可愛い銀髪美少女天使カードとして転生した私、マスターを導く   作:にゃっとう

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46.時間と状況は私の味方だということを教えて差し上げましょう

先攻1ターン目:光華ノゾミ

光華ノゾミ
ライフ:6(無し)
Ene:0
手札:5
無空メイ場を離れた虚構定理:0
ライフ:6(無し)
Ene:0
手札:5

 

 

 いつもなら真っ先に来てくれるはずのホロエルが、手札のどこにもいない。

 その事実に私は呆然とし、目を見開いて固まっていた。

 

 ホロエル……どうして……?

 

「私の先攻ですね。私は手札からカードを1枚、エナジーにチャージ。複合した属性を持つカードであるため、消費状態でチャージします」

 

 っ……ダメだ。今はデュエルに集中しないと。

 このデュエルの勝敗にはホロエルがかかっている。絶対に負けるわけにはいかない。

 余計なことは考えるな。動揺を消して、ノゾミの戦略を分析しろ。

 

 エナジーにチャージされたカードそのものは非公開情報だから詳細はわからないが、現在チャージ済みの属性に関しては公開情報だ。

 今、ノゾミのエナジーにチャージされている属性は3つ。水と地、そして光だ。

 ノゾミはまだエナジーにカードを1枚しかチャージしていないから、つまるところ彼女は今、3つの属性が複合されたカードをエナジーにチャージしたということになる。

 

 通常、ターン中行動の権利としてエナジーにカードをチャージする際は、未消費状態でチャージされる。

 使用可能エナジーが1/1(1分の1)の時に新たにエナジーをチャージしたなら、2/2(2分の2)に。2/2(2分の2)の時にチャージしたなら、3/3(3分の3)と言った具合だ。

 ただし複数の属性を含むカードをエナジーにチャージした場合に限っては、消費済みの状態でチャージされるルールになっている。

 つまり1/1(1分の1)から1/2(2分の1)2/2(2分の2)から2/3(3分の2)と言った感じに、チャージしたエナジーを即座には使用できなくなる。

 これは複合した属性を持つカードが有する明確なデメリットなのだが、同時に、単属性のカードとのバランスを保つための公平なルールでもあった。

 

 ルール上、対応した属性を持つカードがエナジーにチャージされていない場合、その属性のカードは使用できない。

 たとえば使いたいカードが火属性なら、火属性がエナジーにチャージされていなければ該当するカードは使用できない。

 たとえカードを使用するために必要なコストが0だったとしても、それは同様だ。

 しかし逆に言えば、火属性を持つカードが1枚でもエナジーにチャージされていれば、火属性のカードをいくらでも使用可能になるということでもある。

 

 単属性であればカード1枚で属性を1つしか解放できないところ、複合した属性を持つカードであれば、同時に2つや3つ、時にはそれ以上の属性を一気に解放させられるのだ。

 消費状態でチャージするというルールは、そういった複合属性特有のメリットゆえの制約だと言えた。

 

「私はこれでターンエンドです」

 

 

後攻1ターン目:無空メイ

光華ノゾミ
ライフ:6(無し)
Ene:1(0)
手札:4
無空メイ場を離れた虚構定理:0
ライフ:6(無し)
Ene:0
手札:5→6

 

 

「私のターン……ドロー」

 

 ホロエルは……やっぱり来ない。

 

 ホロエルの性能を鑑みれば、私のデッキは必ずしも序盤にホロエルが必要というわけではない。

 このデュエル中に場を離れた『虚構定理』を持つカードの数が5以上に達していなければ、ホロエルは自身の『虚構定理』*1の条件を満たせず、それによって他のあらゆる効果が無効化されてしまうからだ。

 序盤でのホロエルの役割は、『虚構定理』が持つ自壊のデメリットによって場を離れた『虚構定理』の数をいち早く溜めつつ、早い段階でホロエル自身を墓地へ送っておくことで、いつでも再利用できるようにしておくというだけ……。

 それもホロエルという貴重な手札を1枚消費して行うのだから、状況によっては初手にホロエルを出すことが最適解と言えないパターンも存在するだろう。

 

 ということは……ホロエル自身が、今回のデュエルでは初手に自分がいない方が展開がスムーズにいくと判断した? だから、手札に来なかった?

