可愛い銀髪美少女天使カードとして転生した私、マスターを導く   作:にゃっとう

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本編
1.消滅は破壊じゃない。よって、破壊されない耐性は意味をなさない


 DCGと呼ばれるものを知っているだろうか。

 TCG――トレーディングカードゲームの略称であるそれが物理的なカードを使用して行うカードゲームであるのに対して、DCGとはすなわちデジタルカードゲーム。

 デジタル上のデータを使って、カードゲームを行うのが特徴である。

 昨今の目覚ましい技術進化によって可能となったDCGは、前世紀からあるアナログなそれと比較して様々な面での利点があった。

 

 たとえばそれは、カードデータの保存性。

 TCGとは異なり、DCGで扱うカードには実体がない。

 保存場所や置き場所に困ることもなく、使いたいカードを探す際も、ゲーム上でカード名や効果を検索するだけで容易に参照できる。

 また、気楽に複数のバリエーションのデッキを組むことができるのもポイントの一つだ。

 TCGにおいて複数のデッキを組む場合、特定のカードをどのデッキでも同じように採用したい場面が存在する。

 しかしそうなると、一つのデッキに入れられる上限枚数以上に同じカードを用意しなくてはいけなくなってしまう。

 金銭的な負担を憂慮するなら、同じカードを複数のデッキで使い回す方法も考えられるものの……それはそれで、デッキを替えるごとにいちいちカードを入れ替えなければいけなくなるのが手間だ。

 しかしながら、こういった如何ともしがたいジレンマもDCGであれば解消が可能だ。

 デッキに手を加える手間が発生することもなく、同じデータを参照して複数のデッキにワンクリックで同時に採用することができる。

 

 他にも、インターネットを通じていつでも対戦ができる気楽さや、処理を機械に任せているがゆえのルールの覚えやすさなども挙げられるが……。

 なによりも重要な点として挙げたいのが、TCGでは実質的に不可能な挙動も、DCGであれば容易に可能という点だ。

 

【コスト2以下のサーヴァント*11枚をデッキからランダムに場に出す】

【「破壊された自分の火属性のサーヴァントの数」が5以上なら『ストライク3』を得る】

【スペル『再召喚』1枚を生成して自分の手札に加える】

【相手の場のカード1枚を『ハリボテ人形』に書き換える】

 

 こういったシステマチックなランダム性に則った効果や、あらゆる条件での正確な数をカウントして参照する効果、さらにはカードそのものの生成や書き換えと言った効果は、TCGでは完全な再現が難しい。

 カード効果のデザイン性の幅広さに限って言えば、DCGは時にTCGを凌駕すると言っても過言ではない。

 もっとも、実際のカードを手に取る感覚は代えがたいものなので、TCGにもTCGだけの良さというものがあることは間違いないのだが。

 

 さて、なぜ急にそんな話を始めたのかというと……。

 

「私のターン。手札を1枚エナジー*2にチャージ。さらにエナジーを1消費して『虚構天使ホロエル』を召喚」

 

 そんなDCGの1つ『CROSS WORLD -SUNBREAK-』を元にした、販促アニメっぽい世界にいつの間にか転生してしまっていたからだ。

 しかも人間としてではなく、カードとしてである。

 ちょうど今召喚されたホロエルが俺……もとい私だ。

 

 ちなみに私は皆大好き美少女カードだ。

 可愛い可愛い銀髪天使ちゃんだぞ!

 ふはははは、崇め奉れ!

 

 登場したフィールドの上で実体化した私は、意気揚々とポーズを決める。

 

「ホロエルは自身の虚構定理の効果によって、定理の条件を満たさなければ攻撃できず、虚構定理以外の自身のすべての効果が無効化される」

 

 が、私の持ち主……マスターたる少女がそう説明すると同時、私の四肢が突如として虚空から出現した鎖に囚われた。

 くっ、殺せ!

 

「ターンエンド……この時、ホロエルの虚構定理の効果。ターンエンド時に定理の条件を満たしていないなら、このサーヴァントを破壊する」

 

 本当に殺すやつがあるか!

