可愛い銀髪美少女天使カードとして転生した私、マスターを導く 作:にゃっとう
デュエル科学研究部、部室。
各所に置かれた実験台とその上に並べられた装置を前に、部員たちが主張と議論を繰り広げ、時に愉快に、時に真剣に研究に勤しんでいる。
喧噪を抜けた先には『デュエル科学部準備室/重要機材有り・立入厳禁』と貼り紙がされた重厚な鉄扉が鎮座し、なにやら物々しい雰囲気を醸し出している。
そんな活気に溢れた……あるいは混沌とした部屋の扉が開かれ、新たに四人の少女が中へと入ってくる。
私のマスターである無空メイ。
それから私と彼女の共通の友人である、ホムラにエミリア、そしてセンカ。
マスターに先導される形で入室してきた三人は、初めて入る部室の様子にキョロキョロと物珍しげに周囲を見回していた。
だが、私が彼女たちを出迎えるように足を運ぶと、皆が一様にその動きを止める。
「へ……?」
「嘘……」
「えっ……えっ!?」
三人の驚愕の視線が一斉に私へと突き刺さる中、私ことホロエルは「むんっ!」と自慢げに胸を張って仁王立ちしていた。
いつもの半透明ではない、実体を持った身体。
翼や光輪のない人間と変わらぬ容姿。
ついでに中等部の制服!
私が十秒程度という短い時間しか実体化できないことは、私やマスターと親しい人たちにとっては周知の事実だ。
だからこそ事情を知らないホムラたちにとっては、今の私が備え持つすべての要素が驚嘆に値するものだったであろう。
キョトンと目を丸くするホムラに、信じられないものを見たかのように目を見開くエミリア。これが夢ではないかと疑うかのように、パチパチと何度も瞬きを繰り返すセンカ。
さながら時間が止まってしまったかのような沈黙がその場を支配し……真っ先に正気を取り戻したのはホムラだった。
「ホ、ホロエルちゃん……? え……ホロエルちゃんだよね!?」
混乱のまま私の身体のあちこちを見回すホムラ。
私は今、翼や光輪がないことを筆頭に、いつもの私とは異なる特徴を有している。
私のことをよく知らない誰かが今の私の姿を目撃したなら、『虚構天使ホロエル』とよく似た別の誰かという結論に至っても不思議ではなかったが……私とホムラたちの交流は、すでに日常の一部と化している。
実体化には至らない半透明とは言え、私の容姿を常日頃から見ている彼女たちが私を見間違えることはなく、ホムラは確信を持って私の両肩を掴んだ。
「さ、触れる……じゃあ、これってやっぱり実体化……? でもホロエルちゃんって、確か10秒くらいしか実体化できなかったはずじゃ……!?」
段々と私の顔を覗き込むホムラの瞳に、驚愕以外の色が宿り始める。
それは興奮。キラキラと輝くその瞳は、まるで好奇心旺盛な子どものようだった。
「実体化の時間が延びたの!? それとも新しい力が覚醒したとか!? 私の知らない間にホロエルちゃん、パワーアップしちゃったの!? なにこれなにこれどういうこと!? ねえホロエルちゃんどういうことっ!?」
あばばばばばばっ!?
私の両肩を激しく揺さぶりながら、ホムラが畳みかけるように質問を浴びせてくる。
し、信じられない気持ちはわかるけど、ちょっと落ちついて……!
勢いが強すぎて目が回るぅ……!
【おちついて! これはじったいかじゃなくて、SHAってギタイだよ!】
「え……ギ、ギタイ……?」
顔面にタブレットを突き出してなんとか意思表示をする。
揺さぶられながら書いたせいで文字はグニャグニャで漢字もろくに使えなかったが、どうにか読める程度の汚さに収まってくれたらしい。
視界いっぱいに広がった文章を見て、ホムラはやや落ちつきを取り戻した様子で目をパチパチと瞬かせた。
「……ギタイ、って……もしかして義体かしら?」
ホムラの横からタブレットを覗き込んだエミリアが、閃いたように呟きを漏らす。
「……なるほどね。なんとなく話が掴めてきたわ。つまり……今のホロエルちゃんは直接的に実体化しているわけじゃなくて、ホロエルちゃんと同じ姿かたちをした人形のようなものに乗り移る形で活動している、と。そういうことね?」
【おお! その通り! エミリアかしこい!】
「ホロエルちゃんと同じ姿をした人形……? それって要するに、人工的にホロエルちゃんの身体を作ったってこと!? デュエル科学ってそんなことまでできたたんだ……! センカは知ってた!?」
「わ、わたしもそんなことできるなんて聞いたことないよ!」
「ええ、私も……現代の技術って、ここまで進歩していたのね……」
へへへ……この反応が見たかった!
