フジポケ呪術ダービー   作:ケンタ〜

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フジポケ呪術ダービー #13 目覚めた場所は

「それで、ここが外なんだけれどもね」

「っ……!」

 

 断崖絶壁だった。

 高高度の涼しい風がひゅうっと吹く。

 ジャングルポケットはぶるりと震えた。

 

 まだ万全に歩くことのできない彼女は、片方の手に松葉杖を手にしていた。

 

「くぁ……」

 

 眼下を目にして圧倒されるジャングルポケット。その横で、チルがひとつあくびをした。

 ジャングルポケットは横のチルへ顔を向けた。

 

「んー……これで満足したかい?」

 

 こともなげに、そういって見せる。

 

「いや……えっと……」

 

 ちらり。

 断崖絶壁。

 下は、何十メートル先だろうか。崖下では視界の端から端までが、すべて緑の森に覆いつくされている。

 呪いの気配もない。都会特有の、憂鬱な呪いの霧で覆われているかのような感覚もない。

 つまりここは市街地から遠く離れた、山か森の奥かのどちらかだった。

 

 首を後ろへまわしてみてみると、切り倒された木々の中に立つ、簡素な掘っ立て小屋があった。さっきまで、自分とチルがいた場所だ。

 

「マジで、どこまで来ちまったんだ……」

「んー、大体、鎌倉森あたりじゃないかなー……」

「か、鎌倉……? 東の方か?」

「いや、北陸の方だね」

「北陸!?」

 

 ジャングルポケットは素っ頓狂な声を上げた。

 

「きみをシンボリルドルフから逃がす必要があったからねぇ……んん……ねむ……」

 

 ぐいーっ、とチルは伸びをした。

 

「ま、待ってくれ。教えてくれ。なんで、俺は狙われてんだ? 特級呪物、取り込んだっつっても……そんだけで、討伐対象にでもなんのか?」

「いやぁ、わたしは学園のウマ娘じゃないからねぇ。規則とかはわからないよ、それは。まあ、ひとつ言えることとすれば、君はマンハッタンカフェとアグネスタキオン、メジロラモーヌ、メジロアルダン、メジロライアンを重症に追い込んで、シンボリルドルフの左腕を奪ってるんだよね」

「……はっ?」

「これで納得したかい? 君は特級呪物を取り込んで、それを制御できずに、多くの術師、それも大半は一級術師に甚大な被害を与えてるの。『制御不能』と学園が判断するには十分。討伐対象になるには、十二分、ってところかな」

 

 まるで全身が発火したかのような焦燥。

 ジャングルポケットを襲ったのはそれだった。

 

「おい……待てよ。嘘だろ。それって、……本当なのか?」

 

 すがるような気持ちで、ジャングルポケットは聞いた。

 

 頬がひきつる。

 喉が急激に乾いて、頬を汗が垂れた。

 

(俺が……カフェやタキオンを……?)

 

 思ったように声が発せない。呼吸が浅くなる。

 

 ――仮にも、かつての自分が勝てる相手じゃないはずだ。

 強力な呪霊躁術。

 ありとあらゆるものをその頭脳で作り出せる構築術式。

 

 対して、呪力操作すら暴発してマトモに動かせない四級呪術師。

 

 本当だとしたら、やはり、呪物を――――?

 

 いきなり、百キロもランニングしたかのような気分だった。

 

「まあ、うそだと思えば……ここから抜け出すなり何なりして、学園にでも行って確かめてみればいいと思うよ。……熱烈な歓迎が待ってると思うけど」

「……!」

 

 とっさに自分の腕を見る。

 

 手首についている環の入れ墨のような模様。

 

 それを、指で数度、こすってみる。

 

「……君が寝てる間にわたしが落書きした、とかじゃないよ」

「分かってる! くそっ……! なんで、こんな……!」

「だから、特級呪物を――――」

「なんでオレは、そんなモン取り込んだ――――!?」

 

 しん、と場が静まり返る。

 

「はぁ……はぁ、はぁ……」

「……ジャングルポケットくん」

「なん、だよ……!」

「それは、君が、自らの手で取り込んだものだ」

「――――――――ッ!!」

 

 まるで、現実ではないようだった。

 

 今、自分は夢の中にいるのか。だが、先ほど目を覚ましたばかり。

 体を吹き抜ける風も、熱いこの体も、高鳴る心臓の鼓動も。

 痛いほど強く噛みしめている自分の歯の感覚も。

 

 ――――自分から立ち上る、制御できないほどに膨大な、この呪力も。

 

 それはすべて、現実そのものだった。

 

 

 

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