可愛い銀髪美少女天使カードとして転生した私、マスターを導く   作:にゃっとう

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67.ええ~? ほんとにござるかぁ~?

「むー……」

 

 昼休みの教室。

 私――燃照ホムラは、机の上に広げた二枚のカードを見下ろしながら、悩ましげに唸っていた。

 

 デッキ構築はいつだって悩ましい。

 あれが欲しい、これが欲しいとカードを詰め込み続けていたら、デッキ上限の40枚を軽く超えてしまっていた経験は数知れず。

 欲しいカードを全部デッキに入れられれば夢いっぱいで最高なのに、厳選を迫られるのがカードゲームの常だ。

 私のデッキは今、まさにその選別の岐路に立たされていた。

 

火霊器ヴァーテイン
コスト4 属性:火 

エリア 種別:アームズ/ゴースト 

 - 効果 - 
①【手札で有効】このエリアを展開するために必要なコストは-Xされる。(Xは自分の場の火属性サーヴァントの数)

②場にある限り、自分の場のサーヴァントすべてに以下の効果をすべて付与する。

・『アクセル』

・サーヴァントへの攻撃時に強制発動。攻撃先のサーヴァントにXダメージを与える。(Xは自分のエナジーの火属性カードの枚数×1000)

 

日陽の精フレア・ミリオンズ
コスト3 種別:フェアリー 
属性:火/光 ATK 1000 HP 1000 

サーヴァント 

 - 効果 - 
【制約】:[複合属性]


①『Qアクション0』=条件:相手によって自分のライフカウンターが破壊された時。

②場に出た時に発動可能。お互いのプレイヤーはカードを1枚引く。さらに以下の効果から1つを選択して適用する。

・『アクセル』を得る。ATKを+1000する。相手の場のサーヴァントすべてに1000ダメージを与える。

・『ガード』を得る。HPを+1000する。カードを1枚引く。

 

 『火霊器ヴァーテイン』は、場のサーヴァントを強化して除去力を底上げしてくれるし……出せれば強いカードだよね。

 ただコストが4とちょっと重いから、それまでにテンポを取られ過ぎると場に出せる暇がなくなって攻め切られちゃうかもだし……。

 それなら『Qアクション0』を持ってて、状況に応じて効果を使い分けられる『日陽の精フレア・ミリオンズ』を採用して、堅実に防御を固めた方がいいのかなぁ。

 

「うーん……うーん……」

 

 メイちゃんに初めて負けたあの日から、私はずっとデッキの調整を続けてきた。

 これまで何度も構築を練り直し、これまた何度も試運転を繰り返しているけれど、未だしっくり来る形にはたどりつけていないのが現状だった。

 や……正確には、その時その時で私なりの最適解みたいなものは見つけてるつもりなんだけど……。

 メイちゃんやエミリア。それからイサネ先輩とのデュエルで壁を越えたのか、最近目に見えて腕が上がってきたセンカのデュエルを見ていると、自分のデッキがまだまだ中途半端に感じられてしまうのだ。

 インスピレーションが止まらなくなっちゃうっていうか……今よりもっともっと強くなれるような気がして、ほぼ毎日がデッキいじりと相成っちゃっているのである。

 

 どれだけ手を加えても、満足ができない。もっと新しいことを試したくなる。

 たくさん戦って、新しい自分を試して、今よりずっと強くなって。

 さらにその先の、誰も見たことのない景色を目指したくなる。

 

 ――この感覚には覚えがある。

 中学二年生の頃。エミリアとアンコと一緒に過ごした、あの宝物のような一年間と同じだ。

 心の奥底から燃え上がるような熱が私の内側で渦巻いている。

 そしてその一番の要因が、私の心を揺さぶり続ける一人の少女の存在にあるということを、私は自分でもよく理解していた。

 

「ねえメイちゃん。こっちのカードとこっちのカード、採用するならどっちの方がいいと思う?」

 

 私は二枚のカードを掲げ、隣の席に座る少女に尋ねた。

 メイちゃん。私の退屈を殺し、その心に燻っていた炎を再び燃え上がらせてくれた、私の最高で最強のライバル。

 そして、私の大切な親友だ。

 

「メイちゃーん? ねえ、どっちのカードがいいと思うー?」

「……」

 

 ……あれ? 無反応?

 なにか考え事でもしてるのかな?

 メイちゃんの方を覗き込んでみると、彼女は頬杖をついたまま、ぼんやりと窓の外を眺めていた。

 

「メイちゃん? 聞こえてるー?」

 

 目の前でひらひらと手を振ってみる。

 するとそこでようやく私の存在に気づいたのか、メイちゃんはハッとして私の方を見た。

 そして何事もなかったかのように、私の手にある二枚のカードに視線を落とす。

 

「……こっち」

 

 メイちゃんが指差したのは、『日陽の精フレア・ミリオンズ』。

 

「ちなみに理由は?」

「『火霊器ヴァーテイン』は確かに強力なエリア。でもそのカードを十全に活用するためには、途切れることなくサーヴァントを場に並べていく必要がある。あなたのデッキはそれができないわけではないけれど、常にそれが可能かと言われればそうじゃない」

