乱世の外史 董卓伝   作:ウォーリー

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遅れました。
短めです。
今回は黄巾党の皆様は出てこないです。


第2章 黄巾の乱 時代に抗おうとした者たち
第9話 忍び寄る乱世の影


 

 

 

 思いがあった。

 願いがあった。。

 飢餓や賊、日々の生活の中でいつ死ぬかもわからない世ではなく。

 平和な世を求め。

 自らが、その家族、思い人、大切な人たちが安心して暮らせる世を求め。

 そのために戦いを起こした者たちがいた。

 たとえ相手が国であろうとも、戦わなければならなかった。

 救いを求め、彼らは集まった。

 だが、彼らに立ちふさがるのは一騎当千の武人、軍師、王といった英雄、好漢たち。

 それでも彼らは突き進むだろう。

 家族を、友を、愛する者たちのために。

 だが決して彼らは英雄にはなれないのである。

 彼等に待つのは救いかそれとも死か。

 

 

 

 これは敗者たちの軌跡である。

 

 

 

 

 

 ──早朝。

 朝の光が射しかけてきたころに少年は目を覚ます。

 ─今日は見なかったな。

 少年─悠が初めて人を殺して以来、見るようになった悪夢。

 最近では悪夢を見る頻度は少なくなった。

 人を殺す。

 日に日に、その行為に対する忌避感が薄れてきている。

 少しずつこちらの世界に適応している証なのかもしれない。

 しかし、そのことが逆にどこかで狂ってしまっているのではないかと不安にさせる。

 暗い思考に陥りかけていたのを、上体を起こし、腕を伸ばすことによって切り離す。

 朝から考えてもどうしようもない。

 そう判断した。

 

 

 

「ん?」

 今更ながら違和感。

 寝具に膨らみが二つ。

 一つは香風である。

 彼女が寝床に潜り込んでいるのは日常茶飯事なので諦めている。

 問題はもう一つの膨らみ。

 その膨らみの中を確認する。

「ふぁぁ、むにゃむにゃ」

 小柄で鮮やかな黒髪ショートカットの髪。

 少年にも見える少女。

 泉花であった。

 部隊結成をして以降、早朝に自主特訓をする悠に合わせ、同じく自主特訓を行っている彼女は、早朝、悠の部屋まで来て待っているのが日課になっていた。

 どうやら、部屋まで来たのはいいものの、何故か寝床に入り込んでしまっている。

 …起こそうか。

 もう早朝なので自主特訓の時間も惜しいことから起こすことにした。

 肩を軽く叩く。

 もしくは少し揺らす。

「んにゃぁ~」

 まだ起きないので声をかける。

「ほら、泉花起きて」

「もう、お腹いっぱいです。せんぱい~」

 何を見ているのかすごく幸せそうな顔をしている。

 ならば、と強硬手段をとることにした。

 頬を抓る。

「えへへ、駄目ですよ~。…ふぁ!」

 やっとのことで目を覚ます。

 泉花は目を覚ますと辺りをキョロキョロ見回す。

「へ、先輩どうして?」

「いや、泉花こっちに来て寝てたんだよね」

「あーいや、先輩を起こしに来たんですけど、つい暖かい温もりに惹かれてしまいまして」

 あはは、と笑う泉花。

 そんな彼女を連れて朝の特訓の場へと向かう。

 

 

 

 

 城の中庭。

 腕立てや腹筋と基礎を重点的に置いたものが中心。

 もう、数か月以上繰り返し、習慣づけられてきたので、当初よりも苦も無く行う悠。

 ある程度体が温まってきたら悠と泉花、二人の模擬戦が開始する。

 

