正義の眷属たちと第四真祖   作:琳華

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 第8話 お茶会と監視役との再会

休暇を終え、再びアストレアの護衛をしながら孤児院の子供達と共に商店街で炊き出しをしていた。

 

「どうぞー」

「美味しいスープです」

「古城お兄ちゃん、これくらいでいいの?」

「ああ、そのくらいでいいぞ」

「古城にいちゃん、腕疲れた」

「じゃあ、代わるからこっちで休んでろ」

 

完全に兄貴分の古城は子供達に頼られながら、炊き出しを頑張っていた。

 

「そろそろ無くなるな。もうちょい頑張るぞ」

「「「おおーーー」」」

「うふふふ、古城は本当に面倒見がいいわね」

 

そんな光景を微笑みながらアストレアは見ながら、手伝っていた。

そしてスープを配り終えて、片付けをしていた。

 

「アストレアさん、今日は知り合いとお茶会をするんじゃなかったか?」

「ええ、そうよ。でもまだ時間はあるから大丈夫よ」

「そうすか?でもなるべく急いだ方がいいすよね」

「あら、気にしなくていいのに」

「なんか、古城にいちゃんとアストレア様ってママとパパみたい」

「え?」

「危ねえ」

 

子供の無邪気な言葉にアストレアは動揺し、持っていた鍋ごと転びそうになり近くにいた古城が抱きしめるように支えた。

 

「大丈夫すか、アストレアさん」

「え、ええ。ありがとう、古城。でも、顔が近いわ

「ん?何か言いましたか」

「いいえ、何でも、ないわ」

「だいじょうぶ、アストレア様」

「ええ、大丈夫よ。古城が助けてくれたから」

 

予想外に顔が近かったのかアストレアは頬を赤く染めていたがそれに古城が気づくことはなかった。

その後は子供達の協力があった為に早くに片付けは終わり、アストレアは約束がある為に古城に孤児院まで子供達の護衛を頼んで、自分は約束の場所に向かうことにした。

 

「古城なら心配ないと思うけど気をつけてね」

「まぁ、それは良いんすけど…俺一応アストレアさんの護衛が仕事なんすけど」

「大丈夫よ。目的の場所は此処から近いしそんなに時間もかからないから」

「それよりなんでさっきから顔を逸らしてんすか」

「き、気にしないでちょうだい」

「そ、そうすか」

 

古城は先程から顔を合わそうとしないアストレアの態度を不思議に思っていたが特に気にする様子もなく子供達と共に孤児院へ向かった。

 

「ふぅ、古城に心配をかけちゃったわね。でも……」

 

抱き抱えられた時のことを思い出し再び顔を赤くする。アリーゼ達がこの状況を見たら「アストレア様が街中で恋する乙女してるわ!!」と騒いだだろうが生憎此処には彼女の眷属達は誰もいないので騒ぎになることはなかった。

 

 

お茶会side

 

孤児院の子供達と古城と別れたアストレアは都市第一区画の小洒落た喫茶店に訪れていた。

 

「ごめんなさい、遅れてしまって」

「ホンマ遅刻やで!うちを待たすなんて、随分偉くなったなぁ、アストレアぁ?」

「率先して三下に成り下がろうとするの、流行りなの、ロキ?」

 

待ち合わせ場所に居たのは二柱の女神である。まるで三下のチンピラのような言動を取っていた朱髪の糸目の女神の名はロキ。そんなロキの言動に少し呆れたような態度の銀色の髪の女神の名はフレイヤ。

二柱の女神こそ当代のこの都市の象徴たる二代派閥の主神たちである。

 

「アストレアは、また子供の面倒?」

「ええ。孤児院に少し。後は商店街の手伝いを。孤児(こども)達の力を借りてスープを作って回ってきたわ」

「かーっ、出たわー。『正義』なんか知らんけど自己満足の偽善〜。うちも大概やけど、少しは女神としての自覚を持てや」

 

フレイヤの問いかけに答えながら席に着くアストレア。その答えにすかさずロキがいちゃもんをつけ、そんなロキの態度にアストレアは苦笑いを浮かべていた。

 

 

「貴女が大好きなお酒でくだを巻くのと、似たようなものよ。これは私の趣味のようなもの」

 

そう答えながら続けてこう言った。

 

「それに、眷族(アリーゼ)達が都市のために戦い続けている。それなら主神である私も何か行動を起こさないと示しがつかないわ」

「……その純粋(ピュア)面が気に食わないって言うとるんや。同じ鼻につく神でも、即実力行使の純潔神(アルテミス)の方がまだマシや」

 

先程までのふざけた様な態度をやめ、ロキは顰めっ面を浮かべて、吐き捨てた。

 

全知零能(いま)のうちらじゃ、下界全部に公平に接することなんてできん。エゴとわかった『正義』の実践……うちは自分のことは好かん」

 

ロキにそう誹謗されたアストレアの表情は悲しそうな慣れてしまったかのようなものであり、同時に『正義』の過程と本質を知る者の眼差しをしていた。

故にアストレアはロキからの誹謗を甘んじて受けていた。

 