「んー……確かにそうだね。それに『竜を呼ぶ儀式』は絶対欲しいし、エリアが2枚も場にあると動きが窮屈になっちゃうかも……?」

「あなたのデッキは攻撃的で強力だけど、守りが薄い。だから処理札か、あるいは受け札を入れたいと思っているのは伝わった。それなら汎用的な『Qアクション0』を持つ『日陽の精フレア・ミリオンズ』を入れた方が戦術の幅が広がる。このカードで耐えて、後からエース級のドラゴンで一掃するのがベストだと思う」

「ふむふむ。なるほど~……ありがとうメイちゃん! 参考にするね!」

「ん」

 

 私のデッキは種別がドラゴンのカードを中心に構築されており、サポートカードもそれに対応したものが採用されている。

 だから実のところ、ドラゴンではない『火霊器ヴァーテイン』や『日陽の精フレア・ミリオンズ』を採用すべきかは悩ましいところではあるんだけど……。

 使わずに欠点だけ考えて悩むくらいなら、とりあえず使ってみて使用感を確かめてみるのが私のやり方だ。

 ここはメイちゃんのアドバイス通り、『日陽の精フレア・ミリオンズ』を採用してみよう。

 最近使う機会が少なくなってた『消えぬ残り火』と入れ替えて……と。

 よし! 更新完了!

 あとでエミリアかセンカにでも試運転に付き合ってもらおっと!

 

 と。

 そんな感じでデッキの調整に勤しみながら、私は今日も充実した昼休みを過ごしていたのだけど……。

 

「……んー……ねえメイちゃん。もしかして体調悪かったりする?」

「……? 体調不良なんてない。どうしてそんなことを聞いたの?」

「だってメイちゃん、なんかちょっと上の空っぽいっていうか……心ここにあらずって感じに見えるから」

「別にいつも通り。大丈夫」

「そうかなぁ……?」

 

 メイちゃんは涼しい顔をして否定したけど……。

 私はやっぱり納得いかなくて、改めて隣に座るメイちゃんをじっくりと観察してみる。

 

「……ふふ……」

 

 いつもは表情に乏しいはずのその口元は、かすかに綻んでいて……なんていうか、すっごくご機嫌そうに見えた。

 私がこうして凝視してることにも気づいてない様子だし、今日のメイちゃん……やっぱりちょっと変だ。

 

 ……そういえば今になって思い返してみると……昨日寮の部屋に帰ってきた時も、なんだか妙にそわそわしてたような……? 

 

 ……ハッ!?

 も、もしや……これが世に聞く恋煩いというやつなのでは!?

 好きな人ができて……それで今もその人に会えることを楽しみにしてるから、ホロエルちゃんみたいなポワポワなご機嫌モードになってるんじゃ……!?

 

「はぁ……」

 

 絶対そうだ!!!

 だってそうじゃなきゃ、こんな風に物憂げにため息ついたりするはずないもん!

 

 ……うぅ。そっか……そっかぁ……。

 メイちゃんは私と同じでそういうのに疎いっていうか、興味がないものだと勝手に思ってたけど……。

 メイちゃんも年頃の女の子なんだなぁ……。

 

「メイちゃん……ここだけの話、いつからその人のことが好きだったの?」

「は?」

 

 メイちゃんがまるでアホを見るような目で私を見る。

 

「急になにを言っているの?」

「メイちゃんの恋の話だよ!」

「……? ……??」

「メイちゃん、好きな人ができたんでしょ?」

 

 声を潜めながら追加の質問を投げかけると、メイちゃんは思考を放棄したように首を横に振った。

 

「意味がわからない。どうしてそんな発想に至ったのか理解できない」

「えぇ〜? 誤魔化さなくたっていいのに。教えてよ~、私とメイちゃんの仲でしょ~?」

「はぁ……別に誰もいない。恋なんて興味ない。それが答え」

「ええ~? ほんとにござるかぁ~?」

「……」

「イダッ!?」

 

 ウザ絡みしすぎてしまったのか、おデコに鋭いデコピンを食らってしまった。

 呆れたようにため息を吐いたメイちゃんは、私の机の上に広げられたカードの束を一瞥する。

 

「なにを勘違いしてるか知らないけど、そろそろ片づけたら? もうすぐ昼休みが終わるわ」

「あっ! ホントだ!」

 

 机の上に出していたカードを慌てて仕舞う。

 そうして私がカードを片付け終わったタイミングで丁度チャイムが鳴り響き、午後の授業が始まった。

 

「――で、あるからして~。1588年に農臣ヒデキチが発令した札狩令は、全国単位で兵農分離を推し進める大きな契機となったわけですね~」

 

 うちのクラスの担任である風上ナチ先生が、いつもののほほんとした口調で歴史の授業を進めていく。

 私はそれをノートを取るふりをして聞き流しながら、こっそりとメイちゃんの横顔を盗み見た。

 

 ……やっぱりちょっと頬が緩んでるし……明らかにいつもと様子が違うよね……?

