可愛い銀髪美少女天使カードとして転生した私、マスターを導く   作:にゃっとう

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◇「CROSS WORLD -SUNBREAK-」運営です。
カードの能力の下方修正をお知らせいたします。
対象カードは「機械都市アクシス」。修正される効果は以下の通りです。

修正前
○機械都市アクシス
「コスト5」
「(制約:無し)」
「③自分の種別:メカを持つサーヴァントが破壊以外の方法で場を離れる時、代わりに破壊してもよい。」
「④自分のターンスタート時、以下の効果から1つを選択して適用する。(上限:1ターンに1回)[以下省略]」
 ↓
修正後
コスト6
【制約】:[存在制限](上限:同名/場に1枚)
「③相手のターン中、自分の種別:メカを持つサーヴァントが破壊以外の方法で場を離れる時、代わりにそれを破壊する。(上限:1ターンに1回)
「④自分のターンスタート時に発動可能。以下の効果から1つを選択して適用する。[以下省略]」

◇変更に至った経緯。
カードパック「虚構天使の祝福」リリース以降、デッキタイプ別の勝率において、種別:メカを主体とした水属性デッキが1位を記録し続けており、その勝率も××%と高い数値を維持しています。(「プラチナ」以降のランク到達ユーザーの対戦データのみを集計)
また、その使用率も××%と高く、ゲームの流動性を高めるために関連カードの下方修正が必要と判断致しました。

種別:メカを主体とした水属性デッキが高い勝率を維持し続けている要因として、専用エリア「機械都市アクシス」のカードパワーの高さが上げられます。
「機械都市アクシス」は自身の効果によって、破壊された種別:メカの数に応じて展開に必要なコストが下がるほか、『A・O・D』によって後攻3ターン目以降のターンエンドごとにデッキから直接使用することが可能になっており、どの対戦においても非常に安定した展開が可能です。
また、対戦相手からしてみれば除去することに対する恩恵も薄く、エリアが持つ他の効果の強力さも相まって、対策の難しさを助長していました。

そのため、「機械都市アクシス」の下方修正を実施致しました。
自分の場に1枚しか存在できない制約が追加されたことで、同名エリアを2枚を並べることによる、カード効果の無効・カードの除去に備える動きができなくなりました。
コストが5から6に上昇したことで、早い段階からエリアを展開することが難しくなりました。
自分のターンスタート時に発揮される効果が発動効果となったことで、発動効果を対象とする効果や『Qアクション』の影響を受けるようになりました。
種別:メカが破壊以外の方法で場を離れる際に破壊に置換する効果が、相手のターン中のみに適用となったことで、自分のターン中に能動的に起動することができなくなりました。適用上限が追加されたことで、同じターン中に何度も適用することができなくなりました。適用が任意ではなく強制となったことで、1度目に必ず適用しなければならないようになりました。

以上になります。
今後とも「CROSS WORLD -SUNBREAK-」をよろしくお願いいたします。



※「機械都市アクシス」の効果変更(主にコスト関連)に伴い、エミリア戦の作中描写の一部を変更しました。
 大筋に変更はなく、細かな思考描写が変わった程度なので読み直す必要はございません。

以下、本編になります。
お待たせいたしました(* ᴗ ᴗ)⁾⁾タノシンデイッテネ


47.たとえ、世界中のすべてがあなたの敵になったとしても①

先攻4ターン目:光華ノゾミ

光華ノゾミ
ライフ:6Se:見習い天使ミクエル(A0/H2000)

Ar:慈愛の施し

Ene:4
手札:4→5

無空メイ場を離れた虚構定理:1
ライフ:6Se:ハリボテ人形(A0/H500)

Se:無給の使用人アズリ(A1000/H2000)

Se:虚無龍の巫女インフィ(A1000/H1000)

Ene:4(0)
手札:5

 

 

「これでターンは4ターン目……中盤戦の始まりね」

「メイ様、大丈夫かな……? ホロエルちゃん、手札に来てないみたいだけど……」

「……大丈夫だよセンカ。だってメイちゃん、私に見ててって言ったんだもん。いつもは戦うこと自体に乗り気じゃないメイちゃんが、今は勝利を強く望んでる……ホロエルちゃんが、そんなメイちゃんの気持ちに気づいてないはずがないから」

