「ポッケ、あんまり気に病む必要はないよ」
いつもと変わらない、優しい声で。憧れの呪術師、フジキセキ――――フジさんは言った。
「君の術式はまだまだ発展途上だし、呪力操作の技術もまだ伸びしろはあるよ。これからだ、ポッケ」
「は、はは……ありがとうございます、フジさん……」
ジャングルポケットは、その手にした紙を、ぎゅっと握しりめた。
くしゃり、と紙が折れてしまう。
『呪術適性試験』。その右下には、『ジャングルポケット D(著しい適正不足)』と書かれていた。
――――何が、足りなかった?
フィジカルは申し分ないはずだ。ウマ娘なのだから。
ウマ娘と言うだけで、呪力を少し込めることができれば、たいていの呪霊――目安では、二級までの呪霊――は、祓う事ができる。
ほとんどのウマ娘には術式がない。そもそも数少ない呪術師の中で、さらに数の少ないウマ娘術師だが、その中でも術式をもつものはほんの一握りだ。逆に言えばそれは、ウマ娘がそのフィジカルで、呪力さえあればある程度呪霊を祓う事ができることの証左だ。普通のウマ娘にさえ、呪具を持たせれば、そこらへんのたいていの生活を脅かす呪霊を祓うことはできるだろう。
そんな中で、ジャングルポケットは、数少ないウマ娘術師の中でさらに数少ない、術式を持つウマ娘だった。
彼女は期待されていた。必ずや、優秀な術師となり、歴代の『最強』の一角に、その名を連ねることになると。
そして、彼女自身も。
絶対最強、とは言わないまでも、術師になって、フジ姐さんの隣で、戦えるようなウマ娘術師になりたいと。
だが、D。
それは、呪力さえ、まともに練ることができないという事を意味する。
たとえ、そのフィジカルで術師となることを認められたとて、ましてや『最強』への道など。
ジャングルポケット 術式:不明(未確認の術式)
激しく爆ぜるような呪力の性質を持つ。
精神的、身体的な能力における不備は見られないが、呪力操作能力が著しく低く、その影響からか、本人も術式の発動を意図して行えないほどに技術力が不足しているため、術師的な能力は低いと言わざるを得ない。
判定:D(著しい適正不足)
「……くそっ……」
アグネスタキオン 術式:構築術式
精神的な面に不安があるが、許容範囲内である。身体的な不備も見られない。
高い呪力量と出力、そしてそれを操る優れた呪力操作技術、想像力のため、呪術的、術師的能力は高い。
判定:B(適正あり)
「なんでだよっ……」
マンハッタンカフェ 術式:呪霊躁術
身体的な脆弱性がみられるが、改善傾向にある。
類まれなる強力なポテンシャルを有す術式と、本人自前の莫大な呪力のために、呪術的、術師的な能力はかなり高い。
判定:A(高度な適正あり)
「なんで……」
ダンツフレーム 術式:不明(未確認の術式)
精神的、身体的共に良好である。
呪力量は術師としては平均的であるが、強力な術式を持つほか、その協調性のため、術師的な能力は高い。
判定:B(適正あり)
「すみません、フジさん……せっかくの合同任務だったのに、足手まといになっちまって……」
「大丈夫だよ。いい働きだった。君のおかげで、今日の呪霊も払えた。ほら、動かないで。包帯を巻くから」
「
「決して自分を卑下しないで、ポッケ。君にはまだまだ伸びしろがある。大丈夫だよ」
「…………」
「ねぇ、ポッケちゃん、最近遊びに行ってないし、この後一緒ににんじんオッチャホイ食べに……」
「……わり、ダンツ。自主トレ、してくるわ……」
「最近根詰めすぎ、じゃないかな……ポッケちゃん……」
「……ごめん」すこしでもはやく、強くならねぇとだめなんだ
「……ううん、気にしないで……頑張ってね、ごめんね、邪魔しちゃって」
「ッぐああああああああっ……!!」
「っくそっくそっくそっ……!! 俺の術式ッ……! まともに動きやがれこのポンコツ術式ッ……!」
「くそっ、くそっ、くそっ……!! いてぇっ……! 呪力ッ……! 爆発するんじゃねぇッ……! 動けっ、マトモにッ……!」
「ッはぁっ、はぁっ、はっ、ああっ……!」
「ッ……ああっ……」
「頼むっ……! せめて、呪力っ……! てめぇだけでもっ、少しで良いからさぁっ……!」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「クソっ………………」