可愛い銀髪美少女天使カードとして転生した私、マスターを導く   作:にゃっとう

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※前書き・ターン開始時の状況再通知
後攻4ターン目:無空メイ

光華ノゾミ (保有中の特殊能力)
ライフ:6Se:見習い天使ミクエル(A0/H1000)
Ar:慈愛の施し
Ar:ジャッジメント・ワールド
Se:【慈愛】の熾天使ラフィエル(A4000/H4000)
Ene:6(0)
手札:3

無空メイ (保有中の特殊能力)場を離れた虚構定理:1
ライフ:6Se:ハリボテ人形(A0/H500)
Se:無給の使用人アズリ(A1000/H2000)
Se:虚無龍の巫女インフィ(A1000/H1000)
Ene:4
手札:5→6

☆光属性を含む複合した属性を持つカードをエナジーにチャージする時、消費状態でチャージする制約を無視する。(【制約】:[複合属性]を無視し、未消費状態でチャージする)

☆エナジーを2消費して使用可能。お互いのプレイヤーはデッキの上から1枚目を消費状態でエナジーにチャージする。次の自分のターンスタート時まで、相手の場のすべての「ジャッジメント・ワールド」の効果を無効にする。(特殊能力を失っても無効状態は継続する)




48.あなたが私を愛してくれるのなら、私があなたの存在を肯定する

 ……引いたカードを確認した私は、胸の内にじんわりと広がっていく温もりに浸るように、そっと瞼を閉じた。

 いつまでもこの感覚に浸っていたい気持ちもあるが、今はデュエル中だ。あまりのんびりとはしていられない。

 私は名残惜しさを断ち切るように大きく息を吐くと、それまでホロエルとの対話に割いていた思考を現実に引き戻すように、ゆっくりと目を開く。

 そうして再びデュエルの感覚を研ぎ澄ませた私は、改めて対戦相手であるノゾミと相対する。

 

「ずいぶんと長いドローでしたね。お目当てのカードは引くことができましたか?」

 

 ただ黙して私の様子を眺めていたノゾミが、そんなことを問いかけてくる。

 

「どうかな」

「……どうやら自信に満ち溢れた様子。しかしいずれにしても、私のやることは変わりません。あなたがターンスタートを迎えたこの瞬間、私の場にいる『【慈愛】の熾天使ラフィエル』のさらなる効果が発動します!」

 

 デュエルの続きが始まる。

 雑念を断ち切り、私はただ目の前のデュエルに意識を集中させた。

 

【慈愛】の熾天使ラフィエル
コスト4 種別:天使 
属性:光/地/水 ATK 4000 HP 4000 

サーヴァント 

 - 効果 - 
【制約】:[複合属性]


〈※効果①~②は省略とする〉(省略された効果)

③???

 ↓

③相手のターンスタート時に強制発動(上限:同名/デュエル中に1回)。お互いのプレイヤーはデッキの上から2枚をエナジーにチャージし、カードを2枚引く。この時、相手のエナジーは消費状態でチャージされる。

 

 ラフィエルがふわりと宙に浮かび上がり、3対の翼を大きく広げる。

 すると神々しい光を帯びた羽根が、どこからともなく私とノゾミの頭上に舞い降りてくる。

 

「ラフィエルの効果。相手のターンスタートを迎えた時、ラフィエルはお互いのプレイヤーのデッキの上から2枚をエナジーにチャージさせ、さらにカードを2枚引かせます」

「また、私にも利益をもたらす効果……」

「ただし『【慈愛】の熾天使ラフィエル』のこの効果はデュエル中に1度しか使用できません。また、この効果で相手のエナジーにチャージされるカードは消費状態でチャージされます。私の方は通常のチャージと扱いは変わりませんが」

 

 ノゾミだけ通常のチャージと同様の扱い……ということはつまり、単属性であれば未消費状態でチャージされるが、運悪く複合属性のカードがエナジー送りになってしまった場合は、私と同じく消費状態でチャージされてしまうということだ。

 だけどノゾミは前のターン、ラフィエルの召喚時効果によって、光属性を複合しているカードに関してのみ消費状態でチャージする制約を無視するという特殊能力を獲得していたはずだ。

 『見習い天使ミクエル』、『慈愛の施し』、『ジャッジメント・ワールド』、『【慈愛】の熾天使ラフィエル』。

 ノゾミがこれまで場に出したカードは光属性単体か、光属性を複合しているカードのいずれかだった。

 ラフィエルの特殊能力を前提にデッキを組んでいることも踏まえると、彼女がデッキに採用している複合属性のカードはそのほぼすべてが光属性を含んでいるものと見て間違いない。

 そうなると……。

 

「……私は2枚デッキの上から2枚を消費状態でチャージ。2枚ドロー」

「同じくデッキの上から2枚をエナジーにチャージします。どちらも単属性、または光属性を含む複合カードであるため、未消費状態でのチャージです。そしてこちらもカードを2枚ドローします」

 

 予想通り、未消費状態でチャージされたか。

 これでノゾミはエナジーを使い切った状態から脱し、使用可能エナジーが0から2まで回復したことになる。

 

 自由にカードを使うことができるのは自分のターンだけなので、通常であれば、相手のターンにエナジーがあったところで意味はない。

 ただし、条件を満たせば相手のターンでも効果を発揮できる『Qアクション』のカードを手札に握っている場合は話が別だ。

 ノゾミのデッキは私と同じコントロールタイプのデッキ……となれば、相手の動きに反応してカウンター気味に効果を発揮できる『Qアクション』は間違いなく多めに投入されている。

 

 『Qアクション』は、その末尾の数字で使用に必要なコストが決まる。

 『Qアクション0』なら0エナジー、『Qアクション3』なら3エナジーと言った具合だ。

 この中でも特に有用なのはやはりエナジーを使い切った状態でも使用できる『Qアクション0』なのだが、『Qアクション0』はエナジーを必要としない反面、即座に相手の場に干渉できるような効果……言い換えるなら、相手の場のサーヴァントを直接的に除去するようなカードというものはほとんど存在していない。