 

 ……この先、ホロエルが私の呼びかけに応えてくれるかどうかは未知数だ。

 

 今はただ、信じるしかない。私が今までホロエルと培ってきた絆を。

 ホロエルも私と同じで……心の奥底では、私たちと一緒にいたいと願ってくれているということを。

 

「……どうやら無空さんは今、あまり本調子ではないようですね」

 

 ホムラたちをチラリと一瞥したノゾミが、そう呟いて私を見据える。

 

「しかし、だからと言って手を抜くつもりはありません。なぜならこのデュエルは遊びなどではなく、世界の行く末すらかかっているかもしれない真剣勝負なのですから」

「……あいにくと私は、あなたが語るホロエルを犠牲にした世界の未来なんて微塵も興味ない」

 

 ホロエルを……一人の心優しい女の子を犠牲にする未来を、なんの葛藤もなく最善だと語っていたノゾミを、私は静かに睨み返す。

 

「何度でも言ってあげる。あなたなんかにホロエルは渡さない。これまでずっと私のために生きてくれたホロエルに、今度はちゃんと自分のために生きてほしい。それが今の私の願いで、私が望む世界の行く末だから」

「……なるほど。どうやらあなたは虚構天使の偽りの優しさに、心まで篭絡されてしまっているようですね。であれば、致し方ありません。あなたには一度、正しき世界の在り方をその目に焼きつけてもらうほかないようです」

 

 ノゾミは自分の手札を見下ろすと、その中から1枚のカードを手に取って、少しの間祈るように額に当てる。

 そしてカッと目を見開くと、勢いよくカードをデュエルガントレットに叩きつけた。

 

「これこそが私のデッキの根幹。我が審判の世界! エリア展開――罪深き者を粛清せよ、『ジャッジメント・ワールド』!」

 

ジャッジメント・ワールド
コスト5 属性:光 

エリア 種別:天使 

 - 効果 - 
【制約】:[存在制限](上限:同名/場に1枚)


①【手札で有効】このエリアを展開するために必要なコストは-Xされる。(Xは相手のエナジーの最大値の半分の数。端数切り捨て)

②各プレイヤーのエナジーの最大値よりも高いコストを持つ場のサーヴァントは攻撃ができず、『ガード』ができず、攻撃権を回復できず、発動効果も使用できない。

③場にある限り、相手プレイヤーに以下の特殊能力を付与する。(同じ特殊能力は重複して得られない)

☆エナジーを2消費して使用可能。お互いのプレイヤーはデッキの上から1枚目を消費状態でエナジーにチャージする。次の自分のターンスタート時まで、相手の場のすべての「ジャッジメント・ワールド」の効果を無効にする。(特殊能力を失っても無効状態は継続する)

 

 金色の空と雲が広がる神々しい世界の幻が、授業用デュエルスペースの小さな空間に顕現する。

 

「このエリアは……確か『見習い天使ミクエル』の効果の中でも何度か指定して参照されていたカードね」

 

 エミリアの呟きが聞こえてくる。

 ホムラの『竜を呼ぶ儀式』然り、エミリアの『機械都市アクシス』然り、デッキテーマに沿ったエリアというものはどれも強力だ。

 私は気を引き締めて、ノゾミの一挙一動を注視する。

 

「『ジャッジメント・ワールド』の元のコストは5。ですがその展開に必要なコストは、相手のエナジーの最大値の半分の数だけ下がります」

「……私のエナジーの最大値を参照するカード……」

「この時、端数は切り捨てられます。無空さん。あなたの今のエナジーの最大値はいくつでしょうか?」

「……4」

「4の半分は2です。端数はありませんね。よってコストが2減少し、私はこのエリアを3エナジーで展開させていただきました」

 

 前の私のターンは後攻3ターン目で、1ターンごとのエナジーチャージの権利でエナジーをチャージしていただけなら、その最大値はまだ3しかないはずだった。

 だけど『慈愛の施し』の効果によってターンエンド時に強制的にエナジーチャージとドローをさせられたことで、今の私のエナジーの最大値は4になっていた。

 本来なら利敵行為にしかならない相手のエナジーチャージを加速させる行為には、どうやら『ジャッジメント・ワールド』の展開に必要なコストを下げる意味合いもあったようだ。

