可愛い銀髪美少女天使カードとして転生した私、マスターを導く   作:にゃっとう

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17.手札からではなくデッキから直接使用することができる

後攻3ターン目:水星エミリア

無空メイ場を離れた虚構定理:2
ライフ:6Se:虚仮コッコウ(A0/H2000)
Ene:3(0)
手札:3

水星エミリア
ライフ:6Se:機械猫#レプリカ(A500/H500)
Ene:2
手札:4→5

 

 

「私のターン。私は1エナジーを消費して『機械兎(メカニカルラビット)』を召喚するわ」

 

機械兎(メカニカルラビット)
コスト1 種別:メカ/ビースト 
属性:水 ATK 1000 HP 500 

サーヴァント 

 - 効果 - 
①召喚時に発動可能。自分の場の他のコスト6以下の種別:メカを持つサーヴァント1枚を破壊する。そうした場合、サーヴァント「機械兎#レプリカ」を2枚生成し、1枚を手札に加えて1枚を場に出す。さらに自分の場の種別:メカを持つサーヴァントすべてに『アクセル』を付与する。

 

「『機械兎』は召喚時、自分の場のコスト6以下の種別メカを持つサーヴァント1体を破壊できる。私は『機械猫#レプリカ』を破壊。そしてこの効果を適用したなら私は『機械兎#レプリカ』を2枚生成し、1枚を手札に加えて1枚を場に出せる」

 

 カードを操る手さばきに迷いがない。

 『機械猫#レプリカ』が場に残ったままターンが返ってきたならこうするとあらかじめ決めていたような、計画性に富んだ動きだ。

 

機械兎#レプリカ
コスト1 種別:メカ/ビースト 
属性:水 ATK 1000 HP 500 

サーヴァント 

 - 効果 - 
【制約】:[エナジーへのチャージ不可]


①ライフカウンターへ攻撃できない。

 

「『スクラップ・リサイクル』の効果が付与された『機械猫#レプリカ』が破壊されたことで、私は同名カードを1枚複製して手札に。そのコストは0になる。そして『機械兎』のさらなる効果。私の場の種別がメカのサーヴァントすべてに『アクセル』を付与する」

 

 現在、エミリアの場には『機械兎』と『機械兎#レプリカ』の2体がいる。

 そしてその2体ともが、種別はメカだ。

 よって2体は『アクセル』を獲得し、場に出たターンでもサーヴァントに攻撃できるようになった。

 

「攻撃宣言よ。私は機械兎とそのレプリカの2体で『虚仮コッコウ』を攻撃する」

「虚仮コッコウのATKは0。あなたのサーヴァントにダメージは与えられない」

「そして私の場の2体のATKの合計は2000。あなたの虚仮コッコウのHPも2000よ。ちょうどHPが0になって破壊されるわね」

 

 ……『機械猫#レプリカ』の攻撃による自爆の動きができないようにしたことで少しは動きが鈍るかと思ったが、それどころか場のサーヴァントの破壊をトリガーにメリットを獲得する効果によって、エミリアにさらなる手数を与える結果になってしまった。

 とは言え……豊富な選択肢から最善手を選ぶ戦術を得意とするエミリアのことだ。

 おそらくは『機械猫#レプリカ』が除去されていたとしても、それならそれで状況に応じた最適解を選んできただろうことは想像に難くない。

 

「だけどこの瞬間、私は破壊された虚仮コッコウの効果を発動する。これが場を離れた時、私はカードを1枚引く」

「予想通りね」

 

 私がデッキからカードを引くと、エミリアは最初からわかっていたというように呟いた。

 

「無空さん。あなたの戦い方は私と似ているわ。相手に合わせて臨機応変に戦術を切り替えながら、自分のやりたい動きを目指す……つまり、後の先を重視している。だからこそ私が展開の速度を下げれば、あなたもそれに応じて手札を減らさないよう慎重に立ち回る」

 

 これがホムラならここぞとばかりに積極的に攻めてくるでしょうね、とエミリアはAクラスが集まっている観客席を見た。

 

「そして……似ているからこそ、私にはその弱点もわかる。それは、圧倒的な物量よ」

 

 ……そういうことか。

 後半戦は私の土俵だ。速攻による勝ち筋を捨てたエミリアが、どうやって私に勝ち切る算段を立てているかだけが見えなかったが……ずいぶんと単純な話だったようだ。

 

