可愛い銀髪美少女天使カードとして転生した私、マスターを導く 作:にゃっとう
お詫びと言ってはなんですが、本日は2話同時更新になります。そしてその同時更新の2話目で過去編が終了となります。
1話の文字数に収まらなかったので、2話に分けた感じですね。
なので嘘は嘘でも灰色くらいの嘘です。許せサスケ…。
ど、どうして……お父さんが、ここに……。
混乱と動揺で頭がいっぱいになる中、私はハッと我に返ると、ブンブンと首を左右に振った。
そうだ。お父さんはもう……ううん。初めから、私の味方なんかじゃなかった。
もしかしたら心を入れ替えてくれたかもなんて、期待しちゃいけない。
今だって、私のことを捕まえて……あの監禁部屋に連れ戻して、虚無の巫女という名の生贄にしようとしてるだけなんだ……!
私は急いで立ち上がると、さきほどと同じようにデュエルガントレットにカードを叩きつけた。
「スペル! 『
| コスト2 | 属性:無 |
|---|
| スペル | 種別:虚数 |
|---|
| - 効果 - |
|---|
| ①「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」を+1する。 ②自分・相手の場のサーヴァントすべてのHPを-Xする(Xは手札の「虚無」の枚数×1000)。その後、手札のスペル「虚無」をすべて消滅させ、消滅した数だけカードを引く。4枚以上消滅したなら、さらにカードを1枚引く。6枚以上消滅したなら、さらにライフカウンターを1つ回復する。 |
理解不能な数式が虚空に出現し、空間の歪みが波のように広がってお父さんに襲いかかる。
しかしお父さんは顔色一つ変えることなく、私と同じように懐から一枚のカードを取り出すと、それをデュエルガントレットにかざした。
「『ピュリファイ・マジック』。コスト3以下のスペルを無効にする」
| ピュリファイ・マジック | |
|---|---|
| コストX | 属性:光 |
| スペル |
|---|
| - 効果 - |
|---|
| ①『QアクションX』=条件:相手がコスト3以下のスペルを詠唱した時。(Xは相手が直前に詠唱したスペルのコストに+2した数) ②直前に詠唱されたスペルの効果を無効にする。お互いのプレイヤーはカードを1枚引く。 |
どこからともなく降り注いだ光が、歪みの中心点であった数式を正していく。
それとともに空間の歪みはまるで浄化されたかのように綺麗さっぱり消え去って、後にはなんの痕跡も残らなかった。
「そ、そんな……こんなあっさり……!?」
目を見開いて呆然と立ち尽くす私を、お父さんは冷徹に見下ろす。
「なにをそんなに驚くことがある? デュエルのことをなに一つ知らないお前が、デュエルをよく知る他人と正面から当たって敵うはずがないだろう」
「っ……う、うぅ……!」
言われてみれば、当たり前の話だった。
さっきは不意打ちだったから見張りの人を倒せたけど……こうして正面から向き合った状態からじゃ、私が同じ条件で他の人に勝てるわけがない。
コツコツと靴底を鳴らして、お父さんが近づいてくる。
私は震える足で後ずさりながら、再びカードをデュエルガントレットに読み込ませた。
「ド、『
「『制止の光』」
だけど私がどんなカードを使おうと、お父さんはそのすべてに危なげなく対応してきた。
それだけならまだしも、お父さんが全然平気そうにしているのに対して、私はカードを使うたびに体力を消耗して、どんどん息が上がってきてしまう。
「はぁっ、はぁ……っ……」
「メイ……お前、そのデュエルガントレットはいったいどこから手に入れた? まさか盗んだのか? まったく、お前は本当に悪い子だ。すぐにでも連れ帰って、俺がちゃんと更生させてやるからな」
「ひっ……!?」
一歩、また一歩と、お父さんが距離を詰めてくる。
怖い。怖い。お父さんが、怖い――。
「さあ、メイ――」
「っ……やっ……やだっ! やめて……!」
お父さんが私の腕を掴む寸前で、硬直していた身体が咄嗟に動き、お父さんの手を振り払う。
そうして私は恐怖に引き攣った顔をぐしゃぐしゃにしながら、お父さんに背を向けて瓦礫で塞がれた出入り口へと駆け寄った。
どこかに子どもの私が通れるような小さな隙間がないかと、無我夢中で辺りを見回す。
だけど運命は、世界は、どこまでも私に残酷だ。
出入り口は完全に塞がれてしまっていて、通れそうな隙間なんてどこにもありそうになかった。
「無駄だ、メイ。お前はどこにも逃げられない」
背後からゆっくりと近づいてくるお父さんの気配に、私は全身から血の気が引くのを感じた。
もうダメだと、そんな風に思った。
私は結局、虚無の巫女になる運命からは逃れられないんだ……って。
……でも。
もしどうやっても、運命から逃れることができないんだとしたら……!