 

「そして『ジャッジメント・ワールド』の効果です。これが場にある限り、お互いのプレイヤーは自身のエナジーの最大値よりも高いコストを持つサーヴァントで攻撃ができず、『ガード』ができず、その攻撃権を回復できず、発動効果も使用できません」

「っ……!?」

 

 エナジーの最大値よりも高いコストを持つサーヴァントの動きを、完全に止めるエリア……。

 これは……なるほど。そういうことか……。

 

「この状況は……ちょっとまずいわね」

「まずいって、どういうこと? 今のメイちゃんの場には、メイちゃんのエナジーより高いコストを持つサーヴァントはいないよね?」

 

 展開されたエリア『ジャッジメント・ワールド』の効果を聞いて、ホムラたちが難しい表情を浮かべて話し合っている。

 

「もう少しよく考えなさいホムラ。無空さんのデッキのキーカードであるホロエルちゃん……『虚構天使ホロエル』*1の元のコストは1よ。だけどホロエルちゃんの『虚構定理』が有効な場合には、場においてのみ、そのコストが場を離れた『虚構定理』の数と同じになる効果を持っている」

「あっ! ってことは……」

「そう。無空さんの場を離れた『虚構定理』の数が、無空さんのエナジーの最大値を上回ってしまった場合……ホロエルちゃんはこの『ジャッジメント・ワールド』の効果によって、完全にその動きを停止させられてしまうの」

「メイ様の戦術へのメタカード*2……普段使ってるカードっぽいから、意図したわけじゃなくて元々のデッキ相性の問題だとは思うけど……メイ様……」

 

 苦々しく顔を歪める私を、ノゾミが悠然と見下ろしてくる。

 

「コストの重さは罪の重さ……エナジーという分をわきまえず、罪を重ねた者は罰せられなければなりません」

「……」

「ですが、ご安心ください無空さん。我が審判の世界はそこまで非情ではありませんよ。あなたが善行を積むならば、世界もあなたの情状酌量の余地を認めます」

「……どういうこと?」

「『ジャッジメント・ワールド』の3つ目の効果です。この効果が有効な限り、我が審判の世界はあなたに新たな特殊能力を与えます」

 

 神々しい力の幻影が私の足元に纏わりつく。

 

「これによって付与された特殊能力は、あなたのターンにあなた自身がエナジーを2消費することで使用できます。あなたがこの能力を使用した時、私たちはお互いにデッキの上から1枚目をそれぞれ消費状態でエナジーにチャージし、さらに『ジャッジメント・ワールド』のすべての効果があなたの次のターンスタート時まで無効になります」

「……私にエナジーを使わせて、あなたのエナジーチャージを加速させることが、あなたの世界が定義する私の善行ってこと?」

「『虚構天使ホロエル』の効果は私も粗方把握しています。場を離れた虚構の数に応じ、コストとステータスを上昇させる力……かの天使の罪は増すばかりで、減ることはない」

「……」

「善行を認め、人の罪を許さんとする世界を通じて、どうか思い出してください。虚構天使がこの世に存在するがゆえにあなたが味わった悲哀を、孤独を……その痛みを。私はただ、あなたを救いたいだけなのです」

「……はぁ……あなたの上から目線の押しつけがましい理屈は、もううんざり」

 

 デュエルの前。ノゾミと正面から意見をぶつけ合っていたエミリアが、最後には敬語すら投げ捨てて憤った理由が少しわかった気がする。

 ノゾミはそもそも、他人の話をまともに聞くつもりがないのだ。

 自分の中ですべての結論を出し、他人の気持ちもなにもかも勝手に決めつけて、自分こそが誰よりも正しいのだと盲目的に信じている。

 これでは話すだけ無駄だ。相手のことを理解するつもりがこれっぽっちもないんだから。和解の余地なんて初めからあるわけがなかった。エミリアはよくやってくれた方だ。

 

「……残念です」

 

 呆れ果ててため息をついた私を見て、ノゾミもまた落胆したように首を左右に振る。

 