 まったく存在しないというわけではないが、私が知る限り、その数少ない例外はそのすべてが使用に際して相当に厳しい条件が課されている。

 『Qアクション0』は攻められた側がアドバンテージを取り返すようなサポート効果が主であり、ライフカウンターを削りに行く時以外はあまり警戒する必要はないという認識が一般的だ。

 余りのエナジーだけで使用できる『Qアクション1』も、その傾向は強い。

 

 けれど……『Qアクション』の末尾の数字が2以上ともなると、緩い条件で盤面に干渉するようなカードもぽつぽつと出てくる。

 今のノゾミの使用可能エナジーは2。つまりこのターン、彼女はカードが指定する条件を満たしさえすれば『Qアクション2』が使える。

 このターンの動き……特に『Qアクション』の条件にありがちな、攻撃宣言やライフカウンターの破壊と言った行動は注意深く行っていく必要がある。

 

「うーん……それにしても、『慈愛の施し』*2と言い、今のラフィエルの効果と言い、メイちゃんにも恩恵のあるカードが多いけど……あの人、いったいなに考えてるんだろ」

 

 私たちのデュエルを見守っているホムラが訝しげに呟く。

 

「……悪いけど、ノゾミ先輩がどんなデュエルをするのかは私も詳しくはないのよね」

「エミリアさん、去年いっぱいは海外にいたんだもんね。わたしも中等部だから、会長の人がどう戦うのかはよく知らないなぁ……噂だけは耳に挟んだけど。学園最強がどうたらこうたらって」

 

 本来なら、こうして戦うことになる最悪の事態を想定し、ノゾミの過去のデュエルの記録を調べておくべきだったのだろう。

 しかし昨日は、ノゾミたちとの対談に向けた皆での話し合いを終えて、入浴などの身の回りのことを済ませた時点で、すでに日を跨ぎかねないほどに夜も遅くなっていた。

 いつどこで再び襲撃されるかわからないと言った状況も相まって、ノゾミのことを調べられるだけの時間が取れなかったのである。

 下手に無理をして 明日に差し支えたら本末転倒だ。

 だからできたことと言えば、せいぜいが二つと言ったところで、今日に備えて疲れを残さずに休めたことが一つ。

 そしてもう一つは……。

 私はデュエルガントレットに収まった自分のデッキを見下ろし、かすかに目を細める。

 

「……行くよ。まずは邪魔な『ガード』持ちを退かすことから。私は『虚無龍の巫女インフィ』で『見習い天使ミクエル』に攻撃」

「ミクエルは前のあなたのターンにインフィが付与した効果によって、ATKが0、HPが1000まで下がっています。インフィのATKは1000……これでは一方的に破壊されてしまいますね」

 

 ノゾミが『Qアクション』を使用するような様子はなく、通常通りに戦闘が行われて、ミクエルが破壊される。

 ノゾミが握っているカードは、攻撃に反応するタイプの『Qアクション』ではない……?

 ……いや、結論を出すのは早計か。

 

「しかし、これによってインフィの『ステルス』状態は解除されます。『ステルス』はその効果を持つサーヴァントが攻撃権を失った時に強制的に解除され、相手の効果や攻撃の対象に取られるようになります。また、攻撃権を回復しても『ステルス』状態が回復することはありません」

「構わない。続けて私は2エナジーで『死人に口無し』を詠唱する」

 

死人に口無し
コスト2 属性:無 

スペル 種別:虚数/アンデッド 

 - 効果 - 
①『Qアクション0』=条件:相手によって自分のライフカウンターが破壊された時。

②「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」を+1する。

③手札を1枚捨て、カードを1枚引く。コスト1以上のサーヴァントを捨てたなら、さらにサーヴァント「ハリボテ人形」1枚を生成して手札に加える。

 

「私の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数を+1する。さらに手札を1枚捨て、カードを1枚引く。この時、捨てたカードがコスト1以上のサーヴァントなら、『ハリボテ人形』を1枚生成して手札に加えられる。私はこの効果で『虚無龍ヴァニタス』を手札から捨てる」

「そのカードは存じておりますよ。コスト6の転生サーヴァントですね」

「これにより私は『ハリボテ人形』1枚を手札に加える」

 

 私の場にいる『虚無龍の巫女インフィ』は、転生素材にする時にコスト4として扱うことができる効果を持っている。

 そして転生サーヴァントである『虚無龍ヴァニタス』の転生素材の指定条件は、コスト4以上の無属性サーヴァントだ。

 このターンはエナジーが足りないため不可能だが、ヴァニタスを手札に取っておくことで、次のターンにインフィを素材にヴァニタスを転生召喚するという動きも考えられた。

 だけど今回、私はその動き方をするつもりはない。

 インフィの『ステルス』が解除されてしまうにもかかわらず、このタイミングでインフィに攻撃権を使わせたのも、端からそのつもりだったからだ。

 

 ノゾミの『【慈愛】の熾天使ラフィエル』の効果によってターンスタート時にカードを2枚引かせられたことで、私の手札は現在8枚にまで膨れ上がっている。

 これだけの手札があれば、次のターン、わざわざ6エナジーも払って『虚無龍ヴァニタス』を出すよりも、もっと効率の良い方法で『虚構定理』を溜めつつ盤面を作っていける。

 

「そして私は『無給の使用人アズリ』でライフカウンターに攻撃」

「……『Qアクション』は、その多くがライフカウンターの破壊をトリガーに効果を発揮することは無空さんもご存知のはず。あなたは私の『Qアクション』が怖くはないのですか?」

「1つでもいい。多少のリスクを負ってでも、今は早急にあなたのライフを破壊することが必要だと判断した。ただそれだけ。それよりあなたの方こそ、この攻撃を止めなくていいの?」

「……」

 

 防御が得意な光属性において、ライフカウンターへの攻撃を止める『Qアクション』として代表的なものに『制止の光』というカードがある。

 

制止の光
コストX 属性:光 

スペル 

 - 効果 - 
①『QアクションX』=条件:ライフカウンターへの攻撃時。(Xは攻撃中のサーヴァントのコストから-1した数。墓地に「制止の光」が2枚以上あるなら、-1ではなく-2)

②攻撃中なら、攻撃を停止させる。カードを1枚引く。

 

 この『制止の光』で相手の攻撃を止めるために必要とするエナジーは、攻撃中のサーヴァントのコストから-1した値だ。

 今攻撃を行っているアズリのコストは3。その-1ということは、2エナジーを支払えば『制止の光』でアズリの攻撃を停止させられるということになる。

 ノゾミの現在の使用可能エナジーは2……もしも『制止の光』を握っているのなら、ノゾミは問題なくこの攻撃を止めることが可能だ。

 そしてあくまで予想ではあるものの、今のこの状況、ノゾミの手札に『制止の光』があるのであれば、彼女はそれを迷いなく使ってくると私は見ている。

 

 果たして結果は……。

 

「……いいでしょう。ライフで受けます」

 

光華ノゾミ ライフ:6→5

 

 攻撃が通った――だったら!

