大怪獣バトルウルトラモンスターズEternal 作:リクソンLv.6
「あつ〜い…暑すぎるっスよ……」
「暑いって言うな……余計に暑くなるだろーが……」
俺が目を覚ましてから数時間が経過した。今は兎龍丸の修理作業を行っているところだ。兎龍丸は大破…。いや逆にゼットンの火球+墜落の衝撃込みでここまでしか壊れていない事の方がおかしいが、そんなことを考える余裕さえも塗りつぶしてくる猛烈な暑さで俺もレイジも潰れかけていた。
「なんで…リーダーはそんなに…平気そうなんスか……?」
「暑いのには慣れててな。」
袖を捲ってはいるがリーダーは依然、飄々とした顔で作業を続けていた。メトロン星ってそんなに暑いのかな……
「よし、2人とも!休憩に入ろう。水分補給も忘れずにな!」
「「は〜い……」」
兎龍丸の影に入りレイジにペットボトルを渡す。喉を通る水の冷たさが心地よく、夏の体育終わりを連想させた。
「惑星ブラムで食糧と水分を多めに仕入れておいて良かったっスね。じゃなきゃ今頃ミイラっスよ……」
「だな……」
「2人とも来てくれ!」
リーダーに呼ばれて兎龍丸の船内に入る。
「「す、涼しい!?」」
修理作業前まではサウナ程の暑さだったはずの船内がここまで涼しくなるとは思いもしていなかった。それだけでは無い、モニターやコンピュータ系統も一部復活していたのだ。
「その場しのぎでしか無いが…とりあえずはこれで暑さ問題は解決できたな。とはいえ、現状の兎龍丸の損壊率は約60%前後。このままでは戦闘はおろか飛ぶことすらままならない…」
「やっぱりそうっスよね〜」
リーダーの説明を聞いて既に諦めていたような口ぶりでレイジは返答する。……まぁ無理もないが。
「とにかく今はパーツが足らない。墜落した時の衝撃であちこちに散らばってしまったのだろうな。」
「どうにかして、探しにいくってことですか?」
俺の質問にリーダーは首を横に振る。どうやらそうでは無いみたいだ。リーダーは作業用グローブをキュッと嵌め直して、こう言った。
「仲間を探す。」
◆◆◆
数分後、俺とレイジは再び兎龍丸の外にいた。
「それで、なんでオレたちなんスかぁぁあ!!」
「まぁまぁ…仕方ないだろ。リーダーが船から離れる訳にもいかないんだし……。」
レイジが天に向かって叫ぶのをなだめながら延々と続く砂漠を歩き続ける。2人のバックパックには3日分の食糧と水が詰め込まれ、砂漠の夜はバカにならないと言って押し込められた防寒着やらが入っておりそれなりに重い…。
「でも本当に居るんスかね?オレたちみたいに墜落した宇宙人とか。」
「うーん……リーダーが即席で作ったレーダーが生命反応を感知したら知らせてくれるらしいし希望はまだあるんじゃないか?」
「そりゃ無いよりマシっスけど居なかったら詰みっスよ……」
レイジにそう答えつつ、俺はレーダーを見つつ進行方向へと視線を移す。砂、砂、砂……。代わり映えのしない風景は多少の変化はあれど全くもって変わる気配はなかった。
数時間は歩いただろうか、もうどっちが右か左か北か南かすら分からなくなってくる。時に休憩を取りながら砂しか無い道無き道を進む。
「あっつぃ…溶けちゃいそうっスよ……」
「あぁ……」
もはや返事を返す気力すら湧いて来ない。恒星からの日差しを遮る為に着たマントのような服がこの暑さを倍増させている気がする。
「あぁぁ……ん?ハル先輩!あれ見てください!誰かいるっス!」
「!」
レイジの指差す方向には確かに誰かがこちらに向かって手を振っている。───それに何か叫んでいるような…?
近づくと徐々に全容が見えてきた。
「近くに宇宙船は無いみたいっスけど…あ!あの人砂に足取られちゃってるっスよ!」
「えぇ!?」
急いで傍にかけつけると確かに砂に足を取られて動けなくなっているようだ。俺とレイジが助け出そうとすると思いもよらない言葉が2人を襲った。
「どうして近づいてきたんだ!僕が必死に近寄るなと叫んでいたのにも関わらず!あーあ…君たちも終わりだ……」
「助けに来たってのになんスかその態度!」
レイジはその傲慢な態度に腹を立て声を荒らげる。
──ピッピッピッピッ!