「手札の数は打てる戦術の数に等しいわ。相手が使ったカードに対し、単純に1枚で1枚ずつに対処したとすれば、最後には手札が多い方が勝つ。だからこそ私もあなたも、打てる手が0にならないように可能な限り多くの手札を抱えておくことを重要視している」

「……けれど相手の手が苛烈であればあるほど、手札を補充する隙はなくなっていく」

「そう。私の攻めはホムラほど激しくはないけれど、その代わりデュエルの最後まで延々と途切れることはない。だから……ふふっ。リソース勝負をしましょう? 無空さん」

 

 不敵に笑ったエミリアは、3枚のカードを手に取った。

 

「私はさきほど手札に加えた『機械猫#レプリカ』を0エナジーで召喚。さらにエナジーをチャージし、2エナジーで『量産型アンドロイドβ(ベータ)』を召喚するわ」

 

量産型アンドロイドβ(ベータ)
コスト2 種別:メカ 
属性:水 ATK 1500 HP 1500 

サーヴァント 

 - 効果 - 
①召喚時に発動可能。自分の場のコスト6以下の種別:メカを持つサーヴァントを任意の枚数選択して破壊する。その後、この効果で選択した数だけサーヴァント「量産型アンドロイドβ#レプリカ」を生成して手札に加える。

②破壊された時に発動可能。カードを1枚引く。

 

「これが召喚された時、私は自分の場のコスト6以下の種別がメカのサーヴァントを好きなだけ破壊できる。私はこの効果で、私の場のすべてのサーヴァント……『機械兎』、『機械兎#レプリカ』、『機械猫#レプリカ』、『量産型アンドロイドβ』の合計4体を破壊する」

「……物量で押すんじゃなかったの?」

「もちろんそのつもりよ。アンドロイドβの効果にはまだ続きがある。この効果で破壊した数まで、私は『量産型アンドロイドβ#レプリカ』を手札に加えることができる」

 

 今、『量産型アンドロイドβ』の効果で破壊した数は4体……ということは。

 

「よって私は4枚のレプリカを手札に加える。さらにアンドロイドβの破壊された時の効果を発動するわ。これにより、私はさらにカードを1枚引く」

「っ、一気に5枚も手札を……」

 

 ターンの初め、エミリアの手札は5枚だった。

 そこからターンの最中に手札に加わったカードは『機械猫#レプリカ』と『機械兎#レプリカ』、4枚の『量産型アンドロイドβ#レプリカ』にドローが1枚の、計7枚。

 そして手札から使用したカードは『機械兎』と『機械猫#レプリカ』、『量産型アンドロイドβ』の計3枚。さらにエナジーチャージを含めると、消費は4枚分だ。

 

 5+7-4=8で、現在のエミリアの手札は8枚。

 確かに凄まじい手数だ。けれど……。

 

「……エミリア」

「なにかしら」

「私はあなたのデュエル映像の記録を見たことがある。だからこそ、レプリカと名のつくサーヴァントが持つ共通の特性についても知っている」

 

 『機械猫』を例に挙げるのが一番わかりやすいだろう。

 『機械猫』は場に出た時にレプリカを手札に加える効果を持っていたが、レプリカはその効果を引き継いでいなかった。

 加えて、オリジナルの『機械猫』にはなかったエナジーにチャージできない制約を持ち、ライフカウンターへ攻撃できないデメリット効果まで付与されていた。

 そしてそれは『機械猫#レプリカ』に限らず、すべてのレプリカサーヴァントが持つ共通の特性だった。

 

「『機械猫#レプリカ』、『機械兎#レプリカ』。2体がそうであったように、すべてのレプリカサーヴァントはオリジナルにはあったレプリカを手札に加える効果が消失している。加えてエナジーにチャージできない制約と、ライフカウンターに攻撃できないデメリット効果を持っている」

「よく勉強してるわね」

「あなたの8枚の手札のうち、1枚は『機械兎#レプリカ』で4枚は『量産型アンドロイドβ#レプリカ』……レプリカである以上、私のライフカウンターに攻撃はできない。つまり私への直接的な脅威にはならないカードということ。その程度のサーヴァントをエナジーを消費して出したところで、デュエルに及ぼせる影響はたかが知れている」

 