 ……いや、それだけじゃいまいちしっくり来ない。

 これまでいつもは真っ先に手札に来てくれていたホロエルが、こんな大事なデュエルで、私に少しも相談せず自己判断でそんなことをするとは思えない。

 

 なら、いったいどうして……。

 

「どうかしましたか? 無空さん。手が止まっていますよ」

 

 ……まさか、ノゾミが持つラフィエルとやらの妨害?

 いやでも、他人のデッキに干渉する力を持ったソウルハート・サーヴァントなんて聞いたことがない。

 それにノゾミの話が本当なら、今のラフィエルはホロエルを退けるほどの力を持たないはず……。

 ……わからないけど、とにかく今は、今の手札でできることをするしかない。

 

「……私は手札からエナジーをチャージ。1エナジーで『虚無の祝福』を詠唱する」

 

虚無の祝福
コスト1 属性:無 

スペル 種別:虚数 

 - 効果 - 
【制約】:[詠唱制限](上限:同名/1ターンに1回)


①3以下の数字を指定する。指定した数だけエナジーを回復する。次の自分のターンスタート時、指定した数だけエナジーを消費する。

②以下の効果から1つを選択して適用する。

・スペル「虚無」を2枚生成して手札に加える。

・「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」を+1する。

 

「えっ。ホロエルちゃんじゃない……? ……でも確か、『虚無の祝福』はエナジーを回復する効果があったはずだから……この後で出すのかな?」

 

 観客席にいるホムラが、私が使ったカードに困惑の声を上げている。

 

「このスペルは、3以下の数字を宣言して指定した数だけエナジーを回復できる。ただし次のターンの開始時、この効果で回復した数だけエナジーを消費する。私は0を宣言」

「0であれば、次のターンの開始時にエナジーが消費されることもありませんね。となれば、狙いはもう一つの効果ですか」

 

 ノゾミは生徒会長の職務として、以前クラス代表対抗戦で私が行ったデュエルを見たことがあると言っていた。

 だから私がその時使っていたカードに関しても、その効果を把握しているようだ。

 

「『虚無の祝福』のさらなる効果。スペル『虚無』を2枚生成して手札に加えるか、私の場を離れた『虚構定理』の数を+1する。私はスペル『虚無』を手札に2枚加える方を選択する」

 

虚無
コスト0 属性:無 

スペル 

 - 効果 - 
【制約①】:[エナジーへのチャージ不可]

【制約②】:[詠唱不可]


①(無し)

 

 スペル『虚無』は詠唱もできなければエナジーにチャージもできない、それ単体では使い道のないカードだ。

 だけど私のデッキには手札を消滅させることでメリットを得る効果を持ったカードや、『虚無』を参照するカードが多く存在する。

 手札に『虚無』を多く確保しておくことは、間違いなく後々の展開の助けになる。

 

「私はこれで……ターンエンド」

「……無空さんのデッキは、序盤はとにかく『虚構定理』の数を稼いでいくことが重要よ。ホロエルちゃんはあくまでそのための手段の一つに過ぎないわ。だから必須というわけではないけれど……これは……」

「メイ様……」

 

 序盤はホロエルがいなくても問題なく戦っていける。

 だけど私のデッキは、あくまでもホロエルを軸に組んでいる。

 勝負が動き始める中盤……遅くとも5ターン目までにはどうにかしてホロエルを持ってこないと、徐々に取り返しのつかない状況に陥っていくだろう。

 それこそ……勝敗に支障が出かねないほどに。

 

 

先攻2ターン目:光華ノゾミ

光華ノゾミ
ライフ:6(無し)
Ene:1
手札:4→5
無空メイ場を離れた虚構定理:0
ライフ:6(無し)
Ene:1(0)
手札:6

 

 

「私のターン。カードをエナジーにチャージし、エナジーを2消費。光属性サーヴァント、『見習い天使ミクエル』を召喚します」

 

見習い天使ミクエル
コスト2 種別:天使 
属性:光 ATK 500 HP 3000 

サーヴァント 

 - 効果 - 
①自分の場に「ジャッジメント・ワールド」がないなら、ライフカウンターへ攻撃できない。

②『ガード』

③場に出た時に発動可能。コスト4のサーヴァント1枚またはエリア「ジャッジメント・ワールド」1枚をデッキから手札に加える。

 

「ミクエルの効果発動。場に出た時、コスト4のサーヴァント、またはエリア『ジャッジメント・ワールド』1枚をデッキから手札に加えます」

 

