選択肢のスレイブ   作:スレイブマン

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選択肢もの増えろ(増やす)


プロローグ

 

 

 

"公平"と"平等"は違う。

 

平等は、それぞれの能力や個性に関係なく同じように扱う事で、公平は、それぞれの能力や個性を考慮した上で扱う事である。

 

どちらがいい、と明確な答えは無い。それぞれの状況、場合によって変えていくのが正解なのだと思う。

 

ただ……"この世界"はそのどちらにも当てはまらないものだろう。

 

"女尊男卑"。

いつからそうなったのかは分からないが、そうなった原因は分かる。

 

この世界には魔都という場所が、異空間が存在する。

そこに実る果実、"桃"。これを口にすれば超常的な能力を授かることが出来るらしいのだが……なぜかそれは女性のみの話なのだ。

 

男が食っても何も無く……つまり、力を持った女とただの人間の男。力関係が逆転したのだ。

 

女性が外に働きに出て、家では男が専業主"夫"。そんなのはもう珍しくない。実際、各国の首脳たちももう女性しかいないし。

 

まあそれでもみんな仲良く平和に生きていけるなら別にいいんだ。役割が変わっただけなら別に何も思わないし。

 

ただ力を持ったことで自尊心が助長されたのか横暴な人が多い。道行く男を見つけたら他人だとしても小間使いのように命令するやつもいればわざわざすれ違う男に方をぶつけてクスクスしてる奴もいる。

 

陰湿というかなんというか。力を持ったなら、せっかくだからもっと大きいことすればいいのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、こんな話をしてきたのは俺がそんな世界に"転生"してしまったからである。

 

まだピチピチの小学2年生。同級生の中には桃の力を持ってるやつはまだいないがそれでも尊大な性格してる方々は多々見られるわけで毎日精神がすり減ってる。

 

しかも何よりも──

 

「ちょっと」

「………ん?」

 

隣の席に座る少女が話しかけてきた。

周りに色んな人をはべらせた人気者。

 

「喉乾いたのだけど」

「……あ、そう」

 

「………」

「………」

 

「………」

「………」

 

「……早く買ってきなさいよ」

「は?俺が?」

 

これだ。買ってきてもらうのが当然と言わんばかりの言動。

やだねぇほんとに。子供の頃からこんな性格とか終わってるって。真っ暗だよこの世界の日本の未来。

 

「──っ、OK!待ってて!」

「早く行ってきて」

 

そんな彼女に親指を立てて、すぐさま席を立ち自販機へ。

はあ嫌だ嫌だ。嫌なのになんで買いに行くかって?

 

やむにやまれぬ事情があるのさ。いやほんとに。"コレ"のせいで精神どころか胃もすり減ってる。もはや穴ぼこだらけ。蜂の巣にされてるまであるね。

 

とりあえず、素直に水とかお茶を買って言ってやるのは癪だ。嫌がらせで飲むタイプのフリスク買っていってやろ。あんまり大きい声で言えないけど……これ美味しくないよね。ほんとに。不味い。

 

俺はコーラだね。安定の美味しさ。母親の味というかふるさとの味というか……安心感がある味。

 

さて戻りましょ戻りましょ。

とりあえずあのいけ好かん隣の席のやつには後で靴の中に画鋲を仕込んどいてやろう。

 

「……なにこれ」

「フリスク。美味いらしいよ」

 

「へえー」

 

渡したら不思議そうに感を眺めた。

そのまま飲み口を開け、一口。

 

「───っ」

 

吹き出しそうになってた。首を傾げて困惑した表情。

分かる、よくわかんない味だよね。

 

まあ俺はコーラを飲んでるけど。

 

あ、もう一口飲んだ。

あ、手で押えたけどちょっと吹き出したな。

 

へ!ざまあwww

 

 

 

▶▶▶▶▶

 

 

 

さて、放課後になれば俺はとある道場に足を運ぶ。

 