レーダーが険悪な空気を切り裂くように鳴った。つまり急速に接近する生命反応があるという事。それと同時にその人物は顔を青ざめながら叫んだ。
『ここは、アントラーのナワバリなんだぞ!!』
突如流砂が発生しレイジとその男性が蟻地獄に引きずり込まれていく。ハルは手を伸ばしその手を掴み、男もレイジの腕を掴んだ。蟻地獄の中心からエサはまだかとアントラーが顔を出しレイジの足先に迫る。
「ゴモラ……はまだダメか!頼む!ラゴラス!!」
『バトルナイザー・モンスロード!』
光球がバトルナイザーから射出され発光しラゴラスが出現すると冷凍光線でアントラーの右顎を凍らせる。アントラーの意識がラゴラスに向いた隙をついてハルは2人を蟻地獄から引きずり出した。
「彼は一体……」
「ハル先輩は怪獣を操って戦う"レイオニクス"なんっスよ!」
「レイオニクスだって!?」
レイジは自分の如く胸を張って俺の事を語る。語られている側としては少々恥ずかしいというのが本音だ。
「キシャァァアァア!」
食事の時間を邪魔されたからかラゴラスに敵意を剥き出しにして叫ぶ。アントラーは砂塵を上げながら全身を地上へ繰り出した。
──ラゴラスとアントラーの戦闘が始まる中、それを遠くから見つめる影が。腰の鞘から刀を抜くと刃には葉型の眼帯と紅の隻眼が映る。
「レイオニクスか、懐かしい響きよ…。」
一方ハルとラゴラスはアントラーに苦戦を強いられていた。アントラーのホームグラウンド故か見事に翻弄されてしまっている。地面からの奇襲、砂塵による撹乱、更には磁力光線で動きを制限されてしまう。
「くっそ!まずは相手の流れを止めないと!」
ラゴラスが攻撃をする寸前にはアントラーは地中に潜り回避し奇襲するという言わばテンプレートが出来上がっていたからだ。
アントラーは砂塵を巻き上げながら三度地中に潜り、ラゴラスの背後から奇襲を仕掛ける。
「ラゴラス!後ろだ!」
背後から襲いかかるアントラーを尾ビレで叩き落とし冷凍光線を撃つ。舞った砂塵を同心円状に凍りつかせながら光線はアントラーに向かう。
「キシャォオォオ!」
危機を察知したのか当たる直前、地中に潜り右腕を掠めた程度で直撃を回避されてしまった。普段なら掠っただけでも瞬間的に凍りつくところだが、ここは砂漠の星。凍りついた部位も地面に潜られると即座に溶けてしまうのだ。
直後、地中からアントラーが姿を現しラゴラスの背後で磁力光線を放つ。ラゴラスが流砂に足を取られバランスを崩した隙に蟻地獄へ引きずり込もうとジリジリ引きずり込む。
「キィエェェェェエ!」
「まずい……!」
──その時だ。
ズドン!!という音と共にアントラーの動きが一瞬、止まった。背後からしたその音に驚き振り返ると男がバズーカを抱えているではないか。
「アントラーに特効薬を撃ち込んだ!今のうちに!」
「ああ!ラゴラス、冷凍光線だ!」
ハルはニッと笑うとバトルナイザーを掲げラゴラスに叫んだ。顎の力が弱まりラゴラスは窮地から脱すると共に反転しゼロ距離で冷凍光線を放つ。-240℃の冷凍光線を浴びせられたアントラーはたちまち全身が凍りつきその場に倒れ込んだ。衝撃でアントラーの胴と頭が分断され砂と氷の結晶、その冷気が舞ってハルたちは思わず目を塞いだ。
「いや〜まさかアントラーを倒してしまうとは!」
「あなたのおかげです。ありがとうございました。」
「おっと自己紹介がまだだった!僕はルーク・アランディット。これでも僕は商人でね、アントラーが苦手だって噂の石を仕入れたんだが、あそこまで効くとは。」
ルークはそう言うと砂の中から荷車と思われる残骸を引っ張り出し幾つか、商品の状態を確認し始めた。
「商人ってことは近くに街とかあるんスか?」
「あぁ。近くでは無いけど──」
そう言ってこの先にアラモール王国という国があること、この星の名前が「デュサリア」だということを教えて貰った。こちらも事情を話すとルークは快く宇宙船のパーツを探すと誓ってくれた。
「とりあえずリーダーに連絡は入れたっスけどこれからどーするっスか?」
「リーダーは何か言ってた?」
「えーっと…船のシステムはかなり修復できてるから後はパーツだけだって言ってたっス!」
「よし、とりあえずはアラモール王国に行こうか。」
話が決まったところでルークが入ってきた。
「まとまったみたいだな。それじゃあ王国に向けて出発しようか。」
ルークは商品の入った麻袋を背負い直し、3人は王国目指して歩き出した。
「!」
ふと、怪獣の声が聞こえた気がした。それも1体や2体じゃない。十数体……いや何十体もの咆哮が。断末魔が。それが頭から全く離れようとしない。段々と鼓動が高まりを見せ、動悸も激しくなっていることに気がついた。
「ハル先輩?」
振り返ったレイジが声をかけてくれた瞬間、それら全てが元々無かったかのようにスっと止まった。
「なんだったんだ……今の…。」
2人の背中に置いて行かれないよう走って傍に近づいた。
───バトルナイザーが怪しく光り、ハルの影が歪な形に伸びていた事に気がついた者は誰一人として居なかった。
To be continued…