 と言いたいところだが……自分自身の効果による自壊なので、こればかりは致し方なし。

 1ターン目に威勢よく登場したのも束の間、出落ちのごとく私ことホロエルは破壊されて墓地へ送られた。

 

 ちなみに破壊されることによって痛みを感じたりとかは特にない。

 というかデッキ構築の都合上、私は一度のデュエル中に幾度となく破壊されるので、いちいち痛みを感じてたらやってられないというのが本音だ。

 

 破壊されてしまったので体を透明化し、スススと大人しくマスターの隣に移動する。

 今の私はカードが本体の存在なので、この美少女ボディ自体は仮初のものに近い。

 デュエル中に召喚された場合に限れば、場にある限り際限なく実体化できるが、それ以外のタイミングとなると……。

 ……まあ、できなくはないのだけども。完全な実体化はだいぶスピリチュアルなパワーを消費しないといけないため、非常に厳しい時間制限がある。

 具体的には一日に一度、10秒間くらい。いくらなんでも短すぎんだろうがよ……。

 

 誰にも見えない完全な透明化状態がもっとも気楽で、デュエル中なんかはマスターの思考の邪魔にならないように基本こうして完全に透明化している。

 そして他によくやるのが、持ち主であるマスターにだけ姿が見える半透明状態だ。

 著しくパワーを消耗する実体化と比べれば、半透明状態の燃費は非常に良い。

 一切のエネルギーを使わない完全透明化にはさすがに劣るものの、マスターが起きている間くらいなら問題なく半透明状態を維持することが可能だ。

 なのでデュエル以外の時間は、もっぱらマスターにだけ見える半透明状態で過ごしている。

 

 ちなみにマスターの他にも、私のように魂が宿るカード――通称、ソウルハート・サーヴァントを所持している人を見かけたことがあるが……。

 通常のソウルハート・サーヴァントは皆、私のように状況に応じて存在感を調整することはなく、完全な透明化状態がデフォルトのようだった。

 姿を現すのは主人であるデュエリストが自ら望んだ時か、主人の身の危険に晒された時、そしてデュエル中に場に召喚された場合だけ。

 

 普段は可能な限り力を温存し、必要な時にのみ実体化して姿を現す。

 ソウルハート・サーヴァントの在り方としては本来そちらの方が正しいのだろう。

 だけど残念なことに……や、嬉しいことにと言うべきか。

 マスターは私のことをずいぶんと大事に思ってくれているみたいで、私の姿が見えないと、見る見るうちに元気がなくなっていってしまうのである。

 以前ちょっとだけボーッとしていて半透明化状態になるのを忘れてしまったことがあったのだが、その時のマスターのしょんぼり具合と言ったらもう……。

 なにも知らない第三者からは一匹狼のクール系だと思われがちなマスターだが、その実かなりの寂しがり屋さんなのだ。

 

 まぁ、そこが可愛いところなんだけどね。

 うへへ、()いやつめ。愛いやつめ。

 

「はあ? 場にすら残らず破壊されるだけって、ただ無駄に手札とエナジーを消費してるだけじゃねえか。なんだよそのゴミカード。なんでそんなもんデッキに入れてんだ? 使えねぇなぁ」

「……」

 

 あっ……まずいですよそれは!

 デュエルの相手を務めていたチンピラくんのあまりにも浅薄な発言に、マスターがピクリと眉を動かす。

 一見すると、その表情は無の冠がついたまま変わっていない。

 だけど私には、彼女の内心が烈火のごとき憤怒で渦巻いているのが一目でわかった。

 私ことホロエルをバカにされることは彼女の地雷なのだ。

 

 うーん……これは蹂躙ルート確定ですね。

 南無三……。

 

「いくぜぇ! 俺のターン――」

 

 とは言え、デュエルは毎ターン少しずつエナジーを貯めて徐々に場が動いていくコスト制のカードゲームだ。

 決着には少々時間がかかる。

 場に出た時は実体化してフィールドから。場を離れた時は透明化してマスターの隣にそそくさと移動しながら、私はマスターとチンピラくんのデュエルの流れを見守った。

 

 かつて私が生きた世界に存在していた『CROSS WORLD -SUNBREAK-』は、DCG――デジタルカードゲームだった。

 だけどこの世界では少々扱いが異なるようで、TCG……つまりは実物のカードで対戦する類のカードゲームとして存在している。

 マスターもチンピラくんも、使っているカードは実物のカードだ。

 もちろん私こと『虚構天使ホロエル』も実物のカードだぞ!