うちの婆ちゃんの知り合いのやってる道場なんだが、俺の住んでるところからかなり離れた場所にある。

なんでそれなのに通えてるのかと言えば魔都を経由しているからだ。

 

道場を営んでる婆さんが魔防隊という魔都の治安維持組織的なやつに所属しているらしくそのツテでクナドって呼ばれてる門を潜って魔都へ。そのまま魔都からショトカで目的地へ。

 

県を2つ3つ超える距離をこれならものの1時間弱で移動可能。なんと便利なことか。

 

でも道場はめんどい。俺はインドア派なのに。トホホのホ。

 

「だいぶ様になって来たねえアンタ」

「あ、"りう婆"」

 

声をかけてきた黒い制服に身を包んだ婆さん。

冥加りう。なんか組長だかなんだかすごい役職についてる元気なお婆さん。あとめちゃ強い。桃の能力とかじゃなくて身体能力が。

 

「次は打ち込みかい?」

「いえーす」

 

「どれ、私が相手してやろうか。まず10本くらいからにしておくよ」

 

柔道の打ち込み。

これが全身運動で疲れる疲れる。小2の体だと10本でも連続でやるのはしんどい。

 

何とか回数を減らしたい所──

 

 

 

──その時、世界が止まった。

 

 

 

目の前のりう婆も動かなくなり、周りの人間も止まってる。

柔道技で投げられた人は空中でそのまま静止し、窓の外を見れば雲も鳥も何もかもが動かなくなった空間。正しく止まった世界。

 

自分も体が動かなくなり、瞬きも出来ない。

そんな中目の前に現れた恒例のとあるもの。

 

 

 

【10本?1000本の間違いだろ?】

【こんなのやってられるか!道着を脱ぎ地面へと叩きつける】

 

 

 

これだよこれ。俺が胃に痛みを抱える原因。

 

この選択肢が俺を苦しめるのだ。

見てくれこの2つの選択肢を。

 

上を選べば俺はヒィヒィ言って目から涙を零し翌日には全身筋肉痛になること必至だ。

下を選べばなんだその態度は!とりう婆から折檻される未来が見える。

 

こんなのがこの8年ほど続く生活。頭おかしなるて。

女からもあーだこーだ言われ精神が参るのにこんなのが定期的に現れると胃が痛くなるね。

 

こんな力……欲しくなかった…!

 

そして選ばなければ永遠にこの止まった時間の中に拘束される始末。終わってるて。

まあ下は選べんよね。人間関係ぶち壊したくないので。

 

1000本かあ。もう慣れたよこんなの。慣れたくなんてないけどね!

 

選ぼうとすればマウスカーソルよろしく矢印が出現。

それを動けと念じればカーソルは選択肢の元へ。

 

上の選択肢まで来れば決定と意思表示することでピコンと音が鳴り世界の時は動き出す。

 

「10本?1000本の間違いだろ?」

 

すると勝手に開く口。

選んだが最後、体はその選択肢に書かれた行動を終えるまで自由になることは無い。

 

だがここでりう婆がさすがにそれは無理だろと釘を刺すと強制力は失われる。だから頼むぞりう婆…!フリじゃねえぞ…!

 

「……ほう、面白いじゃないか。やってみな」

 

はいオワタ\(^o^)/

 

何その不敵な笑み。こいつ、面白い…!と言わんばかりの笑顔。

ここは辞めさせなさいよ。小2のガキンチョが無茶しようとしてるなら大人として止めてやって?

 

そんな思い虚しくりう婆と打ち込みの稽古。

 

「ほれどうした!動きにキレがなくなって来てるよ!」

「ゼーハー……ゼーハー……」

 

やめたくてもやめられないこの体。数時間かけてやりきった俺は終わった瞬間に意識を落とした。

へ、こんなの慣れっこだぜ(涙)

 

 




続きを書く元気が欲しい。
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