大怪獣バトルウルトラモンスターズEternal 作:リクソンLv.6
第20話:偽りの光と影
「そ……事し…どう……る!」
「テ…ェなん……理解で………き…かよ」
やめるんだ。それ以上はいけない。
あぁ。いや。これは…そうか──
◆◆◆
「リーダー!もしも〜し!聞こえてるっスか〜?」
「……あぁ…。聞こえてる。」
珍しく眠っていたリーダーを起こし、惑星アヴァルに間もなく到着する事を伝える。目を擦りながらリーダーは寝台から立ち上がると服の乱れを直し指揮所に戻る。
「珍しいね、リーダーがあんなに寝てるの。」
「まぁ〜疲れてたんっスよ、多分。色々あったスからねぇ。」
噂をすれば何とやら…リーダーが入ってきた。だが顔が暗い。いつもと様子が違うように思えたが、すぐにいつも通りの顔に戻った。
「すまない、2人とも。どうやら少し疲れていたようだ。」
ほらね。と言わんばかりの顔をするレイジと目を合わせると丁度、惑星アヴァルから通信が入ってきた。パネルを操作しモニターが表示される。
『こちら惑星アヴァル。登録番号1911-7691、兎龍丸ですね。……承認しました。惑星突入、及び着陸準備を開始して下さい。どうぞ。』
「了解。こちら兎龍丸。準備に移ります。」
◆◆◆
無事着陸に成功し惑星アヴァルの土を踏む3人。
……土と言っても滑走路のコンクリートだが。
この星、アヴァルはZAPスペーシーの開拓惑星の中で最も発展した星だと言われている。現に飛行場からでもテラフォーミング装置が見える。そうこうしていると1人のZAP隊員が俺たちの方へ歩いてきた。
「俺…ゴホン!……私はケイスケ。ようこそ惑星アヴァルへ。とはいえ、あまり物珍しい場所も無ければ娯楽も無いですが。」
ハハッと皮肉じみた笑いを漏らすとケイスケさんはZAP基地に案内してくれた。基地内の廊下を歩いていると突然ケイスケさんは足を止めて振り返り、伝え忘れていたのかリーダーに向かって話始めた。
「すいません……基地を案内する前に色々としないといけない事があるんでした。えぇーっと…代表様だけでも宜しいのですがご同行お願いできますか?」
「あぁ分かりました。そうだな…ハル君はお父さんのところに行っておいで。レイジはハル君と一緒に行くといい。」
「了解っス!」
意気揚々とレイジが返事をし、そこを皮切りに俺はレイジで基地内の父さんを探し始めた。……リーダーの配慮には感謝しかないな。
◆◆◆
「それではここでお待ち下さい。」
何かある…とは思えない、だだっ広い無機質な部屋に入れられるリーダー。壁や床には何やら線のようなものが張り巡らされている。あとは1つの椅子があるくらいだろうか。リーダーは部屋を見渡し、そこに座り込む。
すると金属製の帯によって胴体と足を固定されたのと同時に扉が完全に閉じガチャン!という音がした……。
これはつまり────
「してやられたな…。」
「フハハハハ!こんな簡単にテメェを捕えられるとは思わなかったぜ!やっぱりテメェはいつまで経っても詰めが甘ェなァ?…ライトスよォ?」
壁をすり抜けてケイスケ……いや別の誰かが部屋に侵入してくる。だがリーダーはその喋り方・雰囲気でおおよその正体は掴んでいた。──ただ、信じられないだけで。
「いや、お前は…死んだはずじゃ……!?どうしてお前が………答えろ!"キーファ"!!」
「ご名答だ。」
ZAP隊員の姿からザラブ星人の姿に戻るキーファ。偽物かとも思ったが左目にある傷は紛れもなく彼である事を証明していた。
◆◆◆
一方ハルたちはリーダーがそんな事になっているとは露知らず、ハルの父を探し回っていた。
「うーん…ちょっと存じ上げないですね。」
「──そう…ですか……。ありがとうございます。」
しかし、どのZAP隊員に聞いても父のことを知っている人は誰一人見つからないのだった。
「中々見つからないっスね……で、でも!ハル先輩のお父さんはアヴァルに居るってのは事実なんですし、ここに居ないだけで……!」
必死にレイジがフォローを入れてくれる。だが俺の気持ちは一向に晴れることはなかった。
「父さんはZAP隊員だよ。」
「あっ…ッス……」
そう。それに父さんはZAP隊員だ。仕事の時間外だったとしてもこの基地に居る人が知らないというのは、あまりに不自然だ。
俺の記憶違い……なのか?
自分の記憶を頼りに家族の事を思い出す。
……あ、あれ?
「───父さんってどんな顔だったっけ。」
「え?」
そんな馬鹿な。そこそこ時が経っているとはいえ親の顔を忘れるなんてありえない!
