可愛い銀髪美少女天使カードとして転生した私、マスターを導く   作:にゃっとう

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7.私たち二人の炎が――燃え尽きるまで!

 私――燃照ホムラは想起する。自分というデュエリストが、いったい何者なのかを。

 

 始まりは、まだ物心ついたばかりの頃のことだった。

 テレビで見たデュエル。その熱に心を奪われ、毎日のようにテレビの前に張りついていたのを朧気ながら覚えている。

 大きくなったら絶対にプロデュエリストになると心に決めて、その炎のような思いに突き動かされるようにして毎日を生きてきた。

 

 初めて負けた日のことは今でも鮮明に覚えている。小学生になって、初めてジュニアクラスの大会に出場した時だ。

 クラスでは負け知らずだった私だが、各地から実力に自信がある者が集う大会では、私の実力は決して抜きん出たものではなかった。

 一回戦は順調だった。いつも通り、苛烈な攻めで相手になにもさせずに勝利した。

 だけど攻め一辺倒な私のデュエルは少しでもデュエル学に精通した人からすれば捌くのは容易で、一回戦で私のデュエルを見て防御を固めた相手にはまるで通用しなかった。

 自信満々に二回戦に挑んだ私は、一回戦の勝利が嘘のように敗北した。

 

 周りはしかたがないって言った。同じジュニアクラスとは言え、当時の私は小学一年生で、相手は小学校高学年。明らかに年季が違う。一回戦を勝てただけでも快挙だって。

 だけど私はそうは思わなかった。そんな風に自分を慰められなかった。

 だって本気で挑んで、初めて勝利に届かなかったんだ。

 初めて味わう敗北は本当に悔しくて、情けなくて。それまで信じていた強い自分が死んでしまったようにさえ感じた。

 

 その後は負けの連続だ。速攻デッキのくせにライフを削るより下手にサーヴァントの除去を優先したり、得意としていた火属性のデッキを捨てて防御系のデッキを使おうとしたり。デッキとは合わないプレイングをし続けて、敗北に怯える情けないデュエルを繰り返した。

 一度は自分にデュエルの才能などないのだと絶望し、デュエルから離れようとしたことさえあった。

 

 ……でも結局、私はデュエルから離れることなんてできなかった。

 学校で、テレビで、街中で。誰かのデュエルを見るたびに、その楽しそうな熱い攻防に毎回のように視線を吸い寄せられて、足を止めて魅入ってしまう。

 もしも自分に才能がないのだとしても、永遠に弱いままなのだとしても、デュエルに魅入られた自分の心だけは誤魔化すことができなくて。

 気がついた時には、私は再びデッキを手にしていた。もう諦めたんだと言い聞かせ、かき消えたと思い込んでいた炎を心に灯して、もう一度デュエルの世界に足を踏み入れていた。

 もちろん、ただ再起した程度でそう簡単には勝てるはずもない。一度はデュエルを離れたせいで、実力だって前より落ちていた。

 

 数え切れないくらい負けて、負けて負けて負けて負けて負けて、何度も悔しい思いを味わって……。

 だけど次は絶対に勝つんだと信じ、苦手な勉強だって頑張って、幾度となく心を燃やし続けて――。

 ……そうした果てにようやく手にした一つの勝利は、涙が出るほど嬉しかった。

 やっぱり私はデュエルが好きだ。互いの信念をぶつけ合い、命の炎を燃やし合うような熱い感覚が。

 このために私はこの世に生を受けたんだと、そう感じるほどに。

 

 それから私はメキメキと実力をつけていった。

 もちろん、負けることがなかったわけじゃない。

 だけど私は負けるたびに、その負けたデュエルの記録を悔しい思いをしながら何度も見返して、その時の自分になにが足りなかったのかを考え続けた。

 

 ――あなたの強さは、自分の弱さから逃げないことにある。

 中学時代、街に潜んでいた悪の組織の陰謀を一緒に止めた私の友達が言ってくれた言葉だ。

 私からしてみれば、ずいぶんな過大評価だった。

 逃げたよ私は。敗北から。デュエルから。自分の心に嘘をついて逃げたんだ。

 でもさ、それでもやっぱりどうしようもなくデュエルが好きなんだ。

 何度炎をかき消されても、その残り火が再燃してしまうほどに。

 