 ……とは言ったものの、そんな甘い考えが通用する相手ではないことも、私はすでに理解している。

 現状では脅威にならない。ただそれだけだ。彼女が持つ切り札の能力を加味すれば、ただ種別がメカというだけでレプリカは意味を持ち得る。

 私は記録映像で見た、エミリアの切り札――『機械竜ルーク・セブン』の効果を思い出す。

 

機械竜ルーク・セブン
コスト7 種別:メカ/ドラゴン 
属性:水 ATK 7000 HP 7000 

サーヴァント 

 - 効果 - 
①『ストライク2』

②召喚時に発動可能。手札の種別:メカを持つカードを任意の枚数捨て、同じ枚数だけカードを引く。この効果で捨てた数に応じて以下の効果を適用する。

・1枚以上:『アクセル』を得る。

・2枚以上:『アサシン』*1を得る。

・3枚以上:『ガード』を得る。1層の『バリア』を得る。

・4枚以上:【自分のターンエンド時に発動可能。攻撃権を回復する。】を得る。

・5枚以上:【攻撃権を消費した時に発動可能(上限:1ターンに1回)。攻撃権を回復する。】を得る。

・6枚以上:『フルアクセル』を得る。

③破壊された時に発動可能。墓地の種別:メカを持つサーヴァントを合計コストが7以下になるように任意の枚数だけ選択して手札に戻す。

 

 ルーク・セブンは、たった1体で攻撃と防御を両立する強力なエース級サーヴァントだ。

 種別がメカのカードを手札から6枚まで捨てて同じ枚数だけ引くことで、『アサシン』、『バリア』、『ガード』、ターンエンド時の攻撃権回復。そしてターン中に1度だけ攻撃権を回復することで、2度の攻撃及び『ガード』を可能とする効果に加え、『フルアクセル』まで獲得する。

 さらに破壊された時に合計コストが7以下になるように種別がメカのサーヴァントを墓地から手札に戻すことができ、これによって破壊されたコスト7のルーク・セブン自身を回収することもできる。

 一度場に出てしまえば何度破壊しようとも手札に舞い戻り、延々と召喚を繰り返して強力な連続攻撃を繰り出すことができる。まさしくエースと呼ぶにふさわしいサーヴァントだ。

 

 だがこれを実行に移すためにはさきほども言ったように、手札に種別がメカのカードが他に6枚必要となる。

 この6枚というのが肝だ。

 

 デュエルにおいて、先攻は手札が5枚、後攻は6枚で1ターン目が始まる。

 毎ターンカードを1枚引くことができるが、エナジーをチャージするごとに1枚減ることを加味すれば、カードの効果で手札を増やしておかなければ6枚を捨てることなんてできない。

 だからこそのレプリカだ。

 レプリカと名のつくサーヴァントは重いデメリット効果がある代わりに、非常に増やしやすい特性を持っている。そして、そのすべてが種別がメカだ。

 すなわちレプリカを手札に貯め込もうとするエミリアの動きは、手札に余裕を持って相手に対応するためであると同時に、エースであるルーク・セブンを最大限に活かすためのものでもあるということ。

 

 序盤から積極的に盤面に干渉し、隙あらば攻め込みつつも、ルーク・セブンを出せるようになるまでは手札を減らさないように注意して戦線を維持する。

 そしてルーク・セブンを出せるほどまでエナジーが溜まったら、連続召喚と連続攻撃を繰り返してフィニッシュを狙う。

 それが私が記録映像で見たエミリアの必勝パターンだった。

 一度ルーク・セブンが場に出てしまえば、彼女の連続攻撃が止まることはない。受けに回るだけではいずれ手札が尽き、彼女のデッキが持つ無限のリソースに押し切られる。

 

 ……とは言え、ルーク・セブンのコストは7。今のエミリアのエナジーの最大値は3であり、ルーク・セブンが出てくるまではまだ余裕がある。

 ルーク・セブンが登場する前に勝負を決めるか、それともルーク・セブンでは押し切れないほどまでに防御を固めるか。私には選択の余地がある。

 

「たかが知れている……ね。なら、試してみましょうか? 私が持つレプリカのカードが、本当にあなたの脅威にならないかどうか。私はこれでターンエンド――そしてこの瞬間、私はデッキに眠る『機械都市(メカニカルシティ)アクシス』の『A・O・D(アライバル・オブ・デスティニー)』を起動する」

「っ――その効果は……」

 

 非常に珍しく、そして強力極まりない効果のキーワードを耳にして、私はかすかに目を見開いた。

 