いや、あれ、ちょっと待て…母さんってどんな人だったっけ…?
何か大事なものが抜け落ちている感覚が頭の中をぐるぐると掻き混ぜて酷く気持ち悪い。必死に記憶を探るが思い出すのはバトルナイザーを手にし戦っている時の記憶ばかり……。そしてそれ以前の記憶はぽっかりと穴が空いたように抜け落ちて全く思い出せないのだ! 何かを思い出せそうな気はするのだが、もやがかかったようにさっぱりとした印象しか受けない。
俺の異変に気付いたのかレイジが声をかけようとした瞬間2人の通信機にリーダーからコールが入り俺は落ち着きを取り戻す。
『すまない…ヘマをしたみたいだ。"メトロン星人"によって部屋に監禁されてしまった。お願いだ、助けに来てくれ!』
「「!?」」
◆◆◆
要件を伝え終えると通信機を床に投げ棄てるキーファ。
「わざわざ私に化けておびき出すなんて……こんな事して何になる!?」
「こんな事……か。──あの時もそうだったよなァ!テメェはそうやっていつも上から押さえつけてくる!」
キーファを殺してしまったあの日の記憶がフラッシュバックしリーダーは動揺で口を噤み、目を伏せる。
「俺はなァ……テメェらのせいで死んでンだよ!テメェをどうやって殺してやろうかずっと考えてた!怪獣墓場でもなァ!そんな俺を"あの方"は蘇らせ、あまつさえ復讐させてくれるってよォ!」
"あの方"?怪獣墓場に揺蕩う亡霊たちを蘇らせ、且つ力を与えることができる人物………まさか。
「レイブラッド星人…。」
「テメェがあの方の名前を気安く読んでんじゃねェよ!」
怒り狂ったようにキーファはリーダーの脇腹を数回殴る。突然の攻撃に反応が遅れ、身体は痛みに震える。だがキーファはそれを気にも止めず話を続ける。
「テメェの後はジョーの野郎だ…。ヤツもテメェに関わってっからなァ……なぁに安心しろ?すぐに見つけ出して墓場へ送ってやるからよォ!」
キーファは光線銃を取り出すと銃口をリーダーの額に突きつける。鼓動が早まり息が上がる。それを見てキーファは銃を下げニヤリと笑った。
「まぁいい。テメェは最後だ。その前にテメェのお仲間を目の前で殺してやるからよォ!HAHAHAHAHA!!」
◆◆◆
「ハルせんぱ〜い!!リーダーいましたか!?」
「いいや。くっそ…一体どこに……」
俺は首を振らざるを得なかった。しかしメトロン星人か…同族に恨まれる様なことをリーダーがするとは考えづらいが、真偽はどうあれ今は探すしかない。
「よし、二手に別れよう。俺は探しながらZAPの人達にも捜索を要請してくる。」
「分かったっス!」
そう言って2人は互いに真逆の方向へ走り出す。
……まったくどうしてオレらってこんなに災難に巻き込まれるんスかね!
そんな事を考えながらレイジは基地内を走り回る。走っていると通り過ぎた重厚感のある扉の奥から突然、ガンッ!という音が聞こえレイジは扉まで戻ってくる。
「リーダー!居るんすか!?居たら返事して下さいっス!」
部屋の扉に耳を当て、全神経を集中させる。
──何か音がする……?
微かにする音を信じてレイジは開けようとするが鍵が掛かっていて、うんともすんとも言いそうにない。
「ちょっとちょっと、キミ!何してるんだ!!」
後ろからケイスケが現れレイジの行動を止める。客観的に見れば、ただ荒らしている様にしか見えない故に当然である。
「ケイスケさん!この中にリーダーが閉じ込められたみたいなんっスよ!」
「なんだってー!?」
ケイスケは胸ポケットからZAPカードを取り出し扉にパスコードを打ち込んでいく。嫌な予感を感じつつもレイジは部屋の中に入り込む。
「レイジ!来るな!!」
椅子に縛り付けられているリーダーが切羽詰まった声を叫ぶ。次の瞬間、背後のケイスケが拳を振り上げていた。
「……ッぶね!」
咄嗟に体を捻りケイスケの拳を躱すと、そのまま回転して勢いをつけ回し蹴りを繰り出す。しかしケイスケは腕でガードし衝撃を抑え込みレイジの足を掴んで床に叩きつける。
「ぐあッ…!」
「レイジ!!」
リーダーが拘束具を無理矢理ちぎろうとするが、ロープは余計にキツく絞まっていく。頭から血を流しボコボコにされ続けるレイジを見ていることしか出来ない自分が無性に腹が立ち、また堪らなく悔しい。
「レイジは関係無い!もうやめてくれ!!頼む……!」
そう懇願するリーダーの姿を見下す様にキーファは高笑いする。
「HAHAHA!無様だなライトス!テメェにはお似合いの姿だぜェ!?」
キーファはリーダーを足蹴にし、更にレイジの腹を蹴り上げる。その衝撃に耐えきれず咳き込むレイジ。
見ていられなくなったリーダーの瞳から水滴が墜ちる。
じゅわぁ……
ロープに涙が触れた瞬間、その部分から断裂し跡形もなく消え去った。キーファは驚きを隠せない様子でリーダーを見るがすぐさま光線銃を取り出しレイジに向かって発砲。
レイジは思わず目を瞑るが、光線を受けたという衝撃や痛みや熱は全く感じない。
「ぐっ…大丈夫か……レイジ。」
リーダーの声だ!まさかリーダーがオレの代わりに…!?
