闇派閥の強襲により炊き出しが中止になった翌日。古城はアストレアと共に拠点内の掃除をしていた。
「ごめんなさいね、昨日は大変だったのに手伝わせてしまって」
「良いすよ。俺は大した事はしてないすから」
そんな会話をしながら掃除を続けていると誰かが扉をノックした音が聞こえてきた。
「今日って誰か尋ねてくる予定ってありましたっけ?」
「いいえ、特にそんな予定はなかったし、アリーゼ達からも来客の話は聞いてはないわ」
「一応、俺が確認しますんでアストレアさんは此処にいて下さい」
「わ、分かったわ。 気をつけてね、古城」
古城はそのままノックされた扉の前に行き、警戒しながら扉を開く。すると、目の前に居たのは青い髪にメイド服を着た無表情の少女がいた。
「護衛対象を確認。これより監視を始めます」
「あ、アスタルテ!?」
そう目の前に現れたのはかつて古城達が住む絃神島を沈めるために吸血鬼しか扱えない眷獣を埋め込まれてしまった
「ど、どうしてここに」
「
「これって俺のスマホか?」
理由を聞き、そしてアスタルテから渡されたのは古城が元の世界で使っていたスマホだった。
「Ms.藍羽や
「そ、そうなのか。まぁ、とりあえず入れよ。アストレアさんにも紹介いないといけないからな」
「
取り敢えず古城は彼女を中へと迎え入れた。怪しい人物ではなくて一安心だったが、この後の説明が面倒だと感じていた。
「古城、誰が来ていたのかしら?」
「あー、紹介します。こいつはアスタルテって言います。俺の仲間で
古城がアスタルテを紹介する。アスタルテは一礼して特に何も喋らない。アストレアは固まってしまう。
「こ、古城。あなたの世界では人工的に人を造る事が出来るの?」
「あ、ああ。まぁ、誰もが好き勝手に造って良いわけでもないし、その後も人体実験なんかし良いわけじゃない。一つの種族として守られているからな」
「そ、そうじゃなくて、間違ってもこの世界の住人にその技術を与えないでちょうだい。この世界の特に今この時代を生きる人々にとっては甘美な毒だわ」
「それってどう言う……」
「人を人工的に造る事ができるって事は、死んだ人間も造ることが出来るって事でしょ」
アストレアの言葉に古城が答えることは出来なかった。代わりにアスタルテが答えた。
「肯定。髪の毛や血液などの体の一部から遺伝子情報を得る事ができれば姿形が同一人物の
「お、おい!アスタルテ」
「この世界に関してはMs.姫柊から説明されています。こちらの世界より魔法も科学力も発展途上だと」
「ええ。だからあまり彼女の正体のことは特に医療系ファミリアには口にはしないでちょうだい。下界の子供達はともかく私達神々は言葉の意味が理解できてしまうから。根掘り葉掘り聞かれてしまうわ」
取り敢えずアスタルテの種族に関してはあまり公言しないよう注意することにした。
「所でアスタルテはいつ戻るんだ?」
「
「は!?なんで」
「Ms.姫柊と
「依頼って……ちょっと連絡してきていいか」
「どうぞ」
古城は携帯の電源を入れて、早速 雪菜の携帯に連絡をした。
『はい、姫柊です』
「おい、姫柊どう言うことだよ」
『暁先輩?どうしたんですか?』
「アスタルテの事だ。どうして監視役なんて」
『そのことに関してですか。一応、先輩には話しておきますね。私が元の世界に戻ったあと南宮先輩からある報告を聞きました』
「那月ちゃんから?」
攻魔官である那月から獅子王機関に所属する雪菜に報告。つまり何か厄介な事が起きたのだ感じた。
『はい。それはとある魔導書が盗まれ、紛失したと言うものでした』
「紛失って見つからなったって事だよな?それがどうして…」
『犯人は既に捕まっています。ですが、その犯人の証言によれば魔導書は盗んだ後いつの間にか消えていたと言うんです』
「は?」
『更に南宮先生と優麻さんがお二人でその魔導書が消えた場所に訪れ調査した結果先輩をそちらの世界に送った魔力と同じモノが残留していたそうです』
「それって…」
『はい、何者かが盗んだ魔導書を奪いそちらの世界に持ち込んだ可能性があります』
言葉が出てこなかった。つまりそれは古城がいた世界の厄介な代物がこちらの世界に持ち込まれたと言う事だった。