 そうしてデュエルを続け、私は中学校に上がって……ジュニアハイクラスの全国大会で優勝して、いつの間にやらジュニアハイチャンピオンなんて呼ばれるようになっていた。

 最初は単純に嬉しくて、センカも祝福してくれた。

 友達もまあ、めちゃくちゃ悔しがってたけど私のことを認めてくれた。

 ……でも。

 デュエルの最中、心のどこかで退屈のようなものを覚えるようになったのはいつからだっただろう。

 

 デュエルは楽しい。その気持ちに変わりはない。

 でも強くなるというのは、そんなに良いことばかりではなかったみたいで。

 いつしか私は気づいてしまった。私に挑む人に、私と大会で当たった人の目に、諦観や恐怖、絶望のような暗い光が宿っているのを。

 あれは私の強さに屈し、勝てないと諦めている人の目だ。

 互いの心をぶつけ合うのがデュエルだ。でも片方の力が強すぎれば、それは蹂躙にしかならない。

 

 ……つまらない、と。そう感じてしまうのは傲慢だろうか。

 私は求めていた。私の心を熱くしてくれる存在を。

 私と相対しても絶望せず、共にしのぎを削り合い、強くなり続けてくれる者の存在を。

 

 

先攻5ターン目:燃照ホムラ

燃照ホムラ
ライフ:5Ar:竜を呼ぶ儀式
Ene:4
手札:4→5

無空メイ場を離れた虚構定理:5
ライフ:3Se:虚構天使ホロエル(A5000/H4000)
Ene:5(0)
手札:2

 

 

「前のターン。あなたはついてこれないなら置いていくと私に言った。なら、今度は私があなたに言わせてもらう――敗北へ急ぐことになんの意味があるの? ふふっ……私はこれでターンエンド」

 

 美しい銀髪を靡かせた私と同年代くらいの少女がそう告げて、私にターンを返す。

 グレイブ、アクアエ、フルメン……まさか場のサーヴァントが3体ともすべて除去されてしまうとは予想してなかったけど、未だ有利なのは私の方だ。

 

 あちらの残りライフは3。攻撃的なカードが多い火属性を中心としたデッキを相手するには心もとない数だろう。

 手札も2枚と残り少ない。ここからも続く私の攻めに対応しきれるかは微妙なラインのはずだ。

 それでも彼女の目に暗い色が浮かぶ様子はない。普段接している時はいつも無表情でボーッとしているのに、あのホロエルというサーヴァントが場にいる時だけは心なしか楽しそうに見えた。

 

「私のターン、ドロー!」

 

 カードを引き、それと合わせて手札を確認する。

 頭の中で戦術を組み立て……それから、場に残っているホロエルに目を向ける。

 

 ……あのサーヴァントは危険だ。

 おそらくはあのホロエルこそが、メイちゃんのデッキの軸であり根幹なんだろう。

 

 2ターン目に出てきた『無相の蛍火』のように、彼女のデッキにはあのサーヴァントをあらゆる場所から場に出す手段が豊富に入っているはず。

 ホロエルには強力な効果がいくつもあるが、着目すべきはターンエンド時のドロー効果だ。メイちゃんのターンエンド時、ホロエルはカードを1枚引いて攻撃権を回復する効果がある。

 つまりあれを出すために手札を1枚消費したとしても、その後ホロエルの効果で1枚引くことにより、手札が減らないということ。

 序盤は何度もホロエルを場に出すことと離すことを繰り返し、場を離れた『虚構定理』のカードの数を稼ぎ……中盤以降は毎ターンあのドロー効果を駆使して徐々にアドバンテージを取り返していく。

 それこそがメイちゃんのデッキの正体。長引けばリソースに差をつけられ、攻め切ることができなくなる。

 

 勝負はおそらくこのターンを含めた私のターンだけで考えて、あと2ターンか、長くても3ターン……。

 その間で勝負を決め切れなければ、メイちゃんのデッキは完全に覚醒し、中速(ミッドレンジ)戦術を軸に組んだ今の私のデッキでは手が付けられなくなるだろう。

 

