乱世の外史 董卓伝   作:ウォーリー

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初投稿です。
未熟者ですがよろしくお願いします。


第1章 始まりの章 
第1章 始まりの章 1話 出会いと始まり


気が付くとそこは知らない風景だった。

見渡せば、わずかに草木があるだけの不毛な大地で、 空は都会から見えるよりも青く、太陽は強く日差している。

そんな場所に月守悠()の目の前には頭にたんこぶができた女の子がいた。

 

「うぅ……痛い」

 

と女の子は呟いた。

僕も後頭部が痛かった。

どうやら彼女の頭にぶつけたみたいだ。

 

「あぁ~、君、大丈夫?」

 

とりあえず、痛そうなので、聞いてみる。

 

「う~ん…大丈夫…」

 

彼女は淡々と答えた。

しかし…そこで彼女の姿を改めて目にして、仰天した。

見た目はすごくかわいらしい女の子だ。

だけど、彼女の着ている服が問題だった。

水着か下手したら下着にも見えるものに、服の形を成していない肩と二の腕までを包んだ服。

ずれ下がったスカート。身の丈以上あるマフラー。

うん、すごい服装である。

痴女といわれかねない服装の着こなし方である。

そして後ろに身の丈以上はある大斧。

 

「それ、コスプレ?」

 

つい聞いてしまった。

 

「…こすぷれ?」

 

頭に?が見えるぐらいに彼女は首をかしげていた。

う~ん、彼女の服装のことも気にはなるが

今いるこの場所についても聞いてみることにした。

 

「ここって、どこ?日本…じゃあないよね?」

 

「……日本?…ここはね、漢の…どこだろ?」

 

質問に質問で答えられてしまった。

ただ漢?確か中国の年号の一つにあったかな。

まさか…なぁ。

 

「そういえば、名前言ってなかったね。

僕は月守悠といいます。先ほどは頭をぶつけてしまったみたいで、すいません」

 

ぶつかった?ことに関しての謝りも入れておいた。

 

「う~ん、…大丈夫。私の名前は…徐晃。字は公明」

 

大丈夫と答えたけどそのあとの名前が衝撃的であった。

…徐晃って三国志の?

某有名無双ゲーをやっていたので知っている名前である。

中国、しかも漢ときて徐晃という人物だよね。

一体どうなっているんだ。

どうしては荒野にいるのか。

目の前にいる徐晃と名乗った彼女は。そして漢という言葉。

夢でも見ているのか。

僕の頭は冷静を保とうとして考えを巡らせていた。

答えなど出るはずもなく、当てもなく周辺を見回す。

人工物のない、ただ不毛な大地が続いている。

テレビかネットで見たような、いかにもThe荒野である。

ぽ~っとしている彼女はひとまずおいて、僕はこの状況になるまでのことを振り返ってみる。

 

 

 

 

 

首都圏外れの県内に住む僕は都内の大学に通っている。

新学期も終わりに近づきつつも春の陽気はとても僕としては過ごしやすい、一番好きな季節でもあった。

今日は昼からの講義なのだが、朝は7時には起きた。とりあえず朝食をとり、昼までに行けばいいので、ネットで時間をつぶしていた。

10時を過ぎた頃に電車で都内に向かう。 片手でスマホを弄りながら、音楽プレイヤーで最新のアニソンを聴く。 いつもと変わらない、もう2年目になる習慣である。

途中、乗り換えのために駅を降りて、別の駅まで徒歩で向かっていた。

そこで今日の記憶はなくなっていた。

 

 

 

 

 

「…大丈夫?」

 

ふと、彼女―徐晃に聞かれて意識を戻す。

 

「…っ、ああ、大丈夫」

 

そう答えた後、彼女は

 

「ねぇ、どうして空から落ちて…きたのぉ?」

 

唐突に聞いてきた。

えっ、空から落ちてきたって?