『監視とはあくまでも表向きの理由で、本当は魔導書の捜索と犯人がもし魔導犯罪を行なった時のアストレアさんや他の方の護衛と言うのが本当の理由です』
「それでアスタルテが選ばれた理由て」
『先輩も知っての通り彼女、アスタルテさんに宿っている眷獣は私の雪霞狼と同じ神格振動波による魔法の無効化ができます。もし、相手が危害を加えようとしても対抗できると考えたからです』
「そう言うことか」
かつて対峙し共に戦った事があるが故にアスタルテが選ばれた理由を理解した。更に血の従者ではないアスタルテと繋いである霊的パスが古城がこちらの世界に来てきちんと機能しているのか不安だったのである意味安心していた。
「わかった。所で盗まれた魔導書ってどんな力があるんだ?」
『詳しくは分からないですが感情を操る事ができるそうです』
「…それだけか?」
『先輩油断しないでください。感情を操れるって事は特定の人物に対して異常な悪感情すら抱かせる事もできるんです。それは洗脳と同じくらい危険な魔導書です』
雪菜からそう言われて古城は危険性を改めた。
『それより先輩、私が戻って3日経ちましたがそちらはどれくらい経ちましたか』
「3日ってこっちと同じか。なんかおかしくないか」
『やはり時間の流れに法則性がないですね。私も戻った時送られた時間から数十秒しか経っていませんでした』
「マジかよ。まぁ、アスタルテと魔導書の件は任せてくれ俺も協力する」
『本当なら先輩には関わらないで欲しいですが、緊急事態ですからよろしくお願いします』
「ああ、分かった。また、連絡する」
『はい、こちらも何か分かったら連絡します』
通話を切り、アストレアとアスタルテたちの元へと戻った。
「古城、それって何かしら」
「これすか。これは携帯っていって色々な機能がありますけど、まあ遠くにいる相手との連絡手段っていうのが妥当か」
「へー」
「……いじってみますか」
「いいの!」
この時のアストレアはまるで新しいおもちゃを手に入れた子供のようだと後に古城とアスタルテは語った。
「きゃああああ、見てちょうだい輝夜!メイドよ!うちにメイドがいるわ」
「落ち着け団長。しかし、暁にこんな知り合いがいたとは驚きですね」
「もしかしたらこいつの趣味かもしれないぜ」
「んな訳あるか!」
「あなたはヒューマン?ですか。何というかヒューマンにしては不思議な感じが」
「あー、あまりそのことは聞かないでくれると助かる」
アリーゼ達が帰ってきた。そして案の定というかアスタルテの事を紹介すると我らがアストレア・ファミリアの団長ことアリーゼが大興奮であった。
「それでアリーゼ。今日の会議で決まった事はあるかしら」
「はい。ヘルメス・ファミリアが闇派閥の本拠点と思わしき場所を発見して、3日後に掃討作戦が行われることになりました」
「そう、3日後に。その掃討作戦には古城にも参加して貰いましょう」
「遂に古城も正式に私たちと一緒に活動できるわね」
「…ああ、そうだな」
「古城、どうかしたのかしら」
「い、いや何でもないっすけど」
夜、アリーゼからの報告を聞きアストレアから古城を正式に活動させるようにと言われた。だが、今まで数々の事件に巻き込まれてきた経験からくる古城の勘が警報を鳴らしていた。何か 良いしれぬ不安が古城が襲った。
夜、皆が寝し静まった時間になり古城は雪菜に連絡する。
『もしもし、どうかしましたか先輩』
「1日に何度もすまないな姫柊」
『いいえ、こちらもまだ1日経っていないので、それで何かあったんですよね』
「いや、何かあった訳じゃないんだけどよ。姫柊、こっちの時間で3日後に掃討作戦があるんだ」
『掃討作戦ですか。それで先輩は…』
「俺も参加する。けど、何か嫌な予感がする」
『嫌な予感ですか』
「ああ、漠然としてるかもしれないけどよ」
そう話すと古城はどこか真剣なものだった。それを察したのか雪菜がある提案をした。
『では、私達が手を貸しましょうか』
「良いのか?」
『私達は先輩の血の従者です。先輩が協力して欲しいと言わなくても力を貸しますよ』
「じゃあ、頼めるか。前日の日に連絡する。頼めるか」
『はい。早速紗矢華さん達にも相談してみます』
こうして本来交わることのない者たちが介入により多くの人物達の運命が大きく変わっていく。
そして掃討作戦当日まで時間が加速する。