SHA。正式名称は、ソウルハート・アバター。
ソウルハート・サーヴァントの現世における分身という意味合いで名付けられたというその義体は、まさしく今その役割を忠実に果たしている。
あくまで中身は機械とは言え、侮ることなかれ。
五感に加えて、肌や髪と言った生物的な感触さえも再現されたそれは、もはや完全な実体化となんら遜色がない。
サーヴァントとしての力を十全に振るえる本来の実体化とは異なり、見た目相応の少女スペックしか発揮できないという欠点はあるものの……。
今の状態であれば10秒という時間の制約から解き放たれ、長時間にわたって実体を維持したまま活動ができるのである!
【ビックリした? ビックリした?】
「うん! もうすっごいビックリした!」
私は皆に向けてドヤ顔を決めつつタブレットにペンを走らせる。
皆の素直な反応を見て、緩む頬を抑えられない。
と……そんな中、センカが堪え切れなくなったように足を踏み出すと、手をワキワキとさせながら私に迫ってきた。
「ね、ねえホロエルちゃん……ちょっとだけ……ちょーっとだけ身体触ってもいいかな……!?」
【い】
「あっ! センカってばズルい! 私も触りたい!」
「お姉ちゃんは真っ先にホロエルちゃんの肩ガクンガクンしてたんだからズルいもなにもないでしょ!」
「……その、私も少しだけいいかしら? どんな感触なのか気になって……」
私が【いいよ】を許可を出すよりも早く、我先にと殺到したホムラとセンカ、さらに遅れて参戦したエミリアにもみくちゃにされる。
ずっと触れられなかった相手に自由に触れられるようになったのだ。
こういった展開になることは、なんとなく予想がついていた。
なので私も「しょうがないにゃあ」と、妹が増えた姉のような気分で甘んじてスキンシップを受け入れてあげようとしたのだが……。
「わぁっ……!」
「お~っ!」
「すごいわね……」
ホムラが感動したように顔を輝かせながら、親しげに私の頬に触れてくる。
センカは翼があった背中周りに興味深そうに触れたのち、思い切ったように背後から飛びついてきた。
エミリアは手首から手のひらにかけて指でなぞった後、感触を確かめるようにギュッと握り込んでくる。
……あの……なんというか……えぇと……。
み、皆さんその……私が想定していたよりも積極的と言いますか……。
ちょ、ちょっとばかりボディタッチが過剰すぎやしませんかね……!?
今までできなかった触れ合いができて嬉しい反面、なんかめちゃくちゃに恥ずかしいんだが!?
マスターなら助け舟を出してくれるかと期待して、反射的に縋るような視線を送ったけれど……。
彼女は少しだけ頬を膨らませて、どこか不貞腐れたような空気を纏いながらも、あくまで一歩引いた場所で私たちの様子を静観していた。
新しく皆と触れ合える身体を得た私のために、マスターなりの気遣いで、私が皆と交流する時間を尊重してくれているのかもしれない。
お姉ちゃん想いで鼻が高いと誇りに思う反面、やっぱり助けてほしいなんて望んでしまうのはワガママだろうか。
「ホロエルちゃん!」
「えへへ、ホロエルちゃーん」
「ホロエルちゃん……」
あ……あぅあぅ……。
皆が私の身体に触れるたび、その感触や匂い、体温が、今までにはなかったリアルな実感として全身に刻まれていく。
くすぐったくて、こそばゆくて……未知の感覚が背筋を駆け抜けて、顔だけでなく全身が沸騰するように熱くなっていく。
う……うみゅ……たらばがに……。
……うみみゃぁ!
【もうダメ! 終わり! お触り禁止!!】
ついに羞恥の限界を超えた私は、ジタバタと身をよじって三人の手から逃れると、勢いよく書き殴ったタブレットを突きつけた。
耳の先まで茹で上がったように赤くなった私を見て、三人は互いに顔を見合わせると、楽しげにくすくすと笑い声を弾ませる。
「はーい! ごめんなさーい!」
「ホロエルちゃんってば、これくらいで照れちゃって可愛いねぇ」
「ふふ……ごめんなさい。ちょっと調子に乗りすぎちゃったわ」
ぐぬぬ……! こいつら全然反省してないぞ!
謝ってるようで、その実まるで悪びれてない三人の態度に、私はムムッと口を尖らせる。
こっちはこんなにも心臓がバクバク鳴ってるというのに……!
前世のぶんも合わせたら、この中で私が一番年上なんだぞ!
