薄暗い廊下を歩いていくと一際大きな扉の前に来た。
「ここよ。とりあえず」
アストレアが扉をノックすると中から老人の声で返事が返ってきた。
「入れ」
「失礼するわね。久しぶりねウラノスにロイマン」
「久しぶりだな、アストレア」
「神アストレア、先ほどのステイタスは一体」
「それを今から彼と一緒に説明するわ」
古城は中に入り、顔には出していなかったが驚愕していた。まず、最初に目に入ったのは規格外にデカい老人。古城の元いた世界にもこんな老人は存在しない。
「まずは自己紹介をしよう。ワタシはこの都市とギルドを管理している神。ウラノスだ」
「そして私はギルド長のロイマンだ」
もう一つ驚くべき事があった。ロイマンと名乗ったエルフの体型だった。太っていたのだ。種族を疑いたくなるくい。古城自身元の世界でも不老長寿であるエルフは存在するが知り合いと言えるのは彼の監視役である雪菜や紗矢華の師匠である縁堂縁だけで、この世界でもアストレア・ファミリアのリューもマリューだけだが3人とも目を疑いたくなるくらいの美人である。その3人を知っている為か目の前の存在がエルフなのか疑っていた。
「俺は暁古城。こことは違う世界から来た吸血鬼の真祖だ」
「真祖だと」
「そんなものが存在するはずが」
「だけどステイタスにも書かれている通り、彼は真祖よ。勿論彼は嘘はついていないわ」
「ロイマンよ。アストレアがこう言っているのだ信じてみよう」
ロイマンは怪訝な表情をしていたがウラノスが信じると言うので納得したようだ。
「しかしウラノス様!この者はこの都市の現状においては闇派閥より脅威です!今のうちに手を打つべきでは!?」
「だが、此の者はアストレアの眷属になったのだ。それはアストレアに対する侮辱だ」
「ぐぅ…」
「すまぬな。ロイマンも悪気がある訳ではない。アストレアも気を悪くしないでくれ」
「大丈夫よ、ロイマンも今の都市の現状を嘆いているのはしっているし、こんな時代ですもの誰だって疑心暗鬼にだってなるわ」
「俺も気にしてないんで」
「寛大な心遣い感謝する」
ウラノスがそう言って頭を下げた。
「それで暁古城よ。貴殿の力はどれほどのものなのだ」
「どれほどって言ってもな…一応俺がいた世界の基準でいいなら」
「それでも構わぬ」
「じゃあ、吸血鬼の真祖は1人で一国を簡単に滅ぼせますね」
「な!?」
「……」
そう、古城達4人の真祖は存在そのものが一国の軍隊どころか核爆弾以上のものなのだ。
「そうか」
「だが、いくら力があろうとも貴様はLv.1。この都市に存在する上級冒険者いや第一級冒険者達が相手では」
「悪いけどロイマン。彼の力を直接見た私からの意見だけれどもこの都市に存在する第一級冒険者を全員を集めても彼には勝てないと思うわ」
「それほどのモノなのか、アストレア」
「ええ、断言するわ」
アストレアはアリーゼ達と共に見た古城が召喚した眷獣のことを思い出しながらロイマンに忠告する。
「規格外すぎる。今この都市にはゼウスもヘラも存在しないのだぞ」
例えかつての最強派閥が存在していても古城には勝てないだろうとアストレアは考えていたがそれをあえて口にすることはなかった。
「それで古城のことなのだけど、時期が来るまで内密にしてもらえないかしら。特にロキやフレイヤには」
「了承した。では時が来るまで古城に関しては口外を禁ずる。ロイマンもいいな」
「分かりました」
古城に関しては時が来るまでここに居る3人の秘密となった。
「それじゃあ、私たちはこれで失礼するわね」
「アストレアよ。都市の治安維持に関しては引き続き頼む」
「ええ、任せてちょうだい」
そのまま古城とアストレは祭壇を後にした。
「この後、どうするんすか?」
「そうね。このまま帰っても良いのだけど」
