夕方の光がとある学校の教室を照らす時間。
最上階の隅の教室で一人の青年がいた。
「くかー」
漫画のような寝息を立てている青年はアイマスク着け、上を向きながら爆睡中である。
「すぴー」
尚も眠り続ける青年の机の上にはポツンと目覚まし時計だけが置いてあり、その設定時刻から既に2時間ほど経過しているようだ。
暫くすると遠くから軽い足音が聞こえ、それは段々と大きくなり、この教室の前まで来ると止まった。
ガラリと教室の扉が開き、一人の少女が入ってくる。
「!!……まだ寝てるんですか」
それは黒い髪にピンクに近い緋色の目をした少女だった。
少女はツカツカと青年の前まで移動すると青年のアイマスクを取ってゆさゆさと揺さぶりを掛ける。
「最終下校時刻は過ぎてますよ。早く起きてください」
「ん……?」
それにより、青年は目を擦りながら椅子から身体を起こすと彼女を見詰めた。
「なんだ
「きゃ!?」
一言、そう呟くと青年は彼女を引っ張り、抱き寄せる。
「梨月愛可愛いよ…梨月愛…」
「ち、違います! 私はあなたの妹さんではありません! ソーナ・…支取蒼那です!」
「すぴー」
「って寝ないでください!?」
◆◇◆◇◆◇
「いやー、すまない。蒼那が梨月愛に何処と無く似てるからつい」
「寝ぼけるのもいい加減にしてください…」
場所は変わって昇降口。そこで完全に起きた青年と、支取と呼ばれた少女が話していた。
「全く…仁慈さんはもっと自分の立場を考えた行動をしてください。多くは望みませんがせめて…」
青年の名は
そして、入学試験首席、さらに全ての教科で最高得点に輝き続け、今のところ無遅刻、無欠席という書類だけ見れば完璧超人である。
だが、その実態は常に教室で寝ている生徒だ。しかし、テストの点数は常に首位で、問題などを出すために起こしてもどんな難解な問題でも即答で答えるから教師も手に負えない。
無遅刻、無欠席の理由も卒業した時なんか貰えるからというだけの理由だったりする。
ちなみにこの支取蒼那という少女との付き合いは1年生の頃からずっと、同じクラスの隣の席にいるという関係であり、腐れ縁と言ったところであろう。
更正のために初めの頃は奮闘していた蒼那だったが、いくら頑張ろうとも空回りし続ける事に疲れ、3年生となった今となってはただ願うだけになっているが…。
「聞いてますか! そもそもあなたは…」
「パシャッと」
「………………」
仁慈はピロリロンというシャッター音を立ててるスマホで蒼那の写真を取った。
「ほら、可愛く撮れた。将来はカメラマンにでもなろうか?」
そこには 腰に手を当て、指を指し、眉を潜めながら口を開けている蒼那が写っている。
「あなたという人はいつもいつも…」
蒼那は手を瞑り、拳をわなわなと震わせ、脳裏に様々な小言を思い浮かべてから数秒後に強く目を見開く。
しかし、そこに彼の影も形もない。
「え?」
辺りをキョロキョロと見回すと、校門の方で手を振っている彼が見える。
「ま、待ちなさい! まだ話は…」
「明日また聞くよ」
彼は大声でそう言うとそのまま校門を出て行ってしまった。
「………………全く…」
蒼那は溜め息をつくと校舎の中に戻って行く。
ちなみに彼女にとって腰に手を当てながら、指を指し、表情をコロコロと変えれるような人物は彼ぐらいだったりするのも事実である。
◆◇◆◇◆◇
帰路についていた彼は街中から外れ、閑散とした場所に建っている広い中庭を囲むように建てられた数棟の集合マンションの入口で足を止めた。
中庭へと続く、大きな入口の上には"メゾン・ヴァーミリオン"と書かれている。
だが、彼が足を止めた理由はそこではない。
ここから見える中庭の丁度中央に巨大な案山子が巨大な血だらけの肉塊に膝を立てて座っていたからだ。
さらに何かを咀嚼しているように見えるが、こちらと目が合うとそれを口に放り込んだ。
彼はそれを見て柔らかい表情になるとその案山子の20mほど前まで歩いていった。
「"スケアクロウ"か。お出迎えって空気ではないな」
その言葉をきいたスケアクロウという案山子はゆらりと立ち上がった。
身長は4mほどの巨大な案山子で、圧倒的な威圧感、それと隠さない濃厚な殺気を放っている。
スケアクロウの身体は藁と青い袋で出来ているようだが、両手の先が血染めの鎌になっており、両足の先も鈍い色の剣になり、それらから足下の肉塊のであろう血が滴り落ちる。
スケアクロウは肉塊から降り、両手の鎌を彼に向けた。
「脳みそ…くう…」
そう呟いたスケアクロウは音もなく地を蹴ると、次の瞬間には彼に両手の鎌を降り下ろしている。