「この世界を目の当たりにしても、あなたはまだ幻想の揺籃に囚われたままなのですね……虚構天使によって歪められたあなたの心を救うには、もはや力尽くで引き離すほかないということなのでしょう」

「……なんだか、あなたと問答を続けるのは無駄な気がしてきた……もういいから、さっさと続けて」

「ええ。言われずともそのつもりです。私はさらにエナジーをチャージ。そしてエナジーを2消費し……お見せしましょう。あなたに真なる天使の姿を」

 

 ノゾミは1枚のカードを見せつけるように天高く掲げる。

 

「っ……そのカードは……」

「天より降臨せし慈愛の天使。かの者が踏みしめた大地は再生し、流した涙は河となり、舞い落ちる羽根が世界の夜を温める。どうか私に祝福を――『【慈愛】の熾天使ラフィエル』!」

 

【慈愛】の熾天使ラフィエル
コスト4 種別:天使 
属性:光/地/水 ATK 4000 HP 4000 

サーヴァント 

 - 効果 - 
【制約】:[複合属性]


①【手札で有効】自分の場にエリア「ジャッジメント・ワールド」があるなら、このサーヴァントを召喚するために必要なコストは-2される。

②召喚時に発動可能。プレイヤーはデュエル中永続する以下の特殊能力を得る。(同じ特殊能力は重複して得られない)

☆光属性を含む複合した属性を持つカードをエナジーにチャージする時、消費状態でチャージする制約を無視する。(【制約】:[複合属性]を無視し、未消費状態でチャージする)

③???

 

 煌々たる光の柱がノゾミの場に降り注ぐ。

 そうして光の柱が収まった時、その中心だった場所には美しい金髪の天使が立っていた。

 彼女は祈るように両手を組みながら3対の純白の翼を広げ、ゆっくりとその場に浮かび上がる。

 

「ラフィエル様……どうか、お嬢様を……」

 

 ラフィエル……ノゾミのソウルハート・サーヴァント。

 出てくるのはもっと後かと思っていたけど、こんな中盤の初めからもう出てくるのか。

 ステータスの数値もそう高いものではない……となると、光と地と水という複合されている属性も鑑みて、おそらくはサポート寄りの効果を持ったサーヴァントか。

 ラフィエルは、ノゾミがもっとも信頼するサーヴァントだ。たとえエース級のサーヴァントではないとしても、気を抜くわけにはいかない。

 

「ラフィエルの元のコストは4。しかし私の場に『ジャッジメント・ワールド』がある場合に限り、召喚に必要なコストが2減少します。そしてラフィエルの召喚時効果。私はデュエル中永続する新たな特殊能力を獲得します」

「……また特殊能力? いったいどんな……」

「この能力により、私は光属性を複合したカードに限り、複合した属性を持つカードを消費状態でエナジーにチャージする制約を無視し、未消費状態でチャージします」

 

 複合属性を、未消費状態で?

 ……いや、そっか。そういうことか。

 無属性のカードしか使ってこなかった関係で一瞬ピンと来なかったが、少し考えればその有用性は私にも理解できた。

 

 複合した属性を持つカードは強力な反面、制約が多い。エナジーにチャージする際に消費状態でチャージされるルールは、そんな制約の筆頭だ。

 加えて複数の属性が複合されているということは、その複合された属性すべてがエナジーにチャージされていなければ、カードそのものを使用できないということでもある。

 つまりデッキ構築の段階から、各属性の採用枚数を全体のバランスを考えて吟味する必要がある。

 さらにその時、属性のバランスを整えようと下手に複合した属性のカードを入れすぎてしまえば、毎ターン消費状態でエナジーをチャージしなければいけなくなるせいで、序中盤の動きが相手と比べて確実に遅くなってしまう。

 そうなれば速攻戦術によって轢き殺される未来が容易に想像がつくというものだ。

 逆に複合属性のカードを減らしてしまえば、偏った属性しか手札に来ず、強力なカードを使用できないまま手札で腐らせてしまう事態にも繋がってしまう。

 デッキに混ぜる属性の数が多くなればなるほど、これらの欠点は浮き彫りになる。

 属性の多さは戦術の幅広さとは言え、ただ考えなしに混ぜまくればいいわけではないのである。

 

