乱世の外史 董卓伝   作:ウォーリー

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展開が少し早いかなと思いますが、どうぞ。


第2話 賊との戦い

 

 

 

僕は暫くの間、香風の腕に抱かれる形になっていた。

不快感はいくらか和らいだので香風に大丈夫だと伝え立ち上がる。

しかし、ふと冷静になった僕は先ほどまで香風に抱かれていたことに対し、急に恥ずかしくなった。

顔に熱が籠る。

うん、いけない、いけない。

香風は心配してくれたのだ。

でも僕も男の子なんだなと感じてしまった。

 

「香風」

「ん~なぁに?」

「むやみやたらに女の子が男の子に抱きついちゃいけないからね」

「ん~?」

こら、首を傾けない。

「いいから、今後はむやみにやっちゃだめだからね」

「…わかったぁ~」

 

ほんとに大丈夫かな。

そんな会話をしつつも僕らは村へと戻っていった。

 

 

 

 

村に戻ってくると、何やら騒がしい。

近くにいた人に聞いてみると、賊がこの村に向かってきているらしい。

先ほどの男はその賊からきたみたいである。

なぜそんなことがわかるというと香風の方にも賊がきていたのだ。

しかも、2人きていた。

だけど、香風に撃退されたみたいだ。

そこで尋問した結果、彼らはこの辺りでは規模の大きい賊に属していて斥候まがいのことをしていたようである。

賊の本体自体はこの村に近づいているみたいで村では慌ただしくなっていた。

村では戦うか逃げるかで意見が割れていた。

逃げるとなると老人や子どもたちがいることで追いつかれてしまう。

一方で戦うとなると賊の規模によっては数の暴力に屈してしまう。

だがそんな中、村長は戦おうと決断した。

逃げたとして生き残れるかはわからないなら、生まれ育ったこの土地で戦おうとのことだった。

村の男たちはその決断に怒号を響かせる。

すぐさま老人や子どもなど戦えないものは比較的安全な場所にある村長の家に避難し始める。

村の自警団を中心に村の男たちや動ける女たちはすぐさま武器や食料などを各々の家から集めだす。

そんな慌ただしくなって中で僕はどうするべきか悩んでいた。

戦うか。

避難するか。

それとも、逃げるべきか。

少なくとも逃げたところで安全かなんて保障はどこにもない。

それに少しの間だけどこの村の人にはすごくお世話になったんだ。

見捨てて逃げるなんて論外だ。

(なら、どうする。別に戦わなくてもいいはずだ)

 ───本当にいいのか?

(戦ったところで無駄死にするだけだ)

 ───後悔しない?

(分からない。だけど、少なくとも見知った人たちが死ぬかもしれないのに僕はただ何もしないだなんて──)

駄目だ。

そんなこと許容できない。

───なら、為すべきことは一つだ。

 

「香風。僕は戦うよ」

「…悠。いいのぉ?」

「うん」

僕は戦うことを決めた。後悔はしたくないから。

「悠。わたしもぉ、たたかうよ」

 

香風も戦うみたいだ。

すぐさま、香風と共に村の自警団の集まりに向かおうとしたら…

 

「おや、大変なことになっているみたいだけど、力を貸そうかい?」

 

突然、後ろから声がした。

振り向くと香風よりも少し背が小さな女の子がいた。

官帽に大正時代に出てきそうなマントに女子学生服のような服装。

見た目は幼く見えるはずなのだが、彼女の纏う雰囲気は大人の落ち着いた風格を醸し出している。

 

「え~と、今のって君?」

「そうだよ、賊と戦おうとしているなら、一人でも人手は必要だろう?一応これでも軍師の心得はあるからね。指揮や妙案は引き受けてもいいよ」

彼女は小さな体格に似あわず自信に満ちた声でそう答えた。

 

 

 

 

 

彼女の話によると、水鏡女学院という私塾に通っていた彼女は卒業後、見分を広めるため、各地の英傑がいる土地に赴き、自らの主となるべき者を見定めるための旅をしているらしい。

ちょうどこの日、この村に立ち寄って休息をとっていたところに賊の襲来が来た。

なんというタイミングだ。

そんな話をする中で、彼女は

 