 

「いきなり、空がぱぁ~と光って、そしたら君がね、落ちてきたの。」

 

どうやら僕は空から落ちてきたらしい。

天空の○ラ○○タですか。

しかし、空からね、もう自分が何かに巻き込まれたことは確かであるが、誘拐とか人為的なことではなさそうだ。

それだけでもわずかばかり安心…できないな。

訳が解らない土地に放り出されてはこれから生き延びられるかはわからない。

だからこそ彼女に無理を言ってみることにした。

 

「ごめん、いきなりだけど人がいるところまで一緒について行ってもいい?」

 

まぁ、無理なら「うん…いいよ」

と即答で彼女はそういった。

 

「代わりに…空の飛び方…教えて?」

「へぇっ?」

 

思わず変な声を出してしまった。

 

「空、飛びたいの。…斧回してぇ、飛べる?」

 

ぽーとした雰囲気をしながらも、真剣な眼差しで彼女は僕をみてくる。

うん…どうしよう。

答え方によって彼女を傷つけかねない。

しかし、いい答え方が浮かんでこない。

 

「ごめん、僕も覚えていないんだ」

 

と素直に答えることにした。

 

「…そう」

 

見るからに彼女は残念そうにしゅんとしてしまった。

どうしよう話題を切り替えるか。

 

「そういえば、どうして公明さんはここにいたの?」

 

と無難なことを聞いてみる。

 

「…空を飛ぶためにね、修行の…旅をしているの…」

 

結局のところ彼女は空を飛びたいらしい。

 

「へぇ~。でもなんで空を飛びたいと思ったの?」

 

それに対し彼女は、

 

「う~んとね、……秘密」

 

答えてはくれなかった。

彼女と会話を続けながら、僕は持ち物の確認をした。

スマホは電波が通っていないがバッテリーはある。

音楽プレイヤーも同じく充電はある。こんな時には便利なソーラー充電器もあった。

バックの中に文具各種、ノートにプリント、教科書がいくつか。

飲み物と多少のお菓子。後財布ぐらいか。

ここがもし三国志の世界なら、この時代なら紙は貴重なものだから、ノート類も取っておいて損はないだろうからとっておくことにした。

財布は中身共に使い物にならないだろうが、何か役立つかもしれないとバックに入れておこう。

荷物の整理をしたところで、僕たちは移動を開始したのであった。

 

 

 

 

 

道中、僕たちは話をしながら歩いていた。

彼女―徐晃は僕のいた世界の話を大変興味津々に聞いていたし、彼女もいろいろとこの世界のことを話していたが、その中で僕は興味深いことを聞いた。

この世界には〝真名〟というものがあるらしい。

彼女曰く、とても大切な名前であるようで、本人の許可なしでその名を呼ぶことは失礼なことだという。

特に親しい人や心を許した人には与えられる名のものだが、彼女はあろうことか僕にその真名を僕に教えてくれた。

彼女の真名は香風(シャンフー)というらしい。

そんな彼女にいいのか?と聞いたところ、香風はうん、いいと答えてくれた。

本人がいいならいいのだろうか。

そう思いつつも、徐晃という男性のイメージがある名前を呼ぶよりはいいかと一人結論づけた。

しかしながら、周りの景色はすでに日が暮れ始めており、近くの適当な岩場で野宿をすることになった。

香風に聞いてみるとよく野宿はするらしい。

たくましいなと思いつつ、自分は彼女と軽い食事をした。

食事中、僕が持っていたお菓子を香風に食べさせてみると、

 

「……ほえほえー。………食べたことない味。…うまうま~」

 

どうやら気に入ったようだ。

 

「ねぇ、悠。もっと」

 

せがまれてしまった。

食べ終わった後、僕が住んでいた場所では見られなかった星空のもと僕は意識を手放した。

案外僕も図太い神経をしていたみたいだ。

 

 

 

 

 

