フジポケ呪術ダービー   作:ケンタ〜

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フジポケ呪術ダービー #6 ルドルフvsジャングルポケット

「っはぁ……はぁ……いったい、何だってんだよ……」

 

 木々に手をつきながら、彼女は歩いていた。

 いや、なんとか、歩いていた。

 喉は乾き、体中が軋み、頭は激しく痛んでいた。

 

「くそ……水……」

 

 ここがどこかはわからない。

 しかし、これだけ木がある場所ならば、どこかに川か、湧き水かがあるかもしれない……。

 

「てか……俺……なんでこんなとこに……」

 

 木。木。木。

 

 見渡す限りの、木々だった。

 

 そして緩やかな勾配の地形。整地されていない歩きにくい地面。

 

 ということは、山の中……。

 

(俺、学校にいたはずだよな……)

 

 どこかの学校で……同期のアグネスタキオンと、マンハッタンカフェとで、任務をこなしていたはずだ。

 

 そう、確か……。

 

「そうだ、呪霊に襲われて、瓦礫に……」

 

 直前に、マンハッタンカフェと一緒に、学校の中を探索していた最中。

 

 急にあふれるようにその場に出現した呪霊に飲まれて、建物が壊れて、それに巻き込まれて……。

 

「そっから……なんだ……?」

 

 気が付いたら、こんな森の中にいた。

 

 近くには、呪力で感じられる範囲には、どれもいない。

 

 一緒にいたはずのマンハッタンカフェの気配は、かけらもない。

 

(呪霊の術式で飛ばされた……?)

 

 それか、今、自分は何かの呪霊の領域の中に、巻き込まれたか?

 

 それなら、何かしらの呪力を感じるはずだが――――――

 

 ふと、どこかから水の流れる音がする。ウマ娘の敏感な耳が、その方向を教えてくれる。

 

「み、みず……」

 

 喉が、乾いて乾いてしょうがなかった。唾液を飲み込むと、喉が痛いくらいに。

 

 軋む体に鞭を打って、森の中を小走りで駆けていく。

 

(川だ……)

 

 水が流れる川が、そこにある。

 

 気が付けばそこにしゃがみ込み、手に水をすくっていた。

 

「んっ……ぐっ……うっ……ふっ……はぁっ」

 

 一度ではたりず、再びすくって、喉に流し込む

 

「ふっ……! んっ……!」

 

「はぁっ……! はぁっ……! ああっ……!」

 

 ようやくして、顔を上げて、息を整えた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 さきほどまで疲れ切っていた体が、水を飲んだだけで、まるで回復したように感じる。

 

「はぁ……」

 

 息をついて、四肢をほうり出し、川の側に大の字になった。

 

 視界には、夜の星々が、いっぱいに広がっていた。

 つまりここは、街から離れた、本当にどこかの山奥という事になる。

 

(……? あれ、この景色……)

 

 見覚えがあるような……。

 

 この、星空……。

 

「ッ!?」

 

 ズキッ、と頭を指すような痛みが襲う。

 

「クソ……何だってんだ……」

 

 頭に響く痛みをこらえながら、目を閉じた。

 

 しばらくすると、頭を襲っていた痛みがすこしずつ治まってくる。

 

「はぁ……てか……ねむ……」

 

 息をついたおかげか、途端に、どっと眠気が襲ってくる。

 

 外でしかもこんなところで寝るのはどうなんだ、という考えも頭をよぎったが、それよりも睡魔の方が強かった。

 

 そのままいざなわれるように、ジャングルポケットは、意識を失った。

 

 

 

「――――クリスエス、見つかったか?」

「ああ……三〇〇meter……山の中腹の……川の側に……いる」

 

 山の森、そのある高い木の上で、二人のウマ娘呪術師が会話をしていた。

 

「ラモーヌの報告通りだね。なぜか山の近くで反応が途切れたみたいだけど……」

「……」

 

 何か思い詰めるように、クリスエスは黙り込んだ。

 

「どうしたんだい、クリスエス。何か気になることがあったら、何でも言ってくれ」

「……感じない」

「? 感じない? どういうことだい?」

「特級呪物……その気配を、感じない。……報告では、強大な呪力を持っている、と言っていたが……」

 

 しばらく黙り込んで、再び口を開く。

 

