可愛い銀髪美少女天使カードとして転生した私、マスターを導く   作:にゃっとう

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23.……私は別に、あなたたちに強くなってほしいわけじゃないんだけど……

 颯爽登場! 誰もが目を奪われる完璧で究極の美少女天使、ホロエルです!

 いぇーい! ピースピース!

 今の私はすごく機嫌が良いので学園中の皆のことも褒めてあげよう! 今日も生きてて偉い!

 

 ふっふっふ……なぜこんなにも機嫌が良いのかと問われれば、理由は簡単!

 ここ最近、学園の皆から人気者としてマスターがチヤホヤされていて、堪らなく鼻が高いからだ!

 

 つい先日開催されたクラス代表対抗戦。

 一年生の各クラスの代表者8人がトーナメント戦で雌雄を決する舞台にて、マスターはAクラスの代表として出場し、並み居る強豪を打ち倒して見事決勝戦まで駒を進めた。

 そうして決勝でぶつかった相手は、以前マスターにデュエルを申し込んできた少女、Bクラス代表の水星エミリア。

 ホムラと旧知の仲だと言う彼女は、かつて戦ったホムラと同等以上に強かったけれど……それでもマスターは紙一重の差で勝利を手繰り寄せてみせた。

 

 各クラスの代表者を下し、その頂点に立ったということは、マスターこそが学年最強であることの証明にほかならない。

 これによりマスターの名は知る人ぞ知るというレベルを越え、もはや学園中に知れ渡るほどのものとなった。

 

 そして付け加えるなら、私のマスターはとても可愛い。

 立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。まさしく美少女と形容するのがふさわしいだろう。

 

 ……え? 私と比べてどっちの方が可愛いのかって?

 そんなものマスターの方が百倍可愛いに決まってるよなぁ! わかりきったことを聞くんじゃない!

 

 カリスマ性溢れる学年最強の座に加え、多くの視線を惹きつける可憐で美麗な容姿。

 それらが合わさった結果、この国立クロワッサン学園におけるマスターの人気は、今や話題沸騰のアイドルと同等と呼べるレベルにまで達していると言っても過言ではない。

 マスターが廊下や校庭を歩くだけで、その姿に気づいた多くの生徒がマスターの一挙一動に見惚れ、興奮した様子で噂を口々に広げていく……。

 

 後方腕組み天使面が大好きな私にとって、今のこの状況は天国にも等しかった。

 うちの子はこんなにも強くて可愛くてすごいんだぞと毎日ドヤ顔ができて、私のソウルハート・サーヴァント生活はとても充実しております!

 

 ……まあ、マスターの方はというと、そんな周囲の過度な反応にちょっと辟易しているみたいだけど……。

 ただその一方で、一つだけ意外だったこともある。それは――。

 

「おーっほっほっほ! わたくしは手札から10エナジーで『爆走特急列車エンシェントレインV』を召喚しますわ!」

 

爆走特急列車エンシェントレインV
コスト10 種別:古代/メカ 
属性:火/地 ATK 21000 HP 7000 

サーヴァント 

 - 効果 - 
【制約】:[複合属性]


①『フルアクセル』

②『ストライク3』

③攻撃中、このサーヴァントは破壊されない。(HPが0以下になった場合は破壊される)

④攻撃権が残っていないなら、このサーヴァントは破壊される。

⑤破壊された時に発動可能。手札・エナジーゾーンから「爆走列車エンシェントレイン」を可能な限り場に出す。

 

 放課後、校舎の中庭で繰り広げられるデュエル。

 対戦相手の少女が繰り出してきたエース級サーヴァントに、マスターがデュエルガントレットを構えながら相対する。

 

「無空さん。あなたの場にいる『虚無龍ヴァニタス』は確かに強力ですわ。どんなにステータスが高いエースでも、効果を発動してしまった途端に問答無用で消滅させられてしまいます……で・す・が! 『フルアクセル』のような発動しない効果の前では木偶の坊も同然ですわーっ! おーっほっほっほ!」

 

虚無龍ヴァニタス
コスト6 種別:虚数/ドラゴン 
属性:無 ATK 7000 HP 9000 

転生サーヴァント 条件: コスト4以上の無属性サーヴァント1枚 

 - 効果 - 
【制約】:[転生サーヴァント]