 

 だがその一方で、ルール自体はDCGから変化していない。

 さきほど挙げたようなシステマチックなランダム性のある効果なども存在し、総じてそれらはスピリチュアルな不思議パワーで再現されているのが特徴だ。

 たとえばカードを複製する効果なんかが適用されれば、実物のカードが本当に増える。

 カードの書き換えなども同様に、カードそのものがそのまま書き換わる。

 

 ただしこれらはあくまでデュエル中のみに起きる一時的な現象であって、デュエルが終われば元に戻る。

 複製されたカードは消失し、書き換えられたカードは元のカードへ。

 実際、私ことホロエルも前に一度『ハリボテ人形』に書き換えられたことがあるのだが……デュエルが終わったら、きちんと元の可愛らしい天使のカードに戻っていた。

 自分の身で体験するのは初めてだったので、内心ホッとしたものだ。

 

「私のターン」

 

 と、そんなことを考えていたら、マスターとチンピラくんのデュエルもそろそろ終盤に差しかかってきていた。

 マスターはデッキからドローしたカードを見ると、その目を鋭く細める。

 

「エナジーを6消費――触れるものすべてを無に帰す。再誕したホロエルに重ねて転生召喚。降臨せよ、『虚無龍ヴァニタス』」

 

虚無龍ヴァニタス
コスト6*3 種別:虚数/ドラゴン 
属性:無*4 ATK 7000*5 HP 9000*6 

転生サーヴァント 条件: コスト4以上の無属性サーヴァント1枚 

 - 効果 - 
【制約】*7:[転生サーヴァント]*8


①『虚構定理』*9=条件:転生素材を持っている。

②『ストライク2』*10

③場に出た時、「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」を+2する。

④「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」が6以上なら、以下の効果を得る。

・サーヴァント以外のカードの使用、または他のカードの発動効果*11に反応して発動可能。そのカードをゲームから消滅*12させる。その後、「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」を1減らす。

⑤「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」が減る時、代わりにこのサーヴァントの転生素材を1つ取り除いてもよい。

 

 うわ出た。

 

 えー……虚無龍ヴァニタスは、凶悪な制圧効果を持ったサーヴァントだ。

 私のマスターが好んで使用するカードの1枚であり、これを出す時は大抵の場合、情け容赦なく徹底的に相手を潰しにかかる時である。

 

「なんだそのカード……無属性だぁ?」

「……ホロエルも無属性だった。ここまで使った他のカードも全部そう。あなたがろくに見てなかっただけ」

 

 これは相当イライラしてますね……。

 マスターの発言から、仄かに怒りがにじみ出ている。

 

「攻撃宣言、ヴァニタスでライフに攻撃。『ストライク2』によりライフカウンター*13を2つ破壊。ターンエンド」

「ちっ……残りライフ2か。だが……俺のターン! ハッハァ! 来たぜ、俺はエリアカード『尽滅(じんめつ)の定め』を展開!」

 

 あっ……。

 チンピラくん、それはやめておいた方が……。

 

尽滅の定め
コスト8 属性:火/闇 

エリア 

 - 効果 - 
【制約】:[複合属性]*14


①このエリアは破壊されない。

②お互いのプレイヤーはライフカウンターを回復できない。

③自分の場のサーヴァントすべてのATKを+5000する。

④サーヴァントが戦闘を行う時、戦闘を行う自分のサーヴァントのATKの数値が相手のサーヴァントのATK以上なら、その自分のサーヴァントは戦闘によって発生するダメージを受けない。

⑤自分がコントロールするカードの効果もしくは戦闘によって相手のサーヴァントを破壊した時、相手のライフカウンターを1つ破壊する。

 

「こいつが場にある限り、俺のサーヴァントのATKは+5000! そして俺の場にはATK5000の『チキンピラフヒャッハー』がいる! ATKが10000まで上昇したチキンピラフなら、HP9000ごときのドラゴンなんざ――」

