可愛い銀髪美少女天使カードとして転生した私、マスターを導く 作:にゃっとう
「――これが……私がかつてかの教団で経験した出来事。そこで遭遇した黒き死の風の脅威。私の心の内側にあった、憤怒と憎悪の原点です」
ノゾミが独白を終えた後、保健室には重苦しい沈黙が訪れていた。
彼女は言葉通り、今のノゾミという人格を構成するに至った経緯を余すことなく話してくれた。
光華という名家に産まれ、人々を守ることを使命として教育を受けてきたこと。
人形のように無感情に生きていた中で、イサネやラフィエルとの出会いを経て、初めて幸せの温もりを実感したこと。
けれどそんな安らかな日常は、虚無の教団ヌルが起こした事件に巻き込まれたことで唐突に終わりを迎えてしまったこと……。
「……話してくださってありがとうございます。ノゾミ先輩」
「お礼を言われるようなことではありません。私はあなたがたに、取り返しのつかないことをしようとしてしまったのですから。すべてを打ち明けることは……私が果たさなければならない責任の一つです」
エミリアの言葉にふるふると首を左右に振って、ノゾミは悔恨を滲ませた様子で顔を俯かせた。
そんな彼女を見つめながら、私――無空メイは思考する。
彼女という人間の本質は、いったいなんなのだろうかと。
過去の出来事を話す節々で、彼女は語っていた。自分には責任があると。
人々を守る責任。記憶を失ったイサネを守る責任。
そして……アリエルとシーラを討つ責任。
果たさなければならない数々の重責が、彼女の足を前へと進め続けさせてきたのだと。
彼女が言う責任というものは……正直、私にはよくわからない。
ホムラやエミリア、センカと出会うまで、私はホロエルと二人だけで過ごしてきた。自分が生きていくことだけで精一杯だったから。
でも……責任の重さはわからなくても、孤独の辛さは理解しているつもりだ。
私は両親に愛されたかった。二人に愛されたくて必死だった。
教団に入ってからは、お父さんもお母さんも優しくなって、その夢が叶ったと思ったんだ。
だけど結局……二人が愛していたものは自分自身だけだった。
私は虚無の天使の器たる巫女として選ばれ、私という存在そのものが消えることを望まれた。
自分を形作ってきた世界のすべてが敵に回り……私はあの時、世界で独りぼっちになったんだ。
ホロエルが手を差し伸べてくれなかったら……今の私は存在していない。
「皆様。どうか……どうかお嬢様のことを、許してくださいませんか?」
静寂を破り、深々と頭を下げたのはイサネだ。
「お嬢様はもう、ホロエルさんのことを憎んでなどいません。むしろ、ホロエルさんにとても感謝しているのです」
「感謝? ノゾミがホロエルに?」
「はい。そしてそれは……私も同じです。ホロエルさんのおかげで、私は自分が本当にやるべきだったことに気づかせていただいたのですから」
今度はイサネが自らの心の内を語り始める。
それは二日前に行われた、私とノゾミのデュエルの後。
私たちがデュエルフィールドを立ち去った後の出来事のようだった。
『……イサ、ネ……私は……間違っていたのでしょうか……?』
『お嬢様……』
『虚構天使は、倒さなければならない悪で……私はずっと、そのために努力を……でも……でも、最後に彼女が向けてくれた笑みは……あの悲しい笑顔は、あの子が記憶を失う寸前に私が向けてくれたものと、同じ……だとすれば、私がしでかしたことは……』
デュエルフィールドで膝をつき、わなわなと震える両手で顔を覆い隠すノゾミ。
思考がグチャグチャに混濁し、自分がなにをすべきなのかわからなくなってしまった彼女の姿を見て……イサネもまた改めて自分の在り方を見つめ直したらしい。
どうして自分は今まで、ノゾミのそばに居続けてきたのか。
自分が心から望んでいることは……いったいなんなのだろうかと。
