フジポケ呪術ダービー   作:ケンタ〜

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フジポケ呪術ダービー #4

「よけてライアン!!」

「ッああっ!」

 

 大砲のような音と共に、メジロライアンの体は木々の中に突っ込んだ。

 

「ライアンっ!」

「集中してアルダン! よそ見したら死ぬわよ!!」

「ッくっ……!!」

 

 ふっ、とアルダンが息を吹いた。

 その息からパキパキと音を立てて、氷の結晶が生み出され、それはみるみるうちに、巨大な氷塊へと化していく。

 

「ふっ!」

 

 その氷塊へと呪力が込められ、大砲のように射出された。

 

 それが向かう先は――――

 

「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 爆音が発され、氷塊にひびが入る。

 

 その瞬間、氷塊が、内側から爆ぜ、崩壊した。

 

「ぐっ……!」

 

 轟音は質量を有しているかのように、周りの一切合切を突風のように吹き飛ばす。

 木々は揺れ、アルダンとラモーヌは腕と呪力でその突風を避けた。

 

「アルダン! 耳を呪力で守りなさい!」

「わかりま――――」

 

 目前に、呪力の塊が接近した――ように、アルダンは錯覚した。

 

「な――――――――」

「アルダ――――――」

「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!」

「――――――――!!」

 

 耳、目、鼻、口から――アルダンの顔じゅうから、血が噴き出した。

 

「アルダン!!」

「ねえ、さまっ……!」

 

 倒れる寸前、アルダンは呪力の塊の首根っこをつかんだ。

 

 手にありったけの呪力を込め、掌に全力で術式を集中して発動する。

 

 その首元が、絶対零度の呪力で満たされ、凍結する。

 

(これで呪力の声を出すことはできないっ……!)

 

「アルダンっ!」

 

(作ってくれた隙を無駄には――――ッ!)

 

 その脚で、ラモーヌは一瞬で懐に飛び込む。

 

「ふっ――――!!」

 

 全力で、その手にしている斧に呪力を込め、首をめがけて振りぬいた。

 

 ガクン

 

「――――え?」

 

 斧は、首元をかすめた。すこしだけ、そこから血が噴き出している。

 

 ――太刀筋が、ズレた?

 

 いや――――脚が、動かない。

 

 自分の左脚が、地面に膝をつけた。

 

 ――やられた。斬られた(・・・・)

 

 力が、入らない。

 

「……一つだけじゃないのね、使える術式……」

 

 目の前の呪力の塊は、自らの首に張り付くアルダンの手をつかみ、張り付いた氷ごと引きはがした。

 

 ブチブチと、首の皮膚や筋肉が一緒にはがれる。

 

「……反転術式…………」

 

 数秒後、荒れた首は、すべて、まっさらに完治していた。

 

 その目が、ぎろり、とラモーヌに向く。

 

(回避を……!)

 

 まだ動く右脚に渾身の力を込め、斧を杖にして体を起こそうとする。

 

 しかし、相手の口が開く方が早かった。

 

(至近距離からの爆ぜる声……耐えられるかしら……)

 

 顔じゅうに、籠められるだけの呪力を籠める。

 

 敵の喉元に、膨大な呪力が集中しているのが感じられた。

 

「ラモーヌさんっ!」

 

 その声と共に、目の前のバケモノの姿がぶれた。

 

 次の瞬間、その体が向こうへと吹き飛ばされる。

 

 轟音と共に、バケモノは木々の間へと突っ込んで行った。

 

「ライアン……!」

「ラモーヌさん、大丈夫ですかっ……!」

「意地悪なのね……わたしの口から、それを言わせるつもり?」

「す、すみませんっ!」

 

(ホントに、丈夫ね、この子は……)

 

 マトモに攻撃を前面から食らい吹き飛ばされたはずのライアンは、そこら中に傷や血が流れていたが、ラモーヌの前に堂々と立っていた。

 

「た、立てますか、ラモーヌさん?」

 

 何かの術式――おそらく斬撃の術式で、上腿と下腿の間の腱が正確に斬られていた。

 

(暴走しているように見せかけて、ひどく正確で丁寧な攻撃……タキオンとカフェがやられるわけね)

 

 呪力を切断部に籠め、腱を強引に接着させる。

 

 激しい痛みが左脚を襲うが、それを顔には出さない。体を起こし、斧を構える。

 

「立てるわ。それより、集中して」

「は、はいっ!」

 

 敵へと注視する。

 

 吹き飛ばされたバケモノは、土煙の中で、何事もなかったかのように立ち上がっていた。

 

(かなり全力で殴り飛ばしたはずなんだけど……全然効いてないな。いや、反転術式……?)

 

 ライアンは無意識に、体に力を籠める。

 

(そもそも膨大な呪力なのに、強力な性質の呪力と術式……)

 

 その威力を体全体で体感しただけに、恐ろしさがよくわかる。あんなもの、もう何回も耐えられない。

 

「来るわよっ!」

「はいっ!」

 

 バケモノの全身に、呪力がみなぎる。そもそも嵐のように吹き荒れていたその呪力が、さらに爆発するように。

 

 これ以上、どんな攻撃がくるのか。今まで以上に、全力で身構える。

 

「――――領域展開」

 

「――――え?」

 

 メジロライアンの意識は、そこで途絶えた。

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