「いたいた、今日のおやつは北極の氷でかき氷だとさ」
「コンビニ感覚で北極行くよなあのタコ」
「行くぞ! 百億円は山分けだ!!」
磯貝君に誘われて複数人での暗殺決行。
作戦と言うには杜撰だけど、参加することに意味があると考え、磯貝君の作戦に乗った。
「殺せんせー俺達にもかき氷食わせてよ!」
「私もー」
殺せんせーにナイフを向けた瞬間に殺せんせーはかき氷の回す手を止めて
「笑顔が少々わざとらしい。油断させるには足りませんねぇ」
と一瞬で看破された上に避けられ、更に私達の手には私達が育てていたチューリップの花がナイフの代わりに添えられていた。
すると片岡さんが
「あ! 殺せんせー! この花クラスで育てた花じゃないですか!」
と怒り出し矢田さんも酷いよ殺せんせーと悲しみの表情を浮かべる。
殺せんせーは慌てて球根を買ってきて、他の女子達に責められながら球根を植えていく。
「うへ~殺せんせー、球根を植えるだけじゃお詫びとして割にあってないよねぇ〜」
「ヌニャ!?」
「そうだそうだ!」
「花壇のチューリップはこれで枯れるんだぞ!」
「ぐぬぬ……でしたらハンデキャップ暗殺大会を開こうじゃないですか!」
と、殺せんせーはロープで自身をぐるぐる巻きにし、木にぶら下がり、生徒達は竹槍の先端にナイフを固定した即席の槍と銃で殺せんせーを狙う。
しかし、この状況でも殺せんせーはヌルヌルと避けまくる。
「うへ~全く当たらないや」
「諦めるな小鳥遊! もう少しだ!」
すると本当に好機が到来する。
吊るしていた木の方が殺せんせーのスピードに耐えきれなくなり、枝がバキッと折れたのだ。
殺せんせーは地面に叩きつけられ、一瞬の沈黙の後
「殺れ!」
「今だ!!」
と、皆で一斉攻撃を開始する。
「にゅゃ!! しっしまった!!」
と慌てて殺せんせーはジタバタしながらロープを解こうとするがテンパってなかなか抜け出せない。
その間も攻撃をするが、あと少しというところで抜け出して校舎の屋根に殺せんせーは逃げた。
「ここまでは来れないでしょう! 基本性能が違うんですよ! バーカバーカ!!」
皆のことを煽りまくった後に
「明日の宿題は2倍にします」
めちゃくちゃ器の小さい事を言った後に何処かに飛んでいってしまった。
皆は
「今までで一番惜しかったよな!」
「この調子なら殺すチャンスが必ず来るぜ!!」
「やーん! 殺せたら100億円何に使おー!」
殺る気に満ち溢れていた。
ただ私はあの状況下でも殺れないのであれば根本的に工夫を凝らす必要と、自身の技量を上げる必要があると感じた。
そんな技量を埋めるチャンスは外部からやって来た。
新しく体育教師になった防衛省の烏間先生が体育の時間を見てくれることになり、ナイフの練習や射撃のコツなど武器及び体術、体の使い方を教えてくれることになった。
最初の授業はナイフの素振りからだが、八方向から正しくナイフを振るう事が出来ればハンデキャップ暗殺みたいなのがまた起こった際に殺せんせーを殺せる確率は上がるだろうし、何よりホシノに近づける感覚がする。
あーなんで本当に中学生になってから惰性で生きてきたんだろうかおじさんは!