もっとこう、人生の後輩として年長者を敬う気持ちを持ってほしいものである!
……とは言え、まあ。
これまでまともに触れ合えなかったぶん、嬉しい気持ちがあるのも本当だ。
これからは皆とも遠慮なく触れ合えるようになったんだし、こういうのにだってそのうち慣れる……はずだ!
「でも、これで無空さんの機嫌が良かった理由がわかったわね」
SHAのお披露目が終わって一段落した空気が漂うと、エミリアが腑に落ちたように呟いた。
「無空さんにとって、ホロエルちゃんが実体化できる時間の短さは憂いの一つだったはずよ。それを解決できる手段が見つかったなら、浮かれちゃうのも道理よね」
「うんうん。これならわたしもメイ様の機嫌が良かったっていうのにも納得かな〜」
「確かに……ホロエルちゃんと触れ合えるって知って、私もなんだか嬉しくなっちゃったし! メイちゃんが浮かれちゃう気持ちもわかるかも」
「ふふ、言うわねホムラ。そこは恋じゃないんだーって残念がるところでしょうに」
「うぐっ……そ、その話はいいでしょ! もうっ!」
見当外れの推理の件でからかわれるホムラ。その隣ではやれやれとセンカが肩をすくめている。
「お姉ちゃんは人の恋路を気にする前に、自分の恋に興味を持つべきだと思うけどねー」
「む……そういうセンカだって人のこと言えないでしょ! そういうのは一人か二人くらい恋人作ってから言ってよ!」
「わたしはまだ中学生だからいいの〜」
「……恋人が二人もいるのはダメじゃないかしら……?」
三人がいつものように賑やかにじゃれ合っているのを微笑ましく見守っていると、ふと気がついた。
そういえば……マスターはどこに行ったんだろう?
見慣れた銀髪の少女が視界のどこにもおらず、キョロキョロと周囲に視線を巡らせようとした、その時だった。
「ん」
背後から、するりと滑り込んできた細い腕。
おや? と振り返るよりも先に、そのまますっぽりと抱きすくめられてしまった。
背中に触れる柔らかな感触と、ふわりと漂うかすかな匂いが私を包み込む。
いったい誰が……なんて考えるまでもないだろう。
そっと顔を傾けて背後を窺えば、ついさっきまで不機嫌そうにムスッと頬を膨らませていた少女が、今は愛おしそうに目を細めて私の身体に腕を回していた。
「んふ……えへへ……」
私の頭頂部に顎を乗せながら、右手で私の銀髪を梳くように愛おしげに撫で、残った左手を私の手にそっと重ねて指を絡めてくるマスター。
どうやら彼女は私や皆のために大人しく我慢していたぶんの埋め合わせをご所望らしく、皆が会話に夢中になっているこの隙に、存分に私に甘えるつもりのようだ。
蕩けるように甘やかな表情を浮かべながら、私の背中にぴったりとくっつくように、ギューッと抱きしめて離さない。
まったくマスターは……いつまで経っても甘えん坊だなぁ。
以前は皆が見ている前で甘えるのは羞恥心からか我慢することが多かったはずなのだが……ここ最近は段々と遠慮がなくなってきた気がする。
自分の弱いところを見せてもいいと皆に気を許し始めた証左だと思えば、喜ばしい兆候なのかもしれないけども。
この人一倍甘えん坊な子が、果たしてお姉ちゃん離れできる日は来るのだろうかと、なんだかちょっと心配にもなってきてしまうこの頃である。
……あ。
ちなみに私はマスターに抱きつかれても、皆に触られた時ほど恥ずかしく感じたりはしない。
マスターには余った実体化時間を使って10秒間だけ甘やかすと言ったことをこれまで何度もしてあげていたので、ぶっちゃけこれくらいの接触は日常茶飯事なのである。
初めてSHAに乗り移った際、好きを連呼された時はちょっと照れちゃったけど……。
マスターとの触れ合いはもうすっかり慣れてしまっていて、むしろ心地良い、安心できるような感覚だ。
……でもだからって、匂いを嗅がれるのはさすがに恥ずかしいのでやめてほしいぞ!
私の頭に顔を埋めようとしたマスターの腕からヒラリと身を躱して抜け出すと、両腕を交差させてバツ印を作り、これ以上の抱擁は禁止だと意思表示をする。
「むぅ……」
マスターは不満げに唇を尖らせていたが……私の意志が固いことを悟ると、未練たっぷりと言った様子で私から離れていった。
というか……気になるのだが、そもそも匂いって再現されてるんだろうか?