とりあえず、日が出て歩き始め、日が僕たちの真上に到達した頃、無事に村に着くことができた。

僕が思っていた村のイメージよりも村人は多く見られたし、多くの建屋があった。

比較的大きい村だと香風は言っていた。

彼女はここで少し留まって食糧などを得るらしい。

まずは泊まれる場所を探すため村人に聞いて回った結果、泊まることを了承してくれたのがこの村の村長さんで、その家に泊まることになった。

香風は村の仕事、主に農作業などをするみたいだ。

僕も泊まらせてもらっている身としては何か手伝いをしなければと思い、村長に聞いてみると、家の手伝いをしてくれと言われた。

まき割りをやることになった時は現代日本男子としてはかなり苦労し、その日は疲れですぐ休んでしまった。

一方、香風は見かけによらず力持ちで村長さんの息子さんはとても助かったらしい。

 

 

 

 

 

数日も経つとこれまでの作業も何とかこなせるようになり、仕事が早く終わった。

そうしたら村の大人たちに村の子どもたちの面倒を頼まれ、今まさに、子供たちと村の外れの森で遊んでいる。

 

「おーい、こっち、こっち」

 

男の子が急かしてくる。

しかし、香風もそうだけど、みんなたくましいな。

彼らは森の中でかけっこや、木に登ったりして遊んでいる。

僕も混ざって遊んでいたが結構疲れる。

 

「待った。ちょっと、僕は休憩するからな」

 

近くの木に背を預けて座る。

子供たちはというと遊び足りないようで、勝手気ままに遊んでいる。

 

「あんまり、遠くにいくなよー」

 

と注意を言いつつ、僕は、これからのことについて少し考えていた。

数日間、村で過ごしていると僕の知る時代とは違う生活様式を体験し、どこか別の世界に来てしまったことを改めて認識した。

帰る方法はわからない。

これから僕はこの世界で生きていかなければならないということだ。

今のうちに今後の方針は決めないといけない。

いつかは香風も旅を再開するだろうし、一緒に旅をするのも彼女には負担をかけてしまうかもしれない。

ならいっそのこと、この村に住むのも悪くないのかもしれない。

村の人たちはみな親切な人だったし、村長も住む場所がないと僕の事情(違う世界から来たことは伏せておいた)を話したところ、構わないと答えてくれた。

 

しかし、この時までの僕は、理解していなかった。

ここが三国志のような時代の世界であるならば、

決して、僕の元いた日常のように平和ではなく、理不尽な暴力によって人々が苦しめられていた時代であることを…………。

 

 

 

 

 

「助けて‼」

 

森に響き渡る、女の子の声。

先ほどまで、僕と一緒に遊んでいた子の声だ。

聞こえてきた方向にすぐさま駆けつける。

わずかながら、大人の男の声も聞こえてくる。

その声の場所に着くと大人の中太りの男が一人。

中太りの男の腕につかまっている女の子。

たぶん、男は野盗だろうと思う。

彼の手には剣が握られている。

 

「あぁあ、なんだよ、ガキ」

 

男が言う。

 

「その子を放してくれ」

 

とっさに僕は言うが

 

「何、言ってやがるんだ。これから、村を襲うためにてめぇらには人質になってもらうんだからな。変なマネしてみろ、こいつがどうなってもしらねぇからな」

 

男が剣を女の子の首に近づける。

まずい、助けは呼べない。

どうするべきか。

下手に動くと捕まっている女の子も危ない。

この状況に反して僕は冷静だった。

今この状況を解決するため思考を限りなく巡らせる。

ふと、騒ぎを遅れて聞きつけた子たちが近づいてくる。

男の視線がこちらから離れる。

今しかない。

………………瞬間、僕は体を低くし、下に落ちていた石を拾いつつ、男に向かい、その石を投げた。

 

「っがぁっ!!」

 

石は男の頭部に当り、体のバランスを崩す。

そのまま、中太りの男に体当たりをして、捕まっていた子と引き離す。

 

「逃げろ!」

 