「ぼくの名は…単福と呼んでくれ。よろしく」

と自己紹介をした。

まぁ偽名だけどね。とも付けくわえた。

「女ひとりで旅をしているからね。武にも多少、自信はあるけど用心に越したことはないからね」

と理由を答えてくれた。

とりあえず、香風も含めた自己紹介を軽くした。

僕が自己紹介した時、少し元居た世界のことも話したら単福は、

 

「へぇ、君が元居た世界もなかなか興味深いね。賊をどうにかしたら、ぜひとも詳しいことが聞きたいな。いいかな?」

 

彼女は聞いてきた。

 

「この戦いを乗り切れたらね」

 

と僕はなんとか軽い口調で答えた。

 

 

 

 

 

その後、僕たちは今、村の自警団の集まっている場所に向かった。

そこでは村長や自警団の長である村長の息子を含め村の男たちが集まっていた。

とりあえず、僕たちも戦うということを伝えると、

彼らは本当にいいのかと、こちらを気遣ってくれた。

だけど、僕たちも戦うと決めたんだ。

彼らも少しの間の後、納得してくれた。

 

 

 

 

 

そこからは急いで賊に対する備えを行った。

 

「敵は少なくともこちらと同数もしくはそれ以上と考えると正攻法で戦うのはもちろん愚策だ。だからこちらは奇策や搦め手で賊と相対する」

 

単福の言うことはもっともな意見だ。

村の自警団の数は五十を満たない数であり、大多数は武器を持たない一般人だ。

むろん僕もその一人なのだが。

 

「賊が到着するまで時間がない。やれることは限られてるからね。足止めできる落とし穴や障害物をできるだけ用意する」

 

単福が的確に作業の指示を出す。

急いで村の男たちが中心となって作業に取り掛かる。

 

「さて、悠。君は人数が上回る敵を相手取るなら、どう戦う?」

作業をしながら彼女は僕に聞いてきた。

 

「えーと、数人がかりで一人を確実に仕留める…かな」

まず、前提として人を襲うことに慣れている賊と武器を持って戦うことが不慣れな素人の村人らでは一対一になれば不利に立たされるのはこちらなのは明白だ。

だからこそ一対多の状況に持ち込んで仕留める。

卑怯な手だが今はこれが最善の手だろう。

 

「そうだ。賊に攻撃する前に各個撃破する。こちらはただでさえ人数が相手なんだ、それに村人に被害も出したくないだろう」

 

そう、問題は被害をどれだけ出さずに賊を撃退あるいは殲滅するかだ。

 

 

 

 

 

夜、静寂が辺りを包んだ頃、村の入り口には多くの賊が集結していた。

賊たちは金目のものや女を目当てに今にも村を襲うつもりである。

 

「頭ぁ、早く襲っちまいましょうぜ。あっしらもう我慢できねぇや」

そうだぜ、と多くの賊らが騒ぎ出す。

頭と呼ばれた、体中に傷をつけた大男が一喝する。

 

「少しはてめえら落ち着け。もう獲物はすぐ目の前なんだ」

 

手下を抑えつつもその獰猛な声を持つ頭と呼ばれた男もまた、自分の中で湧き上がる獣性を感じながらも手下に命令を下す。

 

「よし、てめらぁ、お待ちかねの狩りの時間だ。殺して、犯して、奪えるものは奪え。いくぜぇぇ」

 

獣の声が辺りに響き渡る。己が欲望を満たすために。

 

 

 

 

 

「なぁ、なんか静かすぎねぇか」

 

賊の一人が言う。

意気込んで村に攻め込んだことはいいものの村の入り口近くには簡易的な柵などがあるだけで人がいる気配がない。

村自体も比較的大きいものなので賊もいくつかに分かれ、探索を始めた。

しかし、家屋に浸入してもまったくと言っていいほど人がいる様子はなかった。

 

「逃げちまったのか?」

「いくらなんでも、この規模の村がすぐ避難できるかよ。どこかに隠れているに決まってるだろ」

「まぁ、しらみつぶしにあたっていくしかねぇだろよ」

賊たちがこの静寂を怪訝に思いつつもどこかに隠れているかもしれない村人を探しに次の家屋に入った。

 

「ん、なんか奥で動いたような。おい、ちょっと来てくれ」

 

賊の一人が何かを見つける。

 