『……お嬢様。少し、私の話を聞いていただけませんか?』
『イサネ……?』
『お嬢様は、私が虚構天使のことを恨んでいるのだと、そう思っていらっしゃるのかもしれません。私の幼少の記憶を奪い、その人生を辛く険しいものにした彼らを憎んでいるのだろうと。だけど……本当は違うのです』
『違う……とは、どういうことですか……?』
ノゾミが涙で濡れた瞳を瞬かせて問いかける。
イサネは自分の気持ちを打ち明けるように胸の前に手を当てた。
『私はお嬢様が教えてくれたアリエルとシーラのことを、よく知りません。だから私は最初から、誰も恨んでなどいないのです』
『……だとしたら……あなたはどうしてあの日、ショッピングセンターで無空さんたちに襲撃を仕掛けたのですか……? 私の指示を無視して、大勢の関係のない人たちまで巻き込んで……』
『それは……夢を、見たからです』
『夢……ですか?』
イサネは自分の心象風景をありありと思い出す。
『お嬢様に生きることを肯定してもらえた、あの日から……同じ夢を見るんです。顔のわからない一人の小さな女の子と一緒に、花壇に種を植えて、育てていく夢を』
『っ――その記憶は……まさか……』
『私は……いえ。私とよく似た誰かは、隣で笑ってくれる、その子の笑顔が大好きでした。その子の純粋で、心の底から嬉しそうな微笑みを見るだけで……誰かに仕えるためだけに生まれてきた自分の人生が、まるで光り輝く華のように鮮やかに感じられたのです』
イサネは膝をつくと、目を見開いているノゾミの頬にそっと手を伸ばした。
『私はただ……お嬢様の笑顔を見てみたかったんです。私の中にある、私とよく似た彼女の記憶はひどく断片的なもので……お嬢様の笑顔が好きだった気持ちは覚えていても、お嬢様が見せてくれた笑顔そのものは忘れてしまっていました。だからいつの日か、お嬢様が憎む教団を滅ぼし、その背負っている重荷を手放せる日が来たならば、その時こそお嬢様は笑ってくれるはずだと……そう思ったのです』
『私、の……私の、ために……?』
『……ですが、私はやり方を間違えてしまいました。誰かを傷つけることで得る笑顔など、私が本当に見たかったものではなかったのだと……早々に気づくべきだったのです』
――自分がされて嫌だったことを、人にしちゃいけない……そんな当たり前のこと。
――でもそんな当たり前が、ホロエルにとっては大切な、どうしても譲れない一線なの。
『……痛みを振り撒いた先には涙しかないことを、ホロエルさんは知っていました。ホロエルさんがお嬢様に悲しく笑いかけたあの時……彼女は私たちのことを我がことのように共感して、同じ痛みを抱え込もうとしてくれているのだとわかりました』
『……私も……感じました。私を見る、あの虚構天使の……いえ。ホロエルさんの目に……怒りや憎しみと言った感情は、微塵もありませんでした。あれだけの中傷を受け、存在そのものすら否定されたというのに……彼女はただ純粋に、私のことを……』
ノゾミの表情がくしゃりと歪み、ポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちる。
『お嬢様。私はあの時、ようやく自分の愚かさに気がつくことができたのです』
『イサネ……』
『お嬢様の笑顔を見るために、私はあのような手段を取るべきではありませんでした。ホロエルさんが無空さんに、身を挺してでも優しさというものがなんなのかを教えたように……私もまた誰よりも真っ先にお嬢様に意見し、逆らうべきだったのです。他でもない、お嬢様のただ一人の味方として……』
『……違います、イサネ。愚かだったのは……間違って、いたのは……笑顔も幸せも、遠ざけて……あなたの苦しみを見ようともしなかった……私の方です。自分の間違いに向き合おうともしなかった、私の……』
