前回のあらすじ
シール連邦共和国空軍に従事している戦闘機パイロットのアレックス、本名:アレクサンドルとその後輩であるアーリャ、本名:アリサは整備員のエレーナやグレゴリー、ニコライとともに戦闘機の格納庫で雑談をしていたところ、北方海域に敵戦闘機を発見したとの連絡が入り、離陸し飛行を続けていた。
ずいぶんと北の方なんだな、とアレックスは操縦しながら思った。元々シール連邦自体が緯度が高く、北側の沿岸は氷が多いのだが、早期警戒レーダーによるとその海域に敵編隊がいるとのことらしい。ただ、敵編隊がいる海域は他国、特に現在シール連邦と戦争状態にあるドルフィン共和国にはあまりにも遠い上、温度もかなり低いため普通に考えれば陸上基地から到達したという可能性はかなり低い。となると…
「…やはり空母か。」
自軍空母から発艦した早期警戒機から、北方海域には敵空母1隻と敵駆逐艦2隻がいて、4機の敵編隊は空母から飛び立ったものだとの連絡が入った。
「ということは…フラヴィM*1か?」
フラヴィM…ドルフィン共和国の主力戦闘機であるフラヴィは、短距離離着陸が可能で、1人乗り用のフラヴィA、2人乗り用のフラヴィB、空母に載せることができる1人乗り用のフラヴィMの3種類に分けられる。
今回アレックスとアーリャが装備しているのは中距離空対空ミサイル「R-57」が4発、短距離空対空ミサイル「R-55」が4発、500lb*2の精密誘導爆弾が2発と増槽*3が1つ。それと、30mm機関砲が300発。現代では中距離ミサイルによる視程外戦闘が主流になったとはいえ、やはり
HUD…ヘッドアップディスプレイを見るとレーダー表示に反応があった。
「1、4機のフラヴィMをレーダーコンタクト、BRAA 3-3-0、距離20マイル、高度20000フィート、ホット。そっちはどうだ?」
「2、こちらもコンタクト済み。とりあえず1機ロックオンしてR-57を撃ちましょう。」
アレックスとアーリャはそれぞれ別の機体をロックオンし、トリガーを引いた。
「「FOX3」」
数十秒後、また互いに連絡を取った。
「アイスブロッカー2、
「こっちも撃墜を確認した。グッドキルだ、2。」
レーダーによると残りは2機。しかし、もう一回ロックオンし直し、ミサイルを撃とうとしたとき、レーダー警報装置が作動し、機内にけたたましいアラームが鳴り響いた。
「くそっ、ロックされた!2、チャフだ!チャフを撒け!」
「2、ウィルコ!」
二人は散開しながらチャフと呼ばれるミサイルを吸い寄せるためのいわゆるダミーのような金属を機尾から発射した。ロックが外れた...?と彼が思った次の瞬間、7時の方向から爆発音が聞こえた。
「2!聞こえているなら返事しろ!」
「聞こえていますよ、1!」
おそらく、先ほどの爆発音はミサイルがチャフに吸われて爆発した音だろう。言い添えておくと、中距離ミサイルを回避することができるのは一種の奇跡と言えるであろう。特に今回のミサイルはアクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)と呼ばれる誘導方式で、回避が非常に難しいものだった。
HUDを見ると敵機は気づけば前方約7kmまで接近していた。遷音速でならわずか1分強で7kmまで距離を詰めるのも可能だ。もちろん約7kmまで距離を詰めたのなら、ここから先は
「1、マージ ウィズ フラヴィ!」
マージとはドッグファイトを開始する、という意味のコール。彼はドッグファイトをアーリャに宣言したのち、胴体下部にあった増槽を投棄した。
格闘戦は前述のとおり戦闘機が機関砲や短距離ミサイルを使い戦闘するというものだが、なぜドッグファイトと云われるのか。英語にするとわかりやすいかと思うが、Dog fightと表記する。格闘戦は後ろについた戦闘機が有利となり、パイロットは全員敵機の後ろに回り込もうする。その姿がまるで