「……あは!」

 

 押しているのは私のはずなのに、どうしてか敗北の足音が聞こえる。

 虚無の運命を歩む死神の手が、私の()をかき消そうと迫ってきている。

 ――そうだ。この感覚だ。私が求めていたものは。

 

「私は墓地の『竜の巫女アクアエ』の効果発動! このサーヴァントが墓地にあるなら、手札からコスト5以上のドラゴンサーヴァントを捨て、これを手札に戻す!」

 

 捨てたのは前の私のターンでアクアエが持ってきてくれた、2枚目の『炎旱竜グレイブ・ドラグニル』。

 グレイブのコストを下げる効果は非常に強力だが、そのコストは7もある。

 前のターンはアウロラの効果でコストを下げていたから出すことができたものの、現状では今から私がエナジーをチャージしたとしても使えるエナジーは5。

 『竜を呼ぶ儀式』でグレイブを出すために必要なコストは1下がるが、それでも6のエナジーが必要だ。このターン中に召喚することはできない。

 仮に次のターンで使うにしても、グレイブの効果はサポート寄りであり、あまり攻めに特化したものではない。加えて、コストを下げた後に同時に召喚できる他のサーヴァントの性能にもその強さは左右される。

 手札にはもうフルメンがいないから、『フルアクセル』を付与することはできない……。

 勝負が長引けば敗色は濃厚。グレイブを軸にした攻めは、もう頭から捨てた方がいい。

 

「そして手札から、コストを支払わずに『竜の巫女シムラクルム』を召喚!」

 

竜の巫女シムラクルム
コスト2 種別:ドラゴン 
属性:火 ATK 1000 HP 1000 

サーヴァント 

 - 効果 - 
①場に出た時に発動可能。墓地の転生サーヴァントではないコスト5以上の種別:ドラゴンを持つサーヴァント1枚を場に出し、『アクセル』を付与する。この効果で場に出たサーヴァントは『アクセル』以外の効果が無効化され、ライフカウンターを攻撃できず、このサーヴァントが場を離れた時に破壊される。

②【墓地で有効】墓地のこのサーヴァントをデッキに戻して発動可能。コスト5以上の種別:ドラゴンを持つサーヴァントをランダムに1枚デッキから墓地へ送る。

 

「っ、グレイブの効果でコストを下げたカード……まだ持ってたんだ」

 

 シムラクルムを前の私のターンに場に出しておくこともできたが、シムラクルムの効果は、墓地にコスト5以上のドラゴンがいる時にこそ意味がある。

 効果を有効に使えずとも前の私のターンで単純に打点として並べておいて、1ターン中の圧力を強くしておくのもありだったかもしれないけど……。

 なにが良くてなにが悪かったかなんて、このデュエルが終わった後で考えればいい。

 今はただ、目の前のデュエルに集中したい。

 

「そして私はシムラクルムの効果で、アクアエを手札に戻す際に墓地に送った『炎旱竜グレイブ・ドラグニル』を蘇らせる!」

 

 再び私の場に、太陽の紋章を宿した赤き竜が降臨する。

 しかしその身は蜃気楼のように朧気で、紋章も輝きを失っている。

 

 メイちゃんは蘇ったグレイブを見て目を細めると、抑揚のない冷徹な声で言った。

 

「シムラクルム……そのカードは知ってる。その効果で場に出たカードは『アクセル』を付与されるけど、その他の効果がすべて無効化され、ライフカウンターにも攻撃できない。しょせんはただの幻影……それじゃあ私のライフは削れない」

「あは! そうだね。メイちゃんの言う通りだよ。でも、ただの幻影にすぎないのだとしても、メイちゃんを守護する天使を倒すことくらいはできる! 攻撃宣言、私はグレイブで『虚構天使ホロエル』に攻撃!」

 

 グレイブが炎を吐き、ホロエルが槍を構えてグレイブに突撃する。

 