「あら。『A・O・D』がなにか知っているみたいね」

「……『A・O・D』を持つカードは、その条件を満たした時、手札からではなくデッキから直接使用することができる」

 

 要は、条件を満たした時に手札から使える効果を指す『Qアクション』のデッキ版のようなものだ。

 ただしその特性はQアクションよりもはるかに強力と言える。

 手札に抱えておかなければいけないQアクションと異なり、デッキからということは、構築段階でデッキに入れておきさえすれば、デュエル中の条件を満たしたタイミングで必ず使用ができるということ。

 通常、デッキの核となるカードはデッキから引けるかどうかに運が絡むが、仮に『A・O・D』を持つカードを核にしたならば、そこに不確定要素はほとんど介在しないことになる。

 さらにQアクションであれば当然その分手札が減ってしまうが、デッキから使う『A・O・D』であれば貴重な手札を浪費することもない。

 

 もちろんその分、適用するための条件も厳しくなりやすく、『A・O・D』を持つカードも稀と言ってもいいほどの数しか存在しないが……。

 

「さすがね。私も去年の留学で初めて学び、戦術に取り入れたこの効果……あなたが相手なら、使うのに申し分はない」

 

 エミリアのデュエルガントレットが淡く輝き、そのデッキから1枚のカードが飛び出した。

 

「『機械都市アクシス』の『A・O・D』の条件は、後攻3ターン目以降の自分のターンエンド時。その条件は満たされている。運命よ、来たれ! 私は『A・O・D』により、デッキから『機械都市アクシス』を展開するわ!」

 

機械都市(メカニカルシティ)アクシス
コスト6 属性:水 

エリア 種別:メカ 

 - 効果 - 
【制約】:[存在制限](上限:同名/場に1枚)


①【デッキ/手札で有効】このエリアを展開するために必要なコストは-Xされる。(Xは「自分の破壊された種別:メカを持つカードの数」)

②『A・O・D』*2=条件:後攻3ターン目以降の自分のターンエンド時。

③???

④???

・???

・???

・???

 

 『A・O・D』でデッキからカードを使用する場合も、そのカードのコスト分のエナジーの消費は必要となる。

 『機械都市アクシス』の展開前、エミリアのエナジーは0だった。

 だから本来ならこの状況ではコスト分のエナジーを支払えず、『A・O・D』も使えないはずなのだけど……これは……。

 

「『機械都市アクシス』の元のコストは6。だけどアクシスは自身の効果により、このデュエル中に破壊された私の種別メカのカード1枚につき、展開に必要なコストが1下がるわ」

「……現在、あなたの破壊された種別がメカのカードは『機械猫』、2体の『機械猫#レプリカ』、『機械兎』、『機械兎#レプリカ』、『量産型アンドロイドβ』の合計6枚」

「ふふ、よく覚えてるわね。その通りよ。よってアクシスのコストは6下がる。コストが0になったアクシスは、0エナジーで展開が可能よ」

 

 ライフカウンターへ攻撃できるはずの通常のサーヴァントも含め、やたらと自分のサーヴァントを破壊しているとは思っていたけれど……。

 手札に種別がメカのカードを貯め込むためだけじゃない。『機械都市アクシス』の『A・O・D』条件である後攻3ターン目以降のターンエンド時というタイミングに合わせて、カードのコストを下げるための行動でもあったということか。

 

「さあ、あなたのターンよ。無空さん」

 

 

先攻4ターン目:無空メイ

無空メイ場を離れた虚構定理:3
ライフ:6(無し)
Ene:3
手札:4→5

水星エミリア
ライフ:6Ar:機械都市アクシス
Ene:3(0)
手札:8

 

 

 A・O・Dを活用した、確実で無駄のない戦術。豊富な手札を抱えて都度打つ手を変える柔軟性。消費と増加を繰り返す手札の枚数を管理するだけの能力と計画性。

 堅実に、まるで将棋のように駒を一つずつ進めていく聡明さを感じる手腕。

 

 直接相対して感じることで、エミリアのデュエリストとしてのレベルや使うカードの傾向が見えてきた。

 やはり油断できる相手ではない。ホムラがそうであったように、エミリアもまた常に一手、二手先を見据えて動いている。

 ここからは警戒のレベルを一段階上げる。でなければ、気づいた時には手遅れだったというような事態になりかねない。

 

