大怪獣バトルウルトラモンスターズEternal   作:リクソンLv.6

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第17話③:岩漿の狂魔獣

新たに5機のキングジョーブラックが分離形態から変形合体して地上に降下。

ガシャン…ガシャン……と1歩ずつ近づく漆黒のロボット兵団は無機質・無感情な分、逆に恐怖を駆り立てる。

情け容赦ない銃撃の嵐。

ゴモラとゼットンは各々の技をキングジョーブラックに向かって放つが装甲には少しの跡が残るだけ。

とうとう限界を迎えたゼットンはダウンするがゴモラの暴走は留まることを知らず、6機のキングジョーブラック相手に怯むことなく挑み続ける。それでも数の暴力というものは圧倒的で、その暴走列車とも言える怪獣を押さえつけ追い詰めていく。

「はぁ…はぁ…はぁ……」

息をする事さえ今は苦しくてしょうがない。ゴモラは満身創痍、ゼットンもダウンし残るはキングジョーブラックのみ。加えてハルの体力はもう底を尽きかけていた。キングジョーたちはゴモラを取り囲むように立ち塞ぎ銃口を突きつける。

銃口にエネルギーがチャージしていき、その1つが赤く光りゴモラにビームが発射されようとした瞬間だった──。

『これで貴様らレイオニクスは終わりだァァァ!』

 

ドガァァンッ!!

 

……囲んでいる内の1機が目の前で急停止し後ろに倒れるようにして爆裂した。続けてもう1機、また1機と続けて爆発する。

ハルは目を見開きながらその現実に目を凝らした。そこにはなんと兎龍丸がキングジョーブラック・ペダン円盤と戦っているではないか!

◆◆◆

『バカな!我々のキングジョーブラックがあんな奴らの兵器に負けただと!?』

愕然とするペダンの上官。兎龍丸は砲門からミサイルを発射し、ペダン円盤も次々と撃墜していく。

「我々が何の対策も無しに挑むものか。」

「オレたちも舐められたもんっスね!見たか!"ライトンR3000爆弾"の威力ぅ!」

『くっっ……!地球人どもの兵器なんぞに……!!お前たち!あの船を撃ち落とせ!』

『レイオニクスはどうしますか?』

『あんな奴らいつでも倒せる!とにかくあの船を撃ち落とせ!!』

限りない不満と悔恨に包まれながら上官は部下のペダン星人たちにキングジョーブラックへの指示を促す。

◆◆◆

その光景は頭の中の黒い嵐を徐々に弱まらせ、ハルとリンクしているゴモラも同じように冷静さを取り戻していく。

ハッとしたハルは急ぎ通信機を起動させ兎龍丸と回線を繋ぐ。

『ハル君…!』『大丈夫スか!?』

「リーダー……!レイジ……!」

『爆弾発射まで残り10分っス!早く船n…うわぁ!』

鳴り止まない銃撃音。激しい揺れと着弾時の爆発が無線越しでも伝わってくる。

「このままじゃ…!」

ハルがゴモラに指示を出せども暴走によって蓄積された反動でぐったりとその場に膝をついて動かない。いや動けないのだ。

ゴモラとリンクしている今だからこそ分かる。

俺はただ見ている事しか出来ない──。

戦況は優勢だったがやはり多勢に無勢。兎龍丸の背後にはペダン円盤と分離形態のキングジョーブラックがにじり寄っていく。拮抗状態を保っていたが分離したキングジョーの四方八方から破壊光線を受け、兎龍丸は煙を上げて墜落。加えてペダン円盤の追撃が迫る。

「やめろぉぉぉぉお!!」

ハルの瞳から光が消え、影がぐにゃりと歪んでおよそ人とは思えないものへと変わっていく。

「あの影は…!?まさか──!」

 

……そう、かの究極生命体"レイブラッド星人"の姿に。

 

『心配しない……で……大丈夫……っスよ……!』

『あぁ…我々はこんな…ところで………やられたりは……しない……!』

攻撃と墜落の衝撃で発生するノイズと心の中のドス黒い塊が2人の呼び掛けを遮って、もうハルの耳には届かない。

 

激しく握り締められた手のひらには抉れた爪痕が。

 

自分の無力さに怒りが湧き上がる。

 

もう誰も失いたくない。

いやだ──。

いやだ。

いやだ…

いやだ いやだ いやだ いやだ いやだ いやだ いやだ いやだ

「………。」

 

ピキッ──

亀裂が入る。

 

パキッ──

亀裂が広がる。

 

バギンッッ──!!