 効果が無効化されているとは言え、グレイブのコスト7相応のステータスはそのままだ。

 グレイブの攻撃により7000ダメージを受けたホロエルは破壊され、ホロエルのATK5000分のダメージを受けた残りHP2000のグレイブが私の場に残る。

 

「ホロエル……!」

「まだだよ! さらに私はエナジーをチャージして、グレイブに重ねて新たなサーヴァントを召喚する!」

 

 前のターン、アクアエで持ってきたカードは2枚。

 片方はさっき捨てたグレイブ。そしてもう片方が、今から出すこの新たなサーヴァント。

 

「何度でも再燃する。焦がれたならば、その心が燃え尽きるまで突き進め! 5エナジーを使って転生召喚! 『再燃の焔リバイヴ・H(ハート)・ドラゴン』!」

 

再燃の焔リバイヴ・H(ハート)・ドラゴン
コスト6 種別:ドラゴン 
属性:火 ATK 9000 HP 7000 

転生サーヴァント 条件: 種別:ドラゴンを持つサーヴァント1枚 

 - 効果 - 
【制約】:[転生サーヴァント]*1


①『ストライク2』

②コスト5以上のサーヴァントを転生素材に持っているならATKを+3000し、『ストライク3』*2を得る。

③場に出た時に発動可能。攻撃権を回復する。

④破壊された時に発動可能。このサーヴァントの転生素材になっていたサーヴァントをすべて墓地から場に出す。

 

 グレイブを糧にして現れた新たなドラゴンの全長は小さく、その全身はまるで燃え尽きた後の炭のように黒かった。

 けれど体中に走った炎の線のような亀裂からは煮えたぎるマグマのような血が垣間見えて、その竜が決して力尽きた弱者などではないことを証明する。

 

「転生サーヴァント……」

 

 メイちゃんは一瞬驚いたように目を丸くしたが、すぐに元の無表情に戻る。

 

「……シムラクルムの効果のデメリットは、自身の効果で場に出したサーヴァントに対してのみ働くもの。確かにあなたが今やったように転生素材に使いさえすれば、別のサーヴァントになるからシムラクルムのデメリット効果は関係がなくなる。直前のホロエルとの戦闘でグレイブが負ったダメージさえ、転生したことでなかったことになった。でも……」

 

 メイちゃんはデュエルガントレットに映る、私の場の情報に目を向けた。

 

「転生サーヴァントは、転生元にしたサーヴァントの攻撃権を引き継ぐ。つまりすでに攻撃権を使用し終えたグレイブに重ねて転生したそのドラゴンは、もう私に攻撃することはできない」

「それはどうかな?」

「……」

 

 私の返答に、メイちゃんは警戒したように目を細める。

 どうやらメイちゃんは私が出したリバイヴの効果は知らないらしい。

 ううん、それも当然か。このドラゴンは昔、私がデュエルから逃げて再起した後、何度負けても勝利を求め、その果てに私とデッキの心が共鳴して創られた、この世界に1枚だけの私だけが持つカードなのだから。

 

 メイちゃん、あなたはずっと勝ち続けてきたんだよね。

 私はメイちゃんとは真逆だ。負けて負けて負けて、それを糧にして強くなった。

 でも……負けたくて負けたことなんて一度もなかった。メイちゃんとのこの勝負も、私は絶対に負けたくない。

 メイちゃんもそうでしょ?

 だから全力で勝ちに行く。メイちゃんが私の()()そうとするなら、私もその思いに応えて、全身全霊であなたの()()してあげる!

 

「行くよ、メイちゃん! 私は『再燃の焔リバイヴ・H・ドラゴン』の効果発動! このサーヴァントが場に出た時、自身の攻撃権を回復する!」

「っ……攻撃権を使った後のサーヴァントで転生しても、攻撃できる効果……!」

 

 焼け焦げた黒い鱗の亀裂から炎が激しく噴き出し、再燃した竜が天に向かって咆哮を上げる。

 

「続けて攻撃宣言! リバイヴ・H・ドラゴンで、メイちゃんに攻撃! そしてこの瞬間、リバイヴの効果! リバイヴはコスト5以上のドラゴンを転生素材にしている時、『ストライク3』を得る!」