「別に良いじゃない。私は好きよ、下界でしか出来ない無駄のこと。私も今度アストレアの真似事をしてみようかしら」

「ったく、どいつもこいつも……。こんな偽善者と色ボケが子供達の間で人気なんやから、下界()も末やな」

 

アストレアのことを擁護してるんだかしてないんだか分からない言動をするフレイヤにロキはうんざりした様な表情をしていた。

 

「……でも、私がこの『お茶会』にお邪魔して良かったの?私の【ファミリア】は、貴女達よりずっと勢力がしただけど」

「ただ駄弁って情報を共有するだけや。不真面目な神々(連中)より、糞真面目に警邏をしとる自分のとこの方が情報も見解も豊富やろ」

「それに、私は貴女個人のことを気に入っているわ。眷族も粒揃い。アストレアの子じゃなかったら、奪っていたもの」

「やめろや、その悪癖!ホンマいつかイシュタル辺りと全面戦争しそうやな、このクソ収集家(コレクター)は!」

 

不穏な発言をしていたが、ロキの主張はこれはギルドの集会でも優位合戦(マウント・ゲーム)でもなく、あくまでもこれは『世間話』であると言うことらしい。

フレイヤもフレイヤなりにアストレアのことを認めている。

その上で正義の派閥としての見解も欲しいようだ。

 

「褒め言葉として受け取っておくわ、フレイヤ。でもそれならガネーシャは?子供達が憲兵として活動している彼の意見こそ、必要じゃないかしら」

 

そんな彼女の質問に2人は端的に答えた。

 

「「うるさいから、呼ばなかった」」

 

そんな2人の答えにアストレアは苦笑いしか浮かべることが出来なかった。

 

閑話休題

 

 

「それじゃぁ、『お茶会』の始めましょうか。ロキ、貴女、ヘルメスの所に依頼を出したのでしょう?」

 

先程までの空気は何処へやら、真面目な雰囲気になりフレイヤが話を切り出した。

 

「ああ。ま、うちやなくてフィン達やけどな。此処に来る前に【万能者(ペルセウス)】が1人、館を訪ねてきたわ」

 

ロキはそれに頷きながら答えた。

 

「まあ、話によるとや。都市外で闇派閥(イヴィルス)の下部組織、その動向を掴んだそうや。フィンの読み通り、神から『恩恵』を授かってない非戦闘員……所謂『信者』を大量に使役して、外部活動をさせとるらしい」

 

そんな報告を聞いてアストレアは顔を曇らせていた。

 

「それは、つまり……」

「ああ、略奪に脅迫……主に暴力で、勢力を拡大しつつあるってことやな」

「はぁ、いつの時代も『信仰』や『布教』と言うものは私達からしても恐怖を覚えることがあるわね」

「まあ、それと同時に哀れやと思うけどな」

最強(ゼウス)最凶(ヘラ)がいた頃無茶させていたツケが回ってきたのね」

 

フレイヤはヒトの盲信的な性質に恐怖し、ロキはそんなヒト達を哀れに思い、アストレアは過去の行いを悔いていた。

 

「更に報告よるとなその信者達の中でも一際きな臭い動きをしてる組織があるみたいやな」

「動いている場所は?」

「オラリオの遥か南方……『デダイン』の地域や」

「デダイン……デダイン、ね。嫌な名前。あまり思い出したくないものですらあるわ」

 

ロキから発せらた地名を聞いてフレイヤは目を瞑る。

 

「ヘルメスんとこが嗅ぎ回った限りでは、これと言って騒ぎを起こしとる訳じゃないらしいが……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ひたすらに、な」

 

アストレアはそんなロキの言葉に不穏という二文字が頭に浮かんだ。

それはフレイヤも同じなのか少しばかり顔に陰りが見えた。

 

「……真意がよく見えない。闇派閥は都市外の地域まで巻き込んで、いったい何をしようとしているのか……」

「そうね。ねえ、アストレア。聞いた話によると最近の襲撃で『撃鉄装置』が闇派閥に盗られているようね」

「ええ。そうよ」

「エルフの住む妖精の森からは『大聖樹』の枝が盗まれているみたいや。そしてデダインでの暗躍……ホンマきな臭いや」

「目的が一向に見えてこないわね。此処までくると不気味ね」

 

フレイヤは気味悪がっっている。

 

「撃鉄装置に関しては私が新しく迎えた眷族がある仮説を立てたわ」

「あら、いつの間に迎えたのかしら」

「それでその仮説ってなんや」

「自爆装置ではないかって話よ。その子の話によれば遠隔ではないにしても人目につかない物や何かに偽装すれば油断した私達の眷族に被害を与えるつもりかもしれないわ」

 

アストレアは古城が話したことと自分の仮説を混ぜながら2人に話す。

 

「そんあことはあり得るのかしら」

「闇派閥の考えなんてうちらでいくら考えても分かるわけがあらへん」

「そうね。でも一応警戒だけはしておいて」

「そうね、私も眷族(こども)達にも気をつけるよう話しておくわ」

「うちもな」

「ええ、よろしくね」

 

アストレアの助言にロキとフレイヤ頷く。

 

