大怪獣バトルウルトラモンスターズEternal 作:リクソンLv.6
「……あれか。」
門の外まで伸びる長蛇の列を見て、男は目標地点に到着した事を察知する。今まで破壊してきた惑星は数あれど、この星は10本の指に入るレベルの酷さだ。民も植物も水さえもが痩せこけ、皆明日を生きることで精一杯……加えて、あれが事実なのであれば──
◆◆◆
「ちょっと待ってちょっと待って、ちょっと待って下さいってば!」
「何かご不便ございましたでしょうか?」
1人の兵士が尋ねる。何故か今、俺とレイジは城の中を歩いている。──周りを兵士たちに囲まれながら。
どうしてこうなったかというと……
─約1時間前─
バロッサ星人たちとの戦闘を終えて、帰還した俺を待っていたのはルークやレイジでもなく十数人の兵士たちだった。俺をひと目見ようと集まったのか街の人々がその外側を囲んでいる。
「国王陛下が城でお待ちです。同行をお願いします。」
「あ……」
しばらく忘れていた。俺は別の惑星から来た人間で更には怪獣を操るとなれば、不審がられるのも理解できるしこの体に何をされるか分からない。監禁、解剖、まさか拷問とか……!?
頭の中でこれから受けるであろう事柄をひたすら想像し、1人で怖気付いていると人混みを掻い潜りレイジが割って入ってきた。
「ハル先輩!よかった……無事だったんスね!それでこの集まりはなんスか?」
「さあ…?」
「あなたはハル様というのですね。ではハル様、城までご同行を。」
兵士たちの中で他とは違う防具を着た、恐らく兵士長らしき人物が手を差し出す。悪意は感じないがそれが逆に不気味さを醸し出していた。
「ちなみになんでハル先輩が城に呼ばれてるんスか?」
「おっと!これは失礼致しました。ハル様は我々の国に迫る怪獣を寸前で食い止め、この国を救って下さった事から国王陛下が我が国の英雄として城に招き入れたいとのことなのです。」
「「え、英雄!?!?」」
◆◆◆
──そして今に至る。
「いやー、それにしても先輩が英雄だなんてオレなんか嬉しいっスよ!」
「……」
そもそも俺は来るつもりも無かったのだ。バロッサ星人たちを倒したのは俺じゃないし……そんな事あの状況下で言い出せる訳もなく…。レイジは俺の同伴者という理由で城に招待されたようだ。
城はかなり豪華な造りで城下町とは比べ物にならないくらい華やかで城に仕えている人たちは皆生き生きとしていた。
目の前に金で装飾された美しい扉が現れ、兵士長が声を大にして俺たちが来たことを伝える。
この先にこの国の王が……
ギィという音と共に扉が開く。縦に長い部屋には総勢20人近くは座れるであろう椅子と机が用意されており1番奥には、予想した通り地上で暮らす人たちより一回りも二回りも大きく肥えた王冠を被った人が座に着いている。その手前にはちょび髭を生やした白髪の男と頭の頂点がテカる丸メガネの男が座っている。
アレが王と側近か──。
「ようこそ!我が城へ。英雄、ハル殿。」
「あ、はい…。」
こういう場に慣れていないからか自然と体に力が入る。レイジも同じようだ。ちょび髭の男が髭を弄りながら口を開く。
「ハル殿の活躍は聞いてますぞ。怪獣を操り、この国を守ったと。」
「えっと…どうも?」
席に案内され王の対面に座らされる。食事が運ばれ机に料理が次々と並び、金のワイングラスにはそれは美しい透き通った水が注がれた。
「どれもこの城の者が作った一級品の料理でございます。お召し上がりを。」
メガネの男にそう言われるが、城外のことを見てくれば誰も食べる気にはならない。それにルークから──
『あのクソ国王がわざわざ城に呼ぶとはね…気をつけた方がいい。ヤツは自分の為なら手段を選ばないからね。』
と言いつけられていたからだ。
「どうかしましたかな?……それとも──ん?」
兵士が焦りながら国王の元へ走り耳打ちで何かを伝えている。それを聞いた国王はため息をつきながら兵士を手で払うと気にせず料理を食べ続ける。
「勝手にさせておけ。どうせくだらんボヤ騒ぎだ。」
「ハル殿、気にせず食べて下され。」
「どうして──……」
料理を貪る3人のその醜悪な姿が俺には限界だった。首元までつっかえた言葉がいよいよ口まで上がってくるのを感じた、その時。
「誰だ貴様!この部屋に近づk……」
「貴様よくも!ぐあぁぁっ!」
部屋の外で打撃音と金属が叩き落ちた音が響き、兵士長が扉を破って部屋に飛び転がってきた。その衝撃で料理が散乱し、全員が突然の出来事に目を開いて扉の方へ視線を向けている。