 

「この瞬間、あなたのエリア『慈愛の施し』の効果が強制発動する! いずれかのプレイヤーのライフカウンターが破壊された時、そのエリアは強制的に破壊され、私のエナジーとライフカウンターを1ずつ回復させる……そうでしょ?」

「やはりそれが狙いでしたか。しかし、よろしいのですか? 破壊することでエナジーとライフカウンターの回復が得られるとは言え、『慈愛の施し』は各ターンエンドごとにターンプレイヤーに追加のエナジーチャージとドローをもたらすカード……その恩恵は私とあなたで平等です。あなたにとっても場に残しておくだけの価値はあったはずですが」

「とぼけなくていい。その平等な恩恵とやらがあなたのデッキの本質だって、とっくに私は見抜いてる。より正確に言うなら……私のエナジーチャージを必要以上に加速させること。それこそが、あなたのデッキがより大きな力を発揮するために必要な条件なんでしょ?」

「……ほう」

 

 私の一言に、ノゾミは感心したように呟いて鋭く眼を細める。

 一方で観客席の方では、ホムラが困惑に満ちた声を上げていた。

 

「相手にエナジーをチャージさせ続けることが、デッキが力を発揮する条件……? それなら今までの動きも納得だけど……でもだからって、お互いのプレイヤーに利益をもたらすカードなんか使い続けてたら、逆にそれを利用されちゃうって言うか……デュエルの後半でしか出せないはずの大型のエース級サーヴァントを急に出されちゃうってことにもなりかねないんじゃ?」

「……そうね。それに関しては、ホムラ。あなたの言う通りだわ」

 

 エミリアもまた顎に手を添えて難しそうな表情を浮かべている。

 

「自ら進んで相手にエナジーチャージの権利を与える。それはある意味、自分で自分の敗北の要因を作っているに等しいわ。いくらそうすることで自分が使えるカードの性能も高まっていくとしても、あまりにハイリスクな戦術と言わざるを得ない。よほど自分の実力に自信がない限りは、そんなデッキは使おうとすら思わないはずよ。そしてただ自信があるだけでは、増大する相手の力を制御しきれずに敗北を喫する……」

 

 エミリアの分析を聞いたセンカは、自分なりに咀嚼するように頭を捻らせる。

 

「じゃあ必要なのは、相手の全力を真っ向から叩き潰して、理不尽なまでの差を証明できるだけの絶対的な力……ってことなのかな?」

「――その通りです」

 

 センカが発した疑問に肯定の返事を返したのは、ホムラとエミリアのどちらでもなかった。

 彼女たちから少し離れた場所で同じようにデュエルを観戦していたイサネが声を発し、ホムラたち三人を一瞥して続ける。

 

「八年前のあの日から、お嬢様は(きた)るべき日に備え、血の滲むような修練を積み重ねてきました。対等な友人など求めず、子どもらしい遊びにも目もくれず……そして五年前、この学園の中等部に入学してすぐに、お嬢様は当時の生徒会長を打倒し、自らがその椅子に座りました。そうして今日に至るまで、あなたがたが言う絶対的な力を証明し続けてきたのです」

「中等部の一年で、当時の生徒会長をっ!? すご……」

「……さすがに尾ひれがついた噂だと思っていたのだけど、本当だったのね」

「む~……でも、メイ様の方が強いよ! 絶対!」

 

 三者三様の反応にイサネは目もくれず、過去を憂うような眼でノゾミを見つめている。

 そして当のノゾミは一段と警戒度を引き上げた様子で、私に問いを投げてくる。

 

「私が意図してあなたのエナジーチャージを加速させている。なぜそのような結論に至ったのか、お聞きしてもよろしいですか?」

「一番の理由は、あなたの場に展開されている『ジャッジメント・ワールド』*3の存在。そのエリアは、私のエナジーの最大値を参照して展開に必要なコストを下げる効果を持っていたから。だから私は、あなたのデッキには他にも同じように私のエナジーの最大値を参照するカードが入っていると踏んだ」

「なるほど。しかしそれだけでは、あくまで可能性の一つという程度でしょう。相手のエナジーチャージを加速させる行為には、当然ながら高いリスクがあります。普通なら、そんなことを意図して戦術に組み込もうなどとは考えないはずですが」

「もちろんそれだけじゃない。『ジャッジメント・ワールド』が持つ、各プレイヤーのエナジーの最大値よりも高いコストを持つサーヴァントの動きを止める効果……あれを最大限に活かしたいなら本来、できるだけ相手にエナジーチャージをさせない方がいいはずなの。今あなたがやってることとは真逆にね」

 

 なにせエナジーの最大値が、そのプレイヤーが使用するエース級サーヴァントのコスト以上になってしまった場合……『ジャッジメント・ワールド』はそのプレイヤーに対する一切の拘束力を失ってしまうのだから。

 逆に相手のエナジーの最大値が相手のエースのコストを下回っている状態なら、相手は不自由なまま戦うことを強いられて、特殊能力を使わざるを得ない状態に追い込まれることもあるだろう。

 そうなれば、形勢は『ジャッジメント・ワールド』の存在を前提としてデッキを組んでいる方へと徐々に傾いていく。

 