私は瓦礫を背にしてお父さんに向き直ると、デッキから取り出したカードを見せつけるようにして掲げた。
「う……動かないで! もし動いたら……う、動いたら! わたしはこのスペルを自分に使う! そうしたら、子どものわたしなんかすぐ死んじゃうんだから!」
「……」
私の脅し文句に、お父さんの足がピタリと止まる。
それを見て、私は確信した。
や、やっぱりそうだ……! お父さんは、私を傷つけることができないんだ!
お父さんの目的は、あくまで私を虚無の巫女としてアリエルに捧げることだ。
肝心のわたしが死んでしまったら、当然ではあるが依り代としての役割は果たせなくなってしまう。
さっきからずっと私が使ったスペルを打ち消すばかりで、攻撃的なスペルを撃ってこなかったのも、きっとそれが理由なんだ。
普通のデュエリストなら気絶するだけで済むような攻撃だとしても、7歳の子どもに耐えきれるとは限らない。
もしも当たりどころが悪くて万が一死んでしまったりなんかしたら、取り返しがつかないから。
それに……私の体に癒えない大怪我なんて負わせてしまったら、お父さんよりも地位が上の人……シーラ司教様がお父さんを許さないはずだ。もしかすれば、アリエルだって激怒するかもしれない。
そうなれば、教団内でのお父さんの評価は地に落ちる。最悪の場合、なんらかの処罰を下される危険性すらあるだろう。
スペルの撃ち合いじゃお父さんには勝てないけど……こうやって私の命を盾として使えば、お父さんだって、そう簡単に手出しはできない……!
「……」
「……」
私とお父さん。互いに睨み合ったまま、束の間の静寂が辺りを包み込む。
しかしそんな永遠に続くかとも思われた膠着状態の中、お父さんは静かにため息をつくと、唐突に自分のデュエルガントレットを操作し始めた。
「まさか実の父親を脅してくるとはな……であれば、しかたがない。こうするとしよう」
「っ……!? う、動かないでって言ってるでしょ!?」
警告しても、お父さんはデュエルガントレットを操作する手を止めない。
私は……私は覚悟を決めて、スペルをデュエルガントレットに読み込ませた。
「ッ……! ……あ、あれ……?」
だけどどうしてか、いつまで経ってもなにも起こらない。
私はもう一度、さきほどまでスペルを使っていた時と同じようにカードをガントレットに叩きつけてみる。
しかしやっぱり結果は同じだった。デュエルガントレットはなんの反応も示さず、私はドクンと心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
「な、なんでっ!? どうして反応しないの!? さっきはちゃんと……!」
「簡単な話だ。お前からのデュエルのリクエストを承認した。それによってデュエルが成立し、デュエルリクエストモードは終了した」
「デュ、デュエルを承認……?」
なにが起こっているのか理解できずにいる私に、お父さんは淡々と続ける。
「
「デュ、デュエルフィールド……? 副産物……?」
「だが、そのような不完全なフィールドの拡張は、周囲に対して無差別にデュエルを申請しているのと同じことだ。ゆえに、これへの対応策は至って簡単。そのデュエルのリクエストを承認してしまえばいい。そうなればデュエルフィールドは完全なものとなり、俺もお前も互いに自由にスペルを使うことはできなくなる。もっとも……こうなってしまえば、デュエルの勝敗がつくまで、俺もお前もデュエル以外の手段で互いに干渉することができなくなるがな」
「な……なに言ってるの!? お父さんがなに言ってるのか、全然わかんないよっ!」
「やれやれ。無知なお前にもわかるように簡潔に言ってやろう。つまるところ……これから始まる俺とのデュエルに勝たなければ、お前はここでおしまいだということだ」
デュエルに勝たなきゃ、私はおしまい……?
そんな……そんなの無理だよ。だって私、デュエルなんて今まで一度も……。
私は愕然としながら、自分のデュエルガントレットを見下ろす。
するとそこには『
だけど……同時にその小ウィンドウには、『許可』と『拒否』の二つの選択肢表示も浮かんでいる。
強制じゃないなら、ここで『拒否』を選んでしまえば……!
