た。
「時行、お前の時代の改名ってどんなのだ?」
「私の時代ですか?…後醍醐天皇が尤も義貞が家を興すべき人なりとして新田徳寿丸に義興の名を与え、元服させたぐらいですかね?後は私は見ていないのでなんとも…」
「今、さらっと凄いこと言ったぞ。」
「歴史的瞬間ですよ。」
「時行君にとっては普通のことなのね。」
両津達が慄く。そこにお茶を入れた丸井がやってくる。
「どうしたのみんな?」
「なんでもない。」
両津が知る必要はないと丸井に言う。そう言った両津が時行を見てニヤリと笑った。
「そうだ!時行、お前の改名してやる!」
「え!?べ、別にいいですよ!」
「遠慮すんな!」
両津が時行の名前を考える。時行の顔をよく見る。時行は恥ずかしくなったのか顔を赤らめた。そして、決めたのか時行達にスマホを見せた。そこには『丸尾 珍々丸』と表示されていた。
「お前の顔は上品だし丸っこくて可愛い。それに珍しいからな。」
「両ちゃん…さすがにそれは可哀想よ。」
「ネーミングセンスが後醍醐天皇以下ですね。」
「いくらなんでもそれはないよ。」
「お前が名乗れバカモン。」
麗子達がブーイングする。時行は固まって何も言えない。
「とりあえず今日から丸尾珍々丸と名乗ってみろ。」
「あ…はい…」
翌日、派出所にボロボロの時行が涙目でやってきた。
「名前を丸尾珍々丸にした瞬間、犬の糞を踏んだり川に落ちたり肥溜めに落ちたり財布落としたり酷い目に遭いました!」
「両津、責任をとれ。」
「まさか、名前を変えるだけでここまで運気が落ちるとは…」
号泣する時行を慰める中川達。両津もさすがに悪いと思ったのか気まずくなっていた。ちなみに、寺井は丸井ヤング館がまた気に入ったのか丸井ヤング館に改名した。