 でも、さっき「恋なんて興味ない」と答えたメイちゃんの態度は淡白なもので、嘘を吐いている感じには見えなかった。

 でも、普段クールな人が自分でも無自覚のうちに恋愛感情を覚え始める……みたいな展開は、センカが貸してくれたマンガでも見たしなぁ。

 それに恋じゃないんだったら、いったい全体どうしてこんな風になってるのかがわからないし……。

 

 むむむ……気になるぞ。

 

 どうにかして本人から話を聞いてみたいけど……どうやって聞き出したらいいんだろう?

 もしも恋の感情を自覚してないんだとしたら、あまり根掘り葉掘り聞くのは良くないことだと思うんだよね。

 こう、都合よく聞き出す話術みたいなものがあればいいんだけど……。

 あいにくと正面から気持ちを伝える以外の方法を知らない私は、悶々としたまま午後の授業を終えるほかなかった。

 

「あ、メイちゃ……」

「ごめんホムラ。私もう行くから」

 

 午後のホームルームを終えて、放課後。

 どう話を切り出そうか私が迷っている間に、メイちゃんが荷物をまとめて席を立った。

 颯爽と教室を出て行く彼女を呼び止める暇もなく、私はポツンとその場に取り残されてしまう。

 

「……むー。そんなにその人と会うのが楽しみだったのかな……?」

 

 私の知る限り、メイちゃんはあまり積極的に人に関わりに行くタイプではない。 

 話しかけられれば応対はするし、付き合いだって良い方だけど、あくまで求められて応える側というイメージが強い。

 そんなメイちゃんが今日はどうしたことか。自ら率先して動き出している。

 これは明らかにいつものメイちゃんとは違う行動だ。

 

 メイちゃんの変化の理由は……やっぱり恋? 恋なのか?

 メイちゃんはきっぱりと否定したけど、自覚のない恋煩いだとしたら!?

 

 あのクールなメイちゃんが、ここまで夢中になっちゃうなんて……。

 これはますます気になってきたぞぉ……!

 

「……よし!」

 

 私は勢いよく立ち上がると、メイちゃんの後を追って急いで教室を飛び出した。

 キョロキョロと周囲を見渡すと、メイちゃんの後ろ姿が廊下の先に見えた。

 

 よしよし……まだ追いつけそうだ!

 見失わないように……それでいて気づかれないように、こっそり尾行するぞ……!

 

 サッ! ササッ! サササッ!

 

「……?」

 

 一瞬、メイちゃんが立ち止まった。

 彼女が振り返る素振りを察知した私は、慌てて柱の陰に隠れる。

 

 ……も、もしかしてバレちゃった……?

 い、いや……大丈夫……! ギリギリ見られてはないはず……!

 

「……」

 

 ドキドキしながら息を殺して耳を澄ませていると、どうやらメイちゃんは何事もなく歩き出したようで、少しずつ足音が遠ざかっていった。

 

 ……ふぅ……危なかったぁ。

 どうやら気づかれずに済んだみたいだ。

 安堵の息を吐きながら、もう一度柱の陰から顔を出す。

 こちらに背を向けるメイちゃんの背中を追って、私も再び歩き出そうとして……その瞬間、不意に私を呼び止める声がかかった。

 

「……ホムラ? あなた……こんなところでなにをしてるの?」

「わひゃあっ!?」

 

 突然真後ろから聞こえた声に、思わず素っ頓狂な悲鳴を上げてしまう。

 おそるおそる振り返ってみると、そこには細身の水色髪の少女が立っていた。

 腰に手を当てて、まるで不審者でも見つけたかような目で私を見つめる見慣れたその姿に、私はホッと肩を撫で下ろした。

 

「なんだ、エミリアかぁ……びっくりしたぁ……」

「なんだとは失礼ね。あなたがあまりに挙動不審だったから声をかけたのよ。それで? こんな廊下でいったいコソコソとなにをしているのかしら?」

「なにって……あっ! いけない! 見失っちゃう!」

「きゃっ!? ちょ、ちょっと!? なんで急に手を!?」

「いいから早く!」

「良くないわよ! いいから説明を――むぐっ!?」

 

 私はエミリアの口を物理的に手のひらで塞ぎつつ、廊下の曲がり角から顔を出す。

 メイちゃんの背中はもうかなり遠くの方まで行ってしまっていた。

 でも、まだ見失うほどじゃない。急いで追いかけよう。

 モガモガと抵抗するエミリアを引きずりながら、私はメイちゃんの尾行を再開した。

 

 廊下を駆け抜けて、角を曲がり、渡り廊下に差しかかったところで再び柱の陰に隠れる。

 それと同時に、エミリアの口を離してあげた。

 

「ぷはっ!? ぜぇっ……はぁっ……! な、なにするのよいきなり! 死ぬかと思ったわよっ!?」

「シッ! 声が大きいって! ほら見て、あれ!」

「はぁ……? もう、なんなのよいったい……」

 

 人差し指を口元に当てて静かにするよう促しつつ、私は柱の陰からちょこっとだけ顔を出してメイちゃんの背中を指差した。

 すると酸素を求めて荒い呼吸をしていたエミリアが、渋々と私の指差す先を追う。

 