「なのにあなたはそんな『ジャッジメント・ワールド』が持つ利点をかなぐり捨ててまで、『慈愛の施し』と『【慈愛】の熾天使ラフィエル』……お互いに利益をもたらすカードを使って、無理矢理にでも私にエナジーチャージをさせようとしてきている。この状況、怪しむなって言う方が無理があるわ」

「……ふふっ。なるほど。これはもう言い逃れはできませんね。たった数枚のカードだけで、これほどまで正確に私の戦術を言い当てて見せるとは……やはりあなたは侮れませんね」

 

 ノゾミは私に向かって小さく微笑みかけた後、デュエルの再開だとばかりに手札のカード1枚をデュエルガントレットに読み込ませた。

 

「『無給の使用人アズリ』の攻撃によって私のライフカウンターが破壊されたこの瞬間、私は『Qアクション0』。『守護の導き』を詠唱します」

 

守護の導き
コスト2 属性:光 

スペル 種別:天使 

 - 効果 - 
①『Qアクション0』=条件:相手によって自分のライフカウンターが破壊された時。

②『Qアクション2』=条件:相手のターンエンド時。

③種別:天使を持つサーヴァントをランダムに2枚デッキから手札に加える。(同名カードは1枚まで)

 

「この効果で私は種別が天使のサーヴァントをランダムに2枚、デッキから手札に加えます。さらにその後、『慈愛の施し』が破壊された時の効果が適用され、あなたのエナジーとライフカウンターがそれぞれ1ずつ回復されます」

 

無空メイ ライフ:6→7

 

「私のデッキの性質を見抜いたことは賞賛に値します。しかし、いったいそれがなんだと言うのでしょう。私のデッキに眠る未知なる力を恐れ、あなたがエナジーをチャージしないのならば、彼我(ひが)の使用できるエナジーの差は開くばかりです。そうなれば、力で圧し潰すことも容易くなるというものです。だからと言ってあなたがその差を埋めるためにエナジーをチャージすれば、それは私の力にもなる……どちらに転んだとしても、私は構わないのですよ」

「どんなデッキにも弱点はある。あなたのそのデッキにも」

「ええ、その通りです。もちろん、無空さん……あなたのそのデッキにも」

 

 わずかの間、睨み合うように互いの視線が交錯する。

 それから私はすぐに視線を落とし、自分の手札に指をかけると、それを素早く場に繰り出した。

 

「私は3エナジーで『虚言癖の魔女』を召喚」

 

虚言癖の魔女
コスト3 種別:虚数/魔術 
属性:無 ATK 1000 HP 1000 

サーヴァント 

 - 効果 - 
①『虚構定理』=条件:墓地にスペルが3枚以上存在する。

②場に出た時に発動可能(上限:同名/1ターンに1回)。手札を好きな枚数選んでスペル「虚無」に書き換え、書き換えた数以下のコストを持つ墓地のスペル1枚を選択して墓地から詠唱する(書き換える対象にスペル「虚無」は選べない)。その後、詠唱したスペルを消滅させる。

③場を離れた時に発動可能。スペル「虚無」を1枚生成して手札に加える。

 

 魔女らしい三角帽子を深くかぶった陰気そうな女性が場に現れる。

 

「『虚言癖の魔女』の『虚構定理』の条件は墓地にスペルが3枚以上あること。今、私の墓地には『虚無の祝福』、『虚構再定義』、『死人に口無し』の3枚のスペルが存在する。よって効果は有効」

「低コストのスペルを上手く回していましたね」

「『虚言癖の魔女』の効果。場に出た時、手札を好きな枚数だけスペル『虚無』に書き換えられる。この効果で私は手札を1枚、『虚無』に書き換える。そしてその後、書き換えた枚数以下のコストを持つ墓地のスペル1枚を詠唱する」

 

 手札を1枚書き換えたため、コスト1以下のスペルを詠唱できる。

 

「私が詠唱するのはコスト1、『虚無の祝福』」

 

虚無の祝福
コスト1 属性:無 

スペル 種別:虚数 

 - 効果 - 
【制約】:[詠唱制限](上限:同名/1ターンに1回)


①3以下の数字を指定する。指定した数だけエナジーを回復する。次の自分のターンスタート時、指定した数だけエナジーを消費する。

②以下の効果から1つを選択して適用する。

・スペル「虚無」を2枚生成して手札に加える。

・「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」を+1する。

 

「その効果で私はエナジーを2回復。ただし次の自分のターンスタート時、私はこの効果で回復した値、2のエナジーを消費しなければならない。さらに追加の効果で『虚無』を2枚生成して手札に加えるか、私の場を離れた『虚構定理』の数を+1するかを選べる。私は+1する方を選択する」

「『虚無の祝福』のエナジーを回復させる効果を使った……ってことは、メイちゃん、このターン中に一気に場を離れた『虚構定理』の数を稼ぐつもりだね」

「これで無空さんの場を離れた『虚構定理』は3。ホロエルちゃんの『虚構定理』を満たすまで必要な数は、あと2ね」

「頑張れー! メイ様ーっ!」

 

 ノゾミにはまだ使用可能エナジーが2余っている。

 しかしインフィやアズリの攻撃に反応して『Qアクション2』を使用しなかった辺り、このターン中はそう神経質に警戒しなくても良さそうだ。

 互いのエナジーチャージを加速させる『慈愛の施し』はノゾミの戦術と非常にマッチしたエリアだった。可能ならノゾミもそれを破壊から守りたかったはずだ。

 だけどノゾミはそれをしなかった……いや、できなかった。

 つまり現時点の彼女は、私の攻撃を止めるような手段は持ち合わせていない。

 少なくとも、相手の攻撃に反応する類の『Qアクション』は握っていないと見ていいだろう。

 

「『虚言癖の魔女』の効果で詠唱したスペルは墓地から消滅する。墓地のスペルが2枚になったことで、魔女はその『虚構定理』を満たさなくなり、その攻撃と効果が封じられる。さらにターンエンド時に『虚構定理』の条件を満たしていないなら破壊される」

 