私は縋るような思いで、『拒否』の二文字に手を伸ばす。
だけどいざその二文字に触れようとした瞬間、ゾッとするような寒気が走って、私の手はピタリと止まった。
冷たく見下ろすように私を見つめるお父さん――その目がまるで、私が『拒否』を選ぶことを期待し、待ち望んでいるかのように見えたんだ。
もしも……もしもここで私が『拒否』を選んでしまったら……その時は、いったいどうなるんだろう……?
なにか取り返しのつかないことをしようとしてしまっているような、そんな漠然とした嫌な予感に心臓がバクバクと早鐘を打つ。
「どうした? 『拒否』を選ばないのか?」
「……っ!」
お父さんの急かすような声音に、私はビクリと肩を跳ねさせる。
そうして完全に動きを停止させてしまった私を見やると、お父さんはおかしくてたまらないとばかりに笑い出した。
「はははっ! どうやら感づいたようだな。そうだ……デュエルリクエストモードを使用して自ら申し込んだデュエルの拒否には、多大なリスクが存在する」
「リ、リスク……?」
「デュエルフィールドの強制解除によるフィードバックダメージだ。それがデュエルの拒否を選択したお前だけに襲いかかる」
「っ、フィードバックダメージ……!?」
「安心しろ。身体への影響はない。だがひとたびフィードバックが起これば、デュエルエネルギーの逆流によってデュエルガントレットに多大な負荷がかかり、その機能が一時的にシャットダウンされる。つまり……デュエルするまでもなく、お前は完全に無防備になるというわけだ」
「そ、そんなっ……!?」
そんなリスクがあるのなら、デュエルを『拒否』する選択肢だけは絶対に選べない。
でも……デュエルのルールすらおぼつかない私が、まともにやり合ってお父さんに勝てるとも思えない。
わ、私は……いったい、どうしたらいいの……?
「言っただろう、メイ。お前はどこにも逃げることはできないと」
「……う、うぅ……!」
選択肢なんて、あってないようなものだった。
苦渋の決断で『許可』をタップすると、デュエルガントレットの画面がデュエルのそれに切り替わる。
それからデッキが自動的にシャッフルされて、手札として5枚のカードが選出された。
取れ、と言わんばかりにデュエルガントレットが吐き出してきたそれを引き抜くと、お父さんもまた同じようにデッキから5枚のカードを手に取った。
「さあ……始めるぞ! デュエル開始の宣言をしろッ! デュエルガントレット、スタンバイ!」
「……デュ、デュエル……!」
「「――デュエルスタート!」」
そうして私の人生の行く末を左右するデュエルの幕が、切って落とされた。
カード製作裏話
・虚空波動
序盤は押されがちな虚構定理デッキ用の全体除去札として設計。これ単体では場を離れた虚構定理を増やす以外になにもできないが、手札の虚無の枚数に応じて除去効果がパワーアップしていき、その後、虚無をドローに変換してくれる。さらに虚無が4枚を越えると追加効果で1枚ドローが加わり手札消費0になり、6枚を越えるとライフカウンターまで回復してくれる。使うと虚無が手札から消える関係上、連発が難しく、また虚無や虚無を手札に加える効果を持つカードがない時に手札に来ても活躍はできない。しかし条件が整った時は破格の効果を提供してくれるので、虚無を手札に加えるカードと合わせて積極的に積んでいきたい。対アグロにおいての重要札になり得るので、採用しているなら初手はこのカードとホルルンを手札に握っておくことを意識してマリガンすべきだと思われる(マリガン:試合開始時に引いた手札のカードを引き直す行為。作中本編ではできないが、掲示板世界のDCGでは可能な設定)。
・ピュリファイ・マジック
コスト3以下スペルに対する妨害無効札。ただし無効にするためには無効にしたいカードよりもコストを2多く支払う必要がある。クロワッサンはゲームスピードがそこそこ早く、低コストカードの重要性が高いので、上手く刺すことができれば致命傷にもなり得る(たとえば虚構定理デッキの虚無をため込んだ後の「虚構再定義」や「虚空波動」等。これらを無効にできれば相手のリソース回復を封じ、大きなテンポアドバンテージを獲得することが可能)。ただし無効にした後、お互いにカードを引くことになるので、無効にしたからと言って相手の手札が減ることはない。しかしそれはこちらも同様であり、エナジーに余裕を持たせられるデッキであれば、手札を減らさずに運用できる妨害札として機能するだろう。また、地属性にはターンエンド時にエナジーを回復する効果を持つカードが多く存在している設定があり、光/地を組み合わせた妨害デッキはクロワッサンでは一定の人気を誇っているようだ。なお、嫌われてもいる模様。