乱世の外史 董卓伝   作:ウォーリー

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お待たせしました。
若干、短いものとなっています。


第6話 部隊結成

 

 町の散策から帰ってきた僕たちは賈詡さんのお叱りを仲良く受けることとなった。

 

「まったく、月ったら何度言えばわかるの!勝手に町に出歩いて何かあったらどうするの。どうして姉妹揃って仕事の途中で抜け出しちゃうのかしら。だいたい─」

 

 何時しか、賈詡さんは普段から溜まっていたであろう不満を語っていた。

 というか、月さん、仕事サボってたのか。

 しかも、常習犯。

 呆れた目で月さんを見てしまう。

 月さんは苦笑いで誤魔化していた。

 それは賈詡さんも怒るよ。

 ガミガミと話をする賈詡さんの姿はまるで子を叱る母のような感じに思えた。

 そんなことを考えていると─

 

「─それに月守、あんたも何関係なさそうな顔してるのよ」

 

 怒りの矛先がこちらにも向いた。

 う~んどうしたものかと思っていた矢先、月さんが賈詡さんに

「え、詠ちゃん、悠さんは私がお願いしてついてきてもらったの。」

 と弁解する。

「ええと、大丈夫ですよ、月さん。僕も一緒に行ったのは事実ですから」

 咄嗟に僕は平気だという意を伝える。

 ただ賈詡さんはその前に気になったことがあるようで、

「あんた、今、月って呼んでたわよね。もしかして─」

「詠ちゃん。私が呼んでいいっていったの」

 賈詡さんは目つきを悪くしてこっちを見る。

 月さんは慌てて助け舟を出す。

 

 暫くの沈黙のうち、賈詡さんが口を開いた。

 「はぁ、月ったら。」

 溜息混じりに話す賈詡さん。

 何やら思うところがあったのか、不意に次の言葉を口にする。

「──詠よ」

 真名を明かし、僕に対して真剣な面持ちを向けてくる。

「私の真名よ。月が信頼してるなら、私もあんたを信じてみるわ。…ただし、もし月に対して害することをしてみなさい。命はないと思いなさい」

 詠さんには彼女の考えもあるだろうが、それ以上に月さんが認めたことが大きいと思う。

 彼女の月さんに対する思いは家族に向ける親愛に似て、月さんを支える、守るといった気持ちが伝わってくる。

 だからこそ、詠さんにはこの言葉を伝える。

「わかりました。それに元から僕は月さんの力になるつもりですから」

 

 

 

 

 

 月さんから真名を渡されたことは瞬く間に広まった。

 すでに何人かの人には真名を教えてもらっていて─

 李需─景明さん。

 張遼─霞さん。

 呂布─恋さん。

 陳宮─音々音。

 李傕─桜花さん。

 郭汜─葵さん。

 

 真名の受け渡しの判断は人によるらしいが、霞さんや恋さんはすぐに真名を明かした。

 軽い感じで明かしたものだから、逆にそれでいいのかと心配になってしまう。

 他の人は詠さんと同じく月さんが信頼しているのならと呼ぶことを許可した。

 まだ、樊稠さんや華雄さんからは認められるほどの武や成果を出してからと言われたが。

 牛輔くん?はいまだに僕と会うと逃げてしまうし、

 徐栄さんや張済さんたちは賊討伐などで今はいない。

 けど、真名をもらうぐらいには僕もここに馴染んできたのだろうか。

 

 

 

 

 

 ある日、僕と香風、元直さんの3人は賈詡さんのいる執務室へと呼び出された。

 執務室へ入ると詠さんは政務に使われるであろう書物や書簡に溢れた机の前で作業をしていた。

 詠さん僕たちが入ってきたことを確認すると作業をしていた手を止め、重々しい空気の中で口を開いた。

「──月守、兵を率いて頂戴」

 

 突然の詠さんからの一言で思考は停止した。

 聞き間違えかどうか確かめるために詠さんに尋ねる。

 

「えっと、僕がですか?」

「そうよ、前から言ってたけど使える人材はすぐに役職に就いてもほしいのが現状なの。あんたもここに来てからひと月以上経って、使えるようになってきたと報告は来てるわ」

「でも、すぐに大きな部隊を持てというわけでもないわ。見回り目的の少数部隊をまずは率いてほしいの」

 僕たちの前に書簡を出す。

「これは部隊長以上の立場で他の部隊に移動しても問題ない者を選別した名簿よ。とりあえず、模擬 戦や話す場は設けるから決めて頂戴。」

 中には名前と簡単な情報がびっしりと書かれていた。

 たぶん、詠さんがまとめたんだろうなぁ。

 彼女の顔からは疲れが見てとれた。

 彼女の眼もとにはうっすらとくまがでており、顔色もよくはなさそうだ。

 後で詠さんに何か差し入れでも渡しておこうかな。

「言っておくけど、部隊を編成したらすぐにでも働いてもらうから」

「はい、わかりました」

 と書簡を受け取り、香風と元直さんと共に部屋を後にする。

 僕たち3人は別の場所で部隊編成について考えることになった。

 