 私の場にいる陰気な魔女の格好をした女性が、見るからにしょんぼりと項垂れる。

 しかし、『虚言癖の魔女』は果たすべき役割をすでにじゅうぶん果たしてくれた。

 それに『アクセル』を持たず、転生サーヴァントでもない『虚言癖の魔女』は、元々場に出たばかりのこのターンには攻撃できない。攻撃ができなくなってもあまり関係はない。

 

「続けて私は0エナジーで『ハリボテ人形』を召喚」

 

ハリボテ人形
コスト0 種別:(無し) 
属性:無 ATK 0 HP 500 

サーヴァント 

 - 効果 - 
①『ガード』

 

「これは、『死人に口無し』の効果で手札に加えていたカードですか」

「そして1エナジーで『かじられた無花果(いちじく)』を詠唱する」

 

かじられた無花果
コスト1 属性:無 

スペル 種別:虚数 

 - 効果 - 
①自分の場のサーヴァントを2枚まで選択してもよい。選択したサーヴァントに【『虚構定理』=条件:手札にスペル「虚無」が存在する。】を付与する。その後、この効果で選択しなかった数だけスペル「虚無」を生成して手札に加える。

 

「私の場のサーヴァントを2体まで選んで、手札に『虚無』があることを条件とする『虚構定理』を付与する。私はこの効果で2体の『ハリボテ人形』を選択する」

「あなたはさきほど『虚言癖の魔女』の効果で手札を1枚『虚無』に書き換えていましたね。となれば、その2体の『ハリボテ人形』の効果も有効というわけですか」

「その通り。さらに私は1エナジーで『無償変換』を詠唱する」

 

無償変換
コスト1 属性:無 

スペル 種別:虚数 

 - 効果 - 
①自分の手札・場のカードを2枚消滅させ、消滅した数だけカードを引く。手札のカードのみを選択した場合、「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」を+1する。

 

「私の手札か場のカードを2枚消滅させて、消滅した数だけカードを引く。私が選択するのは私の場の『虚言癖の魔女』と、同じく場にいる『ハリボテ人形』のうちの1体。それらを消滅させ、私はカードを2枚ドロー。さらに『虚言癖の魔女』の場を離れた時の効果を発動し、『虚無』を1枚生成して手札に加える」

「『虚言癖の魔女』は元々『虚構定理』を持ってて、『ハリボテ人形』はさっきの『かじられた無花果』で『虚構定理』が付与されてたよね? ってことは……!」

「ええ。これで無空さんの場を離れた『虚構定理』の数は5になったわ。残りエナジーは0だけど、無空さんはまだこのターン中のエナジーチャージの権利を使っていない。エナジーチャージをすれば、無空さんの使用可能エナジーは1になる……つまり」

「つまりホロエルちゃんを出すなら、今この時しかないってことだね! やっちゃえメイ様ーっ!」

 

 皆の声援を聞きながら、私は、このターンの初めに引いたカードを見下ろす。

 ……行こう。一緒に。

 

「私はエナジーをチャージ。そして1エナジーを消費して……このサーヴァントを召喚する!」

 

 私のそばでずっと私を支え続けてくれた最愛のカードを、私は天高く掲げる。

 

「虚無より生誕せし慈愛の天使。あなたが私を愛してくれるのなら、私があなたの存在を肯定する。どうか私を導いて! ――『虚構天使ホロエル』!」

 

虚構天使ホロエル
コスト1 種別:虚数/天使 
属性:無 ATK 0 HP 0 

サーヴァント 

 - 効果 - 
①『虚構定理』=条件:「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」が5以上。

②『アクセル』

③『ガード』

④場にある限り、このカードのコストは「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」と同じとして扱う。

⑤ATKとHPに「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」×1000を+する。

⑥「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」がX以上なら発動可能。以下の効果から1つを選択して適用する。(Xは指定された数)

・X=10:エリア「完全虚構証明」1枚を生成して場に出す。

・X=15:このカードを「???」に書き換える。

・X=20:???

⑦自分のターンエンド時に発動可能。カードを1枚引き、攻撃権を回復する。

 

 どこからともなく理解不能な無数の数式が現れ、それが渦を巻くようにして一つの場所に集う。

 完璧で完全。本来存在し得ない偽りの天使が虚構され、崩壊した定理を基盤にこの世界に顕現する。

 

「来た! ホロエルちゃんだ!」

「よかったわ……ホロエルちゃん。無空さんの呼びかけに応えてくれたのね」

「頑張れー! ホロエルちゃーんっ!」

 

 場に現れた彼女に、いつものような元気はなかった。

 皆の応援を受けると、ホロエルは一瞬だけそちらに顔を向けた後、後ろめたそうに背を丸めて縮こまる。

 低い背丈も相まって、なんだかまるで、叱られるのを怖がる小さな子どもみたいだった。

 

「……」

 

 ……おずおずと言った様子で私の方に振り返ってくるホロエルに、いつもホロエルが私にそうしてくれていたように、私はただ微笑みかける。

 ホロエルはそれに少しだけ驚いたように目を見開くと、覚悟を決めたように拳を握り締めて、ノゾミたちの方に向き直った。

 そうして手の中に槍を召喚すると、いつものようにそれを振り回し、その切っ先をラフィエルへと向ける。

 

「出るものが出ましたね。『虚構天使ホロエル』……アリエルと対を成す、もう一人の虚構なる天使」

 

 ノゾミがホロエルを睨むように見据え、その目つきを険しくする。

 

「『虚構天使ホロエル』の『虚構定理』条件は、私の場を離れた『虚構定理』の数が5以上であること。その条件はクリアされている。そしてホロエルの効果! ホロエルのコストとステータスが、私の場を離れた『虚構定理』に応じて上昇する!」

「今のあなたの場を離れた『虚構定理』の数は5……」

「よってコストが5、ATKとHPが5000となる!」

 

 ノゾミの場の『ジャッジメント・ワールド』の常在効果*4によって、各プレイヤーのエナジーの最大値を上回るコストを持つサーヴァントは、その動きが完全に封じられてしまう。

 しかし今の私のエナジーの最大値は7。本来ならエナジーの数はもっと少なかったはずだが、ラフィエルの効果でエナジーチャージをさせられたことで増えている。

 ホロエルのコストは5なので、これなら問題なくホロエルの性能を発揮できる。

 