すぐさまオレは目を開く。
そこに居たのはリーダーの姿ではなく──
特徴的な赤く細長い上半身と青い下半身を持ち、頭頂部から背面・両肩には黄色い縁取りがある。極めつけにチューリップのような手。
「メ、メメ…メ…メトロン星人!?!?」
頭が真っ白になり思考が停止するオレにメトロン星人は声をかけてくる。
「レイジ、私だ。リーダーだ。隠していてすまなかった。もっとちゃんとした時に言おうと思ってたんだがな…。」
確かにリーダーの声だ。だが情報通りならリーダーはメトロン星人に捕らえられていたはずだ。でも目の前のメトロン星人はリーダーで…じゃあリーダーは本物なのか…?いや、でも……あぁもう!何がなんだか分からなくなってきたなぁ…!
「何、俺を無視して話してんだテメェ───」
「待て!リーダー助けにって…!えぇ!?ちょ、身体!」
「あー…まぁちょっと色々あってな……。」
激昂するキーファの後ろでハルが驚きながらもトライガンナーを構えて現れた。キーファがハルに気を取られた隙にレイジもトライガンナーの銃口を向け、互いに挟み込む。
数秒もしない間にハルが呼んでいたZAP隊員が武装して部屋に突入してきた。
「チィっ!クソが!こうなったら……!」
ケイスケは腕をクロスすると本当の姿であるザラブ星人に戻り紫色の矢尻型となって天井をすり抜けていく。
直後の大きな振動とアラームが鳴ったことでその場にいた全員が巨大化したことを理解しZAP基地の外へ飛び出した。
◆◆◆
「なっ!ウルトラマン!?」
いつの間にか元の姿に戻っているリーダーの横でレイジが叫ぶ。
しかし、その答えは否だ。赤黒く光るつり上がった目、尖った耳とトサカ、鋭い顎、身体に走る黒いライン、カールしたつま先が偽物である事を強く証明していた。
「いや、よく見るんだ。目付きが悪い。」
リーダーがそう告げるとレイジは改めて敵をなるほど、確かに……と呟きながらじっと見据えている。
しかし、偽物を野放しにするわけにはいかない。ZAP隊員達は銃を構えて一斉に攻撃する。
キーファことニセウルトラマンは埃でも払う素振りをして効いていないことをまざまざと見せつけると、高笑いを上げながら指を鳴らす。
────バチバチ……!
背後に発光と共に機械仕掛けのゴモラ……メカゴモラが現れこちらに向かってきた。俺はバトルナイザーを取り出し隊員たちの前に躍り出る。
「ここからは俺が行きます!…行け!ラゴラス!」
『バトルナイザー・モンスロード!!』
バトルナイザーから光球が放たれ、ラゴラスが召喚される。相手が2体故にもう一体……と行きたいところだが、生憎グエバッサーは先の戦いでダウン中。ゴモラも動きを見せない…。
「頼んだぞ!ラゴラス!!」
「キィェェェエエ!!」
意気揚々と俺の意志に呼応するかのようにラゴラスは雄叫びを上げ、メカゴモラに挑む。対してキーファはメカゴモラに指示を出して突進させてくる。ラゴラスはそれを正面から受け止めると尻尾を掴み振り回し投げ飛ばす。
しかし、メカゴモラは地面に激突する直前で体勢を立て直して着地。スラスターを利用してこちらに突っ込んできた。タックルを喰らったラゴラスは後ずさるがすぐに持ち直して、すかさずラゴラスは冷凍光線。メカゴモラは右胸のビームランプから紫電の光線、クラッシャーメガを放つ。
中央で激突すると互いに差を感じさせない程のパワーとエネルギーの応酬が始まる。
冷気に乗って砂埃が舞い視界を遮られた。互いの光線が相殺しきれずに弾けて爆発が引き起こり、その風圧で辺りが晴れる。
砂埃が晴れるなりすぐさま尻尾で先制をかけるラゴラスだったが、それを読んでいたように躱し逆にカウンターとして角にエネルギーを集中させた『メガ超振動波』を腹部に叩き込む。その威力は凄まじく、ラゴラスは地面に倒れ込みダウンしてしまった。
「あの方が見込んだレイオニクスも所詮この程度か。まったく、期待して損したぜ…」
これまでずっと後方で腕を組んで高みの見物をしていたキーファがやれやれといった素振りでボヤく。
「くっ…」
メカゴモラとキーファが俺たちを潰さんと迫り来る。
────ドン! 2つの大きな衝突音が轟き、空気が震えた。
1つはメカゴモラの突進を正面から受け止めた音。
もう1つは……
キーファが突然現れた何者かに殴り飛ばされた音だ。
「ギシャァァアゥゥ!!!」
「ゴモラ!お前もう大丈夫なのか!?それに───」
……いいや。ゴモラを暴走させたのは俺だ、俺自身だ。俺の心の弱さだ。それをアイツらに押し付けちゃダメだ!