 各属性には、それぞれ得意とする戦術や苦手とする戦術が存在する。

 チャージされた属性の数は、そういった戦術の幅広さにも繋がる。

 

 水、地、光……ノゾミが現在解放している属性は、この3つだ。

 

 水は、エミリアが最も得意としている属性だ。

 手札のリソースの補給や相手のサーヴァントのATKを低下させる妨害と言った、持久戦向けの防御寄りの戦術を得意としている。

 反面、攻撃性能は低いカードが多い。

 

 地は、デュエルにおいて最重要とも言える、エナジーに関連する効果が多才な属性だ。

 カードの効果によって追加でエナジーをチャージしたり、特定条件下でエナジーを回復したり。

 変わり種では、相手の場のサーヴァントを相手のエナジーに直接チャージさせるなど、破壊以外の除去手段を駆使してくることもある。

 エナジーを活用しないデッキなど存在しない。地属性単体でデッキを組まれることは少ないが、他の属性の支援において地属性の右に出るものはないだろう。

 

 そして最後の光属性は……。

 

「ミクエルのHPは3000。さらには『ガード』能力を所持しており、コスト2のカードとしては破格と言って良い性能です。しかしそのように高い能力を持つ代わりに、ミクエルは私の場にエリア『ジャッジメント・ワールド』がなければライフカウンターへ攻撃することができません」

「……」

 

 光は、『ガード』やライフカウンターの回復を駆使する、防御と耐久に秀でた属性だ。

 多少性質は違うものの水属性も同様に防御戦術を得意としているので、光と水は特に相性が良い鉄板の組み合わせとして知られている。

 光属性が水属性と異なる点は、水属性よりも、さらに防御に特化した性能のカードが多いということだろうか。

 今ノゾミが使ったミクエルのように、攻撃性能をほとんど完全に捨ててまで、守りに徹するカードが多く存在する……それが光属性の特徴だ。

 

 水、地、そして光……どれも防御やサポートの印象が強い属性だ。

 彼女のデッキは持久戦を得意とするコントロールデッキ――私と同じ、後半戦を主体にしたデッキと見てほぼ間違いない。

 

「ターンエンドです」

 

 

後攻2ターン目:無空メイ

光華ノゾミ
ライフ:6Se:見習い天使ミクエル(A500/H3000)
Ene:2(0)
手札:4

無空メイ場を離れた虚構定理:0
ライフ:6(無し)
Ene:1
手札:6→7

 

 

「私のターン」

 

 ホロエルは……ダメだ。やっぱり来てくれない……。

 

「……私はエナジーをチャージ。2エナジーでエリア『無人のアトリエ』を展開する」

 

無人のアトリエ
コスト2 属性:無 

エリア 種別:虚数 

 - 効果 - 
①『カウント』=初期値:2

②各ターンエンド時に強制発動。サーヴァント『ハリボテ人形』1枚を生成して場に出す。『カウント』を1減らす。『カウント』が0になったなら、このエリアを破壊する。

③破壊された時、「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」を+1する。

 

「ターンエンド。この時、『無人のアトリエ』の効果。私とあなたのターンエンド時、このエリアのカウントを1減らして『ハリボテ人形』を1体生成して私の場に出す」

 

ハリボテ人形
コスト0 種別:(無し) 
属性:無 ATK 0 HP 500 

サーヴァント 

 - 効果 - 
①『ガード』

 

「これにより、『無人のアトリエ』のカウントは2から1になる」

 

 ……まだ、ホロエルがいなくても大丈夫。

 だけど……ホロエル……。

 

 

先攻3ターン目:光華ノゾミ

光華ノゾミ
ライフ:6Se:見習い天使ミクエル(A500/H3000)
Ene:2
手札:4→5

無空メイ場を離れた虚構定理:0
ライフ:6Ar:無人のアトリエ

Se:ハリボテ人形(A0/H500)

Ene:2(0)
手札:5

 

 

「やはりお互い、序盤は防御を固めますか」

 

 ターン開始時の処理としてデッキからカードを引きながら、ノゾミはスッと目を細める。

 

「無空さん。あなたも感じているように、私たちのデッキは後半戦を主体にした同じコントロール……相手の攻めへの対処手段が豊富なデッキタイプです。ゆえに私たちは、互いが互いに理解しています。迂闊な攻めは、ただ絡め取られて利用されるだけだと」