「さらにホロエルは『アクセル』を持っている。これにより場に出たターンでもサーヴァントへの攻撃が可能」

「くっ……」

「攻撃宣言! 私は『虚構天使ホロエル』で『【慈愛】の熾天使ラフィエル』を攻撃!」

 

 ホロエルのATKとHPは5000。そしてラフィエルのATKとHPは4000だ。

 どちらのステータスもラフィエルでは後一歩、ホロエルには及ばない。

 

 ラフィエルが両手から放つ光線を、ホロエルは真正面から槍で迎撃する。

 そのまま力づくで一直線にラフィエルに接近すると、ホロエルはラフィエルの両手を素早く回し蹴りで蹴飛ばし光線を明後日の方向へ向けさせた。

 そうしてできた一瞬の隙にホロエルがラフィエルの胴体を槍で一息に貫き、全身に罅が入ったラフィエルは爆散する。

 

「ラフィエル……!」

 

 戦闘完了。ホロエルのHPは1000残り、HPが0以下になったラフィエルは破壊された。

 

「ターンエンド。この瞬間、『無給の使用人アズリ』の効果。自分のターンエンド時、手札の『虚無』の枚数分だけエナジーを回復できる。現在、私の手札には『虚無』が2枚。よってエナジーを2回復する」

 

 これで『Qアクション2』までならノゾミのターン中でも使えるようになる。

 

「続けて『虚構天使ホロエル』の効果。自分のターンエンド時、カードを1枚引き、攻撃権を回復する。さらにホロエルは『ガード』を持っているから、これで次のターン、攻撃権を使った『ガード』も可能になる」

「メイちゃんが盤面を制した!」

「無空さんの場にはサーヴァントが4体。ノゾミ先輩は0。これで形勢は一気に無空さんに傾いたわ」

「『ジャッジメント・ワールド』も、会長の人がエナジーチャージさせてくれたからそんなに怖くないね。このまま押し切っちゃおう、メイ様!」

「……いいえ。残念ですが、そうはなりません」

 

 ラフィエルが破壊された直後は取り乱したような声を上げていたノゾミだったが、すぐに冷静さを取り戻すと、その声色を鋭いものに変えた。

 

「尊き天使に手をかけた者は、その罪の戒めを受けなくてはなりません。あなたがターンエンドを迎えたこの瞬間、私もカードを使用させていただきます。『Qアクション2』、スペル『咎戒(きゅうかい)』」

 

咎戒
コスト2 属性:光 

スペル 種別:天使 

 - 効果 - 
①『Qアクション2』=条件:相手のターンエンド時。

②ライフカウンターを1つ回復する。

③自分のライフカウンターが破壊されたターン、このスペルの『Aエフェクト』に必要なコストは-2される。

④『Aエフェクト2』=効果:相手の場のサーヴァント1枚を選択する。次の相手のターンスタート時まで、そのサーヴァントは攻撃権を回復できない。

 

「その効果で私のライフカウンターを1つ回復。さらに私のライフカウンターが破壊されたターン、このスペルの『A(アディショナル)エフェクト』に必要なコストが0になります」

 

光華ノゾミ ライフ:5→6

 

 どこからともなく出現した光の鎖がホロエルの四肢を縛りつけ、宙空に磔にする。

 ホロエルは脱出しようと苦しそうに藻掻いていたが、鎖が緩まる様子はなく、むしろより一層強くホロエルを締めつけた。

 

「ホロエルっ!」

「『Aエフェクト』。それはカードを使用する際に追加でエナジーを消費することで、さらなる効果を発揮する効果のことです。『咎戒』の『Aエフェクト』の効果対象に、私は『虚構天使ホロエル』を選択。この効果で選択されたサーヴァントは、次のあなたのターンスタート時まで攻撃権を回復できません。そしてこのカードはあなたのホロエルの発動効果に連鎖して詠唱しています」

「……連鎖された効果は、後から使われたカードの効果から適用していくのがルール。攻撃権を失っているホロエルは『咎戒』の効果で先に攻撃権の回復を封じられ、その後でホロエルのドローと攻撃権の回復の処理が入る……」

「二つの処理のうち、ドローは問題なく行えます。しかし『咎戒』の『Aエフェクト』により、『虚構天使ホロエル』は攻撃権を回復できなくなっています。よって攻撃権の回復は無効となり、ホロエルは攻撃権を失ったままです」

 

 ……このターン中、ずっと警戒していた『Qアクション2』。

 薄々予想はしていたが、やはりターンエンド時を条件に指定した『Qアクション』だったか。

 

 相手のターンでも条件さえ満たせば即座にカードを使用できる『Qアクション』の効果は確かに強力だ。

 だけどそれは逆に言えば、条件を満たさなければカードの使用ができない……相手や状況に依存する効果とも言える。

 たとえば相手の攻撃に反応する『Qアクション2』を握っていて、その使用のために敢えてエナジーを2残しておいたとしても……相手が攻撃を行ってくれなければ『Qアクション』を起動できず、そのままターンエンドまでされてしまえば、取っておいた2エナジーが丸ごと無駄になってしまう。

 そのたった2のエナジーの差が、勝敗を分ける要因にもなり得るだろう。

 だからこそ、末尾の数字が1以上の『Qアクション』を多く投入したコントロールデッキで重要視されるのが、相手のターンエンド時を条件とした『Qアクション』を持つカードを一定数入れることだった。

 

 相手の攻撃や行動に反応する『Qアクション』。

 そして、相手のターンエンド時を条件とする『Qアクション』。

 これら二種類を同時に握っておくことで、相手が望ましい行動を取ってくれたならば前者の『Qアクション』を使用し、想定通りにいかなかったなら後者の『Qアクション』を使用すると言った使い分けが可能になる。

 そうすれば残しておいたエナジーを無駄にすることなく、臨機応変な対応を取ることができる。

 

 相手にエナジーチャージを促すノゾミの戦術は、その性質上、受けに回ることが多いはずだ。

 であれば、相手の不意を突いて主導権を握らせない『Qアクション』の使いどころは特に重要な要素となる。

 デッキに投入された『Qアクション』の条件がバランス良く分配されていることは容易に想像がつくことだった。

 