「そうなると、物資の方ね。最近の闇派閥は物資に余裕があるように見えるわ」

「そんなもん考えんでも答えなんて決まっとるやろ。商人や。闇派閥に協力してる商人がおるんや」

 

グラスに注がれている酒を見つめながらロキは断言する。

 

「それにオラリオを『無法都市』に変えたい連中がおるのは確かや。『ギルド打倒』を謳ってな」

 

見つめていた酒を煽るロキの表情は酒の苦味とは違う苦さに顔を顰めていた。

 

「オラリオでは怪物の宝(ドロップアイテム)の商談は認められていても、『魔石』に関わる商いの一切は許されていない……」

「ああ。迷宮都市でありながら迷宮(ダンジョン)に関わる商売は制限されとる。多くの商会にとって、ギルドは目の上のタンコブってやつや」

「莫大な魔石製品産業、その権利を独占するギルドが倒れれば、自分達が代わりにそれを牛耳ることができる……そういう腹ね」

 

アストレアが指摘し、ロキが頷いて、フレイヤが結論する。

3柱の女神達(彼女達)が言っていることは正しい。オラリオが世界の中心と言われる所以を担っているのは間違いなく魔石製品産業であり、それは金よりも遥かに価値があるものである。商人がそれに目を向けないはずがない。

商人とは利益のためなら『戦争』を利用し、『命』すら犠牲にする。そう言う人種なのだ。

 

「悲しい、としか言えないわ。目の前の利益の為だけに、オラリオの混沌を助長させているなんて……」

「まったくや。溜息も売り切れになる。もうちっと、視野を広げて欲しいんやけどなぁ」

 

商人たちの考えに嘆くアストレア。ロキもそれに同意しながら、うっすらと目を開いた。

 

「ギルドが倒れたら誰がダンジョンを管理する?冒険者が死んで、誰が『終末の厄災』____『黒竜』を討てる?」

「オラリオの崩壊は下界滅亡と同義(イコール)……少し考えれば幼子でも分かる世界の境界線」

 

世界の実情を問うロキ。それにフレイヤ答え続ける。

 

「欲望を追求するために、自分達が住む世界を滅ぼす。子供達__『人間』らしいと言えば、とてもらしいのだけど」

 

フレイヤはそう言葉にしながら魔女の如く、愉快そうにそして皮肉そうに薄く笑った。

 

「でも、分からない事があるわ。何故、今になって商人達は闇派閥に投資し始めたのかしら」

「確かにアストレアの言う通りやな。この都市を本気で転覆させるつもりならいくらでもチャンスはあった筈や」

「ええそうね。特に8年前……『ゼウス』や『ヘラ』が倒れ、この『暗黒期』が始まった直後なんて絶好の機会だった筈」

「そうや、それ以外にも所々でチャンスなんてナンボであったんや」

 

この疑問に女神達は考えを巡らす。

最初に口を開いたのはロキだった。

 

「まさか、いるちゅうんか。ほんまに『冒険者に代わる勢力』が」

「どう言うことかしら、ロキ」

「フレイヤ、自分とこの眷族から聞いとらんのか。超硬金属(アダマンタイト)の障壁が破壊された話は」

「聞いてはいるわ。でも本当にそうなの」

「でも、筋は通っているわ。彼らの背後に『強大な存在』がいるとすれば商人たちが今になって投資し始めたことに納得できる」

「でもこんなこと下界の子供達が考えつくとは到底思えないわ」

「__けど、それなら理屈も通る」

「ここにきて闇派閥の不穏な動き、商人達との結託……力を持った『旗頭』の存在」

「都市外の暗躍も含め全ては繋がっている……」

 

結論が出ると同時に3柱(さんにん)は顔を見合わせる。

 

「これは、()()()()

「ええ、いるわ。間違いなく」

「そうやろうな。見え隠れしてるみたいやけど、確実におるで。こそこそ裏で全ての糸を引いとる」

 

口から出てきた言葉は同じだった。

 

「「「__厄介な『神』の影が」」」

 

お茶会side end

 

孤児院の子供達を送り届け、子供達が昼寝をすまでの間面倒を見ていた古城はアストレアのもとに向かっていた。

 

「流石にもう終わってるよな。お茶会」

 

アストレアにもしもの事があれば彼女を慕うアリーゼ達に何をされるか分からない為、なるべく急ぐことにした。

 

「やっと見つけました、暁先輩」

「え?」

 

その声は本来ここでは聞くことの出来ないものだった。何故ならこの世界に来た時、彼女は隣の自室にいたのだから。

 

「なんで……」

 

久しぶりに見るその姿は酷く懐かしく感じた。彩海学園の制服にギターケースを背負う姿はこの世界ではすごく目立つが、古城にとっては当たり前すぎて自然に見えた。

 

「ここにお前がいるんだよ……姫柊」

「なんでって私は第四真祖の、先輩の監視役ですから」

 

ここに再会はなされた、世界最強の吸血鬼とその監視役の。

これより正史とは異なる運命が訪れる。古城と彼女達が関わることで都市が、暗黒期が、アストレア・ファミリアがどのような結末を迎えるのか。それはまだ誰にも分からない。

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