 光属性を複合したカードを未消費状態でチャージできる特殊能力は、そういった複合属性特有の欠点をカバーすることに繋がる。

 加えて、ラフィエルのサーチカード*3を豊富に採用し、この特殊能力を安定して使っていけるデッキ構築であれば、特殊能力の存在を前提にして複合属性のカードの採用枚数を増やすこともできるだろう。

 そうなればデッキの総合的なカードパワーが上昇し、中盤戦以降の戦力が格段に跳ね上がる。

 一見地味にも思えるが、確実に強力な特殊能力だ。

 

「私はこれでターンエンド。そしてターンエンド時、あなたのインフィによって付与されたミクエルの効果が強制発動します。ミクエルのHPが-1000され、残りHPは1000に。さらに続けて『慈愛の施し』の効果が強制発動。ターンプレイヤー、つまり私のデッキの一番上から1枚目を消費状態でエナジーにチャージし、カードを1枚ドローします」

「あっ! 今、火属性がチャージされたよ!」

「厳しいわね……火属性も入ってるとなると、防御に振り切ったデッキとも限らない。『フルアクセル』による攻勢も警戒しなければいけないわ」

「会長の人も会長の人で、守った後でどう攻めるかの戦略があるはずだもんね。でも、メイ様ならきっと……!」

 

 エリア『ジャッジメント・ワールド』で私の動きを鈍らせながら、高いカードパワーを持つ複合属性のカードの連続使用で私を追い詰める……。

 今の時点で見えるノゾミの戦術はそれくらいだ。彼女がどんなリーサル*4プランを狙っているかは、まだわからない。

 ただ、私もノゾミもどちらも後半戦を重視したデッキ構築である以上、中盤を迎えた今、ここから先デュエルの展開は加速していく一方なことは確かだ。

 ノゾミが繰り出してくる戦術とその速度についていけなければ、彼女は自分のやりたい動きに終始してしまい、私が彼女のリーサルプランを見破る頃にはすべてが手遅れになっている危険もある。

 できるだけサーヴァントを場に残し、プレッシャーを与え続けていく必要があるだろう。

 

 

後攻4ターン目:無空メイ

光華ノゾミ (保有中の特殊能力)
ライフ:6Se:見習い天使ミクエル(A0/H1000)

Ar:慈愛の施し

Ar:ジャッジメント・ワールド

Se:【慈愛】の熾天使ラフィエル(A4000/H4000)

Ene:6(0)
手札:3

無空メイ (保有中の特殊能力)場を離れた虚構定理:1
ライフ:6Se:ハリボテ人形(A0/H500)

Se:無給の使用人アズリ(A1000/H2000)

Se:虚無龍の巫女インフィ(A1000/H1000)

Ene:4
手札:5→6

 

 

「……私のターン」

 

 ターン開始時のドローの前。デッキトップに手を置いた状態で手を止めて、私はこれからのことを思考する。

 

 ……私のデッキの純粋な攻撃性能は、残念ながらそれほど高くはない。

 ホムラの時は手札の枯渇という隙を突き、エミリアの時は盤面ロックというこちらに有利な状況を作り出すことで、どうにかトドメまで持っていけた。

 しかしそれらがなければ、どちらの勝負ももっと長引いていたはずだ。

 ノゾミのデッキは彼女たち二人よりも、さらに防御に偏っている。

 明確な隙はなく、リソースも尽きず、エミリアとの試合を見たというなら、おそらくは盤面ロックも警戒されている。

 つまり、ホムラやエミリアの時のような隙を突くというやり方では彼女にトドメを刺し切ることは難しい。

 彼女に勝つためには、こちらもこちらで相応の準備が必要になる。

 

 そしてそのために特に重要になるのが、この中盤戦だ。

 ノゾミのエリア『ジャッジメント・ワールド』の効果を躱しながら、ここから一気にこちらも場を離れた『虚構定理』の数を稼いでいく。

 

 ……けれどそれを実現するにはやはり、たったの1エナジーで莫大な利益をもたらしてくれるホロエルの存在が必要不可欠だ。

 序盤はどうにかなったけれど、私のデッキはあくまでホロエルを軸に組んでいる。

 ホロエルがいてくれなければ、私のデッキの力はどうしたって半減してしまう。

 