 少し前に私はコスト7のルーク・セブンを出すまではまだ時間がかかるだろうと推察した。

 だけど少なくとも『機械都市アクシス』なんてカードは、クラス代表対抗戦前に見た記録映像でもトーナメント戦の途中でもエミリアは一度も使っていなかった。

 『A・O・D』というデッキから使用できる効果を鑑みれば、使える場面が一度もなかったわけではなかったはずだ。

 つまりエミリアは、ここまで意図的にアクシスを使用してこなかったということ。

 計算高い彼女は、自分の手の内のすべてを知られることが敗北の確率を上げることを知っている。私のように同格以上の相手と戦うならば、特に。

 私と戦うであろう決勝戦に備え、その勝率を少しでも上げるために、彼女は途中であっけなく敗退してしまうかもしれないリスクを承知のうえで、自らに枷をはめてここまで来た――。

 であれば、まだ他に隠し玉があると想定するべきだ。まだ余裕があるだなんて甘い考えはここで捨てる。

 

 次の彼女のターン……後の先を重視し、ここまで大人しくしていた彼女は、おそらくなにかを仕掛けてくる。

 指を咥えて見ているのは危険だ。自由に動ける今のうちに、彼女が打ってくる手に備えておく必要がある。

 

「……」

 

 私は自分の手札のカードの1枚を見下ろす。

 

虚構天使の槍(ヴァニティエンジェル・スピア)
コスト4 属性:無 

スペル 種別:虚数 

 - 効果 - 
①相手は自分自身の場のカード1枚を選択して消滅させる。「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」が5以上なら、消滅させる対象は相手ではなく自分が選ぶ。

②自分と相手はお互いに以下の効果から一つを選択して適用する。

・カードを1枚引く。

・ライフカウンターを1つ回復する。

 

 『虚構天使の槍』。相手に自分自身の場のカードを消滅させる行為を強制するカード。

 場を離れた虚構定理の数が5以上なら消滅させる対象は相手ではなく私が選ぶことができるが、場を離れた虚構定理の数はホロエルと機械猫と虚仮コッコウで、まだ3だ。

 だけど相手の場には今、『機械都市アクシス』1枚しかない。だから私が選ぶまでもなく、エミリアはアクシスを選択して消滅させるしかない。

 アクシスが彼女にとってなにか重要な意味を持っているのなら、このカードが効果的に刺さるはずだ。

 

 ただ……このカードの使用にはいくつかの問題がある。

 一つはコスト4のカードであること。

 このターン、ここからエナジーをチャージして私が使えるようになるエナジーの最大値は4だ。

 だからカードそのものを使うのに問題はないが……その代わり、私は『虚構天使の槍』以外の行動が一切できなくなる。

 そうなれば、せっかくの自由なこのターンで私は場を離れた虚構定理の数を稼ぐことができない。

 さきほども言ったように、現在の場を離れた数は3だ。ここで5に近づけておかなければ、この後でいざエミリアが攻めに転じた時に、それを受け切れなくなる危険がある。

 

 そして二つ目の問題が、『虚構天使の槍』に付随するもう一つの効果……互いのプレイヤーに、カードを1枚引くか、ライフカウンターを回復するかを選ばせて適用させること。

 今のエミリアの手札は8。手札の上限は9。ここでカードを引くと次のターンの開始時のドローで手札が10になって溢れてしまうから、エミリアは間違いなくライフカウンターの回復を選んでくる。

 ライフカウンターの初期値は6だが、最大値は8だ。だから1の回復によって、エミリアのライフカウンターは7になる。

 『虚構天使の槍』を使うなら場を離れた虚構定理の数を稼げないから、私も展開を遅くせざるを得ない。そこへさらにライフカウンターの回復でトドメまでの時間が遅れたら……エミリアの無限のリソースに対処しなければならないターンが増えて、結果的に敗北へ繋がりかねない。

 

 だけどこのターンよりも後で、あのエリアに対処できるだけの余裕ができるとも限らない。

 ここであのエリアを除去しておかなければ、次のターン以降、その効果に苦しめられ続ける羽目になるかもしれない。

 

 メリットとデメリットを天秤にかける。

 そこにエミリアの性格や、ここまでの分析で理解した要素を組み合わせて……私は結論を出した。

 

「私は、3エナジーで『虚の妖精ホルルン』を召喚する」

 