「……」

「攻勢の機を見誤ることは、すなわち勝敗の明暗を分けることにも繋がるでしょう。慎重な立ち上がりは必然です。しかし同じデッキタイプだとしても、時間と状況は私の味方だということを教えて差し上げましょう」

 

 ノゾミは場にいるミクエルに手を伸ばす。

 

「まずは『見習い天使ミクエル』で『ハリボテ人形』に攻撃します。ミクエルのATKは500、ハリボテ人形のHPも500。よってハリボテ人形は破壊されます」

「……ハリボテ人形のATKは0。ミクエルにダメージは与えられない」

 

 この攻防を見て、センカが「あれ?」というように小首を傾げる。

 

「ミクエルは、自分の場に『ジャッジメント・ワールド』がなきゃ攻撃できないはずじゃ……?」

「いいえセンカちゃん。その効果で制限されているのはあくまでライフカウンターへの攻撃だけよ。サーヴァントへの攻撃は問題なく宣言できるわ」

「あ、そっか」

 

 通常であればATK500程度で他のサーヴァントに攻撃できたところでどうにもならないが、『ハリボテ人形』はちょうどそのATK500と同じHP500……。

 今回ばかりはサーヴァント同士の相性が悪かった。

 

「そしてエナジーをチャージし、エリア展開。コスト3『慈愛の施し』」

 

慈愛の施し
コスト3 属性:光/地/水 

エリア 種別:天使 

 - 効果 - 
【制約①】:[複合属性]

【制約②】:[存在制限](上限:同名/自分・相手の場に1枚)


①各ターンエンド時に強制発動。ターンプレイヤーはデッキの上から1枚目を消費状態でエナジーにチャージし、カードを1枚引く。

②いずれかのプレイヤーのライフカウンターが破壊された時に強制発動。このエリアを破壊する。

③破壊された時に強制発動。相手はエナジーを1回復し、ライフカウンターを1つ回復する。

 

 その一瞬、私は豊かな自然が広がる晴れ渡った世界を幻視した。

 

「私はこれでターンエンド。さらにこの瞬間、『慈愛の施し』の効果が発動します。このエリアは各ターンエンド時に強制的に効果を発動し、ターンプレイヤーのデッキの上から1枚目を消費状態でエナジーにチャージさせ、カードを1枚引かせます」

「ターンプレイヤー……ということは、私も?」

「ええ。あなたのターンエンド時にも同じ効果が発動し、あなたに同じ効果を適用させます」

 

 カードを使った本人だけでなく、相手にも恩恵を与えるカード……?

 毎ターン無条件でエナジーチャージとドローをしていけるのは魅力的だが、お互いに同じ効果が適用され続けるなら、私と彼女のリソースの差が縮まることはない。

 むしろ『慈愛の施し』というカードを1枚消費しているぶん、ノゾミの方が損をしていると言える。

 いったいどうしてこんなカードを……。

 

「ただし『慈愛の施し』はいずれかのプレイヤーのライフカウンターが破壊された時、強制的に破壊されます。さらにその時、あなたのエナジーとライフカウンターをそれぞれ1回復させてしまいます」

「……」

 

 ……奇妙には思うが、今はまだこれ以上気にしてもしかたがないか。

 

「あなたのターンエンド時、私の『無人のアトリエ』も同じく効果が強制発動する。私の場に『ハリボテ人形』を出し、カウントを1減らす。これでアトリエのカウントは1から0に。カウントが0になった『無人のアトリエ』は破壊される」

「そして『無人のアトリエ』の破壊された時の効果により、あなたの場を離れた『虚構定理』の数が+1される……ですね? 無空さん」

「……その通り」

 

 残念ながら、私はノゾミがどういったデッキを使うのかの知識がない。

 後半戦を見据えたコントロールデッキだというデッキの傾向はわかっても、具体的にどういった戦術を使うのかがまだわからない。

 一方でノゾミはクラス代表対抗戦の記録映像を通じて、私のデッキ構築を粗方把握している。

 情報アドバンテージの面で言えば、間違いなく私の方が状況は不利……。

 今、デュエルの主導権は明らかにノゾミ側にある。

 

「デュエルはまだまだ序盤です。あなたの実力は、まだこんなものではないでしょう?」

「……」

「見せてください無空さん。今まで教団にその身を追われながらも、たった一人で生き延びてきたあなたの力……そしてアリエルと対を成すという、『虚構天使ホロエル』の力を」

 

 

