アストレアの眷属になって1週間経った。その間、古城は元の世界に帰る方法を探しながら、主にアストレアの護衛を任せられていた。
「いつもごめんなさいね、古城。私の我儘に付き合わせてしまって」
「別に気にしなくて良いっすよこれくらい。それに俺の力はヒト相手に使うには強すぎるからね」
「そうね。それにダンジョン内では誰が見ているから分らないものね」
いまだに古城はロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアその他ファミリアには存在が秘匿されているのでやたら滅多に冒険者として、そしてアストレアの眷属として公に活動できないでいた。
と言うか、真祖の吸血鬼が眷獣やその魔力を使わなくても冒険者など簡単に倒してしまうし、手加減を間違えると大怪我を通り越して死人を出してしまうかもしれないのだ。
「それで最近は工場ばかり襲撃されてるみたいすけど、何か盗られた物とか徹底的に壊されている物とかあるんすか」
「基本的には建物全体が壊されているけど盗まれた物として『撃鉄装置』が盗まれているみたいなの」
「撃鉄装置?」
「ええ、簡単に言うと何か装置を作動させるスイッチみたいな役割を持つものが4回とも盗まれているみたいなの」
「スイッチすか」
古城はそれを聞いて何か考え始める。
「古城?どうかしたのかしら」
「いや、この世界にも爆弾みたいなものが存在するんすよね」
「ええ、ライラが主にそう言うものに詳しいわね」
「いや、俺の世界じゃ爆弾を使った自爆とかでそう言うスイッチが使われたりしてたからな」
「もしかして
「いや、あくまで可能性すよ?俺の世界じゃ、遠距離でも爆発できる物とかありますけどこの世界の技術じゃそれはできないよな」
元の世界より魔術や科学力が低いこの世界では古城が考えている代物は存在していないのだ。
「それより古城。今日は孤児院に行きたいのだけど」
「わかった。着いていきますよ」
そんな話をしながら古城はアストレアの護衛のために一緒に孤児院に向かうことになっった。
「うふふふ、孤児院の子達も古城に会えるのを楽しみしているみたいだから、助かるわ」
「…勘弁してくれ」
この1週間の間に何度か孤児院に訪れたり、孤児院の子ども達と共に炊き出しの手伝いや遊んであげたりしているうちに男の子から兄貴分として、女の子から恋心を奪いめでたく初恋泥棒と化していた。この事を知った彼の血の従者達からはきっとロリコンと言われるだろうが残念なことに彼女達はこの世界には来ていないのでそのような不名誉な呼び名で言われることはないのだが。
こうして古城はアストレアと共に訪れて孤児院で古城は子ども達が飽きるまで遊び、夕方になる1時間前には星屑の館に戻ってきていた。
「そろそろアリーゼ達が戻ってくるわね」
「じゃあ、そろそろ飯の支度をしてくるぜ」
「あら、じゃあ今日の夕飯も美味しいものが期待できるわね」
流石にアストレアの護衛だけでは申し訳ないと思ったが吸血鬼であるため朝早く起きることが難しいので、ならば夕飯だけでも作ろうとキッチンの使い方を教わり夜だけだが古城が担当になった。
最初は見慣れない料理なども多少あった為に警戒されていたが。
『お、美味しい!!!』
『見慣れないものもあったが、これはこれでいける』
『味噌汁まであるなんて粋ですねえ』
『く、悔しいですが料理の腕も認めんければ…」
『というか、これって私たちって料理では暁に負けてるってことじゃ』
『『『やめて、言わないでッ!!!』』』
こうして古城の料理に舌鼓を打ちながら(リューを含めた数名が料理の腕で負けて打ちひしがられているが)、好評だったようだ。
「お帰りなさい、みんな」
アストレアのそんな声が聞こえてきたのは、古城の料理が丁度終わるい頃だった。
「おう、おかえり」
「あら、古城も出迎えてくれるのね」
「相変わらずエプロンが地味に合ってねえな」
「これはこれでまるで神々がいうところの主夫のようですねぇ」
「主夫?」
「簡単に言うと旦那様のことよ」
「な、ありえない。け、結婚もしてない男女がそのような関係になるなど…まずは満月が綺麗な湖で互いに愛を確かめてから」
「あー、なんか元末っ子が変な想像してるぞ」
「ごめんなさいね、古城。先にみんなとお風呂頂いちゃうわね」
「俺のことは気しないで良いすっよ。それにおれにとってはできれば入浴を先に済ませてもらった方が助かりますから」