「今は……あの、individual……個体からは、ジャングルポケット、その気配しか、感じない」

「……確かに……。タキオンやカフェ、ラモーヌたちを返り討ちにするような、特級レベルの呪力や気配は、わたしも感じないな」

「……この距離からでは、限界がある。もう少し、近づく必要がある」

「分かった、行こう。ただし、慎重にね。気配をあえて隠しているというだけの可能性もある」

 

 

 

「どうだい、クリスエス」

「ルドルフ……やはり、見えない」

 

 目標から、五〇メートルほどまで近づいた両者は、小さな声で会話を続けていた。

 

「君の目でもか?」

「ああ……ジャングルポケット……その体が発する気配や呪力からは……あの特級呪物のものは、見えない」

「……そうか。クリスエス、君は以前に、あの(・・)呪物を見たことがあるんだったよね?」

「Yes」

「でも、感じないんだよね」

「だったら、よほどうまく隠しているか、それとも……」

 

 ルドルフが少しの間、考え込む。

 

「最後に一つ、答えてくれないか。あのジャングルポケットは、ジャングルポケット本人で、間違いないのか?」

「Yes. あの個体は、ジャングルポケットで、間違いない」

「なるほど……」

 

 納得するように、ルドルフはこくりとうなずいた。

 

「今、彼女は寝ているようだ。できれば、寝ている間にかたをつけたい」

「わかった」

 

 

 

「ここまで近づいても、起きないみたいだね……」

「ああ」

「拘束をして、このまま彼女を送って行こう。きみは脚のほうを」

 

 ジャングルポケットのすぐそばで、シンボリルドルフとクリスエスはしゃがみ込んだ。

 

 じっ、とルドルフは、ジャングルポケットの顔を見つめる。

 

 穏やかな顔で、穏やかに、寝息を立てていた。

 

 顔のどこにも傷やけがは見られず、ラモーヌやカフェたちと戦っていたようには思えない。

 まがまがしい呪力は、この距離まで来てもすこしも感じられず、森に迷い込んで寝てしまった遭難者のようにしか見えない。

 

 ルドルフが懐から呪符の巻き付けられた拘束用の呪具を取り出す。

 

「ふー……よし」

 

 一呼吸置いた後。

 

 ルドルフとの両手が閃く。

 

 次の瞬間には、ジャングルポケットの両手が、拘束呪具で縛り付けられていた。

 

 同時に脚のほうも、クリスエスによって縛られていた。

 

「あとは、わたしたちの手で連れて行くだけだ。思ったより、穏便に済ませてよかったな」

 

 立ち上がり、クリスエスに顔を向ける。

 

「……クリスエス?」

「ルドルフ」

 

 クリスエスは、その空色の瞳(・・・・)をジャングルポケットに向けたまま、静かに名を呼んだ。

 

「今、よく見てみて――――」

 

 そこで言葉を止めた。

 

 地面を蹴る。

 

「ルドルフ!」

「分かってる!」

 

 クリスエスの目には、映っていた。

 

 離れた場所で足を止めて停止したクリスエスは、それを口にした。

 

「呪力が、みなぎっている……!」

「ルドルフ、これは、彼女(ポケット)のものか!?」

「いや……混ざっている(・・・・・・)

「混ざっている……?」

 

 素早く思考を巡らせるルドルフの視線の先には、地面に寝たまま呪力を立ち上らせる、ジャングルポケットの姿があった。

 

「先ほど、寝ている彼女を直接見てみただが……混ざっていた。ジャングルポケットと、特級呪物の呪力が」

「簡潔に頼む、クリスエス」

 

 むくり、とジャングルポケットは上体を起こす。

 

「寝ている間は、特級呪物の力が抑えられていた。少なくとも、完全に支配されているという事ではないようだ」

「つまり、望みがないというわけではないみたいだな」

「Yes. その通りだ」

 

 ジャングルポケットからたちのぼる呪力が膨れ上がる。

 

 バキン、と音がした。

 

 続けて、もう一度。

 

 ジャングルポケットの手足を縛っていた呪具が、両方とも外れていた。

 

(特注の、呪力を封じる呪具のはずなんだけど……)

 

 

 呪力を封じる呪具を、呪力で破られた。

 

「さすが、相手は一部とはいえ、『最強』を有す術師だ。全力で行こう」

「off course. 油断は、ない」

 

 二人の一級術師は、その呪力を開放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 














ウマ娘はプレイしていますが、個々のキャラクター像間違ってたらすみません。
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