バリバリと亀裂が広がり崩れ落ちた瞬間。ハルの…いや、レイブラッドの影が一気に肥大化しその身体を取り込んだ。

 

『全て破壊しろ…貴様の赴くままに…全てを……!!』

邪悪な声がハルの心を唆す。

揺らいでいた心は深い闇に落ちてしまった。

 

──俺の邪魔をするモノは全て破壊し尽くしてやる。

 

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」

ゴモラが立ち上がり真っ赤な身体に禍々しい黒いオーラが纏わりつき、各部に鎧のような黒い体表が形成されていく。元の暴走形態時の赤い部位も相まってその姿はまさにマグマと黒曜石。さしずめ"マグマゴモラ"といったところだろう。

『なんだ!あのゴモラの姿は!?キングジョー!あのレイオニクスを八つ裂きにしろ!』

ハルは一言も発すること無く指をキングジョーブラックの方にヌルりと向ける。聞いた事のない呻き声を上げて漆黒の軍団へ進撃するゴモラ。分離光線、ペダニウムランチャーの攻撃を気にするどころかその黒い体表はマグマに向かってモノを投げ込んだみたいにズブズブと吸収、ドーム状に衝撃波を発生させて逆にキングジョーとペダン円盤群を破壊する。

残るキングジョーブラックたちが格闘戦を挑むも、その差は歴然。豪快な蹴りで突き飛ばし、そのままもう1体の頭部を掴み地面に叩きつけた。ゴモラの爪がペダニウム合金のボディを突き破り最後の1機もマグマを纏ったメガトンテールで両断された。

『まるで悪魔だ……。』『ぜ、全機退避だ!急げ!』

ペダン円盤とキングジョーブラックの残骸を残してペダン星人たちは我先にと撤退していく。その背後でゴモラの角に凄まじいエネルギーが今、溜まりきった事を彼らは知らない。

『背後に巨大なエネルギー反応!ゴモラのものと思われます!』

『何!?すぐに緊急回h──』

 

…あぁ。遅かったか。我々は悪魔を呼び覚ましてしまった。これがこの宇宙にどんな影響を及ぼすのか……

ただ一つ言える事は。

 

アレを放置すれば必ずこの宇宙に厄災が降りかかる──。

 

ゴモラの放ったマグマ超震動波は逃げるペダン円盤全てを薙ぎ払い、この宇宙の塵へと(かえ)した。

◆◆◆

「ハル先輩!」

戦いが終わったと判断しレイジが兎龍丸から飛び出して来る。それに続いてリーダーも外に出てきた。

「……」

敵の居なくなったはずの戦場で空に向かって言葉に出来ない狂った雄叫びを上げるゴモラ。その禍々しい姿に2人は言葉を失った。

立ち尽くしたままのハルに近づこうと歩を進めるとケレスがそれを遮る形で呼び止める。

「それ以上ヤツに近づくな!ソレはもう、貴様らの知る人間ではない!」

「………ヴア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」

その声に刺激されたのかケレスが目に入った途端、ハルはゴモラを差し向ける。

「チッ…!」

ケレスがバトルナイザーを構えた時、ハルの首に掛けられたネックレスが燦爛(さんらん)と光り輝く。

「なんスかこの光!?眩しいっス!」

光が収まりホワイトアウトしていた視界が元に戻っていく。そこにはハルのゴモラとは、また別の特異なゴモラと見た事も無い宇宙人がハルと相対している。紫、赤、銀。3つの色から成る姿はレイブラッド星人にこそ似ているものの全体的な容姿はウルトラ戦士に近いだろうか。

