TCG世界で、俺は神になる(MtGでいうPW的な意味で) 作:衝動書きする人
アバター・ゴッド・ウォー。略してAGWは
その理由として、遊戯王世界でもあったように見た目がド派手なのだ。専用の機械を使ってカードをスキャンし、スキャンされたカードは質量のある立体映像となって戦闘を魅せる。プレイヤーもモンスターの援護として神の力を使うことができるのだとか。
ルールも遊戯王やらMtGやらからルールを拝借されたようなものだ。生き物はモンスター、魔法は神力と呼ばれており、フィールドはモンスター5体を上限とし、デッキ、墓地、除外、
ここまで来たらほぼ遊戯王と同じように見えるが、このゲームの特徴としてあまり見慣れないものが採用されている。このゲームはいわゆるマナを利用するゲームなのだが、大体のゲームだとマナを使用するゲームは土地カードや手札のカードをマナとして1ターンに1度マナゾーンにセットしてだんだんと動けるようになっていくのが普通なのだが、このゲームはスタート時にすでに10マナを保持しており、基本的にそこから減ることも増えることもない。簡単に言えば遊戯王の召喚権や魔法罠の使用に物理的に制限をかけたようなルールとなっている。
だから遊戯王みたいにしょっぱなから強いモンスターを場に出すこともできるし、強力な神力を使うこともできる。その分マナも多く消費するのだからそれがいいのかは状況によりけりなのだが。まぁそこはデッキによるものだからここでは割愛しておこう。
AGWの世界観もシンプルだ。プレイヤーは神であり、神にも順位がある。ある日、最高神が死んでしまい、それに伴って順位もないものとされた。故に、その後釜ならぬ枠をつかみ取ろうと戦うのだ。しかしプレイヤーたちは腐っても神。神同士が戦うといくつもの世界が滅びかねない。だから、自分の世界を作ってそこの世界の
猛攻の赤。謀略の青。豊饒の緑。生命の黄。平等の白。残虐の黒。基盤となるこの6色の世界がさらに細分化され、自分はその細分化された世界でモンスターを育てる。育てたモンスターを使って神同士で戦う。モンスターだけでは味気ないとして規格化された神の力も使うことができるのだとか。
そんな、TCGプレイヤーからしたら夢のような世界に俺は転生したのだ。なんでこんなにもホビーアニメめいた世界に転生したのか。前世の記憶もやや曖昧気味で死んだ原因も覚えていないのだが、まぁ中世ヨーロッパのような世界観じゃなく、近未来世界に転生できたのはとても幸運だった。だって風呂とかトイレとかエアコンとか存在してない世界とか、現代人だった身としてはとても耐えられないだろう。そういう意味では現代より未来に生まれることができたのは真面目に幸運だったと思ってる。
それに、どういうことか50年以上も歴史のあるゲームだと言うのに、いや覇権を握ったが故に競合相手がいないせいか環境インフレはほとんどないようなものだ。さすがに遊戯王デュエルモンスターズ時代とまではいかないが、アニメ世界のGX時代~5D's時代の間ぐらいのインフレ具合と言えばその穏やかさの異常さもわかるだろうか。え?カオス?マキュラ?いや、アニメ世界を基準にした話であってOCGの話をされても困る。(震え声
まぁ要するに、何が言いたいのかと言うとこの世界脳筋による殴り合いが普通なのだ。より攻撃力の高いモンスターを。より迫力のあるモンスターを。そんな感じでステータスis神みたいなGX民度が当たり前の世界になっている。
それが悪いとは言わない。実際ステータスは大きければそれだけ有利なものだ。それを考慮するのは至極当然の話だ。問題なのはGX民度、要するにステータスが低い=雑魚という認識でいること、そしてよくある話として挙がってくるだろう、TCGの世界観特有の色蔑視も存在しているのだ。
色蔑視は、まぁ簡単に言えばTCGの世界観をそのまま現実の世界として捉えている文化が存在しているのだ。何を馬鹿なことを言ってるんだ、と言うかもしれないがこれにも1つ理由が存在している。それが立体映像だ。なぜ?と思うかもしれないけど、よく考えてほしいんだけど、映像とはいえ目の前でグロテスクな映像を流されたら大概の人は不快に思うだろう?それが人為的に行われたとしたらその原因に攻撃的になるのは、まぁ現代でもSNSを見ていれば理解ができなくとも納得できるだろう。
そういうわけで、とりわけネガティブなアクションを主に起こす黒がその影響を受けており著しく人気がない。皆無とは言わないが他の色に比べて何十倍も、下手すれば百倍以上の人口の差があると言えばわかるだろうか。これも感覚的なものでもなく、少なくとも俺の周りで黒のカードを使っている人を見たのは15年生きてきた中で両手で数えられるぐらいだ。
さて。なんでこんなことを言いだしたのかと言うとだ。俺がその黒をメインにしたデッキを使っているからだ。