後攻3ターン目:無空メイ

光華ノゾミ
ライフ:6Se:見習い天使ミクエル(A500/H3000)

Ar:慈愛の施し

Ene:4(0)
手札:4

無空メイ場を離れた虚構定理:1
ライフ:6Se:ハリボテ人形(A0/H500)
Ene:2
手札:5→6

 

 

「私のターン」

 

 このターンは、まだいい。

 だけど次の私のターン……4ターン目までにホロエルを手札に呼び込めなければ、私のデッキの動きは確実に鈍る。

 そして続く5ターン目に来なければ、敗北の確率は一気に跳ね上がるだろう。

 

 ホロエルが手札に来てくれない理由はわからない。

 わからない、けど……もう四の五の言っていられない。

 ドローを加速させるカードでもなんでも使って、今のうちに、多少強引にでもホロエルを手札に持ってくるしかない。

 

「私はエナジーをチャージ。3エナジーで『無給の使用人アズリ』を召喚する」

 

無給の使用人アズリ
コスト3 種別:虚数/メイド 
属性:無 ATK 1000 HP 2000 

サーヴァント 

 - 効果 - 
①『虚構定理』=条件:自分の場に他のサーヴァントが存在する。

②召喚時に発動可能。スペル「虚無」を1枚生成して手札に加える。さらに手札を2枚まで選んでスペル「虚無」に書き換えてもよい。その後、エナジーをX回復する(Xは手札のスペル「虚無」の枚数。Xの上限は3)。このターン、自分は「無給の使用人アズリ」を場に出せない。

③自分のターンエンド時に発動可能。エナジーをX回復する。(Xは手札のスペル「虚無」の枚数。Xの上限は3)

 

 死んだ目をしたメイドが現れ、箒を手に、手癖のように床の掃除を始める。

 

「アズリの『虚構定理』の条件は、私の場にアズリ以外のサーヴァントが存在すること。私の場には今、アズリの他に『ハリボテ人形』がいる。よって効果は有効。アズリの召喚時効果により、私はスペル『虚無』を1枚生成して手札に加える。さらに手札の『虚無』の枚数分、最大3のエナジーを回復できる」

「ふむ。あなたは1ターン目、『虚無の祝福』によって2枚の『虚無』を手札に加えていましたね。ということは……」

「私はエナジーを最大値の3回復する」

 

 これで、アズリの召喚のために使った3エナジーすべてが戻った。

 手札に1枚の『虚無』を生成したことで、アズリの召喚と差し引きして、手札の消費も0。

 ほとんどまったくリソースの消費をせずに新たなサーヴァントを召喚できた。

 

「この回復したエナジーのうち2を消費して、さらに『虚無龍の巫女インフィ』を召喚する」

 

虚無龍の巫女インフィ
コスト2 種別:虚数/ドラゴン 
属性:無 ATK 1000 HP 1000 

サーヴァント 

 - 効果 - 
①『虚構定理』=条件:手札に無属性のカードが存在する。

②『ステルス』*2

③このサーヴァントを転生素材に使用する場合、コストを4として扱う。

④場に出た時に発動可能。相手の場のサーヴァント1枚を選択して【各ターンエンド時に強制発動。ATKとHPを-1000する。この効果に続けて自分は強制発動以外のカードの効果を連鎖できない。】を付与する。

 

「あれ? あのサーヴァント……なんだかちょっと、私が使う竜の巫女に似てる?」

 

 ホムラが観客席で、少し驚いたように目をパチパチと瞬かせている。

 

「インフィの効果発動。これが場に出た時、相手の場のサーヴァント1体を選んで新たな効果を付与する。私は『見習い天使ミクエル』を選択」

「私の場のサーヴァントに効果を? ……メリット効果ではなさそうですね」

「当然。インフィによる付与される効果は、各ターンエンド時に強制発動し、自身のATKとHPを-1000すること。さらにこの効果に対し、あなたは強制発動以外のカード効果を連鎖できない」

「……なるほど。ミクエルのHPは3000……よって2度まではその効果による弱体化を受けても生き残りますが、一方でATKは500しかありません。攻撃能力は、私のターンが回ってくる頃には完全に消失しているというわけですね」

 

 さきほどはミクエルの攻撃によってHPが500しかない『ハリボテ人形』が1体破壊されてしまったが、ミクエルのATKが0にまで低下すれば、それもできなくなる。

 『ガード』効果は残っているのでその点は少し厄介だが……相手のATKが0なら、こちらは戦闘によるダメージは受けないため、リスクのない処理が可能になる。

 つまり、これでミクエルはただの置き物同然と化したというわけだ。

 