 もしもここでホロエルを引けなければ……引いたカードにもよるが、場合によっては1ターン分、私の動きが鈍ることになるだろう。

 そしてその1ターンの差が、ノゾミほどの強敵が相手では勝敗を分ける絶対的な要因になりかねない。

 

「メイちゃん……」

 

 ホムラが私の名前を心配そうに呼ぶ声が聞こえる。

 私はデッキトップに手を添えたまま、そっと瞼を閉じて、頭の中にホロエルの姿を思い浮かべた。

 

「……ねえ、ホロエル。私ね……あなたに聞いてほしいことがあるの」

 

 精一杯、心を込めてホロエルに呼びかける。

 

 ホロエルと一緒に過ごした九年間の中で、初めての感覚だった。

 私の呼びかけに、ホロエルが応えてくれるかどうかを不安に思うだなんて。

 でもそれは逆に言えば……私がただの一度も不安を覚えないくらい、彼女が今まで私に寄り添い続けてくれていた証明でもある。

 

 私はホロエルのことが大好きで、ホロエルも私のことを愛してくれて……。

 ……ううん。きっとそれは今も変わっていない。

 だけど私はいつの間にか、当たり前のように思い込んでしまっていたんだ。

 たとえ言葉を交わせなくても、いつだって私とホロエルは心を通じ合わせられてるんだって。

 ホロエルはこの先もずっと、なにも変わらず私の隣で笑っててくれるんだって。

 

 でも……違った。そうじゃなかった。

 

「……ごめんね、ホロエル。私、自分のことばっかりで気づけなかった……ホロエルが悩んでたこと。苦しんでたこと……」

 

 こうして今、私とホロエルの心が初めて違う方向に向いている事実に直面して……私はようやく思い知った。

 私もお父さんやお母さんと同じで、自分のことしか考えていなかったんだということを。

 

『その虚構なる天使が本当に心から無空さんの幸せを願っているというのであれば、なおさら私たちにその身を差し出すべきでしょう。そうすればかの教団は崩壊し、無空さんの明るく幸福な未来が約束されるのですから』

 

 ノゾミがあの言葉を口にした時、いったいホロエルがどんな顔をしていたか、私は知らない。

 大事な人なのに。誰よりも近くにいた人なのに……。

 どうして見てあげられなかったんだろう。どうして、彼女が悩んでいることに気づいてあげられなかったんだろう。

 ホロエルも私と同じで生きていて、同じようになにかに悩んで、苦しんで、時には泣きたい時だってあって……。

 なのに私はホロエルの気持ちを一方的にわかった気になって、彼女は私のそばにいることを選んでくれるはずだって勝手に思い込んで、彼女の心を見ようともしていなかった。

 ……それこそ、ホロエルの心が邪悪だと決めつけているノゾミと同じように。

 

 知ってたはずだ。

 ホロエルがどれだけ私のことを愛してくれてるかなんて。どれだけ本気で私の幸せを願ってくれてるかなんて。

 当たり前だなんて思っちゃいけなかったんだ。

 ホロエルが自分の人生を懸けてまで私を愛してくれていることを……九年もの間、ただの一度も暗い表情を見せず、笑顔だけを私に見せ続けてくれた彼女の献身を。

 

 虚構天使。ホロエルとアリエル。

 虚無の巫女。私。イサネ。

 教団の崩壊。幸福な未来。

 

「……ねえ、ホロエル。もしかしてあなたは……これ以上はもう、私のそばにいるべきじゃないって……そう思ってるの?」

 

 およそ九年前。虚構天使であるホロエルが離反しても、教団はほとんど健在のままだった。

 それはシーラ司教が当時の状況を口止めしたからというのも理由の一つではあるけど、より根本的な原因を挙げるなら、それはホロエルがまだ生きていたからだ。

 アリエルとホロエル。この2枚のカードが存在し続ける限り、教団が潰れることはない。

 そして教団が存在し続ける限り、彼らは私やイサネのような不幸を生み出し続けるだろう。

 

 今までは私が、一人じゃ生きられなかったから。ホロエルがいないとすぐ潰れちゃうような子どもだったから、そばにいてくれたけど。

 ホムラやエミリア、センカと出会って……私の世界は広がった。

 自分の意思で未来を望めるようになった。ホロエル以外にもたくさん、私を支えてくれる人ができた。

 だからもうじゅうぶんだって。自分は消えた方がいいんだって。

 そんな風に……。

 