虚の妖精ホルルン
コスト3 種別:虚数/フェアリー 
属性:無 ATK 1000 HP 1000 

サーヴァント 

 - 効果 - 
①『虚構定理』=条件:相手の場にカードが存在する。

②『Qアクション0』=条件:相手によって自分のライフカウンターが破壊された時。

③召喚時に発動可能。以下の効果から1つを選択して適用する。

・デッキの上から1枚目をエナジーにチャージする。

・カードを1枚引く。

 

 『虚構天使の槍』は、使わない。

 そう決めた理由はいくつかあるが……その一番の理由は、エミリアのデッキに『機械都市アクシス』が1枚だけとは限らないからだ。

 『A・O・D』によりデッキから使用できるため、アクシスは1枚だけでもじゅうぶんに機能する。

 だから採用枚数が1枚だけという可能性もじゅうぶんに考えられるものの……私とホムラの記録映像を見たという彼女なら、そこで私が使った『虚構天使の槍』の存在も、その効果も確認しているはずだ。

 計算高く、手札の管理も完璧なエミリアのことだ。『虚構天使の槍』の存在を忘れているなどありえない。

 だとすればやはり……『機械都市アクシス』を除去されることも見越して、2枚以上はデッキに入れていると見て間違いない。

 

 1ターンはエリアの効果を使わせずにいられるはずだが、次のエミリアのターンエンド時にまたコスト0で『機械都市アクシス』の『A・O・D』を使われてしまうのなら、その恩恵は薄くなる。

 そうなれば得られるメリットよりも、デメリットの方が大きい。

 

 ここでアクシスの除去に気を取られるのはエミリアの思うつぼだ。

 あのカードを単体で場に残したのは、私が4エナジーを丸ごと使って1ターン分の行動を無駄にするように彼女が密かに仕向けた罠……私への誘いだろう。

 ここで『虚構天使の槍』を使うのは悪手だ。

 

 エミリアは私が『虚構天使の槍』ではないカードを使うのを見て取ると、やはり乗ってこないか、というように小さく息を吐いた。

 そしてその後、私が召喚したホルルンを見上げる。

 

「せっかくの『Qアクション0』を持つカードを、ここで使ってしまっていいのかしら?」

「あなたはホルルンの存在を知っている。そして、警戒もしている。あなたが序盤に『機械猫』を除去されてすぐに速攻を諦めたのは、なによりも私の手札のホルルンを警戒してのこと。中途半端な攻めで早期に0エナジーでホルルンを出されてしまえば、私の展開を手助けするだけに終わって早々に手がつけられなくなってしまう可能性があったから」

「……」

「だからこそ今後あなたが私のライフカウンターに攻撃するタイミングは、私にホルルンの効果を使われても問題がないと判断したデュエルの後半になる。だったら私はそれを待って手札に抱え続けて選択肢を狭めるよりも、先にエナジーを増やして行動の幅を広げておくことを選ぶ」

「……やっぱり厄介ね。思い描く通りに動かない相手というのは」

 

 後半戦を得意とする私のデッキを相手にするなら、多少強引にでも攻めてライフカウンターを攻めた方が後に繋げやすいという思考は間違いではない。

 事実、私はホムラにその戦法を取られたせいで、ライフカウンターが0になるまで追い込まれた。

 だが、エミリアのデッキにホムラほどの苛烈さはない。

 攻め始めた流れに乗って追い込み切れないのなら、逆に利用されて終わるだけだというエミリアの危惧もまた間違いではなかった。

 

「ホルルンの虚構定理の条件は、相手の場にカードが存在すること。今、あなたの場には『機械都市アクシス』がある。よってホルルンの効果は有効。私はホルルンの召喚時効果を発動し、デッキの上から1枚目をエナジーにチャージする」

 

 ホルルンがデッキに杖を向けると、そこからカードが1枚めくられてエナジーに置かれる。

 ……エナジーに落ちたカード……これは……。

 

「……」

 

 チラリとホルルンに目を向けると、彼女は得意げに胸を張ってドヤ顔をしていた。

 ……もしかしてホロエルの真似だろうか。でも正直、ホロエルの方が断然可愛い。

 内心そんなことを思うと、なにかを察したのか、ホルルンがショックを受けたような泣き顔を披露した。

 