「サーヴァント以外のカードの使用に反応して、ヴァニタスの効果発動。今使用されたカード……エリア『尽滅の定め』を消滅させる」

「……は? い、いや、『尽滅の定め』には破壊されない耐性が――」

「消滅は破壊じゃない。よって、破壊されない耐性は意味をなさない……もういい? 続きの効果処理……この効果の適用後、私は自分の場を離れた『虚構定理』を持っていたカードの数のカウントを1減らす」

 

 あー……これはしゃあない。

 一見するとチンピラくんがカード効果もろくに読まずにやらかしてしまったように見えるかもしれない。

 だが実を言うと、この世界のデュエルは一度も対面したことのないカードの効果をすぐには確認できないようになっているのだ。

 効果を参照できるようになるのは、そのカードが使われたゲームが終わった後、次にもう一度そのカードと対面した時から。

 2度目以降のゲームであれば、腕に装着したデュエルガントレットが以前に蓄積した情報を元に再分析し、カードの情報を正常に閲覧できるようになる。

 

 チンピラくんが戸惑っていたように、無属性のカードは世間にほぼ出回っていない。

 ただでさえ見かけないのに、その切り札級のヴァニタスともなれば、対面したことがある人間は相当限られる。

 加えてヴァニタスの効果は、他のカードの効果に反応してカードを消滅させるという凶悪なものだ。

 なんの事前情報もない初見でこれを回避するのは、まず不可能と言っていい。

 ヴァニタスの効果で割を食うのは対面した者の宿命なのである。

 

 うーん……『尽滅の定め』自体は出せれば強いカードなんだけどね……。

 チンピラくんは運が悪かったと言うほかないだろう……合掌。

 

「……だ……だったら俺は、チキンピラフでライフカウンターを攻撃! ははは! これでお前の残りライフカウンターは3だ!」

「……それだけ? ライフカウンターが減った時、私は手札の『虚の妖精ホルルン』の『Q(クイック)アクション0(ゼロ)』。エナジーを支払わずにこのサーヴァントを召喚する」

 

虚の妖精ホルルン
コスト3 種別:虚数/フェアリー 
属性:無 ATK 1000 HP 1000 

サーヴァント 

 - 効果 - 
①『虚構定理』=条件:相手の場にカードが存在する。

②『Qアクション0』*15=条件:相手によって自分のライフカウンターが破壊された時。

③召喚時に発動可能。以下の効果から1つを選択して適用する。

・デッキの上から1枚目をエナジーにチャージする。

・カードを1枚引く。

 

「く、くく、『Qアクション0』だとぉ!?」

 

 『Qアクション』はカード効果で指定された条件が満たされた時に、指定された量のエナジーを支払って即座にカードの使用を可能とする効果のことだ。

 『Qアクション0』なら、0エナジー……つまり条件さえ満たせば、エナジーをまったく消費せずカードを使うことができる。

 

「ホルルンの召喚時効果で私はカードを1枚ドロー」

「……タ、ターンエンドだ……」

「私のターン。攻撃宣言、虚無龍ヴァニタスでライフに攻撃。『ストライク2』により残り2つのライフカウンターをすべて破壊。これで終わり。ホルルンで相手プレイヤーにダイレクトストライク」

「うわぁぁぁぁぁあああああああっ!!」

 

 勝負あり。マスターの勝利だ。

 可愛らしいデフォルメ調の妖精が手に持った杖から白色のビームを放つと、チンピラくんがものの見事に吹き飛ばされて絶叫を上げた。

 言い忘れていたが、この世界のデュエルは普通に物理的干渉がある。

 自分の身を守るためにも、きちんと体を鍛えておくことがおすすめだ。

 

 チンピラくんが目を回してすっかり気絶しているのを確認すると、マスターはフンと鼻を鳴らし、近くに散らばっていたカードのうちの1枚を拾った。

 そしてそのカードを、マスターのデュエルを見守っていた紅蓮色の髪の女の子に差し出す。

 

「これ。あなたのでしょ?」

「は、はい……! あの……ありがとうございます! 盗られたカードを取り返していただいて……」

「あなたのためじゃない。単にあれが目障りだっただけ」

 