「ほー、大したものだ。踏み込みとそのスピード、そしてパワーだけならノエルとも渡り合えるだろう」
だが、彼は身体を少し傾ける事でそれ避けていた。風を切った鎌はコンクリートの地面に深く突き刺さり、彼が片足で両鎌を踏んでいるために完全に抜けなくなっているようだ。
それを見たスケアクロウは片脚を振り上げ、剣先で彼を切り裂く。
剣の脚先に一瞬、掛かった重みからスケアクロウは確かな手応えを感じ、気分を高揚させる。
しかし、次の瞬間にその気持ちは萎んでいった。
「だが、太刀筋が素直過ぎる。だから見切りやすい」
空に突き立つ脚の剣先に彼が片足で乗っていたからだ。
遊ばれるようにあしらわれる。一塊の剣士ならば耐え難い苦痛だろう。だが、スケアクロウはそのような素振りは見せず、静かに彼の言葉を聞いていた。
「そんなやり方じゃ俺の脳は喰えないぞ。もっと精進するんだな」
彼の言葉を聞き終えたスケアクロウはゆっくり脚を地面に下ろすと、彼が剣から降りる。
「わかった…もっと賢くなる…今度は剣を抜かせる…紅蓮の王…脳みそ…くう…」
それだけ言うとスケアクロウの身体が崩れ、ただの藁山になった。そして、藁から煙を出さない黄色い炎のようなものが立ち上ぼり、すぐに全ての藁山は燃え尽きてしまう。
彼は肩を竦めると溜め息混じりに言葉を呟く。
「抜かすも何も剣は部屋に置いてあるんだけどな…学校には持ってかねえだろ」
ふと、彼は空を見上げた。
「誰か知らんが隠れて見るなら拝観料取るぞ?」
すると空の一部がモザイクが掛かったかのように歪み、代わりに人のようなものが宙に浮いている。
「いやはや流石は王サマ! 最近は戦いもありませんし、腕が鈍って無いようで安心しましたよ」
それはニヒルな笑みを浮かべる道化師の服装をした男だった。
「"ケフカ"か」
ケフカと呼ばれた男は地面に降りると顔を少し歪める。
「酷い臭いですねぇ…燃やしましょうか? 血が腐ると酷く臭いますからオススメしますよ」
ケフカは掌に赤い球体を出現させるとそれを肉塊へ向けた。彼の指示さえあれば即座にそれを放つようだ。
「まあ、ちょっと待て」
ケフカを手で制した彼は肉塊へと近づく。
スケアクロウが座っていた巨大な肉塊は近くで見ると、全身が切り刻まれており、無事なところを探す方が難しい有り様だが、人のような特徴を残した生き物の死骸だった。
頭頂部から後頭部に掛けてが開かれており、中には虚空が広がっていた。すなわち
唯一無事な恐怖に歪んだ表情で固まり、片目の取れた人の顔を見て、何を思ったか彼はスマホを取り出すと何かを確認し始める。
暫くすると彼は嬉々とした顔になった。
「ビンゴ、S級はぐれ悪魔」
こんなものを置いておいたのはスケアクロウなりの迷惑料だろうか。
はぐれ悪魔の危険度はSS~Fまでのランクで表され、A級からは自らの主人を殺したはぐれ悪魔である。その1つ上のSともなればかなりの実力者だろう。
それをここまで一方的に惨殺できるということはスケアクロウはかなりの実力を持っているのだろう。
ちなみにスケアクロウも彼の使い魔の1体である。主人に牙を剥こうと使い魔の1体である。
「あのイカれ藁頭も少しは利用があるってか」
「価値のない奴なんていないさ、アイツも直に俺の脳みそを食べるかも知れないぞ?」
「縁起でもねぇ…"アルカナストーン"は王サマだけに似合うんだ…。なが~く、寝るなら未だしも……また、絶対死なんてぜーたっいに許しませんよ!」
「冗談だ」
彼は鬼気迫る様子のケフカを宥めながら一本の電話を掛け、直ぐにそれを終えるとマンションへ入ろうと足を進める。
「おっと、大切なことを忘れておりました」
その途中でケフカの言葉を聞き、彼は足を止めた。
対するケフカは深くお辞儀をする。その時のケフカの表情は真剣そのもので、いつもの彼を知る者ならば目を疑うような光景に映るであろう。
「お帰りなさいませ…"紅蓮の王"」
「ああ、ただいま」
これはとある世界でありとあらゆる神魔霊獣と、その世界に迷い混んできた者たちを統べ、世界の王となり、激闘の果てに滅んだ"紅蓮の王"の魂を受け継ぐ男の物語である。
人物紹介
白髪に紅蓮の瞳をした紅蓮の王の魂を受け継ぐ青年。紅蓮の王の記憶は断片的にしか無いが、体内に7つのアルカナを宿し、紅蓮の王の配下を使い魔を何時でも呼び出せる能力を持つ。しかし、当の本人は拝金主義の上、超絶シスコンという中々に残念な性格をしている。
ちなみに使い魔曰く、ニドに瓜二つの容姿らしい。
どうでもいいが公式でリシアよりバスト(胸囲)がある。
個性が過ぎる使い魔たち
スケアクロウ
不死の
ケフカ
ホワーホッホッホ。