①『虚構定理』=条件:転生素材を持っている。

②『ストライク2』

③場に出た時、「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」を+2する。

④「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」が6以上なら、以下の効果を得る。

・サーヴァント以外のカードの使用、または他のカードの発動効果に反応して発動可能。そのカードをゲームから消滅させる。その後、「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」を1減らす。

⑤「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」が減る時、代わりにこのサーヴァントの転生素材を1つ取り除いてもよい。

 

 現在、マスターの場には『虚無龍ヴァニタス』が1体のみ。

 ライフカウンターは初期値の6つが丸ごと残っているが……デュエルガントレットから参照できる『爆走特急列車エンシェントレインV』の効果を加味すれば、決して楽観視できる状況ではない。

 

 勝敗を決しかねない緊迫した場面を、観客たちが固唾を飲んで見守る。

 

「攻撃宣言ですわ! わたくしはエンシェントレインVで――」

「まだ攻撃には入らせない。あなたの場にエンシェントレインVが出たこの瞬間、私は手札の『虚けな平等主義』を『Qアクション0』で詠唱する」

 

虚けな平等主義
コスト0 属性:無 

スペル 種別:虚数 

 - 効果 - 
①『Qアクション0』=条件:自分か相手の場にサーヴァントが出た時。

②自分または相手の場のサーヴァント1枚を選択する。それが「虚けな平等主義」で付与された効果を持っていないなら、以下の効果を付与する。

・攻撃時に強制発動。お互いのプレイヤーはカードを1枚引く。(上限:1ターンに3回)

 

「このカードの効果で私は場のサーヴァント1体に新たな効果を付与する。私が選択するのは、あなたの場の『爆走特急列車エンシェントレインV』」

「わたくしのサーヴァントに効果を与えるですって!?」

「これによりエンシェントレインVは、攻撃時にお互いのプレイヤーにカードを1枚引かせる強制発動効果を得る」

「お互いにカードを引かせる効果……?」

 

 ふむふむ……なるほど!

 さきほども言ったように、現在のマスターの場には『虚無龍ヴァニタス』が存在する。

 『虚無龍ヴァニタス』には、他のカードの発動効果に反応して、発動したカードそのものを消滅させるという非常に強力な除去効果があるが……これには明確な抜け道も存在し、それが除去したいカードが効果を使ってくれなければ除去効果を起動することができないという点だった。

 対戦相手の少女が言っていたように、発動しないタイプの効果を中心に攻められてしまえば『虚無龍ヴァニタス』はその本領を発揮することができない。

 

 だけど今、マスターはその抜け道を塞ぐための一手として、『虚けな平等主義』で『爆走特急列車エンシェントレインV』に強制的な発動効果を付与した。

 これによりエンシェントレインVは攻撃時に効果の発動を強制され、その発動に対して『虚無龍ヴァニタス』の除去効果を割り込ませることが可能となった。

 そうなれば攻撃が届く前にエンシェントレインV自体が消滅し、対戦相手の少女の必殺の一手は完全に封殺されることとなる。

 

 さすがはマスターだな と、デュエル中なので完全に透明化した状態のまま、私は後方腕組み天使面でうんうんと頷いた。

 

「……おーっほっほっほ!」

 

 しかしそうして私が余裕を見せるのと同時に、対戦相手の少女もまた手の甲を頬に当てて高らかに笑い出した。

 

 マスターが打った一手で、10エナジーも消費して出したせっかくの切り札が無力化されてしまったというのに……もしかしてまだ手があるというのだろうか。

 マスターもまた、警戒したように身構える。

 

「お互いにカードを引かせる効果の付与……おーっほっほっほ! わたくしの超重量級エースを前にしては当然ですが……無空さん! どうやらあなたはもはや、ドローに望みを託すしか手がなかったようですわねっ!」

「……?」

 

 ……?