「行きますよー。ふっ!」

 本来の武器ではなく、自身がもつ武器の長さはある木の棒を使い接近する泉花。

 ただの木の棒であろうとも本来の動きは変わることはまず無い。

 突き。

 払い。

 薙ぐ。

 その動きは神速と呼ぶほどの速さではない。

 かといって繰り出される軌道は並大抵の者ならば捌くことで精一杯だろう。

 対し、少年─悠は上体を捻る、体をずらすといった最低限の動作で躱す。

 躱せないものは手にする木刀を構え、受け止める。

 また守りに徹するだけではなく、果敢に接近し木刀を振るう。

 本来ならば彼が攻撃を避け、逆に反撃することはできない部類の人間であった。

 それは彼が元々この世界にいなかったことに起因している

 気が付けば三国志に似た死と隣り合わせの世界。

 逆に平和な世界で生きてきた彼。

 しかし、容赦なく彼は戦いに巻き込まれていく。

 その過程で人を殺し、何度かの戦いを経て彼は変わりつつあった。

 武人、武将と呼ばれるにふさわしい者たちとの特訓を通し、彼は身体能力、技術ともに常人の域を超えてきている。 

 彼は異常なのか。

 否。

 彼はこの死と隣り合わせの世界に適応し、もともと持っていた才能が開花したにすぎない。

 それは戦の才能というべきものか。

 彼が元居た世界ではなかなか発揮できない才能である。

 しかし、ここは人が争い、死が身近に跋扈している。

 この世界に来てから着実にその身を戦いの申し子に変えている。

 だからこそ、彼は今も疲れも見せずに木刀を振るう。

 模擬戦であるが故に軽く話をすることもできるほどに。

「先輩、戦うたびに思うんですけど、どんどん強くなってますよね」

「う~ん、あまり実感しないんだけどね」

「先輩の周りの人たちが異常に強いだけですよ」

 会話をしながらも二人の動きが鈍ることはない。

 ひたすらに木と木のぶつかる甲高い音が中庭に響き渡っていた。

 

 

 

 辺りもすっかり明るくなってきたころ、城内であちこちに人が見え始めてきた。

泉花との模擬戦も終わらせて、特訓を終了する。

「ふー、だいぶ汗かきました」

 お互いに汗をかく程度には模擬戦に熱中していた二人。

「じゃあ、僕は部屋に戻るよ」

「はい、わかりました。」

 汗をぬぐうと悠はひとまず部屋へ戻る。

 これから香風を起こさないといけないからだ。

 少し面倒くさく思いながらも歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 日中、僕たちは部隊の鍛錬を行っていた。

 最近になってこの風景が変わった。

 趙雲こと星の存在である。

 星の実力はまさに一騎当千と呼ぶにふさわしいものがあり僕の所にいるのは今更ながら大丈夫なのかなと不安になるほどである。

 今もまさに香風と模擬戦を行っている。

 

「むう、…あたらない」

「ふっ、やすやすと当たりはせぬよ」

 大斧を振っているとは思えないほどに軽々しく振り回し、その一撃に当たれば人の体など いともたやすく吹き飛ばされるほどの香風の攻撃。

 その強烈な一撃を星はひらりと躱す。

 そう言っても簡単なことではない。

 しかも隙あらば、攻撃を避けつつも自らも攻勢に入る。

 お互いの実力は五分と五分。

 香風が力で攻めるならば、星は速さで躱す。

 両者ともここまでの模擬戦で疲れは見えていない。

 こうしてみるとやっぱり僕はまだまだ実力も足りないように思う。

 

「泉花、僕たちも頑張らないとね」

「はい!でもやっぱり先輩の周りは強い人が多すぎなんだとおもうんですよね」

 

 香風と星の模擬戦を魅入ってはいけないとこちらも手にした剣に力を籠めて、模擬戦をする。

 ちなみに香風と星の模擬戦の結果は隙をうまく突いた星に軍配が上がった。

 

 

 

 香風や星の勝負では10回勝つごとに好きなものを出来うる範囲で与えるというのを試しに二人に言ってみた。

 そうしたら二人の力の入れようは凄まじいの一言に尽きた。

 毎日模擬戦で戦い、両者勝ち負けをを繰り返していた。

 ちなみに二人に10回勝ったら何を頼むか聞いてみると、香風は僕にお菓子をお願いしてきた。

 今度作ってみるのもいいだろうか。 

 そういえば元直さんも得意だと言ってたな。

 一緒に作ってみようかな。

 星にはメンマをお願いされた。

 なんでメンマなのだろうか?

 そう疑問に思って聞いたところ、星に一晩熱くメンマについて語られてしまった。

 メンマについての話題は星の前ではあまりしないように誓ったのだった。

 

 

 

 

 

「反乱の兆しがあるわけね?」

「はい。各地で大規模な勢力を形成している集団があるようです」

「で、共通するのが黄色い布を所持しているわけね」

 詠は溜息をつく。

 最近は自分たちの領地に存在していた賊の活動も沈静化してきた時にこの一報。

 諜報部門を任されている張繡─怜羅からの報告なので信用するに値するものである。

 これが幷州だけの問題であればまだ対処できる。

 しかし、今回の問題に限っては違った。

 幷州以外にも冀州や青洲、幽州、兗州など大規模の動きがある。

 これには詠たちだけで解決はできない。

 ひとまずは情報収集に徹するほかなかった。

「まだ、これがどのような集団というのが判断しかねる状態ですが」

「引き続き調査をお願いね」

「了解しました」

 怜羅が部屋を出る。

 どうして問題ばっかり起きるのか、何度目かわからないが詠は再び溜息をついた。

 

 

 

 時代は確実に乱世へと突入していく。

 

 

 

 

 

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