……イサネはそこまでを語ると、再び私たちへと向き直った。
その瞳に宿っているのはノゾミと同じ、懺悔と謝罪の色だ。
「改めて……この度は私たちが引き起こした数々の騒動のせいで、大変ご迷惑をおかけしました。謝って済む問題ではないと存じておりますが……それでもどうか、お嬢様のことを許してあげてほしいのです。すべては私が未熟で、お嬢様を止めることができなかったがゆえに起きたことなのですから……」
「っ、やめてくださいイサネ! 許されずとも……たとえ憎まれるとしても、それらは私が負うべき十字架であり責任です! 私の……他でもない私が、果たさなければならない――」
「私はもうお嬢様に責任なんてものを背負ってほしくありません!」
「っ……!?」
イサネの悲痛な声が保健室に響き、ノゾミは一瞬息を呑んだ。
ノゾミの瞳に映るのは、今まで見たことがないほどの激情をあらわにする従者の姿だ。
「お嬢様がなにもかもを背負う必要はないんです。光華の使命も、私とよく似た彼女への弔いも……怒りも憎しみも、復讐だって! ……全部、投げ捨ててしまったっていいんです」
「イサネ……」
「だってお嬢様は、たった9歳の頃からずっと……自分らしく生きられる時間のすべてを犠牲にして、がむしゃらに戦い続けてこられたんですから」
イサネは敬愛する主人の手を、両手でそっと包み込んだ。
「それでも背負うとおっしゃるのなら……これからは、私も一緒に背負います。お嬢様が私に新しい人生を与えてくれたように、お嬢様の背中に乗せられた重荷を肩代わりしたいんです。きっとそうすることだけが、今の私がお嬢様にしてあげられる唯一のことですから……」
「イサ、ネ……っ……私、は……」
……それからノゾミとイサネは互いに悲しげに瞼を伏せたまま、どちらも言葉を発さなくなった。
静寂が保健室を支配する。私たちもまた、彼女たちにどう声をかけるべきかを迷っていた。
「……どうするんですか? メイ様」
ふと、囁くような問いかけが降りかかる。
見れば、私の身長に合わせるように背伸びをしたセンカが、耳元に顔を寄せてきていた。
私は間を置かずに答える。
「私の答えは、とっくに決まってる」
「……それってもしかして、わたしが考えてることと同じだったりします?」
センカの視線を追う。
彼女の視線の先にいたのは、ホロエルだ。
ノゾミとイサネの話に聞き入った彼女は、瞬き一つせず二人のことをジッと見つめている。
その眼差しは、いつか彼女が初めて私のことを抱きしめてくれた時のものとよく似ていた。
誰かの幸せを……笑顔を願う。ホロエルの優しさが滲み出た、暖かな眼差しだ。
「……うん。きっと同じ」
「でも、ホロエルちゃんはいいとしても……メイ様はそれでいいんですか? だってあの会長の人は、ホロエルちゃんのことをあんなに……」
「今のあの二人なら、ホロエルに同じことは言わないはず。それに……センカだって言ってたでしょ? 私とホロエルが許すまでは許さないって」
「えっと……それがどうかしたんですか?」
「私とホロエルが許すまで……そう。センカだって巻き込まれた側の一人なのに、初めから自分のことなんて勘定に入れてなかった。他の誰かのことを、私やホロエルのことを思ってた」
私はセンカに向き直ると、彼女の無垢な瞳をまっすぐに見つめた。
「センカ。あなたは自分のことよりも、自分が大切に想う人を優先できる人。自分じゃない誰かを心から愛することができる人なの」
「へ? ……わ、わたしがですか?」
ポカンと呆けたのち、センカはポッと火が出たみたいに顔を赤くする。
「そしてそれは、ホムラもエミリアも……ノゾミやイサネだって、きっと同じなの。目の前にあるかけがえのないもののために、失ってしまった大切なもののために、自分のことを蔑ろにしてでも頑張れる人たち。ノゾミの中にある憤怒も、憎悪も……元をたどればこの感情に行きつくんだと思う。深い愛情……それがノゾミという人間を形作るものの本質なんだ」