「3……!? なら、私のライフは……」

「そう! メイちゃんのライフカウンターは残り3だから、この攻撃で0になる!」

 

 リバイヴが竜にしては小さなその体でライフカウンターに一直線に突撃し、メイちゃんのライフカウンターをすべて削り切る。

 あとは次のターンでメイちゃんにダイレクトストライクを与えることさえできれば、私の勝ちだ。

 ……だけどそう簡単に行くとは思ってない。前のターン、グレイブが消滅で除去されてしまったことを私は覚えている。

 だからそのための対策もここで打っておく。

 

「さらに私は手札から、自身の効果でコストが0になっているスペル『消えぬ残り火』を詠唱する!」

 

消えぬ残り火
コスト4 属性:火 

スペル 

 - 効果 - 
①【手札で有効】火属性サーヴァントが自分の場に出るたび、このスペルを詠唱するために必要なコストを-1する。それが転生サーヴァントなら-1ではなく-4。

②自分の場のサーヴァント1枚を選択する。そのサーヴァントは次の自分のターンスタート時まで効果や特殊能力で場を離れない。(HPが0以下になった場合は破壊される)*3

 

「このスペルの効果の対象に選択したサーヴァントは、次の私のターンスタート時までカードの効果では場を離れない。私は『再燃の焔リバイヴ・H・ドラゴン』を選択する!」

「……」

 

 これで消滅による直接的な除去は封じた。できるのはダメージによる破壊のみ。

 さらにリバイヴには自身が破壊された時、転生素材にしていたサーヴァントを場に出すことができる効果が備わっている。

 今回の場合は『炎旱竜グレイブ・ドラグニル』だ。

 さきほどシムラクルムで場に出した時はライフへの攻撃が封じられていたが、リバイヴによる蘇生ならばそういった制限は一切ない。

 もしもリバイヴが破壊されても、その後に場に出るグレイブさえ生き残れば、グレイブでメイちゃんにダイレクトストライクができる。

 

「私はこれでターンエン――」

「――この瞬間、私は手札のスペル『生死虚実の反転』を『Qアクション0』で詠唱する」

「えっ、このタイミングで……!?」

 

生死虚実の反転
コスト2 属性:無 

スペル 種別:虚数 

 - 効果 - 
【制約】:[詠唱制限](エナジーに属性があるなら詠唱不可)


①【手札で有効】このスペルを詠唱するために必要なコストは-Xされる。(Xは「自分の場を離れた『虚構定理』を持つカードの数」を3で割った数。端数切り捨て)

②『Qアクション2』=条件:相手のターンエンド時。

③直前のターンとこのターン中に破壊された自分と相手のサーヴァントをすべて複製し、手札に加える(同名カードは1枚まで)。この効果で手札に加えたカードはエナジーにチャージできず、自分のターンエンド時に手札にあるなら消滅する。

 

「この効果で私は、この2ターンの間……つまり前の私のターンと、今のあなたのターン中に破壊されたサーヴァントをすべて複製して手札に加える。この2ターンで破壊されたのは『竜の巫女フルメン』と『竜の巫女アクアエ』、そして『虚の妖精ホルルン』と『虚構天使ホロエル』の合計4枚。よってその4枚を私の手札に生成する」

「私のカードまで……!?」

「ただしこの効果で手札に加えたカードはエナジーにチャージできず、私のターンエンド時に手札に残っているなら消滅する」

 

 『ストライク3』と聞いた時は一瞬狼狽えていたものの、メイちゃんは未だ冷静なままだった。

 彼女の目に諦観はない。恐怖もない。絶望もない。

 その目に宿るのは勝利への意志。どんな不利な状況にも屈することはなく、虎視眈々と付け入る隙を見極めようとしている。

 

「……あはは!」

 

 メイちゃんがいったいなにをする気かはわからない。

 フルメンもアクアエも、メイちゃんのデッキ構築には合っていないはずだ。

 第一、メイちゃんのエナジーには火属性がチャージされていない。

 あのカードの効果で手札に加えたカードをエナジーにチャージできないというのなら、火属性を持つ2枚のカードをメイちゃんはそもそも使うことすらできないはず。

 ……なのにどうしてだろう。メイちゃんならその意味のない2枚でさえ、有効に、効率よく活用しそうな気がするのは。

 

 ――ああ、なんて楽しいんだろう。

 

 そうだ。この感覚だ。

 私はずっと求めていた。全力の私にもう一度、完膚なきまでの敗北を――今の退屈に満ちた私を殺してくれる、最強のライバルの存在を!