吸血鬼であるために普通のヒトより嗅覚が鋭い為に、彼女達の汗と微かに混ざった石鹸の匂いは吸血衝動を誘因してしまうので、古城にとってそれは毒なのだ。
こうして古城はみんなが入浴している間に料理を皿に盛り付けなどしながら待つことにした。
星の乙女達side
古城と別れたアリーゼたちは浴室でそれぞれ寛いでいた。
「ふぅー、やっぱりお風呂はいいわね。今日一日の疲れが吹き飛ぶわ」
「アリーゼ、発言がその…」
「団長、発言やら仕草がおっさん臭いぞ」
「か、輝夜。な、なんて事を」
「お前は気を使い過ぎなのだおボコ妖精。こんなことで歯に絹を着せた言い方などしても意味がない」
「おいおい、風呂に入ってる時くらい喧嘩なんてするなよ」
「うふふ、やっぱりみんなで入ると賑やかでいいわね」
アストレアはそん事を言いながら眷属達と入浴を楽しんでいた。
「それにしてももう1週間経つんだね」
「ああ、暁が眷属になってからね」
「最初は驚いたし、警戒したけどいい奴よね」
「そうねぇー、気遣いもできるし」
「体つきもいいしね。ジュルリ」
「おい、このアマゾネスやばいぞ」
「それに子ども達からも人気だしね」
「特に女の子の中には古城に恋しちゃった子もいるみたいだし」
「彼は男神達がいう
「違うでしょ、あれは天然無自覚女誑しよ」
「きっと、元の世界でも色んな女の子を誑かしていたに違いないわ」
「とんだ風評被害だな」
古城に関しての話題になると話が弾んでいく。一部悪評(あながち間違いではない)があったが本人がいたら声を上げながら否定するだろうものだが。
「アストレア様はどうですか。古城に関してなにか思う事はありますか」
「私?そうね」
アリーゼがそう聞くとアストレアは考え始める。
「そうね、料理が上手で子どもの世話も出来て神である私を普通の下界にいる女の人として接してくれる。強い力があるのに決してそれを自分の私利私欲の為には使おうとしない、普通の男の子かしら」
そんなことを聞いたアリーゼ達はアストレアから少し離れた場所で小声で話し込んだ。
「なんか異様に評価高くないか」
「確かに。なんんというか今のアストレア様は」
「まるで無自覚な…」
「恋する乙女ね!」
「私、ちょっと暁に用ができたわ」
「はいはい、ネーゼ。ステイ」
「でも、本人は気づいてないみたいよね」
「もしかして、アストレア様にとっては初恋なんじゃ」
「嘘でしょ!?」
「天界での事は私たちは知らないけど、誰かアストレア様と恋バナなんてしたことある?」
「いや、こんな時代だものそんな話題上がったことなんてないわ」
そこまで言って一斉に喋らなくなった。
「いやいやいや!気のせいだろ」
「でも、万が一にも…」
「分からないわよ。神々だって私たちと同じように感情があるんだし」
「ですが、しかし…」
「はいはい、とりあえず2人のことをできるだけ観察してみましょう。そうすれば分かるわよ」
「そ、そうね。私たちの勘違いかもしれないし」
「ネーゼ、取り敢えず両の手で持っているタオルを離しなさい」
こうしてその場にいた全員は見守ることで一応解決した。
「みんな、そろそろ出ましょう。古城の料理が冷めてしまうわ」
「「「は、はーい」」」
アストレアのそんな一言によりアリーゼ達も出ることにした。
星の乙女達side end
「さぁ、お風呂もご飯も済ませたし、今日の反省会よ!情報の整理をしましょう」
「なんで、俺たちの団長はこうもテンションが高いんだ」
「あれはもはや無視するしかないものですよ」
夕飯を済ませ、古城も入浴を済ませ団欒室で恒例の話し合いが始まった。
「それで今回も闇派閥たちは工場を襲ったのね。アリーゼ」
「はい。建物は全壊してしまいましたが一般人への被害はゼロ。勿論、私たち冒険者の被害もゼロです」
「あー、団長。やっぱりそこでも撃鉄装置が盗まれてたんすか」
「ええ、闇派閥の蛆虫ども何に使うか分からないですが今回も盗んで行きましたよ」
「それがどうかしたのかよ」
「いや、まぁこれは憶測なんだけどよ」
古城は朝にアストレアにも話したことをアリーゼ達にも話した。
「それは考え過ぎじゃねえか。いくらなんでもあいつらが自爆攻撃をしてくるとは考えられねえよ」
「いや、別に自爆するのは自分達である必要性はないのではないですか」
「そうね。古城かいた世界ではそう言うことが行われていたの?」
「俺が生まれるよりも昔だけどな」
そんなことを話していると雰囲気が重くなっていた.