 いや……付与したドロー効果自体は別にどうでもよくて、攻撃時に効果を発動しなきゃいけなくなった状況自体が重要なんだけど……。

 

 私とマスターが揃って首を傾けているのが見えているのか見えていないのか(私の方は完全に透明化してるから間違いなく見えてない)、対戦相手の少女がしたり顔で続ける。

 

「しかし無駄ですことよ! エンシェントレインVは攻撃の後で自壊し、破壊された時の効果で『爆走特急エンシェントレイン』を手札とエナジーゾーンから可能な限り呼び出せますの!」

「……」

「それだけじゃありませんことよ? なんとそうして呼び出された『爆走列車エンシェントレイン』も全員『フルアクセル』と『ストライク2』を持っていますの! そしてエンシェントレインもまた同様の条件で自壊し、手札かエナジーゾーンから『高速列車プレゼントレイン』を呼び出す効果を持っておりますわ! もちろん、プレゼントレインも『フルアクセル』を持ってますことよ!」

 

 お嬢様口調の少女は、勝利を確信したように高らかにお嬢様笑いを披露する。

 

「おーっほっほっほ! わかりますこと? 『ガード』を持つサーヴァントが1体もいないこの状況で、これだけの連続攻撃をしのぎ切ることなど絶対不可能! たとえなにをドローしようとも、次のあなたのターンがやってこないならば意味などないということですわーっ!」

 

 ……うん。

 

 まあ確かに、対戦相手のお嬢様が語る『爆走特急列車エンシェントレインV』から始まる『フルアクセル』の連鎖は脅威的と言わざるを得ない。

 手札とエナジーに呼び出すためのサーヴァントを大量に確保しておく準備が必要なものの、かかった手間に見合うだけの豪快なメリットがある。

 たとえ相手のライフカウンターが初期値の6……いや、最大値の8にまで達していようとも、一気に削り切ってトドメまで持っていけるほどの瞬間的な火力に特化したワンショットキルコンボ――決まれば敗北は免れない。

 しかし、あくまで決まればの話だ。

 

 もしかして彼女はまだ気がついていないのだろうか。

 マスターが打った一手によって、すでにコンボを決めるためのレールから外れてしまっていることに。

 

 高らかなお嬢様笑いを披露された直後は警戒して身構えていたマスターも、今や対戦相手の少女の的外れな指摘になんとも言えない表情を浮かべていた。

 

「では、今度こそ攻撃宣言ですわっ! わたくしは『爆走特急列車エンシェントレインV』で、無空さんのライフカウンターに攻撃します! そしてこの瞬間、あなたのカードの効果で付与された効果が発動しますわ! お互いにカードを…………って、あら? ……発、動……?」

「この瞬間、私は『虚無龍ヴァニタス』の効果発動」

 

 ようやくなにかに気づいたように言葉を止めたお嬢様口調の少女だったが、時すでに遅しだ。

 すでに攻撃は宣言され、付与された強制効果も実行された。であれば、その行く末もすでに定まった。

 

「サーヴァント以外のカードの使用、または発動効果に反応して効果を発動し、直前に効果を使用したカードを消滅させる」

「そんなっ!? ま、まさか……ドローが目的なのではなく、最初からこれが狙いで効果の付与を!?」

「……ヴァニタスの前で効果を発動したら消滅させられるって、あなたはさっき自分で言ってた。付与した時点で気づくと思ってたけど……」

 

 デュエル中は対戦相手を敵としか認識していないと豪語するマスターも、これにはさすがに一言物申したくなったらしい。

 お嬢様口調の少女も「た、確かに……」と、ぐうの音も出ずに唸っていた。

 

「で……ですが! エンシェントレインVは自身の攻撃中は効果では破壊されませんわ! 本来は自身の自壊のデメリットを攻撃中のみ回避するための効果ですが、今の場面でなら――」

「消滅は破壊じゃない。よって、破壊されない耐性は意味を成さない。そして当然、破壊された時の効果も適用されない」

「ななな、なんですってーっ!?」

 

 エンシェントレインVから始まる『フルアクセル』の連鎖は、あくまで破壊された時の効果から始まるコンボだ。

 だけどマスターが言ったように、消滅は破壊ではない。

 消滅させられてしまえばコンボは初っ端から破綻し、『爆走列車エンシェントレイン』も『高速列車プレゼントレイン』もどちらも場に出ずに終わる。

 

「使うカードがないなら効果処理に入る。ヴァニタスの効果でエンシェントレインVは消滅。私の場を離れた『虚構定理』の数を1減らす。続いてエンシェントレインVの攻撃時効果で、私とあなたはカードを1枚引く」

「……タ、ターンエンド……ですわ」

「私のターン、ドロー……私は『虚無龍ヴァニタス』でダイレクトストライク」

「む――無念ですわぁぁぁあーっ!?」

 