「貴様が……あの伝説のレイオニクス。"レイモン"…。」

ケレスの問いに頷くとレイモンはハルの方に向き直る。

『ここは俺が何とかする……。』

力強さと慈愛に満ちた声はハルの獣のような呻き声とは対照的に何処か安心させてくれる気概があった。

「レ"イ"モ"ォォン"…!ジ"ャ"マ"ヲ"ス"ル"ナ"ァ"!!」

「ハル君…じゃない!?」

その咆哮はまるで理性を失った獣そのもので、あのハルとは似ても似つかない。暴れる様に腕を振り回しゴモラがそれに呼応してレイモンに突進する。

『行け!ゴモラ!』

レイモン側のゴモラが通常と異なる点は皮膚が鎧のようになり、目も白目になってかなり凶暴そうな面構え。腹部の棘は大きくなり各部からも棘が生えひと目で強くなったと理解させる力強さに溢れた見た目という、まさに特殊…EXなゴモラ=EXゴモラと言ったところだろう。

EXゴモラはマグマゴモラのフィジカルに負ける事なく、むしろ押し勝っているくらいだ。EXゴモラは尻尾を巧みに操りまるで鞭のようにしならせ、且つ槍の如く鋭い強烈な穿撃(せんげき)を与え怯んだところに全身を高速スピンさせてマグマゴモラを跳ね飛ばす。その威力たるやあの暴れ狂うマグマゴモラが為す術無く後退する程だ。

互いのゴモラが雄叫びを上げEXゴモラは全身に、マグマゴモラは紅蓮迸る角にエネルギーを集めて解き放つ。2つの超震動波は熱砂の大地を抉り取り砂嵐を巻き起こす。

嵐が静まり互いが睨み合う。

 

そしてついにマグマゴモラはその黒い巨体を地に伏せられた……。

◆◆◆

ハルは瞼をゆっくりと開く。

「また…この夢か。」

見渡す限りの焼け野原。怪獣たちが闊歩し燃え盛る街の中を蹂躙していく夢。この場所は天井も壁も無いが学習机がなぎ倒されていたり椅子が散乱している様子から学校の教室だという事が分かる。──そういえば初めて見たこの夢の場所もココだったな…。

「ハルよ………我が子よ……破壊しろ…全て…思いのままに……!」

背後からする先程聞いた突然の声に驚きつつ振り返る。炎が暗く伸びた影をグラグラと揺らしているが、ソレは自分のものでは無い。

2つの角を持ち、怪しく光る眼。

これが自分のものだと言うなら俺は一体なんなんだ。

「だ、誰だ!?」

「我が名はレイブラッド……貴様の望む力をやろう……」

「レイブラッド星人!?……お、俺はお前の力なんて望んじゃいない!」

「ならばどうする?目の前でまた大切な仲間を見殺しにするのか……?」

含みと嘲笑を合わせたような趣味の悪い質問にハルは口を閉じるしか無かった。

「さぁ…我が元へ来い……そうすればこの宇宙は全て貴様の物だ…。さぁ…さぁ…!!」

体が影に引き寄せられていく。右足が影の形をした沼に沈んでいく。息が荒く動悸も早くなってくる。

 

っ!……俺は──!

 

目を瞑った時だ。

背後から赤い衝撃波が俺の耳元を通り抜けレイブラッドの影を消し飛ばしていく。それはあの悪魔のようで地獄の如き身体をした怪獣が起こしたものだった。

「グァアア!……貴様ァ!主の邪魔をする気かァ!!」

レイブラッド星人が激昂する隙に俺は影から抜け出そうと力を振り絞る。底なし沼から1歩2歩と体を仰け反らせて足を引きずり出していく。最後の1歩を引きずり出すと一陣の風と共に光の刃が影を斬る。

「レイモォォン!何度、我の邪魔をすれば気が済む!!」

「仲間たちを守るため…いや全宇宙を護るために、俺が何度だって阻止してやる。」

「ヌ"グ"ゥ"ァ"!……レ"イ"モ"ォ"ォ"ォ"オ"ン"!!!」

汚い断末魔を上げてその影は俺の"人間"の形に戻っていく。尻餅をついて呆気にとられていた俺に、その銀色の戦士は赤い手を差し出してくれる。

「あなたは…あの時の……」

ハルは地球で見た温かな夢を思い出す。あの時は姿が見え無かったんだったっけ。

「俺の名はレイモン。君の力はあのレイブラッドが直々に狙ってくるほど強力だ。力というものは使い手次第で正義にも悪にもなり得る危険なもの…だが君がこの宇宙を守る為に戦うと誓ってくれたあの時の気持ちを忘れない限り、その力は大いに君の役に立ってくれる筈だ。」