 ……ホロエルいわく、『虚の妖精ホルルン』はソウルハート・サーヴァントになりかけているらしい。

 もしかしたら、そのパワーなのだろうか。

 ホルルンの効果でエナジーに置かれたカードは、『虚夢の精霊ホルボルポルン』。

 ホルルンが成長したような見た目の、『虚無龍ヴァニタス』に次ぐ私のデッキの転生サーヴァントだった。

 エナジーゾーンに落ちてしまった以上、今の時点では有効に扱えるカードではないが……。

 エミリアの打ってくる手次第では、役に立つシチュエーションが来るかもしれない。

 

「……さらにエナジーをチャージ。2エナジーでエリア『無人のアトリエ』を展開する」

 

無人のアトリエ
コスト2 属性:無 

エリア 種別:虚数 

 - 効果 - 
①『カウント』*3=初期値:2

②各ターンエンド時に強制発動。サーヴァント『ハリボテ人形』1枚を生成して場に出す。『カウント』を1減らす。『カウント』が0になったなら、このエリアを破壊する。

③破壊された時、「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」を+1する。

 

「ターンエンド。そしてこの瞬間、『無人のアトリエ』の効果。私とあなたのターンエンドごとに私の場に1体の『ハリボテ人形』を出す。この効果が2回適用された時、このエリアは破壊される」

 

ハリボテ人形
コスト0 種別:(無し) 
属性:無 ATK 0 HP 500 

サーヴァント 

 - 効果 - 
①『ガード』

 

 エミリアは私の場に出た『ハリボテ人形』を見て、嫌そうに顔を顰めた。

 

「『ガード』を持つサーヴァント……守りを固めてきたわね」

 

 次のターン、エミリアがなにをやってくるつもりかはわからないが、ひとまずはこれで様子を見る。

 ホルルンの召喚、エナジーのチャージ、『無人のアトリエ』の展開で手札を3枚も使ってしまったのは少し痛いものの……『無人のアトリエ』は破壊された時に、場を離れた虚構定理の数を+1する効果がある。

 現在の場を離れた虚構定理の数は3。次のエミリアのターンエンド時にアトリエがもう一度『ハリボテ人形』を場に出して自壊すれば、その数は4まで上昇する。

 さらにホルルンをなんらかの手段で場から離れさせれば、5に達してホロエルが本領を発揮できるようになる。

 

 そして、カードを1枚引く副次効果により手札を減らさず相手の場に干渉できる『虚構天使の槍』は、エナジーにチャージせず手札に残してある。

 いざという時にはこれでエミリアの手に対処する。

 エミリアにライフカウンターの回復を選ばれるだろうことは辛いが……場を離れた虚構定理が3だった今のターンに使って隙を突かれることに比べれば、5に達した後で使う分には巻き返すこともそこまで難しくはない。

 

 ここからが中盤戦の本番だ。エミリアの戦略に絡め取られないよう注意しながら、私も彼女へ攻め入る隙を探す。

 守っているだけでは勝てない。彼女を殺すために……見極めろ。

 エミリアが持つ無限のリソースを攻略し、その首元に死神の刃を届かせる方法を。

 

 

後攻4ターン目:水星エミリア

無空メイ場を離れた虚構定理:3
ライフ:6Se:虚の妖精ホルルン(A1000/H1000)

Ar:無人のアトリエ

Se:ハリボテ人形(A0/H500)

Ene:5(0)
手札:2

水星エミリア
ライフ:6Ar:機械都市アクシス
Ene:3
手札:8→9

*1
戦闘時、ダメージを与え合った後で、相手サーヴァントの残りHPにかかわらず、それを破壊する。(戦闘によって自身が破壊された場合でも『アサシン』は働く)

*2
指定された条件を満たした時、それに反応してデッキ内のこのカードを即座に使用できる(手札から使用する場合と同様にコスト分のエナジーを消費する)。同名カードの『A・O・D』は1ターンに1度しか使用できない。

*3
『カウント』の数字を他の効果で参照する。




カード制作裏話
・機械兎
テーマ限定つよつよ1コストサーヴァント。メカサーヴァントの破壊された時の効果を1コストで起動可能、レプリカ2枚生成で場と手札のアド稼ぎ、『アクセル』付与で盤面除去と効果に隙がない。同コスト帯の機械猫のATK500よりも高いATK1000なので戦闘でもそれなりに役に立つ。ただし効果を活かすためにはどうしても場にサーヴァントが必要になってくるので、場にサーヴァントを用意できない1ターン目などは機械猫に軍配が上がる。イメージ的には機械猫がアニメ1期での種別メカ実装時の初期カードで、機械兎がアニメ2期開始時の種別メカ新規カード枠。