 ヴァニタスが放った赤い雷が対戦相手の少女の足元に着弾し、発生した衝撃によって彼女の身体が土煙とともに舞い上がる。

 

 勝者、マスターこと無空メイ。

 観客たちがパチパチと拍手を送る中、マスターは盛り上がる観衆に見向きもせず、張り詰めていた意識を解すようにデュエルガントレットを下ろした。

 そういった周囲に関心を見せないクールな態度がまた人気に拍車をかけることに繋がっているとは露知らず、マスターは「ふぅ」と一息つく。

 

「うぅ……わたくしの必殺コンボが、こんなにも容易く……たったの一手で敗れてしまうなんて……」

「……」

 

 マスターはダイレクトストライクの際のトドメの一撃を直撃まではさせていなかった。

 衝撃で吹き飛ばされはしていたものの、対戦相手だった少女にも立ち上がれるだけの体力は残っているはずだ。

 にもかかわらず、土に塗れたまま倒れたまま立ち上がろうとしない……。

 マスターとのデュエルで、心が挫けてしまったのだろうか。

 

 こういった光景は、ドロップアウトした人たちや懸賞金付きの犯罪者の相手に賭けデュエルを繰り返していた頃だったなら、よく見た光景だったけれど……。

 うつ伏せになったまま起き上がろうとしない少女を見つめ、マスターはなにか思うところがあるように黙り込んだ。

 それから、この勝負を観戦していたホムラとエミリアの方をほんの一瞬だけチラリと見やると……意を決したように少女へと歩み寄る。

 

「容易くはなかった」

「え……? 無空さん……?」

 

 容赦なく自分を封殺した相手がそんな風に声をかけてくるとは思わなかったのか、俯いていた少女が驚いたように顔を上げる。

 

「エンシェントレインVから始まる怒涛の攻撃の連鎖。それは間違いなく私の脅威になり得るコンボだった。ホロエルとヴァニタスとホルボルポルン……私がこの学園で見せたことがあるエース級のサーヴァントが3体とも場に揃っていたとしても、あのコンボは防げない。あなたには私に勝つための明確なビジョンがあった」

「で、ですが……無空さんはわたくしの切り札をあんな平気な顔で……」

 

 マスターはふるふると首を左右に振った。

 

「『爆走特急列車エンシェントレインV』のコストは10。本来なら私は、そこまでエナジーを溜められる前にあなたを仕留めきることが理想だった。だけどあなたはライフカウンターが0になってもギリギリのところで持ちこたえ、切り札を活かせるシチュエーションを作り出してみせた。それは紛れもない事実」

「無空さん……」

「確かに、あなたのプレイングにはまだ拙い部分がある。だけどその防御のセンスと、切り札を最大限に活かすデッキビルディングには目を見張るものがあった。もしもまだ心が折れていないのなら、腕を鍛えて、また私を殺しに来るといい。その時もまた、同じように地に跪かせてあげるから」

「……」

 

 対戦相手だった少女は、マスターの言葉を噛みしめ、胸に刻むように黙り込む。

 そして自分の力で体を起こして立ち上がると、頬に手の甲を当て、再び見事なお嬢様笑いを披露した。

 

「おーっほっほっほ! 心が折れていないのなら、ですって? そんなもの当然ですわ! わたくしはこの学園で絶対無敵のお嬢様になる女! たった一度負けた程度で心が折れるはずありませんことよ!」

「……そう。だったらいい」

「無空さん。安易に手を差し伸べず、わたくしが自ら立ち上がるよう鼓舞したあなたの気高きデュエリストの魂に敬意を。ですが……次こそはわたくしが勝ってみせますわ! それまで首を洗って待っていてくださいまし! おーっほっほっほ!」

 

 ……学園に来る前だったなら。

 いや、ホムラやエミリアと友達になる前だったなら、デュエルをした相手に自ら声をかけるなんて行為を、マスターは絶対にしなかっただろう。

 マスターにとってデュエルは戦場で、デュエルの相手は倒すべき敵だ。自分を殺そうとした敵と仲良く話をするなんて選択肢、最初からあるはずもなかった。

 だけど、ホムラやエミリアとの交流を通して、マスターの中のなにかが変わり始めている。

 