 言いながらマスターは気絶しているチンピラくんを一瞥する。

 そしてデュエルガントレットのデッキから私こと『虚構天使ホロエル』のカードを取り出すと、どこか自分に言い聞かせるように告げた。

 

「一つだけ覚えておいて。大事なカードなら、なにがあっても手放しちゃダメ。デュエルは命の奪い合い。カードに命を預けて戦うもの……カード1枚に命を懸けられないデュエリストは、デュエリストじゃない」

「っ……す、すごい……かっこいい……!」

 

 カードゲームが異常なほど普及した世界と言えども、正直、カード1枚に命を懸けるのは普通にやりすぎだ。

 普通の人なら困惑の反応を返してもおかしくはない。

 しかし私の予想とは裏腹に、紅蓮色の髪の女の子は憧れと尊敬が浮かんだキラキラとした眼でマスターを見上げた。

 

 まあでも……この子なら案外納得かもしれない。

 だってマスターが今この子に返したカード、『尽滅の定め』だったからね……。

 人は見た目に拠らないというか。

 こんな攻撃的な性能に全振りしたカードを好んで使うようなデュエリストなら、デュエルを戦場に見立てたマスターの言葉に感銘を受けてもおかしくはない。

 

「あの……お名前を教えていただいてもよろしいでしょうか!」

「……」

 

 マスターは少し間を置いた後、デュエルが終わってマスターにだけ見える状態で半透明化した私をチラリと見てくる。

 どうしよう? って聞いてきてるみたいだ。

 や、別にマスターの好きにしていいからね?

 頼ってくれるのは嬉しいけども、なんでもかんでも私に依存しがちな点はマスターの悪い癖だ。

 

「あ、あの……?」

「……メイ。無空(むそら)メイ」

 

 ジトーッとマスターを見つめ返していると、マスターは少しだけ逡巡してからそう答えた。

 うむ。素直でよろしい。

 褒めるように頭を撫でてあげると、マスターは嬉しそうに頬を緩める。

 まあ、はたから見たら無表情のまま特に変わっていないんだろうけど……ほんの些細な変化でも、私はそれでマスターがなにを感じているかがなんとなくわかるのだ。

 

「メイさん……! いえ、メイ様! わたし、今日助けていただいたこと一生忘れません! わたしもいつか、メイ様みたいな立派なデュエリストになります!」

 

 紅蓮色の髪の女の子のあまりの熱意に、マスターが困惑している。

 私もちょっと驚いたが、強いデュエリストに憧れを抱くのは、この世界では割と普通のことだ。

 この子にとってはマスターがその対象だったということなのだろう。

 それを思えば、マスターのソウルハート・サーヴァントである私もなんだか誇らしい気持ちになってくる。

 

「……そう。頑張って」

「はい! 頑張りますっ!」

「それじゃあ、私はこれで……ホロエル?」

 

 足早に立ち去ろうとしたマスターの進路を塞ぐ。

 いやまあ、今の私には実体がないので直進すればそのまますり抜けられるのだけども……マスターは敢えて足を止めてくれた。

 私はジェスチャーで、紅蓮色の髪の女の子の名前を聞いておいたらどうかと伝えてみる。

 

「……あなたの名前は?」

 

 マスターとしてはおそらくあまり興味がないのだろうが、マスターは私の意見を無視しない。

 振り返りながら紅蓮色の髪の女の子に名前を尋ねた。

 

「センカです! 燃照(ねんしょう)センカ!」

「そう……わかった。覚えとく」

「え。あっ……ありがとうございますっ!」

 

 紅蓮色の髪の女の子……センカがお辞儀をするのを背に、マスターは今度こそその場を立ち去った。

 憧れは強い原動力になる。

 いつの日か、あのセンカという女の子が強くなって、私のマスターに挑む日が訪れるかもしれない。

 その日を楽しみにしながら、私もマスターの後についていくのだった。

*1
他のカードゲームで言うところの、いわゆるクリーチャー、モンスター等

*2
他のカードゲームで言うところの、いわゆるマナ、PP等。自分のターン中に一度、手札1枚をエナジーに置いてチャージできる。自分のターン開始時、エナジーはチャージの最大値まで回復する