「あれって……無空さんのこと? ……ねえホムラ。まさかとは思うけど……あなた、無空さんを尾行してるんじゃないでしょうね?」

「そのまさかだよ! メイちゃんがさ、昨日からずーっと様子がおかしいんだよ。なんかこう……ポワポワした感じで!」

「ポワポワ……? いつものホロエルちゃんみたいな感じかしら?」

「そう! まさにそんな感じ! それでね! もしかしたらメイちゃんに好きな人ができたんじゃないかなーって!」

「はぁ……?」

 

 イマイチ信じていない様子で胡乱げに目を細めるエミリアに、私は詳しい事情を説明する。

 昨日寮の部屋に帰ってきた時からメイちゃんの様子がおかしいこと。今日もずっと心ここにあらずな状態で、私の話を聞いてない時があったこと。

 授業中もずっと頬が緩んでご機嫌そうだったこと。帰りのホームルームが終わると、一目散に教室を出て行ったこと。

 これらを全部ひっくるめて考えるに……メイちゃんは無自覚の恋煩いに違いないという私の名推理も!

 

「……で、あなたはその恋の相手が誰なのか気になって尾行してる……と。そういうことね」

「そゆこと!」

 

 私の話を聞き終えたエミリアは、頭痛を堪えるかのようにこめかみを押さえた。

 

「ホムラ……ちょっと顔こっち向けなさい」

「え? いいけど――あいたぁ!?」

 

 振り向いた途端、ぴしゃりとおデコに喝が入る。

 いたた……またデコピンされたぁ……しかも割と痛いやつ……。

 ヒリヒリと痛むおデコを押さえてうずくまる私を、エミリアは呆れ返ったように見下ろした。

 

「あのねぇ……これ、やってること普通にストーカーよ? というか、そんなに気になるなら直接聞いてみたらいいじゃないの。正直に全部話して、本人の口から聞き出すのが一番手っ取り早いわよ」

「それじゃメイちゃんの恋路の邪魔しちゃうかもでしょ! 自分の中の気持ちが恋かどうか悩むのも青春の醍醐味だって、この前センカが貸してくれたマンガにも書いてあったし!」

「あぁ、『空色のアザレア』の先生のセリフね」

「あれ? エミリアも知ってるんだ」

「クラスの子におすすめされてね。むしろ私としては、あんないかにもな恋愛モノをあなたが読んでた方が意外……って今はそんなことどうでもいいのよ。そもそも無空さんに気になっている人がいるとかいうのも、単なるあなたの妄想でしょう?」

「妄想じゃないよ! あれは絶対恋する乙女の顔だったもん!」

「恋なんてしたことないくせによく言うわね……」

 

 やれやれと肩をすくめるエミリア。

 むぅ……確かに私は恋愛の経験はないけど……。

 私と同じく恋愛経験ゼロのエミリアに言われたくないやい!

 

「でもまあ……普段から無空さんと一緒にいるあなたが言うなら、妙に機嫌がいいというのは事実なんでしょうね。無空さんが向かっているのって、文化部の部室棟の方角よね? 無空さんが部活に興味があるとは思えないけど……」

「きっと気になる人がその部活にいるんだよ!」

「気になる人……ねぇ。まあ、人かどうかはともかくとして……無空さんが興味の惹かれるようななにかはあるのかもしれないわね」

 

 チラリと隣に目を向ける。

 メイちゃんの背中を見つめるエミリアの横顔には、隠しきれない好奇心の色が浮かんでいた。

 なんだかんだ言いながら、エミリアもメイちゃんの秘密が気になってしまっているようだ。

 

 そういえば、前にエミリアの実家に遊びに行った時に聞いたことがあったっけ。

 昔のエミリアは好奇心旺盛なやんちゃな子で、目を離すとすぐにどこかへ行ってしまうようなお転婆娘だったんだって。

 自分のお母さんから子どもの頃のエピソードを次々と暴露されるエミリアの慌てっぷりは面白かったなぁ……。

 今のエミリアはその当時の血が騒いだ、さながらやんちゃエミリアと言ったところだろう。

 今の私にとっては都合がいいので、ぜひともその調子でいてほしいところだ。

 

「――あ、やっぱりお姉ちゃんとエミリアさんだ。おーい、お姉ちゃーん! エミリアさーん!」

 

 やんちゃエミリアが新たに仲間に加わった二人パーティで、コソコソとメイちゃんの尾行を続けていると、またしても別の方向から聞き馴染みのある声が飛んできた。

 振り返ってみれば、そこにいたのは私の予想通り、小走りで駆け寄ってくるセンカだった。

 彼女は私たちに追いつくなり人懐っこい笑みを浮かべ、子犬のように小首を傾げて私たちを見比べた。

 

「二人とも、こんなところでなにしてるの?」

「いえ……まあ、その……」

「そういうセンカこそ、どうしてここに?」

「どうしてって……お姉ちゃんたちに会いに来たのに教室にいなかったから探してたんだよ。そうしたらお姉ちゃんとエミリアさんがコソコソ逢い引きしてたって目撃情報が入ってきてさ。噂を追いかけてきたの」

 

 私とエミリアはお互いに顔を見合わせる。

 いや……逢い引きって……。

 そりゃエミリアは私から見ても相当可愛い方だとは思うし、気を遣わずに接せられるから一緒にいて楽しいけど、逢い引きだなんて誤解も甚だしい。

 変な勘繰りを受けないためにも、ここは一度キッパリと否定しておかねばなるまい。

 

「「逢い引きじゃないよ(わ)」」

 

 ……ハモった。ものの見事に。

 これじゃ余計に誤解されちゃうじゃん! と責めるようにエミリアを睨むが、彼女も同じ気持ちだったらしく、恨めしそうに私を睨み返してきた。

 そんなある意味仲良しな私たちの様子に、センカはニヤニヤと愉快げに口元を緩める。

 

「えー、ほんとかなぁ? その割には二人とも息ピッタリだねぇ。尾ひれのついた噂かと思ってたんだけど……もしかして本当に逢い引きだったりする?」

「「違うよ(わ)!」」

 

 ちょっと!?