「俺は…俺なんかがこの宇宙を守れるんですかね…。」

自分に課せられたあまりに重い使命と重圧に俺は苦言を漏らした。

「くっ……もう時間が無いか。……心配する事はない。俺はいつも君の傍で見守っている。それに…君を信じ、支えてくれる仲間たちが居るの…だか……ら…………」

レイモンが光の粒子となって空へと消えていく。その光はとても勇ましくて、とても眩しかった。

◆◆◆

「う…ん……?」

「リーダー!!ハル先輩起きたっス!!!」

「おぉっ!大丈夫だったかい?ハル君。」

涙目に俺を見つめるレイジと少し不安が残った表情を浮かべるリーダー。

今は兎龍丸の中のようで窓からは様々な星や衛生が見える。今は宇宙空間にいるようだ。反対側には俺たちの居た砂の惑星、デュサリアが見えている。ということは──。

「とにかく良かったっスよ…!ハルせんぱぁ〜い……」

遂には俺に抱きついてレイジが泣き出してしまった。リーダーが「おいおい」とレイジを離そうとしているがその瞳には雫が潤んでいた事は言わないでおこう。

 

ガコンっ……!

 

「「「……へ?」」」

突然の衝撃音と機体が停止した事に全員が口をあんぐりと開けて目を丸くする。直後緊急事態アラームがけたたましく船内に鳴り響く。モニターにはこの船の数十倍はある超巨大な穴が開いているのが映し出された。

「次元トンネルだと!?」

驚きと悲痛な叫びを上げるリーダー。レイジも大慌てで操縦桿を握り必死に抜け出そうと奮闘している。

一難去ってまた一難。旅というものはいつも死を覚悟するくらいの刺激と宝箱に隠された宝石みたいな希望とワクワクに溢れている。

 

『 宇宙 夢とロマン。』

 

──さて次はどんな冒険が待っているのだろうか。

こんな危機でさえも心を踊らせながらハルと兎龍丸は次元トンネルを突き進んでいくのだった。

◆◆◆

恒星も地平線に落ち、暗くなった砂漠にポツンと焚き火をするレイオニクスが1人。そこにもう1人のレイオニクス…アリスが背後に現れ、今までの全て見ていたのか少し不満げに言葉を口にする。

「全く…あなたも律儀なものね。まさか自分で惑星破壊爆弾を止めちゃうなんて。」

「……貴様か…。俺は俺なりの筋を通しただけだ。それで何の用だ。」

筋…ね。自分の中でどこか負けたと思う節があったのかしら?──まぁいいわ。それは彼にしか分からないもの。

「あなたにお届け物。はい。」

ケレスの手にアリスから封緘(ふうかん)された手紙のようなものが渡される。それは最後の舞台場に上がる為の片道切符だ。

「招待状…か。いよいよだな。」

ケレスは拳を握り締め、改めて思いを決心する。

「あら…。それにしてもあなた、最初会った時に比べて随分と変わったみたいね?まるで"好敵手"と出会ったみたいね。」

「……」

アリスの煽りに口を開くことすらせずにケレスは突っぱねる。アリスは微笑を浮かべながら言葉を続ける。

「フフっ…ハルはどうだったかしら?まさか覚醒じゃなくて暴走しちゃうとは思わなかったケド。」

「奴は……史上最強のレイオニクスになる。──だがそれでも勝つのは俺だ。」

「ふ〜ん…。ま!楽しみにしているわ!それじゃあご機嫌よう…」

光る数多の星々と焚き火の幻妖な焔光が砂漠に咲く一輪の花をうっすらと照らしていた。彼方にできた新たな泉で雫が落ちる音に耳を傾けながら──。

 

砂の惑星編 [完]

To be continued……

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