「さらにインフィは『ステルス』を持ってる。『ステルス』を持つサーヴァントは自身が攻撃権を失うまで、相手のサーヴァントに攻撃されず、効果の対象にも選択されない」

「厄介ですね」

「そして残った1エナジーを消費して、私は『虚構再定義』を詠唱する」

 

虚構再定義
コスト1 属性:無 

スペル 種別:虚数 

 - 効果 - 
①手札をすべて消滅させる。消滅させた数+1枚のカードを引く。

 

「手札をすべて消滅させて、消滅した数+1枚のカードを引く。今、私の手札には3枚の『虚無』がある。これをすべて消滅させて、私は4枚のカードをドローする」

「いいわね無空さん。無駄のないプレイングだわ。これでホロエルちゃんを引き込めればいいんだけど……」

 

 不安そうに眉を潜めるエミリアに見守られながら、私はデッキから4枚のカードを引く。

 

「……」

 

 ……引いたカードの中に、ホロエルはいなかった。

 そしてホロエルを手札に呼び込むことができるようなサーチ効果を持ったカードも、引くことができていない……。

 

 ……ここまで来れば、私もなんとなく察することができていた。

 いや……本当は最初からわかってたんだ。

 これがラフィエルの力なんかじゃなくて、ホロエル自身が望んでいるから起きている現象なんだってことは。

 ホロエルはきっと……ホロエル自身の意思で、私の手元に来ることを拒んでる。

 

 それがどうしてなのか、最初はまったくわからなかった。

 私の思いにホロエルが応えてくれないことなんて今まで一度もなかったし、応えてくれないかも、なんて。不安に思ったことすらなかったから。

 かつて教団を脱走する時に行ったお父さんとのデュエルでさえ、ホロエルは私を守ろうと真っ先に手札に駆けつけてくれた。

 学園に来てからのデュエルもそうだ。ホムラの時も、エミリアの時も……ホロエルは私の力になってくれた。

 ホロエルがそばにいることを、一緒にいてくれることを……私はいつからか、永遠に続いていく当たり前だと信じていたんだ。

 だからホロエルが来てくれないというこの異常事態に、私はただ混乱し……もしかしたらホロエルに嫌われちゃったのかも、と。

 ほんの一瞬とは言え、そんなありえない想像までしてしまった。

 

 けれどこうしてデュエルを通じ、私のことを強く拒むホロエルの意思を……まるで自ら敗北を望むような彼女の心を感じて。

 私はふと、さきほどの話し合いの最中で放たれた、ノゾミのあの一言を思い出していた。

 

『その虚構なる天使が本当に心から無空さんの幸せを願っているというのであれば、なおさら私たちにその身を差し出すべきでしょう。そうすればかの教団は崩壊し、無空さんの明るく幸福な未来が約束されるのですから』

 

 ……ねえ、ホロエル。

 もしかしてホロエルは……私のことを……。

 

「……私はこれでターンエンド。この時、インフィが付与したミクエルの効果が強制発動。ミクエルのATKとHPが-1000される」

「同時に、『慈愛の施し』の効果も強制発動します。ターンプレイヤー、つまり無空さんのデッキの上から1枚目を消費状態でエナジーにチャージさせ、カードを1枚引かせます」

 

 ……この効果でもやはり、ホロエルは引けなかった。

 

 どうやらホロエルを引きたいなら、私は一度、ホロエルを説得する必要があるみたいだ。

 今までずっとホロエルに導かれてきて……今までずっと、ただホロエルに与えられてきただけの私に。本当に、そんなことができるかはわからないけど……。

 もしもホロエルが私が想像したようなことを思ってるなら、私は私の言葉で、ホロエルに伝えてあげたい。

 あなたはここにいていいんだよ、って。私はこの先も、あなたと一緒にいたいんだ、って。

 あなたが私をここまで導いてくれたように、今度は私が……あなたの手を引いてあげたい。

 

 

先攻4ターン目:光華ノゾミ

光華ノゾミ
ライフ:6Se:見習い天使ミクエル(A0/H2000)

Ar:慈愛の施し

Ene:4
手札:4→5

無空メイ場を離れた虚構定理:1
ライフ:6Se:ハリボテ人形(A0/H500)