「どうした。なんかあったか?」

一緒に来ていた賊たちが集まる。

何か動いたものを見たこと伝えると、賊たちも一緒に奥の部屋に向かった。

すると奥に女の子がいた。

逃げ遅れたのか、と思いつつも、次にこの子をどうするかと賊たちは考えていた。

他の村人の所在を脅して聞くか、犯すか、殺すか、そんなことを一瞬でも考えていたことが彼らにとって致命的なものになった。

 

「ぐえっ⁉」

賊の一人が奇妙な声を出す。

次の瞬間にはその場にいた賊は一人を残して、首と胴体が分かれていた。

 

「ひぃぃぃ⁉なんだ、なんなんだよ」

残った賊が恐怖に支配され、腰を落とし、周りに倒れている仲間の死体を見回す。

訳が解らなかった。

今、さっきまで話していた仲間が瞬時に物言わぬ死体となったのだ。

彼は茫然としながらも目の前に女の子が立っていることに今更ながら気づいた。

彼が目線を上に向けると同時に女の子の顔が見える。

無表情だった。

幼いように見えるが、その纏う雰囲気は幼子が持つものでは決してなかった。

彼は何が起きているんだと恐怖と困惑が脳裏をめぐる中、次の瞬間には彼が思考することは二度となかった。

 

 

 

 

 

単福と呼ばれる──偽名ではあるが──少女は賊らの首を刎ねた後、ふぅと息をこぼしながらも疲れた様子を見せず、自らの策について思考していた。

 

 

 

まずは自分や村人数人で構成された分隊が比較的大きめの家に隠れ、浸入してきた賊を静かに各個撃破するだけの簡単な策である。

その策に参加した村人は自警団の中でもそれなりの力量があるものから選んだ。

その策といっても賊の士気の低下を促し、さらに数を減らす簡単な策である。

とりあえずいくつかの家に隠れさせた村人たちも何とかうまくやってくれるだろうかと思いつつも、すぐに自分は策を次の段階に移行させるように賊の首を持ち外に放り投げた。

 

「うわぁあぁぁ、なんだよこれぇぇ⁉」

 

賊のひとりが叫ぶ。

それを合図として村のあちこちで似たような叫びや怒声が響き渡る。

───さぁ、策の第二段階へ移行だ。

単福は剣を片手に近くにいた賊の首を刎ねる。

 

「ぼくは軍師だが、この程度の連中に負けるほどの腕ではないからね。自分の役割はまっとうしようじゃないか。」

 

単福は乱戦に持ち込む為に賊のいる方へ駆けた。

一閃、次の瞬間にはさらに賊の首を刎ねる。

 

「ただ、想定はしたけど賊の数が多いね。あの不思議ちゃんと彼にも頑張ってもらわないとね」

さらに一撃、賊の胴体を斜めに斬り伏せる。

賊と対峙している間にも単福はつい先ほど知り合った二人について考えていた。

少女のほうは自分より少し背がある不思議ちゃんだがその武の技量はかなりのものだろうと単福は感じた。

しかし、少年のほうは不思議ちゃんのように武に秀でているようにも、自分のような知略をもっているようにも見えなかった。

だがそれ以外にないか惹かれるようなものがあった。

彼が別の世界からきたというものも興味をひかれたが、それよりも彼が何か面白いことをやってくれるようなそんな気がしてならないのだ。

単福自身、この戦いで惹かれる理由が分かるかもしれないと思い、彼に力を貸している。

むろん、賊に襲われる村を助けるためもあるのだが。

「さてと、二人とも死なないでね」

 

そうしている間にも、賊が単福のもとに駆けつけてくる。

単福はやれやれと思いつつも剣を片手に賊たちに向け、駆け出した。

 

 

 

 

 

「────っうん、しょ」

 

香風はかわいらしい声を出しながら自分の身の丈以上の大斧を振り回す。

一撃。

しかし彼女の華奢な体からはあり得ないほどの一撃。

その一振りで賊が数人吹き飛ばされる。もしくは斬り飛ばされる。

まさに絶対的な暴力を体現したものがこの場に存在した。

この場には賊以外に香風しかいない。

ただ、賊が彼女と対峙し幾分か立つ間に数十人の賊が彼女によって倒されている。

香風の役割はただ敵を引き付け、葬るのみ。

今の彼女の雰囲気は普段ののんびりとしたものではなく、戦士の持つものだった。

彼女はひたすらに見敵必殺を繰り返している。

その圧倒的な暴力に賊はなすすべなく蹂躙される。

その内面では自らの後ろには戦えない村人がいて、自分はそこを守る防壁に徹しなければならないため、その場から離れることはできない。

 