表面の構造の変化で感触が再現されているのはわかっているが、自分がどういう匂いをしているのかはイマイチわからないというか……SHA本来の金属や機械油の匂いがする可能性が高いように思える。
もしくはそういった点にも気を遣って、清潔な無臭になるようにしてくれているとか?
うーむ……わからん。
この際だから、モモリに確認してみ……って、あれ……?
【マスター。そういえばモモリは?】
ソウルハート・サーヴァントが各々の実体化可能時間に囚われず、人間と肩を並べて過ごすことができるようにする研究――SHAは、元々モモリが進めていた研究だ。
皆にこうしてSHAを見せているのだって、モモリの許可を貰えたからにほかならない。
マスターと一緒にお願いして、快い返事がもらえて、準備室の外に出るまでは一緒だったはずなのだが……。
思えば皆と顔を合わせた時から、すでにモモリの姿が近くになかった。
キョロキョロと周囲を見回してみると……準備室の入り口である鉄扉がわずかに開いているのが目に留まる。
そこにはチラリとこちらを覗く、白衣を着た茶色の毛玉が一つ。
私が気がつくと同時にマスターが同じ場所を指差し、おもむろに口を開く。
「……あそこ」
……うん。みたいだね……。
鉄扉の陰に身を隠し、おそるおそる外の様子を窺っているのは、他でもないモモリだった。
親しい人たちの前で自身の研究を説明する時は、やけに饒舌で、目を輝かせて熱弁を振るうモモリだが……やはり初対面の人が相手だと上がってしまうらしい。
デュエル科学研究部の部長であり、優秀な成績を残した者しか入れない生徒会の書記。
複数の要職を兼任する彼女は威厳ある振る舞いをしても許される立場にあるのだが……扉の縁からヒョコッと顔を出しては引っ込めることを幾度となく繰り返すその姿は、さながら巣穴から外の安全を確認する小動物のようだった。
「メイちゃん、ホロエルちゃん。あの子は……?」
「……あの子は、SHAの開発者。地伏田モモリ」
私たち二人の視線を追って、ホムラたちもモモリの存在に気がついたようだ。
マスターが淡々と事実を告げる。
「開発者……ってことは、今のホロエルちゃんの身体を作ったのがあの子なのっ?」
ホムラの目が輝きを増す。
「ねえねえ、モモリちゃーん! こっちこっちー!」
鉄扉に身を隠すモモリに向かって、ホムラが元気いっぱいに手を振った。
けれど極度の人見知りであるモモリが、見知らぬ人に声をかけられて易々と近づいてくるはずもなく……。
むしろ注目を集めたことで余計に萎縮してしまい、ビクッと肩を震わせて扉の裏側に引っ込んでしまった。
「あ、あれ? もっと隠れちゃった……」
「はぁ……あのね、ホムラ。あなたみたいにグイグイ来る人が苦手って子もいるんだから、あんまり無理に迫っちゃダメよ。あの子、見るからに怯えちゃってたでしょう? 仲良くなりたいなら、その子が嫌がらない接し方を考えてあげないと」
「あ……うぅ。そうだね……エミリアの言う通りかも……」
エミリアの助言を受けて、ホムラはしょんぼりとしながら反省したように身を引いた。
エミリアの言うことはもっともだ。
でも、仲良くなりたい。そのホムラの心にも嘘はないだろう。
そしてそれはモモリも同じはずだ。
そうじゃなきゃ、あんな風にチラチラと私たちの様子を何度も確認したりはしなかっただろうから。
だからこそ私は、そんな彼女たちの橋渡しをするために、トテトテと鉄扉の方へ歩みを進めた。
【モモリ、大丈夫?】
「ぴぃっ!? ……あ……ホ、ホロエルちゃん……」
タブレットを掲げながら微笑みかける。
隙間に隠れていたモモリは小鳥のような鳴き声とともに小さく肩を跳ねさせたが、目の前にいるのが私だと気がつくと、安堵したように肩の力を抜く。
「ご、ごめんなさい……その……み、皆さんと顔合わせするの、少しだけ緊張しちゃって……」
【やっぱり怖い?】
「そ……それもあるけど……私なんかが混ざっちゃってもいいのかな、って……私きっと……あんなたくさんの人の前じゃ、上手くしゃべれないし……私がいなくても……皆楽しそう、だったし……私が入っても、皆の邪魔しちゃうだけなんじゃないかなぁ、なんて……」
ふぅむ、なるほど……。
確かに、すでに出来上がっている関係性の中に、一人だけ見知らぬ人が入っていくのは敷居が高いと感じることは無理からぬことだ。