 立ち去っていくお嬢様口調の少女を見送るマスターの顔を、私は完全に透明化した状態のまま盗み見る。

 自分で自分の変化に戸惑うような彼女の表情が、なんだかとても尊いもののように思えて、気がつけば私はそんなマスターの頭に手を伸ばして撫でてしまっていた。

 ……と言っても、今は完全に透明化している状態だから、マスターにさえ見えていないけれど。

 私が撫でたいと思っただけだから、それでいいのだ。

 

「おつかれさま、メイちゃん。見ごたえのある良いデュエルだったよ!」

 

 マスターの頭から手を離し、私がマスターにだけ姿が見える状態に存在の強度を切り替えたタイミングで、デュエルを観戦していたホムラとエミリアが歩み寄ってきた。

 

「そうね。良いデュエルだったわ」

 

 労いの言葉に応えるようにコクリと首を縦に振るマスターに、エミリアは微笑みながら声をかける。

 

「『虚けな平等主義』……カードの使用で1枚分消費して、その後の攻撃でお互いにカードを1枚ドローしたとしても、手札の枚数は自分はプラマイ0で相手はプラス1。単体で見れば相手にアドバンテージを与えるだけのカードでしかないわ。だけど『虚無龍ヴァニタス』と組み合わせれば、0エナジーで相手のサーヴァントを除去できる必殺の一手にもなり得る。私も参考になる良いカードの使い方だったわ」

 

 エミリアから伝えられたデュエルの具体的な評価点に、マスターは頷きつつも思案するように顎に手を添えた。

 

「そう……だけど、その利点はあくまでヴァニタスが場にいる時に限る。あのカードは、ヴァニタスがいない時がネックになる。相手に与えたアドバンテージが、巡りにめぐって自分の首を絞めることもある」

「ふふ、そうね。どんなカードも組み合わせと状況次第。1枚ですべてが完璧なカードなんてないわ。デュエルの実力というものは、デュエル中の腕前だけでなく、そのデッキビルディングも重要になる」

 

 クラス代表対抗戦を通じて友達になって以来、ホムラだけでなく、エミリアとの交流も増えてきていた。

 

 マスターとホムラはAクラスで、エミリアはBクラス。

 所属するクラス自体は違うものの……旧知の仲のホムラに会うためか、それともせっかく友達になれたマスターともっと仲を深めるためか、はたまたその両方か。エミリアは割と頻繁にAクラスを訪れる。

 ホムラと友達になる以前は、わざわざ屋上に移動して一人で静かに昼食を食べていたマスターだったが……ホムラと友達になってからは、彼女と二人で教室で。

 そしてエミリアと関わるようになってからは、三人で昼食を食べたり雑談に興じたりという時間が日常になってきていた。

 

「でも……なんだか意外だなぁ。メイちゃんが自分からデュエルの挑戦を受けるなんて」

「あ、それは私も思ったわ」

 

 お、それは私も思ったぞ!

 私含む三人から一気に視線を向けられ、マスターは一瞬、面食らったようにたじろいだ。

 

「以前、クラス代表対抗戦に備えて無空さんのデュエルの記録を探したことがあるのだけど……授業でのホムラとの一戦以外でデュエルしただなんて話、一つも聞かなかったのよね。いたずらに手の内を晒すことを好まないような、そんな印象を受けたわ」

「だよねだよね! メイちゃんが自分から進んでデュエルしてるとこなんて私も今まで見たことなかったし! そういえば昨日も挑戦を受けてたよね? なにか心境に変化でもあったの? もしかして……メイちゃんもデュエルが段々好きになってきてたりっ?」

「別に好きにはなってないけど……」

 

 ホムラが言ったように、最近のマスターはデュエルの申し出を受けることが増えてきていた。

 無論、すべての挑戦者の相手をしているわけではないけれど。

 少なくともただ記念にと、腕試しにと挑んでくるような挑戦者の相手は絶対にしない。

 ただ、自分の脅威となり得る相手……マスターのデュエルの記録を見て、それでも勝ち目があると判断し、本気で勝つつもりで挑んでくる相手に対してはデュエルに応じることがしばしばあった。

 

「なにか理由でもあるのかしら?」

「……はぁ。別に、大した理由じゃない」

 

 ホムラとエミリア。二人の友人に関心を向けられて、マスターは観念したようにため息をついた。

 