マナ以外にもコストはかかるものの、単純な破壊効果と言うのは便利なものだ。俺自身コントロール系のデッキが好みなのもあるし、なにより黒のカードは需要がとても低いがゆえに安いのだ。前世では成人したTCGプレイヤーだったこともあり、完成度の低いデッキを使うことに若干の抵抗感があるのだ。妥協したデッキを使って負けることのくやしさを思えば多額のお金を使ってでもデッキを完成させたいと思うのはどのTCGでも共通しているだろう。
だからこそ、コントロール系統のデッキが好みでお金が比較的かからずに完成度の高いデッキを作ることができる黒のカードと言うのは俺にとってとても魅力的なのだ。黒の世界観も結構好きだしな。
まぁ、そんな理由もあって俺は珍しい黒のカードを使う人物としてある程度の認知があるのだ。もちろん悪い方向でだ。
「あれが黒のカードを使う……」
「見るからに根暗なのがわかるよね……」
「なんだってあんなのが……」
15歳の4月5日。エイプリルフールも終わり、入学式も終わった今、俺は2度目の高校生活を過ごすことになった。大学ならともかく、県外の高校なんて行く余裕も大きな理由もない家庭出身の身だから近くの県立高校に入学したのだが、まぁ黒のカードを使っていることがわずか4日で広まったからかわざとらしく聞こえるようにひそひそと会話をしているのが聞こえてくる。
まぁ、こんな感じで黒のカードを使っているだけで陰口を叩かれるのは当たり前となった現状もう何かを感じるような時期は通り過ぎたのだが。いくら地元の人も結構な割合で入学しているとはいえ話が広まっていくの速すぎやしないですかね?田舎のおばちゃんたちの噂話並に伝わるの速すぎじゃないだろうか。幸か不幸か、今までで直接的な被害、物を隠されたり暴力を振るわれたりと言ったいじめ行為を受けたことはない。代わりにTCG世界特有のケンカは数えきれないほど受けているのだが。
「おい」
ひそひそ声に意識を割くこともせず、帰りにアイスでも買い食いしようかな~等と窓際の席でボーっと空を眺めながら考えている中。背後から威圧的な声がかかってきた。あぁ、これはいつものあれだな。なんて思いつつ声のしたほうを向く。そこには緑色の髪をオールバックにしてこちらを睨みつけてくる筋骨隆々の大男、まぁ制服を着ているのを見るに同じ生徒なんだろうが、がいた。
「テメェ、黒のカード使いだろ。ちっと面かせや」
グイ、と教室から出るようにと顔を動かして指示してくる大男。同時に教室内が葬式かと思うぐらいの沈黙が支配する。またか、と高校生活が始まってからは初めてになるが通算となると数えるのも億劫になるほどのお誘いに思わずため息が出る。俺の様子にイラっと来たのか額に青筋が出てきたがそれでも何も言わずに俺を睨みつけてくる大男。
「わかったよ。行くから待てって」
ゴソゴソと
『1年C組黒井正行。認識成功しました』
俺の学年とクラス、名前を読み上げる機械を確認してその場から離れる。流れるように大男がデッキケースをかざすと、俺と同じようにデッキケースを機械にかざす。
『1年B組緑山和也。認識成功しました』
俺の時と同じように画面と機械音声が流れる。その後、数秒の間音声も何もなかったが、入力が途切れたことを確認した機械はそのままジーっという機械が動く独特の音を数秒流し、ピッという音と共に画面が開かれ機械音声が流れる。
『マッチングに成功しました。東、1年C組黒井正行。西、1年B組緑山和也。Eコート受付まで移動してください』
それだけ流れるとプツン、と言う音と共に画面が真っ黒になる。マッチングが成功したことを確認した俺と大男、緑山はお互いに何も言わずに指示されたコートまで移動する。移動するのは地下廊下みたいなところであり、壁に大きくEの文字と東と西の文字、そして矢印が印刷されたT字路まで着くと俺は東の方を向いて歩みを進めようとする。
「テメェは俺がブッ倒す」
別れる寸前、緑山が俺を威嚇するように睨みつけながらそういうとそのままEコートの西へと歩みを進める。言動は荒いが意外と礼儀正しい方なんだな、とのんきなことを思いつつ止めていた足を動かす。そしてリフトのある場所まで歩みを進め、そのままリフトに乗ってリフトについている機械にデッキケースをかざす。ピピッと機械音が鳴ると同時にガゴンッと安全バーが地面から生えてリフトが動き出す。そのままジッと待っていると、真っ暗な部屋に着いてリフトが止まる。安全バーが下がっていく音を聞きながら目を閉じていると、瞼の裏から光がささるのを感じて目を開ける。
フィールドだ。多分前世の人でこの場を初めて見た人がいるのなら、全員同じことを思うだろう。俺の前にはゾーンが明確に分かれているAGWのフィールドが描かれている機械で出来た机があり、俺はデッキゾーンにデッキケースを突っ込む。
「ようやくだ」
カチリ、とデッキケースがはめ込まれた音を確認すると同時にスピーカーから緑山の声が聞こえる。
「あの時のリベンジ、ここで果たしてやるぞ!ハーミットフェイスゥ!」
「いやあの、その自称したこともない痛々しい名前で呼ぶのやめてくれない?」
『バトルエンゲージ』
俺が有名になるとともにSNSで名付けられた痛々しい名前を叫ぶ緑山に羞恥で発狂しそうになりながら冷静さを保とうとしながらツッコミを入れると同時にバトル開始の合図を告げる機械音声が流れた。