「くそ、この女強ぇぞ」

「数で囲んで押さえろ。あっちは一人だ」

 

賊たちはそう叫びながら香風の周りを囲むが、そんなことは気にも留めないように、

 

「う~ん、邪魔ぁ」

 

と大斧を一振り。

轟音。

その凄まじい威力の一撃により彼女の周りを囲んでいた賊が吹き飛ばされる。

それでも賊はこちらの方に向かってくる。

戦いの最中、香風は少年の無事かどうか考えていたが、彼なら大丈夫だろうと確証はないがなんとなく思っていた。

次の瞬間にはただ目の前にいる敵を蹴散らそうとさらに己の持つ獲物に力を籠めていた。

 

 

 

 

 

一時の村の静けさは一変し、辺りで叫び声や怒声が響き渡る。

僕はそれを合図に村の人たちと共に一気に賊へと接近する。

僕の手には子どもを人質にしたときに賊が持っていた剣がある。

正直の所、そんな武器を持ちたくなかったが、背に腹は代えられない。

ただ、剣を持った時、なぜか手に馴染む。

この手は剣を持つようにできているようなそんな感覚。

生まれてから剣道などは一切やってきていないのにどういうことだろう。

まぁ、そんなことを疑問に思う暇など今はない。後々考えればいいことなのだから。

今の僕たちは複数の組に人数を分けている。

賊に闇討ちをする組、敵を引き付ける組これはむしろ香風だけだが、その後ろで香風の逃した撃ち漏らした時のための予備組、さらに避難所を守る組、最後に敵を横から奇襲する組が二つ。

その最後の賊に奇襲する二つの組の一つに僕はいる。

そして今回の策はまず徐福を中心とした奇襲組が敵の数を少しでも減らしつつ、敵の死体を使って、士気を低下させ、次に香風が避難所より手前に陣取り、敵を引き付けつつ、村の中核にまで入り込んだ賊を左右から強襲するといったものだ。

簡単な策だが、それでも逃げ場のない僕たちの状況を踏まえるとこのような策しかないだろうとも思う。

さらに村のあちこちに障害物や落とし穴もできるだけ設置した。

僕はこういった戦いはゲリラ戦だなと思いつつも、むしろ今から何をするのか、どう行動すべきなのか、冷静に理解していた。

これから人殺しを行う。

だが躊躇などはできない。

迷えば死ぬ。

後悔などはすべてが終えてからだ。

今はただ為すべきことをするだけだ。

そして、賊に接近する村人たちは雄叫びをあげる。

僕はそのまま近くにいた賊たちに接近する。

賊の一人が僕に気付く。

剣を持つ手に自然と力が入る。

気付いた男の首に剣を向ける。

 

「ぐぇがぁ⁉」

男の首から鮮血が飛び散る。

 

「なっ⁉」

周りの賊たちが驚愕する。

 

「くそが、よくもやりやがったな!」

賊の一人が僕に剣を向け襲い掛かる。

 

「……っつ‼」

と剣がぶつかり合う。

剣はすぐに反動で弾かれる。

しかし僕は弾かれた剣の刃を賊の首筋へと強引に向ける。

賊の首に剣が刺さる。

 