アレックスは敵機の後ろへ回り込み、短距離ミサイルの発射を準備し、シーカーを開いた。特徴的なノイズを注意深く聴き、音程が高くなったところで…
「アイスブロッカー1、FOX-2 to Flavy!」
最終的にはミサイル自身が赤外線を頼りに敵機へ向かうミサイル、赤外線誘導ミサイル(IRHミサイル)を放つ「FOX-2」をコールすると同時にトリガーを引きミサイルを彼は放った。
翼端パイロンから射出されたミサイルは独特の軌道を描き、敵機へ…ヒットしなかった。フレアという囮に吸われたのだ。
「フレアか、ダルいな…。というかこの距離なら
レーダーレティクルの中にフラヴィを合わせ、後ろから追い越すタイミングで30mmの鉛の塊をバリバリと吐き出すと、少しばらけた弾が敵機に直撃し、炎上しながら真っ青な大海へ堕ちていった。
「スプラッシュ ワン バンディット。」
「グッドキル、1。私も続きます、ねっ!」
アーリャが無線でそう言うと、もう1機のフラヴィと交戦を開始した。彼女はアレックスのように機関砲では撃墜せず、近距離空対空ミサイルで撃墜した。
「グッキル、2。じゃあ基地に...」
「ストップ!」
アーリャがアレックスの発言を遮った。どうやらもう一つのミッションがあるようだ。
「忘れてませんか?AI(航空阻止)。」
彼の頭の中には「基地へ帰投する」という考えで埋まっていた。だからアーリャの発言を必死に追い出そうとしたのだが…。
「こちらセンスク基地司令。1、AIミッションを忘れたとは言わせないぞ?」
基地司令からの思わぬ(?)援護射撃を受けてしまったアレックスはいよいよ逃げ場がなくなり、航空阻止ミッションをこなさないといけないこととなった。
巡航すること10分、2人のレーダーには1隻の敵艦が表示された。
「2、艦艇が、しかもレーダー的に空母なんだけど、1隻で出撃するなんてことがあるか?」
アレックスが疑問を呈する。
「ドルフィンの方も先の海戦で出撃させた2個艦隊10隻のうち8隻が撃破されたという情報が入ってきていますから、そこまで不思議な話ではないかと。」
アーリャがアレックスの疑問に対しての彼女なりの返答を淡々と話した。
「ふーん…。ちなみにその2隻の詳細は?」
「空母が1隻と駆逐艦が1隻、だそうですよ。」
2人はまもなく空母がいる海域の上空に到達する。今回投下する4つの精密誘導爆弾はすでに母機で目標を補足していて、あとは投下するだけだという。2人は急降下し(精密誘導なのでする必要はそこまでないが)、アレックスが先に爆弾を2つ投下した。
「1、ボムズアウェイ。2も続け。」
「2、了解。ボムズアウェイ。」
2人はそれぞれ爆弾を投下した後、揃って濃色シールドを降ろし、操縦桿を一杯まで引き、急上昇した。もちろんスロットルを全開にしないと墜落する恐れがあるので、アフターバーナーを使用する。2人から感じ取れるのは声にならない悲鳴。体重の数倍にもなる重力が2人にはかかっている。少しでも気を緩めれば命を落とす恐れがある。
「ッはぁ……はぁ……。」
うまく酸素が全身に供給されていなかったようだ。しかし、苦しい飛行を終えると、頭上には空ではなく青い海が広がっていた。そこに浮かぶ、黒煙を放つ朱色の灯り。沈んで行っている様子はないが、大規模な火災が発生しているのはコックピットからも見てとれる。
「こちら1より司令、BDA報告:計4発の爆弾を投下、航空母艦を大破、しかし2,000lbではさすがにやりきれませんでした。BDAオーバー。」
アレックスは戦果を無線で司令に報告する。するとすぐに返答が。
「BDAレシーブド。まぁ、そうだろうな。気をつけて帰投してくれ。」
「1、ラジャー。2、今から帰投するぞ。」
「2、アイコピー。」
2人は操縦桿を真横に倒し、機体を180度回転をさせてからスロットルを100%…いや、110%、アフターバーナーを使用し所属するセンスク基地に向かって全速で巡航していった。
3,400文字を超えてしまったんですわ。
今度は海でも書こうと思っておりますわよ!