 

「だから声被せないでってば!」

「こっちのセリフよ!」

 

 喧嘩する犬と猫のように威嚇し合う私とエミリア。

 センカは堪えきれなくなったように吹き出した。

 

「ぷふっ、あははっ! そんな必死になって否定しなくてもいいのに! 冗談だよ冗談〜。こんな尾ひれのついた噂、わたしが真に受けてるわけないでしょ? あいかわらず仲が良いねぇ、二人とも」

「はぁー……もう、本当にこの子は……信じる人は信じるのよ。そういう噂」

「むー……仲が良いのは否定しないけど……本当に逢い引きなんかじゃないからね? センカ」

「はいはい。わかってるってば。で、話は戻るけどさ。なんでお姉ちゃんたちはこんなところでコソコソしてるの?」

「それは……えぇと……」

「メイちゃんを尾行してたんだよ」

「メイ様を? なんで?」

「実はさ……」

 

 センカにも一連の出来事を説明する。

 私と同じで好奇心旺盛なセンカのことだ。

 彼女が個人的に慕っているメイちゃんのことだということもあって、ふんふんと興味津々に話を聞いていたが……。

 

「それでね。私の見立てだとメイちゃん、誰か好きな人ができたんじゃないかって思ってて」

「は? ありえないよ」

「えっ?」

「ありえないよ。それだけは絶対ない。なにバカなこと言ってるのさ、お姉ちゃん」

「えっ……えぇー……?」

 

 途中まで楽しそうに相槌を打っていたセンカが、私の推理を聞くなり一瞬にして真顔になってピシャリと否定した。

 あまりに強い口調での否定に、私はつい頬を膨らませて反論してしまう。

 

「や……わかんないじゃん。この前センカが貸してくれたマンガでも、人付き合いが煩わしいって言ってた一匹狼な子が自分でも無意識に主人公の子にだけ心を開いちゃうって展開があったでしょ? メイちゃんにもそんな恋の季節が来てるのかもしれないよ?」

「だからありえないんだってば。いい? お姉ちゃん。メイ様が自分の弱い部分をさらけ出して甘えるのは、ホロエルちゃんにだけなの。普段クールで孤高なメイ様が、大好きなホロエルちゃんにだけは子どもみたいに甘えちゃう……そのギャップが最高に可愛いんだから!」

「な……なるほど……? いやでも、親愛と恋愛は違うものなんじゃないの……?」

「恋なんてしたことないくせになに言ってるのさ、お姉ちゃん。メイ様のホロエルちゃんへの愛は深くて重いんだよ! 親愛だとか恋愛だとか、誰かが定義した無粋な区別なんてそこにはないの。あるのはただ純粋で圧倒的な愛だけ! ……メイ様が他の誰かにそんな簡単に靡いてたりしたら、そんなの解釈違い。絶対偽物だよその人」

「お……おぉう……そ、そうなんだ……?」

 

 ズイッと迫って熱弁するセンカの迫力に押されて、思わず身を引いてしまう。

 さすがはメイちゃんのファン第一号……推しへのこだわりがすごい……。

 

 ……うーん……でも確かにセンカの言う通り、メイちゃんのホロエルちゃんへの甘えっぷりはすごいもんね……。

 深い絆で結ばれたあの二人の間に割って入れるような人がいるのかと改めて聞かれると……正直いるとは思えないというのが本音だ。

 エミリアもまたセンカの主張を聞くと、顎に手を当てて難しげな顔をした。

 

「センカちゃんの強火のファンみたいな思想はともかくとして……言ってる内容には一理あるわね。私も正直、無空さんがホロエルちゃん以外の誰かに好意を寄せてる姿は想像がつかないわ」

「むー……エミリアもそう思う? じゃあメイちゃんが機嫌がいい理由も、もしかしてホロエルちゃん関連なのかな……?」

「だと思うけど……それならどうして部室棟に足を運んだのかという疑問が残るわね。無空さんがしたいと思えるようなことを見つけようと、ホロエルちゃんが部活の見学でも提案したかしら?」

「でもエミリアさん。それくらいでメイ様の機嫌が一目でわかるくらい良くなるかなぁ。メイ様とホロエルちゃんって四六時中一緒にいるし、二人で見学に行くくらいじゃそこまでの変化は起きないと思うの」

「まあ、それはそうなのよね……」

 

