引き金を引いた瞬間、弾丸の火薬は爆裂する。
一握りの軽い弾丸は瞬時に音の壁を超え、圧倒的なエネルギーを得て、正確な照準の通りに飛んでいく――――
狙うは、ジャングルポケット、その魂――――
「!!」
ジャングルポケットが、その右手を突き出す。
弾丸はその掌に着弾。
掌は呪力のこもった鉛の塊に破砕され、手首から先が吹き飛んだ。
「――――防がれた、ルドルフ!」
「そんな、動けるはずは…………」
ルドルフは言葉を止めた。
「呪力で直接体を動かしているのか!」
なんて奴だ――――
ルドルフは驚嘆した。
確かに呪力操作や身体強化の延長として、体を呪力で動かすことは可能だろう。
しかし、雷に等しい攻撃を浴び続けながら、なおも動くとは。
破壊され続ける組織を反転術式で常に回復し続けながら、同時に呪力で体を動かす…………
「ルドルフ、来るぞ!」
「分かっている!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
ジャングルポケットが雄叫びをあげる。
「ッ――――――――!!」
とっさにルドルフは耳を呪力で保護した。
その呪力とジャングルポケットの呪力が反応し、耳の直ぐ側でバチバチと音を立てる。
(――――まずいっ!)
ピシリ、と領域にヒビが入った。
――――領域をゼロから結界に構築する。
それはすべてのリソースを結界に負担させ、領域として成り立たせるということを意味する。
本来は、魂と脳によって負担される術式までもをすべて結界に組み込む。
それは膨大なリソース。
それを結界一つで成り立たせるために、ルドルフはその耐久性を引き換えとした。
カシャアアアア――――
領域が、崩壊する。
燃える森の中に、三人は回帰する。
「確かに通常の領域より強度は劣るが、まさか一撃でやられるとは……!」
「ヴォオオオオオオオオオオオオ!!!」
「ッ――!!」
空中で、爆裂する呪力を乗せた咆哮。
音であるそれは回避は困難、守ろうとすれば呪力で体を包むしかない。
踏ん張れない空中で、シンボリルドルフの体は地面に叩きつけられた。
「くっ……!!」
すぐに体勢を立て直し、ジャングルポケットへと顔を向ける。
その眼前に、彼女は迫っていた。
「なっ」
「オォ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙!!!」
頭部を防御する呪力がいとも容易く吹き飛ばされ、ありとあらゆる穴から呪力が侵入した。
「がっ……………!!」
まるで脳が弾けたかのような感触。
鼓膜が吹き飛び、鼻から血が吹き出す。
(油断したっ…………!)
思いっきり舌を噛む。
吹き飛びかけた意識を強制的に呼び戻し、シンボリルドルフは体中に呪力をほとばしらせた。
麻痺した脳の代わりに、体中の筋肉に電流を流し、即座に後ろへ後退した。
「ッ――ゲホッ、ゲホッ!」
地面に吐き出される血の塊。ビチャリと音を立てる。
「ルドルフ!」
クリスエスが呼ぶ。
しかし、ジャングルポケットが動くほうが早かった。
再び遅い来る敵へとルドルフは構える。
爆裂する呪力の拳と、電雷の拳が交差する。
「くッ!!」
呪力が爆ぜ、体が吹き飛ばされる。
(威力が、上がっている……!? 領域を浴びせ、反転術式も使わせているというのに……!! 更に、片腕……!!)
すぐに足をつけて踏ん張り、次の一撃を振りかぶる。
爆雷の応酬が再び始まった。
でたらめに暴れる拳と、雷のごとくその隙間を縫い放たれる拳。
(先程より、数段速い……!!)
破壊度を増す爆裂の拳。
しかし、対する雷の方にはその動きに陰りがあった。
その雷の横から、鋭い爆撃が襲いかかる。
「ぐッ――――!!」
ルドルフの左腕が、曲がってはいけない方向へと折れた。
そして生まれる、致命的な隙。
(離脱を――――間に合わない!)
ジャングルポケットの呪力が、跳ね上がる。
(周囲ごと吹き飛ばすつもりか……!! ずいぶんと、警戒されているらしい……!)
夜の森の中に、ひときわ明るい、巨大な火球が生じた。