それから私と喜多ちゃんは他愛の無い話で盛り上がりました。
楽しい……ここ2年、お酒といえば深夜に押入れの中で『ストロング虚無』と『おにころ』を現実逃避の為に飲むだけだったけど、こんなに良いものだったんだ。
そういえば、私と喜多ちゃんが二十歳になって初めて4人で飲みに行った時も凄い楽しかったなあ。
確かあの時、途中でお姉さんが乱入してきてその流れでヨヨコちゃんも混じって……気づいたらみんな集まって急遽大部屋に移動して朝までワイワイして……あの時はとても楽しかっ…………
あのとき?
とても?
たのしかった?
なにいってるの?
(だ……誰!?)
そんなにたのしいばしょを
こわしたのは
わたしだよね
(えっ……!?)
けっそくばんどという
かけがえのないそんざい
それをこわしたのは
わたしだよね
なのによくもまあ
たのしんでいられるね
(や……やめっ……!)
こころのなかではさんにんとも
わたしをうらんでるよ
いまもね
(そ……そんなこと……)
うらんでるよ うらんでるよ
ほら めのまえにいる
きたさんをみてごらん
(えっ……?)
私は喜多ちゃんに目をやると……そこには、先ほどまでの笑顔は微塵も無かった。喜多ちゃんは、激しく私を睨みつけていた。
(喜多ちゃ……喜多……喜多さん……)
うらんでるよ
うらんでるよ
ウランデルヨ
「ごめんなさい……ごめんなさい……!」
「……ん!……りちゃん!!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!!ごめんなさいごめんなさいごめ……」「ひとりちゃん!!!」
喜多ちゃんの叫び声で私は我に返った。一体何が……?
「……喜多ちゃん。私……」
「突然突っ伏したかと思ったら、頭を押さえて何度も何度もごめんなさいって謝り始めて……心配したよ!!」
……嗚呼
……またか
結束バンドが解散して以降、あの頃の楽しかった日々を思い出すと出てくるもう1人の私の声。ここ1年位は出てこなかったから安心してたけど……
って、何安心してたんだ?私。
そうだよ、忘れちゃいけないんだよ。私は結束バンドと言うかけがえのない存在を壊した。その罪を私は、一生背負って生きていかなきゃいけないんだよ?
「ちょっとひとりちゃん!どうしたの!?」
突然立ち上がった私に……喜多さんが声をかける。
「喜多さん、今日はありがとうございました。楽しかったです。お会計は私が払います」
なんで私、ここに来ちゃったんだろう。なんで私……のうのうとここに来れたんだろう。
帰ったら喜多さんのLIMEはブロックしよう。喜多さんだけでなく虹夏さんとリョウさんもブロックしよう。私は一生、みんなと関わってはいけないんだ。
私は逃げるように個室を出ようとした……したのだが
「待って!!」
逃げる私を食い止めるかのように、私の手を喜多さんが強く掴んだ。
「離してください。私はここにいてはいけない人間……」「絶対に離さない……!それに、喜多さんではなく……喜多ちゃんって呼んで!」
喜多さ……喜多ちゃんの表情を見て思わず目を見開いた。喜多ちゃんは目に浮かべながらも強く私の目を見つめ続けていたからだ。
……こんな表情されたら、振りほどけないよ。逃げられないよ。
――――――――――
「実は今日ひとりちゃんに声をかけたのは、直接会って伝えたい事があったからなの」
「えっ……?」
お互い席に戻って一呼吸ついてから、喜多ちゃんは私に伝えたいことがあると告げた。一体なんだろう……やっぱりあの時の恨みを伝えるために……。
「私、今度STARRYでライブをやるから……それを観に来てほしいの!」
「……。 ……!?」
予想だにしなかった喜多ちゃんからの言葉に、私は思わず呼吸をするのも忘れて固まってしまった。