「それと、念のためこちらにも言及しておきましょうか。さきほども言ったように、『咎戒』の攻撃権封じはあなたのターンスタート時まで持続します。そしてカード効果における"ターンスタート時まで"という文言は、ターンスタート時のドロー、エナジーの回復、攻撃権の回復の処理が終わった後で適用を終了します。つまり……」

「……次の私のターンスタート時まで攻撃権を回復できなくなっているホロエルは、ターンスタート時における攻撃権回復の処理も行えない」

「その通りです。さすがは無空さん。どうやらわざわざ説明する必要はなかったようです」

 

 これから始まるノゾミのターン中に『ガード』を行えないばかりではなく、次の私のターンでも攻撃を実行することができない……。

 

 ホロエルは1という低いコストと、コストに見合わない高いステータス、そして『アクセル』を駆使した盤面の処理能力を強みの一つとしている。

 だけどそんなホロエルの強みを今、『咎戒』で封じられた。

 

「無空さん。あなたはこのターン、『虚無の祝福』の効果でエナジーを2回復していましたね。しかしあのスペルによるエナジーの回復には、非常に重いデメリットが付随しています。それは次のあなたのターンスタート時、あなたは回復した値と同じだけのエナジーを消費してしまうというものです」

「……」

「元々はその隙を、『虚構天使ホロエル』のコストパフォーマンスの良さを活かした戦術でカバーするつもりだったのでしょう。自爆特攻と蘇生を活かした連続攻撃……それにより次のターンに私が作る盤面を処理するつもりだったのだと私は予測しています。しかし今、あなたが描くその未来図は『咎戒』によって瓦解しました。攻撃権を奪われてしまえば、自滅を狙った攻撃そのものが不可能となります。そしてあなたが自らの場のカードを破壊したり、手札に戻すカードを所持していないことも確認済みです。あなたにできることは、せいぜいが自分のカードを消滅させることだけ……つまり、あなたは『虚構天使ホロエル』を一度場から退かし、出し直すと言ったこともできません」

 

 ……癪だが、ノゾミの見解は当たっている。

 破壊は闇属性の領分だ。そして手札に戻す効果は風属性の領分に当たる。

 無属性にも同様の効果を持ったカードは存在するものの、しょせんは出来の悪い真似事に過ぎない。

 この状況で器用に都合よく、ホロエルを出し直すことを可能にする効果を持ったカードは持ち合わせていなかった。

 

「『ジャッジメント・ワールド』に気を取られ過ぎましたね。私にとってエリアの効果だけが、『虚構天使ホロエル』の動きを止める手段というわけではないのです」

「……だとしても、今の時点で盤面において優勢なのは私。その事実は覆らない」

「そうですね。それについては否定しません。しかしこの状況であれば、打てる手はいくらでもあるというものです。今の私のエナジーの最大値は8、チャージをすれば9にもなります。そしてあなたのエナジーの最大値は7……それに応じ、私のデッキの力もまた増大します」

 

 ……やはり、ノゾミは手強い。

 同じコントロールデッキの使い手というだけあって、デュエルの些細な状況から私の思考を的確に読んで、その裏をかかんとしてくる。

 ここから先は一瞬の油断が命取りだ。

 様々な可能性を考え続けなければ、通常のデュエルであればミスとも言えない一手すら致命的になりかねない。

 

「本番はここからです。行きますよ、無空さん。私のターン――ドロー」

 

 

先攻5ターン目:光華ノゾミ

光華ノゾミ (保有中の特殊能力)
ライフ:6Ar:ジャッジメント・ワールド
Ene:8
手札:5→6

無空メイ (保有中の特殊能力)場を離れた虚構定理:5
ライフ:7Se:ハリボテ人形(A0/H500)

Se:無給の使用人アズリ(A1000/H2000)

Se:虚無龍の巫女インフィ(A1000/H1000)

Se:虚構天使ホロエル(A5000/H1000)

Ene:7(2)
手札:7

①【手札で有効】自分の場にエリア「ジャッジメント・ワールド」があるなら、このサーヴァントを召喚するために必要なコストは-2される。

②召喚時に発動可能。プレイヤーはデュエル中永続する以下の特殊能力を得る。(同じ特殊能力は重複して得られない)

☆光属性を含む複合した属性を持つカードをエナジーにチャージする時、消費状態でチャージする制約を無視する。(【制約】:[複合属性]を無視し、未消費状態でチャージする)

*2
『慈愛の施し』の参考効果。

①各ターンエンド時に強制発動。ターンプレイヤーはデッキの上から1枚目を消費状態でエナジーにチャージし、カードを1枚引く。

②いずれかのプレイヤーのライフカウンターが破壊された時に強制発動。このエリアを破壊する。

③破壊された時に強制発動。相手はエナジーを1回復し、ライフカウンターを1つ回復する。

*3
『ジャッジメント・ワールド』の参考効果。

①【手札で有効】このエリアを展開するために必要なコストは-Xされる。(Xは相手のエナジーの最大値の半分の数。端数切り捨て)

②各プレイヤーのエナジーの最大値よりも高いコストを持つ場のサーヴァントは攻撃ができず、『ガード』ができず、攻撃権を回復できず、発動効果も使用できない。

③場にある限り、相手プレイヤーに以下の特殊能力を付与する。(同じ特殊能力は重複して得られない)

☆エナジーを2消費して使用可能。お互いのプレイヤーはデッキの上から1枚目を消費状態でエナジーにチャージする。次の自分のターンスタート時まで、相手の場のすべての「ジャッジメント・ワールド」の効果を無効にする。(特殊能力を失っても無効状態は継続する)

*4
場にある限り適用され続ける効果のこと

☆光属性を含む複合した属性を持つカードをエナジーにチャージする時、消費状態でチャージする制約を無視する。(【制約】:[複合属性]を無視し、未消費状態でチャージする)

☆エナジーを2消費して使用可能。お互いのプレイヤーはデッキの上から1枚目を消費状態でエナジーにチャージする。次の自分のターンスタート時まで、相手の場のすべての「ジャッジメント・ワールド」の効果を無効にする。(特殊能力を失っても無効状態は継続する)




