フジポケ呪術ダービー   作:ケンタ〜

12 / 17
フジポケ呪術ダービー #12 目覚めたポッケ

 熱い……

 

 苦しい……

 

 いて()ぇ……

 

 誰か……

 

 たす……け……

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!」

 

 飛び起きる。

 

 途端に、自覚する違和感。

 

(現実、だ……)

 

 なぜだろう。

 もう長いこと眠っていたような気がする。

 そして、長い長い、苦しい悪夢を見ていたような。

 

「はぁ、はあ、はぁ……」

 

 自分の現実を、本能が理解しようとする。

 

(ベッドの、上……?)

 

 ――――そうだ、確か……俺……

 

「任務で……」

 

 思いだされる、暗い校舎。

 

 何かの呪霊の群れに襲われて……倒壊して……気絶、して……。

 

「そのあと、オレ、何した……?」

 

 そのまま、ここに運ばれた……?

 いや……。

 なぜかそれはない、と直感できた。

 

 そのあとに、何か、あった。

 何か時間がが存在したはずだ、と。

 しかし、なぜか、うまく想起できない。

 

(いや、それより……)

 

 それよりも、今は重大に思えることがあった。

 

「ここ、どこだ……?」

 

 医務室のベッドではない……。

 

 薄暗い、個室の中。

 

 そして寝ているのは、ギシギシと音のする、パイプベッドだった。

 よくお世話になっていた、柔らかい学園のベッドではない。

 

「気が付いた?」

「!?」

 

 驚き、ベッドの上で跳ねてしまう。

 ギシリ、とベッドの骨組みが悲鳴を上げた。

 

 ベッドの左側に座っている女性。

 それが、ふふ、と微笑んで見せた。

 

「おはよう。よく眠れたかい、ジャングルポケットくん」

「誰、だ?」

 

 見覚えのない、葦毛のウマ娘……。

 

「そっか、覚えてないか」

 

 にやり、と微笑む。

 

「えっ……」

「いや、ちゃんと目覚めてくれてよかったよ。記憶は曖昧みたいだけど」

「……?」

 

 目の前のウマ娘が、ふふふ、と楽しそうに笑う。

 

「ごめんね、すこし取り乱しちゃって。わたしのことは、そうだな……チルとでも呼んでくれ」

「……? はい……?」

 

 ジャングルポケットは、曖昧に返事をした。

 

「あ、あのっ」

「ん?」

「ここって、どこなんだ? オレ、任務の途中でさ、助けてくれたことはありがたいんだが、仲間んところ戻らないと……」

「ああ……やっぱり、君、学園の呪術師なんだ」

「ああ、そうだ。……って、そういや、なんで俺ん名前知ってるんだ……?」

 

 ふふ、とチルは再び笑った。

 そして、来ていたジーンズのポケットから、何かを取り出す。

 

「ここに、書いてあったからね」

 

 ジャラリ、と取り出されたそれは、ドッグタグだった。

 

(俺とフジさんで作ったやつ……)

 

 いつか二人で一緒に出掛けたとき、とある商店街で、たまたまドッグタグ作成の体験会に鉢合わせたのだ。

 その時に、せっかくだからと、二人で造ったもの。

 自らの名前が刻印された同じものを、フジさんも持っているはずだ。

 

「ああ、大事なものだったかな? これはすまないね。君に返すよ」

「ど、どうも」

 

 それを取ろうと、右腕を伸ばす。

 

「いっ……!」

 

 激しい痛みが腕に走った。

 

「……てぇ……!」

 

 左腕で腕を抑え込み、ジャングルポケットはうずくまった。

 

「ああ、まだ傷が治りきっていないみたいだね。できる限りは治療したんだけども……」

「っ……マジで、ここ、どこ……! 何が、起こって……!」

 

 うずくまりながら、ジャングルポケットは絞りだした。

 

「ああ、無理に動かなくていい。君はシンボリルドルフと交戦していたんだから」

「え……!?」

 

 ジャングルポケットは顔を上げた。

 

(シンボリルドルフ……学園の中でも最強と称される実力を持った、一級術師)

 

「な、なんで俺が会長さんと……」

 

 対して自分は、術師として成り立つかもあやしい、四級呪術師だ。

 間違っても……悔しいことに、歯が立つ相手ではない。

 

「きみが特級呪物を取り込んだからさ」

「は……!?」

「……噂通りの声の大きさだね。やはり、そこも覚えていないのかい?」

「じ、自分が声デカいのは覚えてるっスけど……」

「いや、そこじゃなくてね」

 

 チルは頬を掻いた。

 

「まあ、百聞は一見に如かず、か。よいしょ」

 

 パチン、とチルは指を鳴らした。

 その瞬間、部屋に明かりがともる。

 薄暗かった部屋が、一瞬にして、コンビニの店内のようなまばゆい明かりに包まれた。

 

「うわっ!」

 

 思わず目をつぶった。

 しかし、それも徐々に慣れてくる。

 

 何度か瞬きをすると、チルののぞき込んでくる顔が目に入った。

 

「ほら、自分のここ、見てごらん」

 

 チルが、自身の右腕を指さす。

 

 ジャングルポケットはその通りに、自分の右腕に目を向けた。

 

 そして息をのむ。

 

「っ……! なん、だ、コレ……!?」

 

 黒い模様のような何かが、自分の腕に巻き付くように施されていた。

 

(こんなもん、オレ、彫ってなかったよな……? 髪にパーマかけたりはしてたけど……)

 

「そこだけじゃない。上腕も見てみて」

 

 Tシャツ――いつの間にか着替えさせられていた――の裾をめくる。

 するとそこにも、腕に巻き付く黒い模様が入っていた。

 

「なんだよ、コレ……!?」

 

 にやり、とチルは笑った。

 

「それが、取り込んだ特級呪物の副作用だよ」

「でも、オレ、そんなモン、取り込んだ覚えなんて……」

「いーや、君は取り込んだ。じゃなきゃ、その模様をどうやって説明する? そして……君がシンボリルドルフと戦った、という事も」

「っ……でもオレ、全く自覚が……」

「ふーむ」

 

 チルは自らの顎を撫でて、鼻を鳴らした。

 

「やっぱり、まだ混乱しているみたいだね。よし、分かった。まずは、ここがどこだか説明しようか」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。