 エミリアとセンカの見解に私は唸る。

 二人と交わした意見をまとめると……メイちゃんがここ最近ご機嫌な理由は恋なんかじゃなくて、ホロエルちゃんに関係することが原因。

 でも二人の言う通り、メイちゃんとホロエルちゃんは一緒にいることがもはや当たり前になっている。

 たかが一緒にお出かけする程度では、あそこまで明確な変化を起こす理由にはならない。

 もっとなにか別の、誰が見ても明らかで特別な要因があるはずだった。

 

「……あれ? ……ねえ二人とも、メイ様が見当たらないよ?」

「え?」

 

 センカがハッとしたように声を上げた。

 急いで前方に視線を戻すと、確かに廊下の先にあったはずのメイちゃんの背中は見えなくなってしまっている。

 

「やばっ! 話に夢中になりすぎて見逃しちゃった!? 急いで追わないと……!」

「……いえ、これは……あ、待ちなさいホムラ!」

 

 エミリアの制止の声が背中に届くが、私の足は止まらなかった。

 メイちゃんを見失ってしまった焦りが私を突き動かし、廊下の角から身を乗り出して――そしてそのまま硬直する。

 

「……」

「あっ……」

 

 角を曲がってすぐ目の前に、メイちゃんがいた。

 彼女はまるで最初から私が来るのを待っていたかのように、静かに壁に背をもたれかかって立っていた。

 バッチリと彼女と目が合う。隠れる余裕なんてない。完全に見つかってしまった。

 そうして蛇に睨まれた蛙のように固まった私の後ろから、エミリアとセンカが追いついてくる。

 

「……やっぱりこうなっちゃったわね……」

「あちゃー。見つかっちゃったねぇ」

 

 エミリアは諦めたように、センカは惜しくもイタズラが見つかってしまった子どものように口をすぼめる。

 メイちゃんは私たち三人を順繰りに見回すと、呆れたように小さく息を吐いた。

 

「あ、あはは……えっと……き、奇遇だね~。廊下でバッタリだね~……メ、メイちゃんはこんなところでなにしてるのかな~……?」

「それはこっちのセリフ。あなたたちこそなにしてたの? こんなところで」

「そ……それはそのぉ……」

 

 目が泳いでしまっているのを自覚しながら、必死に言い訳を探す。

 しかし残念なことに、私もエミリアもセンカも誰も部活になんて入っていない。

 私の脳味噌では文化部の部室棟に三人で揃っていた理由なんて咄嗟に作ることはできず、沈黙だけが私が出せる唯一の回答だった。

 そのまま居た堪れなさが天元突破しかけた頃、背後で誰かが諦めたように短く息を吐いて、足を踏み出して私の横に並んだ。

 

「ごめんなさい。私たち、無空さんを尾行していたの。事の発端はホムラだけれど……好奇心に負けて同調してしまった私たちも同罪よ」

「エ、エミリア!?」

 

 まさかここまであっさり白状するとは思わなかった。

 

 お、怒られる……! 絶対怒られる……!

 私は冷や汗をダラダラと流しながら、おそるおそるメイちゃんの顔色を窺う。

 だけどそんな私に声を投げかけたのは、目の前のメイちゃんではなく隣に立ったエミリアだった。

 

「誤魔化そうとしたところで無駄よ。無空さんはとっくに私たちが後をつけていることに気がついていたわ」

「え……? そ、そうなの……?」

 

 その言葉に驚いて思わずメイちゃんを見る。

 メイちゃんは無言のまま、コクリと一つ頷いた。

 

「い……いつから気づいてたの……?」

「ほとんど最初から。おあいにくさま、教団の追手から逃げ回る生活を送ってきたから、尾行されることには慣れてるの。彼らの陰湿なやり方に比べたら、あなたたちの尾行はバレバレ。無駄にうるさかったし」

「バ……バレバレ……」

「……返す言葉もないわね」

「さすがはメイ様だねぇ」

 

 そういえばそうだった。

 メイちゃんは教団から追われる身で、この学園に来るまではホロエルちゃんと二人でずっと逃亡生活を送ってたんだっけ……。

 尾行や監視の類には敏感で当然かぁ……。

 

「……メ、メイちゃん……その……えっと…………ご、ごめんなさい……」

 

 私だって、悪いことをしているという意識がなかったわけじゃない。

 すでに逃げ場はなく、かと言って開き直るわけにもいかず……。

 私はメイちゃんに嫌われたくない一心で、しょぼくれて謝ることしかできなかった。

 

「……はぁ。まったく……」

 

 らしくもなく縮こまる私を見つめると、メイちゃんは小さく息を吸って、私のおデコに向かってデコピンを放った。

 

「あたたっ……!」

 

 本日三度目のデコピン。しかもこれまでで一番痛いかもしれない。

 思わず目尻に涙が浮かぶ。

 おデコを押さえたまま、なおも不安げにメイちゃんを見上げた私に、彼女は呆れを含んだ声色で告げた。

 

「いい? 人の後をつけるのは良くないこと。次はないから」

「……ゆ……許して、くれるの……?」

「元々別に怒ってるわけじゃない。ただ……私たちは友達なんだから。こんなコソコソとしたことしないで、ちゃんと声をかけてほしかったって……それだけ」

「メイちゃん……」

 