「メイ様……」
「……それに……私だって、もしもホロエルを失ってしまったら……その原因を作ったものに対して、憎悪を抱かない自信がないから」
見方を変えれば、いわばノゾミはもう一人の私とも言えるのかもしれない。
私もまた一歩間違えれば、彼女のように復讐の炎に身を焦がしていたかもしれないのだから。
「だから、私はもういいの。思うところがないとは言わないけど……私はなにも失ったわけでもなくて、私が欲しいと願ったものは全部、私のすぐそばにあるから」
「……そっか。わかりました! メイ様がそれでいいなら、私も同じ気持ちです」
「うん。ありがとう、センカ」
私はセンカと頷き合うと、ノゾミとイサネのもとへと踏み出した。
二人の正面に立つ。互いの視線が交錯し……私は大きく息を吸って、彼女たちに告げる。
「ノゾミ。イサネ。あなたたちに同情の余地があることは認める。二人が負った憎しみや悲しみの理由も理解した。でも、だからと言ってあなたたちのしたことが簡単に許されるわけじゃない」
「……はい。わかっているつもりです」
「誰かを傷つけることの重さは、あなたが誰よりも知っていたはず。なのに、あなたはホロエルを傷つけた。私たちの言葉に耳を貸そうともせず、その傲慢な怒りで一方的に断罪しようとした」
「……弁解の余地もございません。すべては、私の浅慮と驕りが招いたことです……」
「お嬢様……」
ノゾミが唇を噛みしめながら頷く。
その隣でイサネもまた、悲嘆に暮れるように瞼を伏せていた。
「……でも」
私はそこで一度言葉を区切ると、私たちのやり取りを不安げに静観していたホロエルへと視線を移した。
「誰よりも深く傷つけられた当の本人が……ホロエルが許すって言うなら、私もあなたたちのことを許そうと思う」
「っ……ホロエルさんに、私たちの判決を委ねるというのですか……?」
「ノゾミ、イサネ。あなたたちがどんな裁きを受け入れても構わないというのなら、私はこうしたい。あなたたちにもう一度、面と向かってホロエルに謝ってほしい。あなたたちがこれまで抱き続けてきた虚構天使への偏見と憤怒を捨てて……ホロエルという一人の女の子の心を、きちんと正面から受け止めてほしい」
「ホロエルさんの、心を……」
ノゾミとイサネの視線がホロエルへと注がれる。
私が下した判断に、ホロエルはどこか驚いたように私を見上げていた。
そんな彼女に私はなにも言わず、ただ微笑んで小さく頷きを返す。
ホロエルは唇をキュッと引き結ぶと、こくりと首を縦に振った。
彼女がノゾミとイサネの方へと向き直ると、二人は同時に頭を垂れた。
「ホロエルさん……私はあなたに謝らなければならないことがたくさんあります。あなたがどれほどの想いで無空さんとともにあるのかも知らず、その深い絆を引き裂こうとしてしまったこと。的外れな憎しみをぶつけてしまったこと。尊厳を踏みにじるような言葉を浴びせてしまったこと……そのどれもが、取り返しのつかない過ちだと理解しているつもりです」
「私も、お嬢様と同じです。私は自分の愚かさから、あなたや無空さんに刃を向けてしまいました。その結果、どれほどの人々を傷つけたか……今ならその重さがよくわかります」
「……けれどもし……もしもあなたが、この浅ましい罪人の言葉に耳を傾けていただけるのであれば……どうか言わせていただきたいのです。申しわけありませんでした……と」
二人の懺悔の言葉が床に落ちる。
ホロエルは二人に歩み寄ると、ためらいなく彼女たちの手を取った。
「ホロエル、さん……?」
一日にたったの10秒間しかできない実体化。
それを迷いなく行使し、頭を下げ続ける二人を両腕で優しく抱き寄せる。