「でも、結構な人数になるよね、これって」

「そうだね、軍の中で部隊長以上の人は少なくはないね、それでもよくまとめたものだよ、これは」

「…うわぁ、びっしり」

 ただ、人数が多いこともあって、さらに選び分ける必要がありそうだ。

「でも、一人ひとり当たっていくのはどれぐらいかかるかわからないしなぁ」

 とそこで香風が声を高らかに言った。

「…私に…いい考えがあるよ~」

 その考えというのが──

 

 

 

 

 

「─んしょ」

 香風の一撃を耐えられるかどうかである。

 香風、かなりスパルタ式だ。

 死なない程度に手加減をしているらしいが、人が簡単に宙に浮く光景を見ると死んでいないのが不思議に思えてしまう。

 選別した人たちは部隊の責任者というだけあってそれなりの武を持っているはずだが、香風の一撃はそれなり程度では防げない。

 さっきから、何人宙を舞っているのだろうか。

 あの光景を見て逃げ出さず、果敢に向かっていく彼らに賞賛を与えたいぐらいだ。

 

 

 

 結局残ったのは3人とめっきり減ってしまった。

 残った人は僕との模擬試合を行う。

 どれぐらいの力量があるかを見るためと、自分の力を相手に示さなければならないという理由があるからだ。

 ─1人目は得物が剣を使い10数回の打ち合いの末に僕が剣を払い落し、降参した。

 ─2人目、戟を使うがうまく懐に入り、胴体に一太刀いれて、終了。

 最後に相対したのは少年にも見えるショートカットの中性的な容姿をした少女だった。

「ボクは張郃、字は儁乂です。よろしくお願いします!」

 ぺこりと頭を下げる。

「月守悠、字はないよ。こちらこそよろしく」 

 と挨拶を返す。

 元気な子だな。

 歳は僕よりも下で香風と同じくらいにかな。

 彼女は自らの得物である槍を手にする。

 直後に空気が変わった。

 彼女は槍の矛先を僕に向け、前かがみの体勢になっていた。

 ──この子は強い。

 先ほどまで相手にしていた人たちも香風の一撃を耐えられるほどの実力はあった。

 だけどこの少女は霞さんや樊稠さんたちの纏う空気に近いものを感じる。

 僕も四肢に力を籠める。

 ─くる。

 そう感じた。

 張郃が突貫する。

 槍の矛先が真っ直ぐに僕に向かう。

 速い。

 でも、避けられないわけではない。

 僕は横に体を捻り、攻撃を避ける。

 避けられるのは想定していたのか、彼女はすぐに槍を引き戻す。

 そこから横に槍を薙ぎ払う。

 鋭い金属音。 

 剣で受け止めたが、軽い。

 しかし、軽い分、槍捌きの速さや数で補っている。

 下段打ち。

 足を払い避ける。

 追撃で柄が胴体を狙う。

 右に避ける。

 脇腹を掠める。

 彼女は後ろに跳ねてから上段からの一撃。

 剣で受け止めるが、

 連続で槍を突いてくる。

 首。

 胴。

 脚。

 腕。

 彼女の槍は速い。

 でも霞さんや樊稠さんほどでもない。

 剣や体を捻るといった最低限の動作で捌き切る。

「──っく」

 攻撃が当たらないことに焦り始める張郃。

 すかさず僕は攻めに転じる。

 距離を詰める。

 彼女も間合いに入らせないために足掻く。

 槍を突く。

 しかし、僕は剣で槍を受けつつ、そのまま時計回りに槍を落とし剣先を喉に向ける。

「ふー、降参です。いやーさすがです」

 と彼女は降参した。

 

 

 

 

 

 結果として最後に戦った張郃さんは副官として付くことになった。

「よろしくお願いします。先輩。僕のことは泉花と呼んでください」

 う~ん先輩と呼ばれるとなんだかムズムズするな。

 そして僕が指揮官となり、将、副官として香風、元直さん、張郃さんが付く。

 各部隊を先ほど選抜された残りの人を部隊長おいて総勢500人を満たない僕の隊ができたのであった。

 

 

 

 

 

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