カード制作裏話
・【慈愛】の熾天使ラフィエル
デュエル中に一度だけ相手のターンスタート時にお互いのプレイヤーに2エネチャージと2ドローをさせてくれる効果が判明。相手にもエナジーチャージをさせてしまうことは悩ましいが、相手のエナジーは必ず消費状態でチャージされるため、チャージされた2枚分のエナジーのアドバンテージを自分が先に利用できる点は紛れもない利点。召喚時効果の光属性を複合したカードを未消費状態でチャージできる特殊能力付与も相まって、光属性複合デッキのインフラと言っても過言ではないかもしれない。特殊能力付与と2エネチャージ&2ドローを済ませた以降のラフィエルは2枚目以降も含めてほとんどバニラ(なんの効果も持たないカード)に等しくなるが、これはラフィエルが大半の力を失ったことを再現しているつもりである( *¯ ꒳¯*)

・ジャッジメント・ワールド
作中でも言われていたが、実のところラフィエルとはそこまで相性が良いわけではない。本気でジャジワを活かしたいなら、一部の天使カード群にある相手のエナジーの最大値参照を完全に無視し、ジャジワを中心に据えたメタビート構築にでもした方がジャジワの真価を発揮できる。ラフィエルもラフィエルで別にジャジワが必須というわけでもないので、ジャジワを中心としたメタデッキ・ラフィエルをインフラに据えたランプ・両方を採用した天使デッキ等、この2枚をどうするかというだけでもデッキの方向性は分かれる。こういったカード同士のシナジーの微妙な噛み合わなさが結構味があって好きだったりする。

・死人に口無し
シンプルに使いやすいコスト2スペル。1枚捨て1ドローかつ虚構+1で、コスト1以上のサーヴァントを捨てればハリボテ人形を手札に加えられるため実質的な手札消費が0になる。Qアク0を持ってるのも偉い。ヴァニタスのような手札から出すには使いにくいカードが来てしまっても捨てられるのがとても良い。ただしハリボテを手札に加える条件はコスト1以上のサーヴァントを捨てることなので、スペルやコスト0のハリボテを捨てても新たなハリボテは手札に加わらない。当初は使いやすさを重視して虚無を捨ててもハリボテを手札に加えられるようにするつもりだったが、カード名の「死人」を「サーヴァント」にあてはめた効果にしたかったのでボツにした。割と良い調整のカードになったんじゃないかと思う。

・制止の光
イサネがセンカちゃん相手に3枚も使ってみせた例のアレ。今回は会長の手札にはなかった。とは言え、メイちゃんのようなコントロールデッキ相手では手札に取っておく価値もあまりない。

・守護の導き
発揮する効果自体はシンプルな天使2枚ランダムサーチだが、特筆すべきはライフカウンターの破壊と相手のターンエンド時という2種類のQアクションを持っていること。これにより柔軟性の高い対応が可能。ラフィエルとも相性が良く、相手のターンスタート時にラフィエルが効果を発揮して回復した2エナジーを、ターンエンド時Qアクション2で使うことで無駄のないエナジー使用ができる。ラフィエルを採用した天使デッキならとりあえず入れておいて損はない。

・虚言癖の魔女
本当のことを言っているのに誰にも信じてもらえない孤独な魔女。手札を好きなだけ虚無に書き換え、書き換えた数以下のコストのスペルを墓地から詠唱できる効果を持つ。書き換えられる手札の枚数に制限がないので、虚言癖の魔女含めて手札が上限の9枚あれば、最大でコスト8までのスペルを踏み倒せる(もっとも、そんなことしたら手札が全部虚無虚無プリンになってその後の展開が一切できなくなるが(>︿<。))。さらに詠唱できるスペルの属性指定もないのでどんな属性のスペルでも詠唱できる。手札を書き換えた後の虚無の使い道を見出せるなら無属性デッキ以外でも採用が検討できる汎用札としてデザインした。なお、ループに利用される未来しか見えなかったのでターン1制限をつけた。ループ許すまじ。詠唱した後に詠唱したスペルが消えるのは、誰にも信じてもらえない(=魔女が言及したモノが消えている)フレーバーを再現している。

・虚無の祝福
作中でもちょろっと言われていたが、本来はこれで生じてしまう隙を低コスト高スペックなホロエルでカバーするというデザインになっている。

・ハリボテ人形
ステータスは貧弱極まりないが、ガード持ちの0コストというだけで普通に強い。シンプルなカードはシンプルに強いの法則。

・かじられた無花果
自分の場のサーヴァント2体までに虚構定理を付与し、付与しなかった数だけ虚無を手札に加えられる。無花果(虚無)を2体が食べるとなにも残らず、1体なら虚無1枚分だけ残り、誰も食べなかったなら虚無2枚分が残ると言ったイメージ。

・無償変換
無償返還をもじったカード名のカード。場に出せる最大数に制限のあるDCGにおいて、いらなくなった場のカードを掃除してドローに変換できるのは素直に便利である。

・虚構天使ホロエル
一度はメイちゃんのそばを離れた方がいいかもしれないとも悩んだが、ホロエルもなんだかんだで本当はメイちゃんのそばにいたかった。自分の存在を胸を張って肯定することはまだできないものの、それでもメイちゃんが望んでくれるなら、メイちゃんのために槍を振るうと決意した。なお、自分から負けようとしてしまっていた件に関して「叱られなくてよかった~…」と内心安堵しているのだが、全部終わった後でお説教することが皆の中ですでに決定事項と化していることをホロエルはまだ知らない。

・咎戒
ライフの破壊に応じてAエフェクトに必要なコストが0になるライフ回復スペル。下がるのがQアク側ではなくAエフェクトの方なので、どう足掻いても2エナジーは支払わなければならない。性能が高いカードばかりでもなんなので、使おうと思えば普通に使えるけどまあ使わないと言った微妙な性能のノーマルスペルをイメージしてデザインしたらこうなった次第。ライフカウンターの回復は基本的に2コスト以上支払わなければできないようにするつもりである。
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