「───ぐが」

言葉もろくに出せず絶命する。

すぐにその場から前に跳躍。

別の賊へ接近し剣を振るう。

───何だ。

体も思うように動く。

何をすべきか。

脳が、思考が、体がすぐ反応する。

自分が自分じゃないみたいだ。

他の場所を見回す。

村人たちは二、三人ごとに賊を一人一人対処している。

賊たちもあちこちから襲撃していることもあって、混乱し始めている。

そんなことを考えつつも賊を一人、また一人殺害していく。

ほんとに僕はどうなってしまっているのか。

そんな中、賊の剣とぶつかるとパキッと鈍い音を立て剣が折れる。

賊はニヤリと笑みを浮かべ、僕の周りを囲む。

そんなのは関係ないと言わんばかりに跳躍。

目の前の賊の顔面に剣を立てる。

賊は笑ったまま、即死する。

そして、僕は即死した男の剣を奪い取り、別の賊を斬りつける。

もう、これからは単純な作業でしかない。

剣で賊を斬りつける。

首を。

胴体を。

足を。

腕を。

体のあらゆる箇所を。

突く。

刺す。

斬る。

折れたら別の剣を奪ってまた殺す。

脳はアドレナリンを過剰に分泌し、今、最適な行動を肉体に伝える。

肉体は脳からの指令を忠実にこなす。

一体何人斬って殺したのか。

もうだいぶ時間がたったように感じる。

周りの賊も数が少なくなってきた気がする。

だが、僕の頭に警告が鳴り響く。

───来る。

周囲を見回す。

そして、見つけた。

屈強な男がいる。

周りの賊の様子から見るとこいつが親玉か。

僕自身そろそろ、疲労や体の痛みもあり限界に近い。

だけど、親玉を殺すまでなら、───やれる。

痛みや疲労はすべて堪える。

 

「ハァアァァアァァァ‼」

 

僕は咆哮するとともに親玉の男に接近し、剣を払う。

 

「……ッチィィ。このガキがぁぁあ」

 

男も剣を払い、対処する。

重い一振り。

これをまともに喰らったら、ひとたまりもないだろう。

男はひたすら思い斬撃を繰り返す。

何とか僕も避けるが、体力が何時までもつか。

避け続けてはいるが、ほんとに紙一重だ。

少しずつだが切り傷も増えてきた。

───くそ、何とかならないのか。

そんな愚痴のような祈りが届いたのか、僕の後ろからふと声が聞こえる。

 

「……悠、退いて」

 

その声が聞こえた瞬間、横に跳躍する。

轟音。

そして男に香風の大斧の強烈な一撃が向かう。

 

「グォオォォォォ」

 

その一撃を何とか止める男。

すぐに僕は男の懐に飛び込む。

 

「……っぁぁぁあああああ」

 

剣を男の胴体に向け縦に叩きつける。

 

「がぁはぁぁ………クソガァアぁ」

 

血飛沫が舞う。

しかし、男はまだ立っている。

だが思考が何を為すべきかを瞬時に理解し体を動かす。

僕は斬りつけた速度を殺さず、男の首に向け、剣を振りかぶる。

 

「────っっ…」

 

男はその首を飛ばされ、胴体はその場に崩れ落ちる。

体から力が抜け落ちる。

 

「───っかはぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

本当に限界みたいだと倒れそうなところを香風に支えてもらった。

 

「……大丈夫?」

 

凄く心配な顔をして僕に問いかける。

 

「大丈夫だよ。疲れただけだから」

 

そんな中、残っていた賊も親玉が殺されたのを見て、逃げ出していく。

村人たちは敗走する賊をみて、自分たちの勝利に雄叫びをあげる。

ふぅ、ほんとに終わったみたいだ。

そして僕たちは夜明けを無事に迎えることができた。

 

 

 

 

 

奇跡的に村の死傷者はいなかった。

けが人などかなり出したものの、襲ってきた賊の人数から考えても運が良かったとしか言いようがない。

そんな中、軍が到着したのは賊を倒したその日の昼間だった。

賊の死体や壊された家屋の残骸などの処理をしていた時のことだ。

話によると賊討伐を行ってみたいだが、村を襲った賊の本体を先に攻撃していたみたいだ。 

そしてそこから賊の別働隊がこの村を襲うことを知ったらしい。

 

「いやぁ~ほんまに済まんかった。ウチらもこの村に賊の別働隊が襲うことを知って急いで向かったんだけどな。あんたらにはえらい迷惑かけたなぁ」

 

そういってきたのはサラシを胸に巻いて、袴や羽織っているものを見ても明らかに露出度の高い女性が謝ってくる。

 

「うちは、性は張、名は遼、字は文遠、董卓軍の所で客将やっとる。よろしくなぁ」

 

とそう自己紹介してきた。

張遼という名にさらに董卓というビックネームで僕は驚愕していたが、さらにその張遼が、

 

「なぁ、アンタら、賊と戦って活躍したちびっ子たちと少年やろ?もし、よかったらやけど、うちらの軍に来てみんか?」

 

その言葉を聞いていた僕はただ茫然としていたのだった。

 

 

 

 

 




次は小話を入れる予定です。

10月5日変更点
徐福から単福に名前を変更しました。

3月25日変更点。
一部言葉の修正。
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