直後、部屋の前に1人の男が現れた。
そいつは白髪のボサボサ頭に鋭い目つきの若い男だった。黒のマントを羽織り、上半身はアーマーと謎の装置が付いた特殊なスーツを着ており下はこれまた黒いズボンを身につけている。様相は俺と同じか少し下ぐらいだろうか…。男は懐から拳ほどの大きさの物体を取り出すと引き金を引いた。するとその物体の先端から眩い光が放たれる。
「!」
「うわっ!」
俺はレイジに飛びつき床に伏せる。
それが銃であると気づくのがほんの少し遅ければレイジは撃ち殺されていたところだった。
「だ、誰だ貴様は!」
国王の怒号にその男は反応したが、特に何も答えずただ国王の方を見ているだけだった。
「……まあいい。おい兵士共!こいつを捕らえろ!殺しても構わん!」
兵士たちが剣を抜き男に向かって飛びかかる。しかし男はそれをひらりとかわし、次の瞬間には目にも留まらぬ早さで兵士たちに襲いかかり次々と倒していったのだ。
腰を抜かし地面に座り込む3人に銃を突きつけながら男は低い声で言う。
「『さぁ、選べ!ここで死ぬのを待つか……。』」
「ひぃぃ……!」
「『それともこの俺に殺されるか……だ!』」
その声と表情は怒りに満ちており、真っ直ぐに3人を捉えていた。再び引き金が引かれる瞬間その手から銃が弾き飛ばされた。
「おい貴様…何のつもりだ?」
「それはこっちのセリフだ!お前こそ何が目的だ!」
ハルはゆっくりトライガンナーを下ろし男に訊ねる。
『この星は腐っている。』
「え?」
「……この星の真実を教えてやろう──。この星はかつて決して豊かとは言えなかったが少なからず今よりも数倍、自然や水、村が存在していた。いつしかこの星で1番目と2番目に大きな水源があった地に国ができ栄えていった。」
「おい…よせ!やめろ!」
国王が話を遮ろうと抵抗するも男に一蹴され押さえつけられる。男はニヤリと微笑み話を続けた。
「──しかし。この国の初代国王は今よりももっと裕福な暮らしの為、1番大きな水源を持つ国と戦争を始めた。戦争は長引き、民たちは苦しみ疲弊していった。そんな中、王は1つの案を実行する。あろうことか敵国の水源に怪獣の猛毒を入れたんだ。その結果、戦争に勝利した訳だが……」
「なっ…!そんな話聞いた事もありませんぞ!」
「陛下!本当なのですか!?」
側近たちの問い詰めに答えられるはずもなく王はずっと青ざめたままだ。この国の王だけが知る超秘密事項だったのかもしれない。
「ここで質問だ……その水源がこの星の9割の水源と繋がっていたってのは本当の話なのか?」
「ち、違う!そんな事は一切……」
「なら何故、水源を次々と埋めていった?毒を入れたのは初代だが埋める事を裏で進めていたのは貴様だったな?」
国王は完全に口を閉ざし辺りをキョロキョロと見回している。どうやら図星のようだ。
「その結果が今の現状だ!事実を隠蔽し都合の悪いものは何もかも抹殺、抹消……挙句の果てにはこの星の資源を全部自国で賄うつもりでいる。俺はここに来る前潰れていった村を散々見てきた。大人も子供もみんな苦しんでいた!この星は……この国は腐っている!」
「貴様に何がわかる!?この星はな、俺の物だ!俺の金で栄えてきたんだ!それをどう使おうが俺の自由だ!」
怒号を飛ばす国王。男は銃を拾い上げその額に突きつけた。国王の顔が青を通り越し白く染まる。震えと涙が止まらないようだ。もう殺すしか止める術はないのだろうか?俺は必死に思考を巡らせるが何も思い付かない。兵士たちはもう立ち上がれないようで、このままでは本当にこの国は滅びてしまうかもしれない。
「どこまでも腐ってやがる……。なら…滅ぶがいいさ!」
『バトルナイザー・モンスロード!』
男はバトルナイザーを取り出し怪獣を召喚。室内全体がフラッシュに包まれ、目を瞑る。光が開けると城の正面には宇宙恐竜ゼットンが直立不動の姿勢をとっていた。外からは阿鼻叫喚が耳を刺し混沌渦巻く中、人々は壁外に逃げたり家屋に身を隠す者など様々だ。
「「ゼットン!?」」
「き、貴様も怪獣使いだったのか!」
「も…?」
「は、ハル殿!いえ!英雄様!怪獣でございます!再び我が国を救って下され!」
男がキッと俺を睨み前に立ち塞がる。その瞳は冷酷で、恐怖心を煽る……そんな目をしていた。俺は威圧感を押しのけバトルナイザーを取り出す。
「貴様…こんな奴らの為に戦うというのか?」
「正直、俺だってこいつらを許す気にはならないし、なんでお前と戦わなくちゃならないのかも分からない。それでも、今は分からないなりに突っ走って誰かを助けたい……ただそれだけだ!」