人見知りしてしまうモモリであれば、なおさらというものだろう。
でも……せっかく仲良くなれるかもしれない機会なのに、一人だけ遠巻きに見て過ごしてしまうのはもったいない。
私もエゴかもしれないけど……もしもモモリが同じことを望んでくれるのなら。
【さっき手を振ってた赤い髪の子はホムラ。デュエルが大好きで、カードやデュエルの話をしてあげると喜ぶよ!】
「え、っと……?」
【水色の髪の子はエミリア。しっかり者で頼りになるよ! 気遣い上手な子だから、きっとモモリのペースに合わせて話をしてくれると思う!】
「……」
【最後の中等部の制服の子はセンカ。ホムラの妹で、ちょっとやんちゃな子だけど、根は素直でいい子だよ!】
ホムラとエミリア、センカの特徴をタブレットに書き並べ、モモリに教える。
ほんの少しでもモモリの緊張を和らげられればいいなと思っての行動だった。
【私は皆と一緒にいるの、楽しい! でもモモリが一緒だと、もっと楽しいと思う! だから……私のワガママだけど、モモリと一緒に皆と話したい!】
「ホロエルちゃん……」
モモリは胸の前でギュッと両手を握りしめると、俯きがちだった顔をゆっくりと上げた。
「な……なれるかな……? 私なんかが……そんな素敵な人たちと、お友達に……」
【モモリも素敵だよ?】
「ふぇっ!? あ、あぅ……そ、そんなこと言ってくれるの……ホロエルちゃんだけだよ……」
【そんなことないよ! マスターもノゾミも、モモリと同じ部活の人だって、きっと同じこと言ってくれるよ!】
「そ、そうかなぁ……?」
【モモリは笑顔がいじらしくて可愛いし! 研究をしてる時はキラキラしててカッコいいし!】
「ひょぅぇっ!?」
【確かにちょっと臆病かもだけど、芯は強くて優しくて! 夢に一途な努力家で――】
「ま、ままま、待ってぇっ! そ、それ以上書かないでぇ……!」
顔をカァーっと真っ赤にして手をブンブンと振るモモリ。
ただ単に事実を書き述べただけなのだが、自己肯定感が低い彼女には効果がてきめんだったらしい。
ハァハァと息を荒らげる彼女を前に、私はスラスラとタブレットに文字を書き込むと、それを掲げながら彼女の顔を覗き込む。
【大丈夫だよ、モモリ。だってさ、よく考えてもみて? さっきホムラがモモリに手を振ってくれたのだって、あの子がモモリと仲良くなりたいって思ったからなんだよ?】
「……う……うん。それはわかってる……けど……」
【友達になりたいって気持ちは、ホムラもモモリも同じ! だったら大丈夫! 最初は緊張するかもしれないけど、きっと友達になれるよ! 私が保証する!】
「……ホロエルちゃん……」
【だからモモリ。一緒に行ってみよう? 皆と仲良くなる第一歩を、踏み出してみよう?】
片手でタブレットを見せながら、もう片方の手をモモリへと差し伸べる。
一緒にいて支えてあげること。
元よりそれは、私たちソウルハート・サーヴァントにとって得意分野と言えるものだ。
「……う……うん」
モモリは迷うように視線を彷徨わせていたが……やがて決心したように小さく頷きを返すと、そっと私の手を取った。
「ホロエルちゃんが、一緒にいてくれるなら……わ、私……頑張ってみるっ……!」
握り合った手のひらから伝わるかすかな震えは、彼女が感じている恐怖と緊張の裏返しだ。
それても逃げ出さず踏み出すことを選んだ彼女の勇気は、胸を張って称賛に値するものだった。
弱々しいながらも、強い芯を感じさせる表情を浮かべるモモリ。
そんな彼女の手を、私は満面の笑みを向けながら引いた。
【いざ! 出陣!】
「は、はいっ……!」
片方の手はモモリの手と繋いだまま、もう片方の手でタブレットを持ちながら器用に画面をスライドさせて、あらかじめ書いておいた文を表示させる。
それを見ると、モモリは胸の前でグッと小さく拳を握った。
さあ、いざ! 皆のもとへ!
長くなったので2分割しました。明日続きが投稿されます。
○オマケ
・SHAの五感
味覚を除いて95%くらいは再現されている。味覚だけは実装されておらず飲食は不可能。
モモリいわく、将来的には有機物のエネルギー変換の副次機能を搭載した上で、娯楽も兼ねて味覚も実装予定らしい。
・ホロエル文字書くの早すぎィ!
ホロエル「めちゃくちゃ頑張ってるぞ!!!」
あとはシンプルに皆ホロエルが書き終わるのを待ってくれている。皆良い子。