 初めてメイちゃんを見た時から直感していた。メイちゃんならきっと私の人生に立ちはだかってくれるって。

 

 メイちゃん。燃え上がろうよ、一緒に! もっと、もっと!

 私たち二人の()が――燃え尽きるまで!

 

 

後攻5ターン目:無空メイ

燃照ホムラ
ライフ:5Ar:竜を呼ぶ儀式

Se:竜の巫女シムラクルム(A1000/H1000)

Se:再燃の焔リバイヴ・H・ドラゴン(A12000/H7000)

Ene:5(0)
手札:1

無空メイ場を離れた虚構定理:6
ライフ:0(無し)
Ene:5
手札:5→6

*1
転生サーヴァントは条件を満たしたサーヴァントの上に重ねて場に出す。転生サーヴァントは召喚硬直を適用しない

*2
『ストライク』に関連する効果を複数持っている場合、高い数字の効果が優先して適用される

*3
破壊や消滅、手札に戻すと言った、直接的に場を離れさせる効果に対して有効。戦闘・効果によるダメージやHP最大値の低下等は無効化できない為、それらによってHPが0になったことによるルールによる破壊は適用される




次回、決着。

カード制作裏話
・竜の巫女シムラクルム
墓地にコスト5以上のドラゴンが1体でもいれば、たった2コストで5コスト以上のドラゴンを出せるお得感のあるカード。出したドラゴンは単純に盤面処理に使ってもいいが、やはりコスト5以上を気軽に出せることを活かしたい。ホムラちゃんのように転生元にするのは定番。出したドラゴンは効果が無効化されるが、実は「破壊された時に発動可能」の効果は墓地で発動する都合上シムラクルムのデメリットで無効化されないので、そういった効果を持ったコスト5以上のドラゴンとは抜群に相性がいい。墓地効果も考えるとおそらく火と闇の混合構築で一番光ると思われる。

・再燃の焔リバイヴ・H・ドラゴン
ミッドレンジの化身のような効果を持つ転生サーヴァント。攻撃権を使った後のサーヴァントで転生しても攻撃権を回復して再攻撃できる効果、破壊されると転生元を蘇らせると言った効果は「再燃」をコンセプトにしている。相手サーヴァントを除去する系統の効果を一切持たないので攻められている時にはほぼ使えないが、自分が攻めている時に使う分には鬼のように強い。ATK9000HP7000というステータスは、同コストの転生サーヴァントであるヴァニタスくんのATK7000HP9000と対を成す感じにしたいと思って設定した。コスト5以上を素材に持っていると強くなるものの、転生元の指定はコスト5以上ではないので竜の巫女に重ねても転生はできる。本体が6コストと少しだけ重いのがネックだが、逆にあとコストが1でも軽かったら強すぎると感じるような絶妙なラインの設定ではないかと個人的には思う次第。

・消えぬ残り火
リバイヴ・Hが「破壊された時に発動可能」の効果を持っているのを見た瞬間、思いましたよね? 消滅させれば関係ないなと。そんな安易な回答を封じる一手。今後もこういったメイちゃんの消滅対策カードは出続けると思われる。ダメージによる除去とダメージ以外の除去の頼りになると感じるバランスをいい感じに調整しながらやっていけたらいいなと思っている。

・生死虚実の反転
2ターン中に破壊された自分・相手のサーヴァントを全コピーして手に入れるカード。どう考えても悪用される予感しかしないので、エナジーが属性を持っていない状態でしか使えない制限を実装。さらに加えたカードはエナジーにもチャージできなくする&ターンエンドで消えるようにすることで爆発的に手札が増えるメリットとのバランス調整を図った。基本的にはホロエルを複製して使い回すためのカード。
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