「それじゃあ、強化合宿のメニューを発表するぞー」
とある山奥の別荘の大広間にポツンと置かれたホワイトボートの回りにリアス・グレモリー以下グレモリー眷属+紅蓮の王の妹ことリシアが集まっていた。
そして、ホワイトボートの前でマジックを取っているのは無論、紅蓮の王こと朴野仁慈である。
「そうだな。まずお前らがどれぐらいの強さか大体ここに書き出してやろう」
そう言いながらスラスラと書き始める彼。
「あの……朴野先輩?」
おずおずと言った様子でグレモリー眷属のポーンこと兵藤一誠が問い掛けた。
「ニドで良いぞ。と言うかそっちの名前じゃないとイマイチパッとしないんだよな」
「あ、はい。ならニド先輩」
「なんだね? 後輩くん?」
「なんでその……俺たちの合宿にいるんですか…?」
その言葉に彼が止まる。回りを見ればリシア以外はイッセーに同意するように首を縦に振っているようだ。
「………………ふむ、説明しなかったのか
リシア?」
「だって兄さんが本当に来ると思わなかったんだもん。それに兄さんって思い付きで生きてるイメージあるし」
「ええぇ……」
苦い表情はすれど否定しない辺り、この男も自覚はしているのだろう。
「えーと……要するに俺はお前らの強化合宿をそこのリシアの要望でより濃厚な物にするために来たわけだ」
「兄さん勝手に私が言った事にしないでよ」
「黙らっしゃい。よし、書き終わったぞ」
彼は周りの者を一切無視し、2度ほどホワイトボートを叩くことで視線をそちらへと向けた。
リアス・グレモリー 3500
姫島朱乃 2700
塔城子猫 1200
剣士くん 800
後輩くん 5
「ちなみに神器は勘定に入れていないぞ。それとアーシアちゃんは外してる。一週間で前線には出せないだろうからな。まあ、目安程度だからそんなに本気にするなよ? どっかの7つの珠を集める漫画とは評価基準も違うからな?」
「あの…俺と木場の名前覚えてないん」
「さて何か質問はあるか?」
「いや、まだニド先輩の」
「さて何か質問はあるか?」
「む、無視ですか…」
イッセーは三文字の絵文字になりそうな体勢で項垂れた。
合宿に彼がいることに対して意見するのはダメらしい。と言うか既に決定事項のようである。まあ、リアス・グレモリーからしても紅蓮の王は兄の友人であり、少なくとも自分達よりも遥かに高い実力を持つ男。手を借りない手はないだろう。
「なら焼き鳥野郎はどれぐらいなんですか?」
「焼き鳥……ああ、フェニックスの阿呆か」
彼は復活したイッセーの話を聞き、暫く顎に手を当ててから呟いた。
「この換算でいけばライザー・フェニックスは精々5万が関の山だろうな。まあ、俺は見たわけではないから暫定的な評価だが……ああ、再生能力は勘定に入れてないぞ」
「3万ぐらいよ。兄さん」
「そうか、なら3万か」
そう言って思ったよりも少ないんだなとでも言いたげな兄と、それを歯牙にも掛けない様子の妹。
一方、数値を聞いた事で開いた口が塞がらない様子なのはイッセーだろう。他の眷属とリアス・グレモリーはある程度予想はしていたのか同様は無いようだ。
「あ、アイツってそんなに強いんですか…?」
「そうだ。それに腐っても不死身のフェニックス。持久戦ならまずお前らに勝ち目は無いぞ。やるなら一撃で吹き飛ばす事だな」
「い、一撃って…」
「"赤龍帝の籠手"があるお前なら可能だろう? 単純考えて1を10回倍化すると幾つになる?」
「え? えーと…」
「1024だ。つまり戦闘力たったの5の君でも5120になるわけだ。どうだ? 君の宝具がどれだけチートかよくわかったろう?」
「ほ、本当ですか……」
「ああ、だから君をこの合宿で鍛えれば鍛えるほどワンチャンあるわけだ。グレモリーもそれが狙いだったのだろうな」
「ええ…そうね」
「………………はぁ…」
彼は溜め息を吐くとホワイトボートを手を当てた。
次の瞬間、ホワイトボートが原子分解でも起こしたかのように粉々に消し飛び、彼から圧倒的な怒気が放たれたことでそこにいるリシアを除いた者たちの額に汗浮かんだ。
「馬鹿かお前ら? 禁手抜きなら10倍ですら100秒掛かんだぞ? 戦闘中はコンマ1秒すら無駄には出来ん。相手が始めから殺しに掛かってきたらどうする? ええ? そもそも長期的な戦闘中に万全の攻撃など出来る方がおかしいのだ。それに貴様ら赤龍帝の籠手が神滅器の中でも特に死ぬほどの肉体的負荷を掛けることを理解していないだろ? 神器を使わねばマトモに戦闘も出来ない後輩くんではどんなに頑張ろうと確実に終盤までは残れないだろうな。気力だけで勝てんなら悪魔に上級だ下級だなんて区別は付かねぇんだよ。これで勝とうだぁ? リシアのワンマンゲームでもしたいのかぁ? ああ"!?」
「兄さんどうどう。アルカナ出てるよ」
「…………おっと少し熱くなりすぎたな。失敬失敬」
そうは言うが既に空気は通夜のような状態だ。これまで学校ですら見たことのない彼の明らかにブチキレている様子に皆、親に叱られた子のようにやり場のない目線を交差させ顔を伏せている。
「と言うわけでリシアの今後も掛かっているんだ。貴様ら生半可な覚悟か、中途半端な実力で望むようならこの場で潰れたトマトのような物体に変えてやろう」
今後"も"、ではなく"が"の間違いだろう。まあ、今の彼に妹を除いて突っ込む勇気のある愚か者はこの場に居ないだろうが。
「その為に貴様ら全員に相応しい
完全に紅蓮の王と言う名と権威と実力を無駄遣いしている男の独壇場である。ワタミである。聖書の神さえ今の紅蓮の王からは裸足で逃げ出すのは想像に難しくないだろう。
「勿論、俺がこの強化合宿を仕切る事に異論なんて無いだろうな? 後輩くんらよぉ?」
そう言うとイッセーを中心にその場の全員は水飲み鳥のようにカクカクと首を縦に振った。
「よろしい…では早速始めようか。楽しい楽しい強化合宿をなぁ……」
ちなみにあえて言っていないようだがさっきの換算だとリシアは1億2000万、天草四郎は3億ぐらいだったりする。
こうして紅蓮の王が使い魔から選抜した地獄すら生温いと感じるような修羅達による猛特訓の一週間が幕を開けるのだった。