「行くぞ…ゴモラ!!ラゴラス!!」
「キシャァァァアアア!!!」
「キイィェェェエエエ!!!」
その巨体に似合わず俊敏な動きで、尻尾の一撃をメカゴモラにお見舞いするゴモラ。その隣でニセウルトラマンが放ったフェイクウルトラ水流をラゴラスが冷凍光線で凍らせ叩き落とす。
その戦いぶりは正に怪獣同士の激しいぶつかり合い。尻尾や角、拳と様々な攻撃を繰り出し殴り合う。
ゴモラが横薙ぎに打ち込んだ尻尾を片手で受け止めそのまま持ち上げ投げ飛ばすメカゴモラだが、ゴモラはそのまま身体を翻して今一度メカゴモラの脳天に尻尾の一撃を叩き込み間髪入れずにタックルを決める。
1発2発3発と連続で食らい体制を崩すメカゴモラへラゴラスが戦闘の隙をついて冷凍光線を撃つ。命中したメカゴモラの動きが少しだけ鈍る。その一瞬をゴモラは見逃さず、胴体に角を突き刺し衝撃波とエネルギーをゼロ距離で注ぎ込む。〆に突き刺した角を振り上げ、背後にメカゴモラが落下し爆発四散を起こした。
「ば、馬鹿な……!?あの方から頂いた力だぞ!?負けるはずが……!」
「キーファ!力に固執し、仲間を信じないお前が我々には敵うことは無い!」
リーダーの一喝にキーファはギリッと歯を食いしばる。自暴自棄になったキーファはフェイクスペシウム光線を撃つもその威力は所詮偽物。ラゴラスの冷凍光線と競り合うが押し負け、その体を爆散させた。
「さらばだ…友よ。二度もお前を墓場に送った私をどうか呪ってくれ。」
メトロン星人のライトスはキーファの居たであろう虚空を見て呟いた。
◆◆◆
激闘を終え、現在ハルたちはZAP隊員の皆さんが貸してくれた部屋にいる。
「本当にいいのかい?ハル君。もしかすると…これが地球に帰れる"最後"のチャンスかもしれないんだよ?」
「そうッスよ!レイオニクスなんて辞めて地球で……」
「良いんです。元々決めていた事ですし、…俺がレイオニクスに選ばれたんですから、責任を取らなくちゃ……それに!」
ハルはニッと笑って続ける。
「みんなとの旅、楽しいし!なので…もう少し付き合って貰うことになるんですけど……」
その回答に2人は顔を見合わせて笑い出す。
「さぁっ!そろそろ行こうか!」
リーダーが立ち上がってそれにレイジが続いて部屋を出ていく。
───その覚悟、いいじゃない。
「!?」
背後から細く小さい手が俺の首を掴む。こんな事してくる奴なんて1人しか居ない……!
「離せ…アリス……!!」
「嫌よ。全く、どれだけ探したと思ってるのかしら。───もう逃がさないわ。」
どこからか取り出した赤いシーリングスタンプで封緘された手紙が開くと何も無い空間に突如、煌びやかな扉が現れる。
ドアノブを捻りギィという音を立ててゆっくりと開かれていく扉の先には数多のレイオニクスたちが怪獣を操り戦わせている世界が広がっていた。
「ハル君!!」
「ハル先輩!!」
部屋を出た2人が慌てて部屋に駆け込んでくる。……が時すでに遅し。無慈悲にも2人が伸ばした手は届くこと無く、アリスと共に扉は閉まってしまった。
そして再びアリスが口を開く。
───ようこそ、ハル。さぁ…戦いの儀を始めましょう?
◆◆◆
「"どうもハルです"ってなんか変な感じだな…消すか。よし…。こんな感じかな。」
その本には今までの旅についてが記されていたが、そのページにはこう記されていた。
これが俺の新たな冒険譚の始まり。そして終わり。
最後へ向けた……終着点であると────
To be continued……