Se:無給の使用人アズリ(A1000/H2000)

Se:虚無龍の巫女インフィ(A1000/H1000)

Ene:4(0)
手札:5

*1
『虚構天使ホロエル』の参考効果。

①『虚構定理』=条件:「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」が5以上。

②『アクセル』

③『ガード』

④場にある限り、このカードのコストは「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」と同じとして扱う。

⑤ATKとHPに「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」×1000を+する。

⑥「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」がX以上なら発動可能。以下の効果から1つを選択して適用する。(Xは指定された数)

・X=10:エリア「完全虚構証明」1枚を生成して場に出す。

・X=15:このカードを「???」に書き換える。

・X=20:???

⑦自分のターンエンド時に発動可能。カードを1枚引き、攻撃権を回復する。

*2
攻撃権が残っているなら、相手のサーヴァントから攻撃されず、相手のカードの効果で選択されない。攻撃権を失った時、同時に『ステルス』能力を失う。(攻撃権が回復しても『ステルス』は失ったままになる)




カード制作裏話
・虚無の祝福
虚無目当てに使ってもヨシ、虚構定理稼ぎに使ってもヨシ、緊急事態でのエナジーの回復に使ってもヨシの有能カード。

・見習い天使ミクエル
高性能な代わりに特定条件下でしかライフカウンターに攻撃できないデメリットを持つ小型サーヴァント。デメリット効果がないと高いHPでゴリ押しするアグロ光属性なるものが誕生しそうだったので粛々とデメリット効果を持たせた。場に出た時にコスト4サーヴァントか、謎のエリアことジャッジメントワールドをサーチできる効果を持つ。コスト4のサーヴァントはランダムではなく任意のコスト4をサーチできるので、コスト4のサーヴァントの重要性が高く光属性を採用するデッキであれば、天使デッキでなくとも採用を検討できる。欠点はATKが500と貧弱すぎることだが、ATK0ではないので、HP500のハリボテ人形や機械猫を殴り倒すことくらいはできる。

・無人のアトリエ
時間差でガード持ち2体を出しつつ、同じく時間差で虚構定理+1してくれるエリア。終盤では少々動きが遅い感が否めないが、今回のような序盤ならとりあえず使っておいて損はない。

・慈愛の施し
お互いのプレイヤーにエナジーチャージとドローの恩恵をもたらし続けるエリア。強いと感じるか弱いと感じるかは人次第。いずれかのプレイヤーのライフが破壊されるとこのエリアも破壊されてしまうため、エリアの効果を持続させたいなら守りに徹した上で相手を攻めない要塞プレイングが求められる。基本的には破壊されるなら相手のターン中に自分のライフが割られる形で破壊されたいところ(チャージ&ドローが各ターンエンド時に行われるので、相手がターンエンドを迎える前のターン中行動で破壊されれば、相手に恩恵を齎すことが無いため)。また、このエリアが破壊されると相手のライフを回復してしまうため、このエリアでリソースを確保してワンキルを狙う戦術をする場合は、その分のライフ回復も考慮する必要があるだろう。

・無給の使用人アズリ
あらかじめ場にサーヴァントを用意しておく手間が必要とは言え、実質消費エナジー0消費手札0で召喚できるのはやはり強い。特に無人のアトリエは相手のターンエンド時にハリボテを出す関係でまず間違いなくサーヴァントを用意しておけるので相性が良い組み合わせと言える。なお、場に出た時になぜか床の掃除を始めているが、仕事が体に染みついているだけで本人に掃除している自覚はない。悲しき社畜。

・虚無龍の巫女インフィ
竜の巫女シリーズのオマージュとしてデザインされた無属性巫女。サーヴァントなのでこれ自体が多少の戦力になりつつ、相手サーヴァントにATK&HP-1000の強制発動効果を付与して弱体化or除去を狙える。ヴァニタスがいれば強制発動効果に反応してヴァニタス効果での消滅も狙える。さらにステルスにより場持ちがよく、転生素材にする際はコスト4として扱われるので、ヴァニタスの転生素材にもちょうどいい(ヴァニタスの転生条件は無属性コスト4以上)。とは言え単にヴァニタスを出したいだけならヴァニタスを手札から直接出して転生させるよりも、墓地へ送ってからコスト4無死の怪物で復活させて転生といういつものパターンの方がコスト的にはお得である。

・虚構再定義
困ったらこれで手札を入れ替えるのだ。
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