「……」

 

 つくづく実感する。今までホロエルの苦しみを想像しようともしなかった私のバカさ加減を。

 

 私はただ、愛されてきただけだ。尽くされてきただけだ。

 ホロエルが私にしてくれたみたいに、私がホロエルの涙を拭ってあげられたことなんてない。

 ホロエルが私にしてくれたみたいに、私がホロエルを抱きしめてあげられたことなんてない。

 

 ……ごめんね、ホロエル。

 辛かったのは私だけじゃなかったのに……いつもいつも、私の悲しみを背負わせてばっかりで。

 

「……ねえ、ホロエル。このデュエルの前、私がホムラに言ったこと、覚えてる?」

 

 こんな情けない私の言葉が、あなたの心に届くのかはわからない。

 でも今は、拙くても伝えたい。

 私の気持ちを。私の言葉を。ただ全力で。

 

「好きなものも、嫌いなものも、熱も夢も目標も……ずっと考えようとしてこなかったんだって、私はそう言ったよね。でも……本当はちょっとだけ違うの」

 

 私が語りかけても、ホロエルは姿を見せてくれない。

 だけど彼女ならきっと私の話に耳を傾けてくれているはずだと信じて、私は語り続ける。

 

「朧気で……それを叶えるために、今はまだどうすればいいのかもわからないけど。夢とも言えない、妄想みたいなものだけど……小さな頃から抱いてた願望が、実は一個だけあるの」

 

 想起する。初めてホロエルに抱きしめられた、あの温もりの中で芽生えた欲望を。

 想起する。ホロエルが私のおねだりに目一杯応えてくれる、一日にたったの10秒だけの、私の至福の時間を。

 どこまでいっても、結局私は自分のことばっかりなんだなぁ、なんて自虐しながら。

 それでも、と。私は口を開いて、私だけの願望をホロエルに告げた。

 

「私はね、ホロエル――依り代なんてものがなくても……ホロエルが自分だけの体を持って、胸を張って生きていける世界が欲しい」

「――――」

「それで実体化できる時間なんて気にしないで、好きなだけあなたと触れ合ってみたい。好きなだけあなたと手を繋いでみたい。一緒に街を歩いてみたい。一緒のご飯を食べてみたい。そしてもし叶うのなら……一緒に学園にだって通ってみたい」

 

 想像するだけで笑みがこぼれる。そんな未来を私は夢想する。

 

「ホロエルは、どう思う? それは不可能だって……そう思う?」

「……」

「でもね。私がホロエル以外の誰かに受け入れてもらえることも、私からしてみれば、同じように不可能だって思ってたことだったの。ホロエル以外の誰かと笑い合うことも、普通の女の子みたいに過ごすことも……なのにあなたは、私が無理だって諦めてたそんな未来に……ホムラや、エミリアや、センカがいる場所まで、私のことを連れてきてくれた」

「……」

「だからね、ホロエル。今度はきっと私の番なんだ。今度は私があなたの手を引いて、あなたが不可能だって思う未来に連れていく。ホロエルほど上手くはできないかもしれないけど……」

「……」

「その途中で、もしもホロエルが悲しくなっちゃったり、苦しくなっちゃったりした時は……今度は私があなたの涙を拭ってあげるから。あなたのことを、ギュッて力強く抱きしめてあげるから。あなたが辛いなら、支えたい。力になりたい。あなたが抱え込んでたものを半分こにして、私も一緒に背負いたい」

「……」

「本物でも、偽物でも。人間でもソウルハート・サーヴァントでも。そんなこと知らない、関係ない。たとえ世界があなたを認めなくても……たとえ、世界中のすべてがあなたの敵になったとしても。私があなたのそばにいる。私があなたを肯定し続ける。あなたの温もりに満ちた心を、誰にも否定なんかさせない」

 

 ホロエル……どうか私のことを信じて。

 この先の未来で、私のこの想いが、この願いが。あなたの愛に負けないくらい強いんだってことを、証明してみせるから。

 