 メイちゃんは、ほとんど最初から尾行に気づいていたと言っていた。

 それはきっと、エミリアやセンカと合流するよりも前から。違和感を抱いて、一度だけ立ち止まったあの時から。

 それなのに彼女がここまで私を泳がせていたのは……もしかしたら、私が尾行をやめて声をかけてくることを待ってくれていたのかもしれない。

 メイちゃんの言う通り、彼女は怒っていたわけではなくて……友達だからこそ、隠れずに堂々と振る舞ってほしかった。

 

「……うん。わかった。次からは、ちゃんとメイちゃんに声をかける。絶対」

「ん」

 

 メイちゃんの気持ちが痛いほどに伝わってきた私は、今度こそ友達らしく、彼女の瞳をまっすぐに見つめて自分の気持ちを伝える。

 すると彼女は満足げに一言だけ返して、今度はエミリアとセンカに向き直った。

 自分たちの順番が来たと悟った二人は、粛々とメイちゃんの前に並ぶ。

 メイちゃんはそんな彼女たちの額に手を伸ばすと、ビッ! ビッ! と立て続けにデコピンを叩き込んだ。

 

「いっ……!?」

「っ……えへへ……」

 

 思っていたよりも痛かったのか呻くエミリアに、顔を顰めながらもどことなく嬉しそうなセンカ。

 二人の反応を一瞥し、メイちゃんは肩をすくめる。

 

「怒ってないとは言ったけど、悪いことをした人にはお仕置きが必要だから。これで許してあげる」

「……この程度で許してくれるだけありがたいわね。でも、もう一度ちゃんと謝らせてちょうだい。ごめんなさい、無空さん」

「わたしもメイ様には嫌われたくないし……ちゃんと反省します。ごめんなさい、メイ様」

 

 メイちゃんは二人の謝罪に首肯を返す。これでもうこの件はおしまいだと、そう言ってくれているようだった。

 それからメイちゃんは、改めて私たち三人の顔を見回した。

 

「それで、どうしてあなたたちは私を尾行なんかしていたの?」

「えーっと……その、メイちゃんの機嫌が良かったから……なにがあったのかなーって気になっちゃって……」

「……私、そんなに機嫌が良さそうに見えた?」

「少なくとも私はそう思ったよ。メイちゃん、最初の頃と比べて顔に出やすくなってきた感じするし。結構わかりやすかったよ」

「……」

 

 エミリアやセンカに話した時と同様に、メイちゃんに対して覚えた違和感について語る。

 私から見たメイちゃんの些細な変化。もしかしたら恋煩いかもしれないと考えたこと。

 一通り話し終えると、メイちゃんは長く深いため息を吐いた。

 

「はぁー……理解した。だからあなた、恋がどうのとわけがわからない質問をしてきてたのね……」

「だ……だってぇ……恋っていろんなキッカケで起きるものなんでしょ? センカが貸してくれたマンガじゃそうだったし……」

「お姉ちゃんはマンガの影響受けすぎ。そもそもメイ様がこの学園に来てからまだ二ヶ月くらいしか経ってないし、ホロエルちゃんのことが大好きなメイ様がそんな短期間で他の誰かに惚れるわけないじゃん」

「……むー……」

 

 センカの言い分にメイちゃんが口を噤んだまま反論しないところを見るに、どうやらやはりセンカの主張は正しかったらしい。

 私もこの件に関してはセンカの言葉に一理あるとは思ったけど……実際にこうして自分の推理が外れていたとなれば、なんだかちょっと悔しいものがある。

 

「じゃあさじゃあさ。なんでメイちゃんは昨日からあんなにご機嫌だったの?」

 

 私の素朴な疑問に対し、メイちゃんは少し困ったように視線を宙に彷徨わせた。

 

「……いずれ話すことになるとは思ってたし……遅かれ早かれってことなら、別に今話したって構わないのかも……」

「それってどういう……?」

「ついたら話す。あなたたちにアレを見せてもいいか、彼女に確認してみるから」

「アレ? 彼女……?」

 

 それだけ言うと、メイちゃんは私たちに背を向けて歩き出す。

 遅かれ早かれ話すつもりだったアレ。私たちの知らない誰かを仄めかす発言。

 イマイチ要領を得ない……いや、わざとぼかしただろう核心の掴めない表現に、私たち三人は顔を見合わせた。

 私たちの誰もメイちゃんの意図を読み取ることはできなかったけど……とにもかくにも、ついていけば答えはわかるということらしい。

 期待と好奇心が入り混じった気持ちを抱きながら、私たちはメイちゃんの後について行った。

 するとメイちゃんは、ある部屋の前で足を止める。

 扉の真上の標識には『デュエル科学研究部』と書かれた木製のプレートがかけられていた。

 

「デュエル科学研究部……ここがメイちゃんの目的地だったの?」

「そう。でも、まずは先にあなたたちのことを説明してくるから。私が呼びに来るまではここで待ってて。いい?」

「うん、わかった!」

「わかったわ」

「はーい!」

 

 私たちが三者三様に了承すると、メイちゃんは頷いて部屋の中に入っていった。

 戸が閉じられた後、部屋の前の廊下に残された私たちは示し合わせたように再び顔を見合わせる。

 