『バトルナイザー・モンスロード!』
ゼットンが拳をこの部屋に突っ込んだのと同時に城全体が大きく揺れて崩れ始めた。バトルナイザーから光球が放たれゴモラが出現し部屋から投げ出された俺とレイジ、国の3人組をキャッチして地面に下ろさせる。男はゼットンの肩に乗り移ったようだ。
「行け!ゴモラ!」
「キシャァァァアア!!」
ゴモラがゼットンに突進し体当たりをかます。しかしゼットンは衝撃をものともせず、その剛腕で薙ぎ払う。更に前蹴りからゴモラの角を掴みアッパーを繰り出した。ゴモラの体は宙で1回転しながらレンガの家屋に打ち付けられる。
立ち上がり奮起するゴモラは尻尾でゼットンを連打するが数回の後に捕まれバルカンスイングで投げ捨てられた。
「くっ…まだまだ!ゴモラ!超震動波だ!」
角にエネルギーを貯めて、最大出力で解き放つ。ゼットンは腕を突き出し受け止めるように胸に手を動かせ超震動波を見る見るうちに吸収してしまった。それだけではない。ゼットンは腕を再び突き出し光波光線のゼットンファイナルビームでゴモラに反撃する。
よろめきながら立つゴモラにゼットンはドロップキックで追い打ちをかけゴモラの頭を踏みつけた。
「ゼットン!トドメだ!」
「ゴモラぁぁぁぁぁあああ!!」
ゼットンの眼前にエネルギーが集中し放たれた火球はゴモラに直撃。俺はその衝撃と風圧で倒れ込む。
俺の前に現れた男は見下しながらこう言った。
「これが貴様と俺の差だ。」
「くそっ!俺は…こんなところで……!俺がレイブラッドを倒さなきゃダメなのに!」
「…………ほう…!だが安心しろ。この星もあと2日で滅ぶ。この星の軌道上に『惑星破壊爆弾』がある。それが堕ちれば晴れて貴様の野望もこの国の黒歴史も全部、消えてなくなるんだからな…。」
その場に居た全員が驚嘆の声を上げた。ちょび髭の男が何かに気づいたのか男に問う。
「そんな代物どうやって!……まさか!貴様!」
「ああ。俺は宇宙工作員、名はケレス。精々足掻くといいさ。」
ケレスはゼットンを戻すと小手の装置を使ってどこかにテレポートしたのか姿を消した。
──少し時間が経ち、俺は微動だにしなくなったゴモラに近づき角をさすりながらボソボソと話しかけていた。
「ごめんなゴモラ。俺が弱かったばっかりに…」
次第にズボンを握る力が強くなり歯を食いしばる。ゴモラの体温が下がっているのが感じられ、視界がぼやけて俺はその場から動けなかった。
◆◆◆
「なにが英雄様だ!クソったれ!宇宙工作員なんぞに負けよって!うぅ…我の国は、我の星はもう終わりだぁ…!」
「──うむ。やはり怪獣使いなど我の城に招くべきでは無かったのだ!」
「陛下!どうなさるおつもりですか!」
国王の理不尽な怒りに側近たちは為す術なくただ怒鳴られることしかできない。国王は近くの兵士を捕まえると首を締め付けながら怒鳴りつけた。
「おい貴様!あのガキの首を持ってこい!」
「し、しかし……」
「口答えするなぁ!!!」
「うぐ……がっ……!」
「陛下ぁ!」
兵士が気を失ったのかぐったりとした。それを見かねたレイジは怒りの拳を突き出し国王を壁に殴り飛ばす。
「今まで色んな人と出会って来たっスけど…オレの人生の中でアンタが一番のクソ野郎っスよ!!」
「だ、黙れぇ!この疫病神共めぇ!」
「なんだと!」
レイジは振り上げた──がその腕は国王の目の前で止まった。レイジは何かに気づいたのか後ろを振り返る。
◆◆◆
何やらレイジたちの居る方が騒がしい。まさか揉めて……
──ドクンッ!
涙がようやく引いてきた頃、アントラーやバロッサ星人の時と同じ鼓動の高まりを感じた。何を思ったのか自分でも分からないが俺はバトルナイザーを取り出す。なんとバトルナイザー自体が発光していたのだ。
「どういうことなんだ……?」
更にそこへ共鳴するようにネックレスも発光し始め、バトルナイザーとネックレスから光が溢れ出す。
温かく眩しいその光はゴモラの中へと吸収されバトルナイザーとネックレス、鼓動の高まりは緩やかに止まる。
「……ガウッ」
「ゴモラ!」
意識を取り戻したゴモラは元気な声を上げ、俺を心配してくれたのか頬擦りしてきた。俺はその大きな頭を抱き寄せ、暫く離さなかった。
「ハル先輩!ゴモラ…生き返ったんスね!!」
涙ぐむレイジが走ってくる。ゴモラに飛びつき抱きしめるとゴモラは満足そうに吠えるのだった。
To be continued……