男をおさえながら叫ぶ。

女の子は戸惑いながらもその声に対してすぐに返事をし、

近づいてきた子供たちと共にその場から離れる。

その間にも男は押さえつけている僕に対し、剣を向けようとする。

自身の思考がフル回転する。

思考から肉体へ為すべき行動を実行する。

僕は渾身の力で男の剣を持つ腕を掴み、何度も地面に打ち付ける。

男の手から剣が離れると、すぐに僕は男の喉を両手で絞めつける。

そこに躊躇はなかった。

 

「ぐがぁ⁉…ぎ、がぁあ」

 

男は必死に抵抗する。

片手で僕の腕を握り、もう片方の手で僕の体や顔に何度も殴りつける。

それでも僕は締め付ける力を緩めない。

全体重を掛け、さらに力を籠める。

男は暫く抵抗を続けていたが、次第に掴んだ手から力が抜けていく。

やがて男は絶命した。

顔を見るとなんとも苦痛な面持ちであった。

よもや、こんなところで少年に首を絞められて死ぬとは思ってもいなかっただろう。

辺りが静寂に包まれる。

 

「…ぅっげぇ、がっ…」

 

 冷静になった僕はたった今行った行為に耐えきれずに吐いた。

この場には僕と人間だったモノだけが存在しているだけだ。

今も殺した手の感触が残っている。

僕がこの手で殺した。

殺した。

ころした。

コロシタ。

 

「うっぷっ…げぇぇ…」

 

こみ上げる不快感。

出せるもの全てを口からでてしまいそうな感覚。

仕方ないと、殺さなければ、逆に僕が殺されたのだからと考える。

あの時、女の子を助けるときには予想はしていた。

人を殺す。

そんな行為を行って気分がいいという人はどこか人として欠落してしまっているのだろうか。

少なくとも僕はまともだと思いたい。

ただ、出来ることといえばその場にうずくまり、こみ上げてくる不快感に耐え続けるだけだった。

 

 

 

 

 

暫くすると、村の人たちや香風が来た。

子どもたちが呼んできてくれたのだろう。村の人たちも僕が無事なことをみて安堵する。 

村の人たちが賊の弔いや子どもたちを村まで帰している間、

僕はいまだに拭いきれない不快感に苛まれながら近くの木の近くに寄り掛かっていた。

村の人たちはそんな僕に気を使ってか、僕に近づくことはなかった。

しかし、僕の方へと近づく足音が聞こえてきた。

 

「…悠、大丈夫?」

 

香風が心配そうに聞いてくる。

 

「うん、…大丈夫だよ」

 

俯いてた僕は答える。

それでも平気そうには伝わらなかったと感じる。

 

ふと、頭に触れられる感触。

香風が僕の頭を腕で包んでいた。

僕の体が彼女の華奢な体で受け止められる体制になる。

 

「悠───」

「…人が殺されたり、死んだりするところはどこか遠いことのように思ってたけど」

 

まだ、震えは止まらない。

今まで人殺しなんてテレビや新聞での出来事だった。

血なまぐさい争いなんてしてこなかった。

 

「怖いんだ。殺した自分が。今にもどうにかなりそうで」

 

香風に僕はどう映っているのだろうか。

情けない姿か、それとも…

でも話し続けずにはいられなかった。

 

「みっともないだろ。でも殺した時の光景が離れないんだ」 

「…悠はやれることをやったよ。助けたことは、…間違いじゃないから」

 

彼女の言葉は今の僕にとって救いだった。

香風の腕に包まれ自然と不快感がなくなっていた。

むしろ彼女の、女の子らしい腕の優しい温もりが伝わってくるようで。

 

「…ごめん、香風。もう少し…このままでいい?」

「……いいよ~」

 

香風は優しく答えた。

ただ今は、彼女の腕の温もりに包まれていたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 




少し駆け足すぎたかもしれません。
次回もサクサク進むと思います。
ご指摘、感想お待ちしております。


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