こんなに楽しい非日常があるってわかればもっと努力をしていたのに……わからないから面白いってのもあるけどね。
ちなみに烏間先生はめちゃくちゃ強い。
授業中に前原君がナイフ訓練が役に立つのか疑問を持って質問をすると、前原君と磯貝君2人で殺せんせー用ナイフ(人には無害)で模擬戦をする流れになり、2人は烏間先生に一切当てることができなかった。
「俺に当たらないようではマッハ20の奴に当たる確率の低さがわかるだろう。クラス全員が俺に当てられるくらいになれば少なくとも暗殺の成功率は格段に上がる。ナイフや狙撃、暗殺に必要な基礎は体育の時間で俺から教えさせてもらう!」
そう宣言された。
私はカッコいい……そう思った。
おじさんも頑張ろうと更にやる気が湧いてくるのだった。
体育の時間が終わると、停学していた赤羽カルマ君が復帰してきていた。
カルマ君は学校内での暴力事件で停学を喰らっていたので、私と同類だけど、そんなカルマ君は先生という立場の人間に並々ならぬ感情を持っていた。
カルマ君は挨拶で握手を殺せんせーとする時に手に対先生ナイフを細かく切って貼り付けていたらしく、殺せんせーの触手が破裂した。
初めて生徒が殺せんせーにダメージを与えた瞬間である。
カルマ君は更に殺せんせーを挑発し、6時間目の小テストに移る。
ブニュンブニュンと小テスト最中に殺せんせーが壁を殴る音が響く。
先ほどカルマ君に挑発されたことが気に障ったのか、壁に対して八つ当たりをしていた。
なんか横のカルマ君はテストが終わったのかジェラート食べているし。
「あー! それは先生が昨日イタリアで買ってきたジェラート」
(((お前のかよ)))
またクラスの心が一致した様に思えた。
「どうする殺せんせー? 殴る?」
「殴りません! 残ったジェラートを舐めるだけです」
舐めるのかよと思っているとパンと殺せんせーの足の触手が破裂した。
気づかれないうちに対先生弾を床に撒いていたらしくそれを殺せんせーが踏んづけたらしい。
カルマ君はまた挑発をしたが、先生はそれでスイッチが入ったらしい。
殺せんせーの警戒度が上がる感じがした。
殺せんせーが対象をロックオンした場合その人物が暗殺を行うのは不可能だ。
小テストが終わり、今日も解散となった。
殺せんせーは再びジェラートを買いにイタリアに向かい、私はそれまで校庭を走ったり、今日教わったナイフの素振りをしたりして時間を潰した。
すると烏間先生が声をかけてきた。
「放課後も残って訓練をするとは良い心がけだ。少し指導をしよう」
「ありがとうございます」
マンツーマンで訓練をするが少し質問をされた。
「学校の資料では暴力事件を起こし、やる気の無い生徒と記入されていたが……」
「非日常が飛び込んできたらやる気になるよね〜」
「本当にそれだけか?」
「うへ~本当におじさんはそれだけだよ烏間先生〜」
私は小鳥遊星乃……決して小鳥遊ホシノではない。
ただホシノへの憧れがある一般人。
それでも小鳥遊ホシノならこの状況でどう動くか考えてしまう。
そう考えるのが楽しいからだ。
多分烏間先生は私が仮面を被っていることに気がついたのだろう。
「それよりもこう振ればいいのかな?」
「もっと脇を締めてブレを少なく振れ」
「は〜い!」
ジェラートを買い直した殺せんせーが教室に帰ってきて勉強を見てくれている。
「小鳥遊さんは要領が良いですね! 打てば響くとはまさにこのこと!」
「褒めても何もでないよ先生〜、カルマ君をどうするの」
「ヌルフフフ、勿論ピッカピカに手入れをしますよ! 先生としてね!」
「ねぇ殺せんせー、殺せんせーはなんでこのクラスの先生になったの?」
「……ある人からの願いなのです。詳しくはまだ言えませんがねぇ……」
「ふ~ん。ねぇ殺せんせー、人って死んだらどうなるのが正しいんだろうね?」
「おや? 倫理の問題ですか?」
「キリスト教的には天国に、仏教的には輪廻転生、または善悪によって天国地獄に飛ばされるハズ……それから外れた魂ってどうなんだろうって思ってね」
「外れる……ですか。先生は運命というのは信じますが、それが神様によって決められているとは思っていません。先生も少し前までは死が身近にありましたので難しくは考えていませんでしたが……出来れば良き人は天国に行くべきだと思っています。そして次の人生では更に良い人生を送るべきと考えています」
「答えのようで答えになってないよ〜殺せんせー」
「ヌルフフフ、先生も先生としてまだ未熟ということでしょう。何か思うところがあるので?」
「いや? 聞いただけだよ〜」
「ヌルフフフ、では次の問題に入りましょう」