「デュエル科学研究部って……メイちゃんになにか関係あるのかな? デュエル科学って、デュエルガントレットを作ったりする研究のことでしょ?」

「そうね。とは言っても、デュエルガントレットはその中のほんの一例でしかないけれど」

「広義で言ったらカード製造なんかもデュエル科学の範疇に入るしね~。魂の欠片が宿ってないカードは、どんなに見た目が精巧でも単なる紙切れだもん。魂の欠片の性質に合った新しいカードを生み出したり、複製して量産できるようにしたり……私たちが当たり前のように使ってるカードにだってデュエル科学の技術がたくさん込められてるんだよ」

 

 あー、言われてみれば確かに。偽カード問題とかあるもんね……。

 私はあまり頭が良い方じゃない。でも、これくらいなら私も小学校で習ったことがあるから知っている。

 新たなカードの製造は、製作者が好きにデザインして印字すれば完成するというものじゃない。

 この世界のあらゆる場所を漂う魂の欠片を回収し、それに適した器を用意して、そのデザインや効果を一つ一つ丹念に調整していくことでようやく一枚のカードは完成する。

 だから新しいカードの製造には膨大な時間と労力が不可欠で、『コスト0で場に出た時デュエルに勝利するサーヴァント』とか、そういったハチャメチャなカードは作れない。

 何十メートルもある巨人用の服を人間が着れないのと同じだ。

 魂の欠片と器の性質が噛み合っていなければ、そもそもカードとして成り立たない。

 仮にカードの見た目だけ真似て作り上げたとしても、魂の欠片が宿っていないカードはデュエルガントレットが認識自体しないし、当然ながらデュエルで使用することもできない。

 これが人工的なカード製造技術が広まってから今に至るまで問題になっている、偽カード問題と呼ばれるものだ。

 偽カード詐欺にはご用心、なんてフレーズを今までの人生で何度聞いたかわからない。

 

 閑話休題。

 なにはともあれ、デュエル科学が私たちの生活の基盤を支える重要な技術であることは間違いない。

 

「待たせた。皆、入ってきて」

 

 私たちがデュエル科学についての知識を共有し合っていると、メイちゃんが再び扉を開けて私たちを招き入れた。

 この先になにがあるのかはわからない。

 でも、メイちゃんが私たちに見せてくれると言ったその秘密は、私たちのこれからの日常を彩る鮮やかな色になる。

 そんな不思議な予感を抱きながら、私たちは部屋の中へと足を踏み入れていった。




カード制作裏話
・火霊器ヴァーテイン
名前だけは「2.あなたみたいなかっこ悪い人なんて、デッキですらない紙束でも勝てるよ」ですでに出ていたカード。場の火属性サーヴァントの数を参照して手札でコストダウン、エナジーの火属性カードの数を参照して効果付与によるダメージが強力になっていくエリア。場のサーヴァントへの効果付与は火属性以外のサーヴァントに対しても行われるので、属性混合のデッキでも使いようによっては活躍できる。相性が良いデッキでは除去の要になる可能性を秘めている。

・日陽の精フレア・ミリオンズ
Qアク0の汎用カード群の1枚。相手にもドローをさせてしまうが、自分の手札を減らさずに1000ダメージAoEでアグロ戦術へのカウンターをしたり、合計2ドローしつつガード持ちを立てたりと有能な効果を状況に応じて選べる器用な受け札。Qアクに頼らず普通に3エネを使って出してもコスト相応の働きはしてくれる。火と光という汎用性に乏しそうな複合なのが玉に瑕。


○オマケ

・「メイちゃんの恋の話だよ!」辺りの会話を横で聞いていたホロエルの反応
ホロエル「マスターに好きな人!? いったいどこの誰なんだその馬の骨は……!」

・恋愛モノの漫画をホムラに渡したセンカちゃん
高一にもなって恋愛の「れ」の字にすら興味がなさそうな姉の将来を心配し、姉が楽しめそうな恋愛モノを見繕ってそれとなく勧めた有能妹。これをキッカケにちょっとでも色恋に興味を持ってもらえたら御の字かなーという心境だったが、斜め上な好奇心が育ってしまい少々呆れ気味。まったくお姉ちゃんはしょうがないなぁ、やれやれと思っている。なお、センカ自身は自分の恋愛事情を改善するつもりは微塵もない。

・ホムエミ
本編内では冗談だと言って流していたが、センカからは内心この2人将来付き合ってても不思議じゃないなと思われている。

・偽カード問題
カードの人工的な製造技術が確立されてしばらく、偽カードが大量に流通してしまった時期があり、偽カード詐欺にご用心というフレーズが社会に定着した。現代ではデュエルガントレットにカード真贋解析機能が標準搭載され、トレードなどの際はあらかじめ偽カードではないか確認することが一般化されたため、よほど注意が散漫でない限りは詐欺に騙されることはなくなっている。ただし明らかに度を超えた効果を持つ偽カードだけでなく、既存のカードの見た目だけを真似た巧妙な偽装カードも存在するため、知っているカードだからと言って偽カードではないと決めつけるのは禁物である。
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