*3
コストによって指定された数のエナジーを消費することでカードを使用できる。その際、カードの属性と同じ属性のエナジーがチャージされていなければならない

*4
属性を持たない。カードテキストでは便宜上、無属性と呼称されるが、無属性カードはエナジーの属性にかかわらず使用できる

*5
サーヴァント同士が戦闘を行う時、互いのATKの数値分、互いのサーヴァントのHPにダメージを与える

*6
ダメージを受けると値が減る。ダメージは蓄積する。HPが0以下になるまでダメージを受けたサーヴァントは破壊される

*7
カードを使用する上でのルール。効果としては扱われず、効果が無効化されていても制約は適用される

*8
転生サーヴァントは条件を満たしたサーヴァントの上に重ねて場に出す。転生サーヴァントは召喚硬直を適用しない

*9
条件を満たしていない場合、攻撃できず、自身の『虚構定理』以外の効果が無効化される。各ターンエンド時に条件を満たしていない場合、このサーヴァントを破壊する

*10
1度の攻撃で2つのライフカウンターを削る

*11
「発動可能」「強制発動」の文言がある効果を起動する事。それらの文言がない効果の適用や、コストを払って手札を使用する行為(サーヴァントの召喚、スペルの詠唱、エリアの展開)等は発動効果には該当しない

*12
消滅したカードは墓地へは送られず、どこでもない場所に消える

*13
各プレイヤーはデュエル開始時に6個のライフカウンターを持つ。

カウンターはATKが1以上のサーヴァントの攻撃によって破壊できる。

すべてのカウンターを破壊した後、

ATKが1以上のサーヴァントでダイレクトストライクを与えるとデュエルに勝利する

*14
複合した属性を持つカードをエナジーにチャージする時、消費状態でチャージされる

*15
指定された条件を満たした時、それに反応してエナジーを消費せず手札のこのカードを即座に使用できる。自分は『Qアクション』を同一タイミングの反応連鎖の中で1度しか使用できない




ゲーム性の割合はデュ〇マ:5、シャ〇バ:4、遊〇王:1くらいです。
本格的なデュエルはまだ先になります。今回は雰囲気だけ。

カードゲーム的なやり取りや臨場感を再現したいがために頑張って特殊タグを勉強して、カードのレイアウトも考えました。
何か本当のカードっぽい! と思っていただけましたなら本望です…!

カード制作裏話
・虚無龍ヴァニタス
→ホロエルとは別のエース枠が欲しいと思い考えたカード。無属性っぽい感じにしたいと思い消滅効果を搭載した。強すぎず弱すぎずにしたかったが、どう考えてもコスト制のカードゲームで誘発即時の消滅効果は強いと思う。ただあくまで受動的な効果である以上、盤面の巻き返しには使いにくい。メイのデッキは序盤の動きが遅く、序盤から中盤は押されがちになる…予定なので、バランスは取れているんじゃないかと思いたい。取れていなかったら相手のカードのバランスを崩す。こうやってカードゲームはインフレしていくんやね…。

・尽滅の定め
→重いけど強いアミュレット枠カード。実際のカードゲームでもこういう使えそうで全然使えない()豪快なカードはよく見かける。効果自体は一見強そうに見えるが、そもそも8コストも払えるほどの終盤に8コスト丸ごと全部払ってサーヴァント(モンスター)すら出さずにこれを素置きするのは普通にどのカードゲームでも自殺行為である。実戦ではまず使えないが、こういうロマンカードをファンデッキで採用した時にうまく嵌ると脳汁があふれ出るので好きな人は好きなはず。ちなみに私は好き。

・虚の妖精ホルルン
→このカードゲームはデュ〇マにライフの形式が近いのに、ライフがカードではなくカウンターであり、攻撃されても手札が増えない上にシールド的トリガーもない。正直この環境だと速攻(アグロ)があまりに強すぎると感じたので『Qアクション』をシールド的トリガー感覚で実装した。その第一号である。エナジーチャージとドローを使い分けられる汎用性と、1000/1000というちょうどいいスタッツで序盤の処理もしてくれる有能of有能。デュエルの流れを進めるのに便利そうなので都合のいい時にまた出そうと思っている。都合のいい女。
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