アストレアは少し考えるとある場所に行くことを提案した。
「あー、アストレア様だ」
「ホントだー!」
「アストレア様ー」
訪れたのは孤児院だった。
「アストレア様、今日も来ていただけるなんて」
「ええ、今日は新しい眷属と一緒にね」
古城は孤児院に着くやいなや子供たちに囲まれていた。
「ねえねえ、お兄ちゃんも冒険者なの!!」
「あ、ああ」
「アストレア様のファミリアなの?」
「そうだぞ」
「どうやったらそんなに大きくなれるの?」
質問攻めであった。まぁ、質問の内容はアストレアのモノと違い他愛もないモノだったため適当に答えていた。
「ほらほら、皆そんなに一編に質問したらお兄さんも困っちゃうでしょ。こっちに来て1人ずつ質問しなさい」
「「「はーい」」」
そう言われると子供達は一斉に離れていった。
「驚いたかしら?」
「いや、まあ何通か元気すね」
「ええ、でもこの子たちは全員ではないけど両親や兄弟を殺されている子がほとんどなの。私がこうして来て遊んだり一緒に商人の手伝いとかし少しでも辛いこと忘れられるように色々としているのよ」
そう語るアストレアの表情は己が無力感を痛感させられたような顔をしていた。
「でも、心に負った傷がなくなる訳ではないわ」
「……」
古城にも覚えがある。かつて妹である凪沙を救うため共に戦った十二番のアヴローラを彼女に操られ自身の意思に反して殺してしまった事を結果的には救えたとはいえ今もその時の光景を夢で見てしまう。
「そうかもしれないっすね。けど、心の支えにはなってんじゃねえすか」
「そうかしら?」
「気休めにしかならないと思うすけど、今のあいつらの顔を見ればわかるんじゃねすか」
アストレアは目を向ける。そこには笑顔の子供達がいる。昏い時代だけれども確かに救われているのだ。
「そうね。古城の言う通りね」
そう言ったアストレアの顔には先ほどまでの表情は消えていた。
「アストレア様、それにお兄ちゃんもこっちに来てあそぼー」
「はやく、はやく!!」
「あらあら、呼ばれちゃったわね。行きましょう、古城」
「そうっすね」
そのまま古城とアストレアは夕方まで子供達と遊んだ。
「それじゃあ、皆。シスターの言う事はきちんと聞くのよ」
「「「はーい」」」
「また来るわね」
「じゃあな」
「「「ばいばーい、アストレア様。古城お兄ちゃん」」」
「うふふふ、古城はすっかり人気者ね」
「まぁ、面倒を見るのは嫌いじゃないすから」
こうして2人は帰路に着くのであった。
「ええーー!?古城、あなたアストレア様か恩恵を貰ったの!?」
「あ、ああ。そうだけど」
「つまり、私たちのファミリアに入ったと」
「まぁ…な」
「う、うそだ」
「いや、嘘なんかついてどうすんだよ」
「おいおい、これは前代未聞じゃねえか」
アリーゼ達が帰ってくるとアストレアは古城に恩恵を刻んだことを話すと十人十色の反応が返ってきた。
「そう言う訳だから、皆仲良くしてちょうだい」
「しかし、アストレア様。どうして彼を入れようと思ったのですか?」
「そうね。本人には許可は貰っているしみせるわね。これが古城のステイタスよ」
見せられた古城のステイタス(一部削除済み)をみて乙女達の驚愕の声が響き渡った。
「な、ななな、何よこれ!?」
「魔力のステイタスがError表記」
「マジであんなヤバいもんが後11体いんのかよ」
「空間制御ってこれもうこれ神秘じゃん」
「だよね、空間転移って…魔導士の憧れじゃん」
「スキルもこれある意味レアでしょ」
とまあこんな感じの反応がほとんどだった。
「これを見て古城の入団に反対な子はいるかしら?」
「「「……」」」
「うふふ、誰もいないみたいね。じゃあ、古城の歓迎会をしましょう」
こうして古城は正式?にアストレア・ファミリアの一員になったのであった。