・機械兎#レプリカ
機械猫#レプリカの完全上位互換。それ以上でもそれ以下でもない。

・量産型アンドロイドβ
エミリアのデッキの隠れた(隠れてるか?)軸となるカード。当然エミリアは3積みしている。自分の場のメカサーヴァントを自分から好きなだけ破壊できるので、機械都市アクシスのコスト軽減を素早く行える。さらに他のサーヴァントがいない状態で出してもレプリカ1体生成+1枚ドローと普通に優秀な働きをしてくれる。β#レプリカの方は自分の場のサーヴァントを破壊してレプリカを生成する効果は持っていないが、破壊された時にカードを1枚引く効果の方は無事に引き継いでいるため、機械猫#レプリカや機械兎#レプリカとは違いバニラ以上の性能がある。種別メカデッキでなくても採用の価値があるレベルの有能カードだと思う。

・機械都市アクシス
まだ効果の全貌がわからない謎のエリア。公開されている範囲だと『A・O・D』が非常に強力で、条件を考えると除去したところでデッキに機械都市アクシスがある限りは使用者のターンエンドごとに何度でも場に出てくるため、対面した相手は基本的に除去は諦めて効果に付き合い続けるしかない。ただ、こういうタイプの効果を持つカードは手札に来てしまうと少し悲しい気持ちになるので、できるなら一生デッキで眠っててほしいというのが使用者の本音。採用枚数も2枚程度に抑えたい。もしも2枚とも手札に来てしまっても台パンをしない寛容な精神力が大事。そして今回はテイストを変えて臨場感を重視し、メイちゃん視点でデュエルを楽しんでもらおうと未発動の重要な効果を隠した。詳しい効果の公開は次回。

・機械竜ルーク・セブン
登場していないのに効果が公開された謎のエース。フルスペックを発揮した時の単体性能が凄まじく、一見して強そうに見えるが、フルスペックを発揮するための条件が厳しすぎるのが難点。コスト7を召喚可能な状況かつ、これ+6枚の手札を用意するという条件がなかなかに厳しく、エナジーを7まで貯めるためにエナジーチャージをしていると手札が足りなくなり、手札を減らさないようにしているとエナジーが7まで溜まらずに動きが鈍ってしまう。さらには捨てられるカードが種別メカ限定なので、手札にメカではないカードが混じっている場合には6枚よりもさらに多くの手札を確保する必要が出てくる。良くも悪くも他の種別メカのカードの性能と効果、立ち位置に性能が左右される。

・虚構天使の槍
4コスト万能除去。強いには強いのだが、場を離れた虚構定理も溜められずコストも重いので使いどころは選ばなければいけない。

・虚の妖精ホルルン
Qアクションが使えない状況でも出したくなるくらいの都合が良すぎる効果をしている女。メイちゃんも言っていた通り、エミリアが速攻戦術を諦めた最たる理由でもある。どう考えてもメイちゃんのデッキはホルルンがいるのといないのとでは序盤の受けの性能に天と地ほどの差があり、今まで何度も活用されてきただろう実績を鑑みて、このたびソウルハート・サーヴァントへの昇格試験を受けることになった。ホロエルのことは近所の優しいお姉さんみたいに思っている。

・無人のアトリエ
合計2体の『ガード』持ちを出しながらターン遅れで虚構定理を+1させられる優秀な低コストエリア。2体目のハリボテ人形が相手のターンエンド時に場に出るのが一番の肝であり、ほぼ必ず場にサーヴァントが残った状態で自分のターンが返ってくる。これによりターンスタートで回復した潤沢なエナジーを使って、場のハリボテ人形をカード効果の発動コストに使ったり、手札に戻してなんやかんやしたりといろいろな使い道が考えられる。ただし場に出せるハリボテ人形のATKは0なので、このカード自体は盤面の処理には一切貢献できないということは留意せねばならない。

・ハリボテ人形
ステータスだけ見ればA0でH500と最弱クラスだが、『ガード』を持っているため最低限の働きはできる。またコストが0なので他のカードのサポートも受けやすく、サポートに用いるカード次第では思わぬ方向へ化ける可能性も秘めている。
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