胸の中に抱き留められた二人は、戸惑いがちにホロエルを見上げた。
そんな彼女たちにホロエルはただ、慈愛に満ちた柔らかな微笑みを向ける。
――私はなにも怒ってないから、気にしないで。
――二人で支え合って、前を向いて生きて……。
――それでいつの日か、二人がまた心から笑えるようになってくれたら……私はそれが一番嬉しいな。
「っ……ホロエル、さん……ごめん、なさい……ごめんなさい……!」
ノゾミが押し殺した声で叫び、大粒の涙を零した。
温かな体温と、傷つけてもなお慈愛の眼を向けてくれるホロエルの優しさに触れて……彼女の中でなにかが決壊したのだろう。
彼女は嗚咽を漏らしながらホロエルの胸に顔を埋めると、堰を切ったように泣き出してしまっった。
イサネもまた、濡れた瞳を伏せながら細く肩を震わせている。
しばらくすると、ホロエルの身体が段々と薄くなっていく。
実体化ができる時間の限界が近いことを悟ると、ホロエルは最後にもう一度だけ二人を強く抱きしめた。
そしていつもの半透明状態に戻り、そっと身体を離すと、ホロエルは再び彼女たち二人へと微笑みかけた。
その微笑みの意味が二人に届いたのだろう。
「お嬢様……」
「ええ……わかっています。私たちは、いつまでも泣いてなどいられないのですね……」
ノゾミは袖で涙を拭うと、背筋を伸ばして私たちへと向き直った。
その顔にはもう後悔や未練といった感情は浮かんでおらず、ただ前だけを見据えている。
私は半透明になったホロエルと目を合わせ、彼女が小さく頷くのを見届けた。
彼女がこれほどまでに清々しく許しを示した以上、私が抱えていた複雑なわだかまりを蒸し返す理由はもうなに一つ残っていない。
「ホロエルはあなたたち二人を許した。だから、私も今回のことはもう水に流す……皆はどう?」
「私はいいよ!」
「ええ。私も」
「ちゃんと反省してるなら、わたしもこれ以上はなにも言わないよ」
ホムラ、エミリア、センカの順で声が上がる。
「あなたたちもそれでいい? ノゾミ。イサネ」
「……いえ」
一拍置いて、ノゾミはふるふると首を左右に振った。
「確かにホロエルさんは私たちを許してくださいました。その温かな心遣いには感謝しかありません。しかし……だからと言って、私たちが犯した罪が消え去るわけではありません」
「あなた、まだそんなこと……」
「これは私なりのケジメなのです。なぜなら無空さん……あなたはホロエルさんが私たちのことを許すとわかっていながら、ホロエルさんが許すのならと、敢えてあのような提案をなさったのでしょう?」
「……」
「だからこそ、償いを言葉だけで終わらせることは皆さんの善意に対する裏切りにも等しいと、そう感じたのです。あなたがたの……なによりも、ホロエルさんの尊き御心を汚さないためにも……今はまだどうすればいいかはわかりませんが、いずれ必ずこの贖罪の意思を具体的な行動で示したいと思っています」
ノゾミの瞳には強い信念の光が宿っている。
私に抗議しているわけではない。これが彼女なりの責任の取り方なのだ。
「……重荷を背負うのが好きなのね。本当に」
「ええ。私は……そういう生き方しか知らない人間ですので」
「……なら、勝手にすればいい。ホロエルがいいなら、私はもうとやかく言わないから」
「ありがとうございます……無空さん。皆さんも」
ノゾミが再び頭を下げる。
だが、さきほどまでの重苦しい雰囲気はもうそこにはない。
悔悟の色は残りつつも、それらが彼女の前進する力に変わっていることを、私は確かに感じ取っていた。
……彼女は変わろうとしていた。
ホロエルという一人の少女の心に触れたことをキッカケにして。
「……ん」
私は隣にいるホロエルと顔を見合わせると、互いにふっと息を吐き出し、小さく微笑みを交わし合ったのだった。