「ただ……ホムラとのデュエルも、エミリアとのデュエルも……私の勝利は、一手誤れば敗北していたほどの紙一重のものだった。また次に、あなたたちレベルの相手が現れないとも言い切れない。そして……成長したあなたたちが、再び私の前に立ちはだからないとも限らない」

「わっ」

「あら」

「死に絶える最期の一瞬まで、私は誰にも負けない。そのために私も、あなたたちが強くなる以上の速度で強くなっておこうと思っただけ……って」

 

 そこでホムラとエミリアがなにやら微笑ましげに自分を見ていることに気づいたマスターは、怪訝そうに言葉を途中で止めた。

 

「……なに? その顔」

「えへへ。いやぁ、だってそれってつまり、私たちのことすっごく意識してるってことでしょ? 私だけじゃなくてメイちゃんも私のことちゃんとライバル視してくれてるんだなぁって思ったら、なんだか嬉しくなっちゃっただけ!」

「ふふ。そうね。今より強くなることを信じてもらえるなんて光栄だわ。無空さんの期待に応えられるように私も頑張らなくちゃ」

「……私は別に、あなたたちに強くなってほしいわけじゃないんだけど……」

 

 なんとも言えない表情でぼやくマスターを、ホムラとエミリアは相変わらずの微笑ましげな表情で見つめる。

 

 うへへ……なんか良いなぁ。

 互いが互いを刺激し合い、切磋琢磨していく。まさに青春と呼ぶべきものだ。

 やっぱりまだデュエルそのものは好きじゃないのかもしれないけれど……マスターがそんな尊い青春の時間を謳歌しているという事実だけで、私の頬にだらしなく笑みが浮かんでしまう。

 

「……まあ、いいか」

 

 ホムラとエミリアの反応に不本意そうな顔をしていたマスターも、私が笑っていることに気がつくと、しかたがなさそうに肩をすくめる。

 それからはたと校庭の時計台を見上げた。

 

「ホムラ。エミリア。そろそろ行こう」

「あ、そうだね! ここじゃホロ……こほん! あの子も出てこれないし、早く寮の方に戻ろっか」

 

 元々が寮に戻る途中でマスターがデュエルを申し込まれ、ホムラとエミリアに待ってもらうことを了承のうえ、その挑戦を受けた形だった。

 デュエルが終わった今、これ以上ここに留まる理由はない。

 

「そういえば、私に会わせたい人がいるって言ってたわよね。寮じゃないとダメって……ホムラ。あなたまさかアンコの時みたいに、また誰か拾ってきたの? まったくあなたはいつもいつも自分からトラブルに首を突っ込んで……」

「えぇっ!? こ、今回は私は関係ないってば! 会わせたいのはどっちかって言うとメイちゃんの知り合いだから!」

 

 やれやれと呆れた風に首を左右に振るエミリアに、ホムラは心外とばかりに声を上げる。

 そうして騒ぎながら私たちは放課後の校舎を後にし、寮へと戻るのだった。




カード制作裏話
・爆走特急列車エンシェントレインV
ワンショットキルに特化した超重量級サーヴァント。フルアクセルでライフカウンターに向かって超高速で突撃して爆散し、それをトリガーに少し小さめのサーヴァントが出てきてそれもまた爆散し、それをトリガーにさらに小さなサーヴァントが出てきてそれもまた爆散し…と言った、マトリョーシカ的脳筋突撃戦法をイメージしている。弱点としては一度ワンショットキルコンボを始動してしまうと手札orエナジーを著しく消耗してしまい、仕留め切れなかった場合の二度目のコンボの起動が非常に困難になること。メイちゃんが言ったようにフルスペックさえ発揮できればホロエル&ヴァニタス&ホルボルポルンが揃っていようと問答無用で勝利まで持っていける圧倒的破壊力がある。

・虚けな平等主義
攻撃時に互いにカードを1枚引く効果を付与するという、これ単体だと本当にうつけでしかないカード。基本は相手の方が1枚分アドを多く獲得できるデザインになっているが、付与した効果を2度3度と発動させられるなら、1枚分のアドバンテージ差の価値も相対的に下がるため、採用を検討する価値が出てくる。とは言え、普通のデッキであればやはり別のカードを2積み3積みした方が安定すると思われる。
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