「ふう、わかったわ。何か怪しげなヒトや物がないか巡回の時に確認してみるわ」
「そうしてくれ。はぁ、こんな時に姫柊や煌坂達がいればな」
「?その人達がいれば何かわかるの?」
「ああ、この2人以外にも使えるんだけど式神を使えば闇派閥達が何をしようとしているのか偵察できるんだけどな」
「式神?聞けば聞くほど私の故郷にある妖術と同じような力が存在しているのですね」
古城が挙げたのは自身の血の従者である2人である。
「と言うか、どんだけ強かったんだよ。当時の二大勢力は」
「とは言え、ゼウスとヘラが健在の時でも闇派閥は存在していたわ。ただ、このまで大規模に活動はしていなかったけど」
「でも、その二つの勢力は黒龍に負けたのよね」
明るくなってきた雰囲気がその一言でまた暗くなった。
「龍の王ってどんだけ強かったんだよ」
「誰が倒すのよ…そんな化け物」
「はいはい、暗い話はここまでよ!闇派閥の戦力は削れているし、無限に存在するわけじゃないわ。私たちが正義を示し続ければ昔のオラリオに戻るわ!」
話題を元に戻し、アリーゼが明るい声で話す。
「私たちが何より信じなきゃダメでしょ。地道が一番の近道だって。私たちの不屈の思いが闇派閥を打ち倒す礎になるって!」
アリーゼの声に、言葉を聞いた瞬間に雰囲気が一気に明るくなったような気がした。
「そのついでに黒龍を倒しましょう。うんうん、私たちならやらるわ」
「ついでにって…」
「楽観的すぎて何も言えねえよな」
古城とライラが若干、いやだいぶ呆れた声を出しながら苦笑いを浮かべていた。
「……団長、私は貴方のその甘言を受け入れがたい。未来を思う事はいい。だが、『現実』は直視するべきだ」
「あら、輝夜は何を言っているの。私はちゃんと目の前のことだってみているわよ」
するとなんてことないかのようにアリーゼは言葉を続けた。
「だって、やるしかないもの。じゃあ、やりましょう」
そう言って笑って見せた。それを見た全員の顔には笑顔があった。
「……本当に私と貴方は相性が悪い。私はきっと、貴方だけには敵わないだろう」
「ま、アリーゼの『なんとかなる』は今に始まったことじゃない」
「そうねえ。そんなアリーゼちゃんに私たちは付いてきたんだものね」
「よし、黒龍も倒すぞー!いつになるか分からないけど」
古城はアリーゼの団長としての器を垣間見たような気がした。そして、彼女こそこのファミリアの支柱とも言える存在なのだと感じた。
「今日もみんな、私の正しさにひれ伏したわね!フフン、さすが私」
「「「イラッ☆」」」
「はあー」
「うふふふ」
だが、一言が余計なんだと思ったのであった。
「とにかく!私たちが取るべき行動は一つだけ!悲しみの涙を拭い、みんなの笑顔を守る!その為に戦い続ける!」
「そうね……星の数ほどあれ『正義』の一つはここにある。それはけして間違いではないわ」
「アストレア様からお墨付きも貰ったし、恒例のアレをやって明日も頑張るわよ、みんな!」
「あれって毎回やんなきゃダメなのか」
「古城の言う通りだな。小っ恥ずかしくて苦手なんだが」
「安心しろ、私もだ」
「輝夜、ライラ、暁も真剣にやってください。私は、は、恥ずかしくない」
そう言うリューであるが耳が赤くなっていることには3人とも気付いていた。
古城達12人が輪になってアリーゼがいつもの口上を口にした。
「使命を果たせ!天秤を正せ!いつか星となるその日まで!」
歌われるのは正義の歌。それは彼女達アストレア・ファミリアの宣言と証明である。
「天空を駆けるが如く、この大地に星の足跡を綴る!正義の剣と翼に誓って」
「「「正義の剣と翼に誓って!」」」
アリーゼの声の後にみんなが続く。本当にいつかこの言葉の通りになる日を夢見て。
「ところで古城。姫柊さんと煌坂さんとどんな関係なのかしら?」
「え?あー、姫柊は俺の後輩で煌坂はまあ、何通か仲間だよ」
「2人は女性なの?」
「え?まあ、そうだけど」
突然そんなことを聞かれた古城は困惑していた。
「そう、そうなのね」
「な、なんかあったんすか?」
「いいえ、気にしないでちょうだい」
そんな2人を見ている11人の目があった。
「やっぱり、アストレア様って」
「し、信じられません」
「これは脈アリという物でしょうか」
「こりゃあ、面白くなりそうだな」
「きゃー、アストレア様が嫉妬してるわ」
「……ちょっと行ってくる」
「ネーゼちゃん、ステイよ」
「神とヒトの禁断の恋!?」
「これはもしかして荒れるかしら」
「アストレア様が乙女してるわね」
「と言うか、暁は気付いてないのかしら」
なんとも閉まらない最後であった。
ーーーーー『大抗争』まであと十日。