今日も今日とて古城はアストレアの護衛だと思っていたら。
「古城、今日はネーゼに私の護衛をしてもらうから。今日はお休みで良いわよ」
「え、良いんすか?」
「ええ、だってここに来てからきちんと休んだことないでしょう?だから今日は古城の好きなように過ごしてちょうだい」
と言われた為に急遽休みなった古城は街の中を歩いていた。
「やっぱり、どこもかしこも活気がないな」
護衛の為によく外の様子を見るが、やはり自分のいた世界と比べてしまうのである。
歩いていても聞こえてくるのは住人達の不満や不安の声ばかり。いつまでも訪れない平和に、いつ何処で誰に襲われるか分からない日々に、今日も何処かで誰かが泣いているのだ。そう考えると古城の手に力が入る。
「早くなんとかしてやりたいな」
そう口にした。古城が力を使うのはいつだって理不尽な運命によって誰かが傷ついて欲しくないからだ。世界なんてものを簡単に理不尽に壊すことができる力を持つ古城だからそう考えているのだ。
歩みを進めていると古びた廃教会の前まで来ていた。
「教会…だよな」
教会を見てあることを思い出していた。
「そう言えばニーナが
古城が思い出していたのは錬金術を極めたが故に不老不死となった女性。古の大錬金術師であるニーナ・アデラードである。
「一応、中を見ておくか。叶瀬みたいに誰かが動物を保護してるかもしれないからな」
次いで思い出したのは妹である凪沙や雪菜の同級生であり、自分の血の従者の1人である叶瀬夏音のことであった。
彼女は捨てられていた小猫をよく保護していた。しかも1人でである。そんな知り合いがいた為、こんな治安の悪い時に彼女と同じような存在がいたら危険なのだ。
「失礼するぜ」
中を確認する。外ほど中は汚れておらず、誰かが時々綺麗にしているように感じた。
「ん、おい。あんたこんな所で何してんだ」
「……」
そこにいたのは黒いドレスを着た灰色の髪女性だった。
「あんた、1人か?」
「…はぁ。折角人が感傷に浸っていると言うのに、余計な雑音が来たな」
「雑音って、一応正義の派閥に属してんだ。こんな時世だから安全確認のために声を掛けたんだが」
「ふん、くだらない。ここには私しかいない。とっと去れ」
「いや、女が1人でこんな所にいたら誰だって声くらいかけるだろ」
こちらに一向に顔を向けない女性にそう言う。
「それに正義の派閥だと、あそこは男子禁制のファミリアだと聞いたが」
「ちょっとした事情があんだよ」
「ふん、まあいい」
「帰るのか?」
女は黒いドレスを翻しながら、歩き出す。
「見てわからないか?」
「そうか。送ってくか?」
「貴様は私が弱そうに見えるか」
「いや、あんたが強かろうが弱かろうが女のあんたを物騒な街に1人で歩かせるかは別問題だろ?」
「……」
そう答えた古城に目を開けることなく顔を向けるが、そのまま教会を去って行った。
「?なんだったんだ」
古城はそのまま立ち尽くしていたが教会の中を少し見回ったら誰もいないことを確認してそのまま教会を後にした。
そのまま古城は街の散策を再開し、夕方頃には星屑の庭に戻ってきた。
「あら、古城おかえりなさい」
「アストレアさん?あれ、ランケットさんは?」
「ネーゼなら、今夕食の準備をしているわ」
「なら、俺も手伝いに行きますよ」
「あら、大丈夫だと思うわよ。『今日は古城よりも美味しいご飯を作りますね、アストレア様』って言っていたから古城が行っても追い返されちゃうわよ?」
「なんか、気合い入ってません?」
「うふふ、そうね。古城の料理を食べてから皆料理を頑張っているわ。特にリューが」
その言葉を聞いてどう反応していいのか分からない古城だったがリューの名前を聞くと苦い顔をしていた。
「リオンさん、まともに出来るようになったんすか」
「あの子も、あの子なりに努力はしてるのだけれども」
「そ、そうすか」
一度だけ古城はリューの手料理を食べたことがあった。それはもはや何を作ったのかは分からない物体だった。試しに食べてみたが攻撃を受けたわけでも無いのに意識を失い、次に意識が覚醒した時には1日過ぎており看病してくれていたアストレアの話によるとずっと魘されていたようだ。
「あの時は食事でまた意識を失うとは思わなかったぜ」
「以前にもあったのね。似たようなことが」
「ああ、あの時もマジで死ぬかと思ったぜ」
古城は思い出したのは浅葱や矢瀬や姫柊や妹である凪沙たちの協力の下進級が掛かった補習の勉強をしていた時に夜食を準備しようとした時に不幸にも停電になり、ガチの闇鍋が始まってしまいしかも調理をしたのは中学時代のヴァレンタインの時大勢の同級生を食中毒にした前歴がある浅葱だった。姫柊が一緒に調理したが努力虚しくヤバい鍋が出来上がってしまい、姫柊を除いた全員が全滅してしまったのだ。
リューの料理は浅葱と悪い意味で同等の危険性を秘めているのだ。
「ところでどうだったかしら?いい気分転換になったかしら」
「まぁ、 そうすね。ただやっぱり早くこんな状態をなんとかしたいすね」
「そうね。でも焦ってはダメよ。焦りは隙を作って余計に相手の思う壺だわ」
「…そうすね」
「さて、夕食が完成するまで時間があるから。私の話し相手になってちょうだい」
こうしてアストレアの話し相手をしていると巡回をしていたアリーゼ達が帰ってきたり、いつの間にか夕食を完成させていたネーゼがすごい目つきで古城を見ていたりと日常になりかけていた日々を過ごしていた。
???side
全ての人々が寝ついた夜。城壁の上にとある少女が立っていた。
「暁先輩、どこにいるんですか」
そう呟いた少女は誰かを探しているようだ。
「はぁ、またどこかで女の人を口説いているんでしょうか」
そんなことを呟いて、彼女は外壁から去っていた。
彼女が探し人と再会するまでそう時間は掛からないだろう。
???side end