「一緒に行こう、ホロエル。この先も。あなたが私にそうしてくれたように……今度は私が、あなたを笑顔にしてみせるから」

 

 ……でも、全部終わったらさすがにちょっとお説教だからね。

 あなたがいない世界なんて、私にはもう考えられないんだから。

 あとそれから、私やあなたを守ろうと頑張ってくれたホムラやエミリア、センカにも、ちゃんと謝らなきゃだよ。

 皆が私だけじゃなく、ホロエルのことも同じように大事に思ってるなんてこと……ホロエルだってわかってたはずなのに。自分からデュエルに負けようとするだなんて、皆の気持ちへの最大の侮辱だよ。

 ……大丈夫。安心して。私も一緒に謝ってあげるから。

 それで目一杯叱られて、また皆で、楽しい思い出をたくさんたくさん作っていこう。

 

 ……もちろん、ホロエルも一緒にね。

 

「……私のターン――」

 

 私はデッキトップに置いていた手に、ぐっと力を入れる。

 そして大きく息を吸い込むと、胸いっぱいの想いを込めながら、そのカードを引き抜いた。

 

「――――ドローッ!!」

*1
『虚構天使ホロエル』の参考効果。

①『虚構定理』=条件:「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」が5以上。

②『アクセル』

③『ガード』

④場にある限り、このカードのコストは「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」と同じとして扱う。

⑤ATKとHPに「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」×1000を+する。

⑥「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」がX以上なら発動可能。以下の効果から1つを選択して適用する。(Xは指定された数)

・X=10:エリア「完全虚構証明」1枚を生成して場に出す。

・X=15:このカードを「???」に書き換える。

・X=20:???

⑦自分のターンエンド時に発動可能。カードを1枚引き、攻撃権を回復する。

*2
特定のデッキやカードに対してのみ高い効果を発揮するカードのこと

*3
特定のカードを手札に加える効果を持つカードのこと

*4
相手プレイヤーにトドメを刺し切ること

☆光属性を含む複合した属性を持つカードをエナジーにチャージする時、消費状態でチャージする制約を無視する。(【制約】:[複合属性]を無視し、未消費状態でチャージする)

☆エナジーを2消費して使用可能。お互いのプレイヤーはデッキの上から1枚目を消費状態でエナジーにチャージする。次の自分のターンスタート時まで、相手の場のすべての「ジャッジメント・ワールド」の効果を無効にする。(特殊能力を失っても無効状態は継続する)




カード制作裏話
・ジャッジメント・ワールド
掲示板世界民にはジャジワの略称で呼ばれている。コスト踏み倒しサーヴァント絶許エリア。ただし相手に抜け道となる特殊能力を自ら与えてしまううえ、相手の戦術によってはまったく刺さらないので、良くも悪くも環境次第と言ったところ。ミクエルやラフィエルの例を見るに、他の天使カードの効果で参照されることが多そうなので、自分の場にこれがあるということ自体の方が重要なのかもしれない。なお、コスト踏み倒しサーヴァントの動きが封じられてしまうのはあくまでお互い(自分も)なので注意が必要である(しかも抜け道となる特殊能力付与は相手にだけなので、自分はエリアの効果を能動的に無効にすることができない)。コストの重さを罪の重さに喩えることで、デュエル中延々とコストが上昇し続けるホロエルの罪が償いきれないほど深いということを暗に示しているらしい。ちなみにこの話が作中掲示板世界のアニメで放映された後、コストの重すぎるサーヴァントを指して「罪深い」と形容されることとなったのはまた別の話である。

・【慈愛】の熾天使ラフィエル
慈愛合戦開幕ヾ(*●Д●)ノ゙ 判明している限りでは、場にジャジワがあると2コストダウン。さらに召喚時には、光属性複合カードを未消費状態でチャージできるようになる特殊能力を付与してくれるようだ。カードパワーの高い多色カードを詰め込み過ぎて満足に動けず、なにもできずに轢き殺されるのは誰もが通った道…。しかしラフィエルがいればもう安心。ラフィエル登場以降は多色だろうとなにも気にせずエナジーにチャージしてストレスフリーにデュエルができる。なお、ラフィエル登場前に速攻で引き殺された場合は知りません( ˙꒳˙ )
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